514 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:38:07.33 ID:g3JjbSig0
僕が住む町、いや、ここは村と言った方がいいのかもしれない。
この村ニュー速では過疎化が進み、若者は都会へ出ていくのが普通だ。
村を生かすため、農業やここの伝統工業である織物技術を引き継ぐ若い夫婦も居るにはいるのだが、
その数はとても多いとは言えず、やはり田舎の高齢化という時代の流れには敵うはずもない。
(´・ω・`)「なんだかみんな浮かれてるね」
若い夫婦達の第二世代の僕らは、数が少ないながらも楽しく過ごしてきた。
それぞれの家もそれほど遠くは無く、事あるごとに集まって笑ってきた。
これは田舎であって良かった、と胸を張って言えることだと思う。
( ^ω^)「今日は転校生が来るらしいお!初めてだお!」
楽しげに僕に話しかけるのは親友の一人、ブーン。
遊びの時はいつも率先して走り回り、この面に関しては僕は到底かなわない。
時折少しはしゃぎすぎてしまうのも、僕にとっては良い部分だと言える処だ。
('A`)「ふーん、どんな人かな……」
こちらは小声で呟いている。やはり僕の親友であるドクオだ。
普段彼は机に突っ伏していることが多く、口数もあまり多い方ではない。
冷めたような態度が多いように見えるのだが、周りに比べ落ち着いているだけで、本当は楽しい奴だ。
( ´∀`)「みんな来てるモナ?」
このいつもの三人でだらだらと転校生について思いを馳せていると、担任のモナー先生が入ってきた。
周りの生徒達、といっても僕らより年齢は下の子達が、なにやら戯れていたのをぴたりと止めた。
516 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:38:53.30 ID:g3JjbSig0
( ´∀`)「もうみんな知ってるかもしれないけど、今日は転校生が来たモナ!」
わあ、と下級生がざわめいた。
田舎にわざわざ越してくるなんて滅多にあることではない。
それこそ先程ブーンが言っていた通り、近い年代の子がやってくることなんて初めてだ。
( *^ω^)「先生!男子かお?まさかの女子かお!?」
( ´∀`)「内藤の期待通りの女子だモナ!さらに、お前達と同い年だモナ!」
さらに下級生が声をあげた。おねーさんだ、とか、美人さんだ、とか言っている。
ドア一枚隔てた廊下にその子が立っているならば、なんというプレッシャーだろう、想像もしたくない。
('A`)「ペロッ、これはフラグ!!」
こいつもなかなか勝手なことを言う。
彼は少し、漫画やらの類の世界に陶酔し過ぎている。
(´・ω・`)「みんな落ち着こうよ。その子が緊張しちゃうだろ?」
僕は学級委員なので、ざわめく教室を収めなければならない。
もっとも、学級委員なんていう役職を与えられなかったとしても、僕はこの行動をとっただろう。
( ´∀`)「ショボンの言う通りだモナ。静かにー!」
モナー先生はいつもの柔和な笑顔を見せ、生徒たちをなだめる。
突っ張った生徒なんてここには居ないので反発の言葉も無く、静粛に構える僕ら。
戸Ξガラッ⊂从 ゚∀从「……ったく、もう入っていいっすか?」
518 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:39:35.36 ID:g3JjbSig0
そこで突然開け放たれた教室前のドア。
開けた先に立っているのは確かに僕らと歳の近そうな女の子だった。
( ´∀`)「待ち切れなかったモナ?」
从 ゚∀从「別に。こういうの面倒なんで」
つかつかと歩き、窓際の空いている机に座る彼女。僕の後ろの席だ。
そこには昨日まで机は無かったのだが、今朝来てみるといつの間にか置かれていた。
(;´∀`)「高岡、前で挨拶するモナ」
从 ゚∀从「あー、ハインリッヒ高岡です!!よろしく!!」
机に座ったまま頬杖をついて、上向きに大声で言う。
それきり、彼女はどんな言葉にも反応せず、ずっと窓の向こうを眺めていた。
一番年下の子が彼女に何度話しかけても無視し続けたので、その子は涙目になって僕に泣きついた。
そんな姿を見た下級生は、彼女に対しあまり好ましくない視線をぶつけた。
519 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:40:16.56 ID:g3JjbSig0
( ^ω^)「放課後までガン無視だったお」
('A`)「都会の人間は怖い……」
(´・ω・`)「でもさ、やっぱりクラスに溶け込めた方がいいよね」
僕は昔から、クラス内で孤立している人を放っておけない。
例えば新一年生が入ってくる度、僕はなんとかみんなで遊べるようにやってきた。
自分勝手だけど、僕は人と人とが笑っている姿を見るのが一番好きなんだ。
( ^ω^)「そりゃ勿論だけど、無視じゃどうしようもないお」
('A`)「そうだよ。話しかけ続けて変に怒らせたらなぁ」
(´・ω・`)「喧嘩の仲裁なんて何度もやってきているよ」
ブーンとドクオの喧嘩はもちろん、下級生の喧嘩も止めて来た。
それに、どれも悪い方向に終結したものではないと思っている。
('A`)「お前自身が喧嘩したこと無いだろ。やめといたほうがいいと思う」
(´・ω・`)「でもほっとけないんだよ」
( ^ω^)「うーん……じゃあ任せるお!仲良くなれそうならブーンに任せるお!」
楽しませることに関しては、確かにブーンは頼もしい。
ドクオには少し悪いけど、やっぱり放ってはおけない。
明日から、もう少し声をかけてみよう。
520 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:41:00.33 ID:g3JjbSig0
翌朝、始業ギリギリで彼女がやってきた。
昨日のこともあって、誰も彼女に挨拶をしない。
僕の後ろの席にどかっと座った彼女は机に学生鞄を引っ掛け、
取り出した携帯電話を見ながら溜め息をつく。
从 ゚∀从「……ハァ」
(´・ω・`)「おはよう、高岡さん」
从 ゚∀从「………」
目は間違いなく合っている。
しかし、こちらをじっと見つめてはいるものの、言葉はなにも帰ってこない。
(´・ω・`)「おはよう」
もう一度言ってみる。
从 ゚∀从「……チッ」
返答は舌打ち。
これは進歩と思いたい。
(´・ω・`)「こっちでわからないことがあったら聞いてよ」
僕はそれだけ言って、モナー先生が来る前にまともに席に着くことにした。
522 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/19(月) 19:41:43.30 ID:g3JjbSig0
( ^ω^)「結局無視されてるお」
('A`)「やめとけって」
(´・ω・`)「反応はしてるよ」
どうも好意的な意見が無い。
それでも、間違っては居ないと思う。
何とかしてあげたいんだ。
(´・ω・`)「おはよう」
从 ゚∀从「チッ」
一週間、僕は挨拶を続けた。
帰ってくるのは舌打ちばかりだけど、ポジティブに考えよう。
僕個人の存在を認識してもらっている、そう考えよう。
(´・ω・`)「おはよう、高岡さん」
从 ゚∀从「……あのよー」
二週間目の水曜日、ようやく高岡さんが僕に言葉を向けてきた。
(´・ω・`)「なんだい?」
从 ゚∀从「いい加減うぜえんだよ、おまえ」
524 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:42:26.17 ID:g3JjbSig0
その言葉は僕の心を抉った。
初めて向けられた言葉が、単なる悪口だった。
(´・ω・`)「え……」
从 ゚∀从「毎日毎日毎日毎日、俺に話しかけてきやがって」
彼女の声によって教室の空気が止まったのは肌で感じられた。
僕自身、彼女が紡ぐ言葉に緊張しきっていた。
从 ゚∀从「何考えてんだよ、きもちわりぃ」
(´・ω・`)「それは、高岡さんがクラスに溶け込めたらと思って」
从 ゚∀从「そんなもん頼んでねえ。鬱陶しいんだよ」
僕はそこで止まってしまう。
確かに頼まれてはいない、けど。
从 ゚∀从「二度と話しかけんな」
(´・ω・`)「………高岡さんだって一人は嫌だろ?」
从#゚∀从「……」
視線の先の目の色が変わる。
僕の言葉への返答は、彼女の蹴り飛ばした机だった。
525 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:43:12.00 ID:g3JjbSig0
( ´ω`)「やっぱり無理そうだお」
('A`)「だからやめとけって言っただろ……」
(´・ω・`)「………」
机は腕で防いだので、軽い打撲で済んだ。
高岡さんはその時、痛がっていた僕に唾を吐き、鞄をひっつかんで帰ってしまった。
(´・ω・`)「………」
それでも僕は怒る気にはなれなかった。
あのとき、高岡さんは一人でいることが嫌なんだ、とわかってしまったから。
僕は自室に放置してあるはずの携帯電話を探すことにしようと思った。
あまりここでは使わないから、ほこりも多分にかかっていそうだ。
(´・ω・`)「あった。確か契約は切れてないよね」
使わない携帯に両親がお金を払っているのは申し訳ない。
それも今更だけど、こいつを使ってやろう。
僕はちょこちょこといじくり回し、その使い方を思い出す。
明日、学校に持っていくため。
526 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:43:57.02 ID:g3JjbSig0
(*´・ω・)「高岡さーん!」
ちょっと浮かれてしまった僕。
解決策ではないかもしれないけど、他を考えるのが億劫だったんだ。
从;゚∀从「な」
(´・ω・`)「アドレス交換しようよ!」
从 ゚∀从「話しかけんなって言ったろ」
(´・ω・`)「話さなくてもいいよ。メールしようよ」
从 ゚∀从「はぁ?」
(´・ω・`)「僕の顔見なくてもいいから。話さなくてもいいから。僕と、メールしようよ」
なぜだかわからないけど、必死になってしまう。
すがるような台詞を吐いてしまって、恥ずかしくなった。
从 ゚∀从「ったくうぜえな……ほら、貸せ」
これで無視されたらどうしようかと思った。
高岡さんはそこまで悪い人じゃないみたいで安心した。
携帯を向き合わせて互いに送り合う。赤外線通信だ。
(´・ω・`)「ありがとう」
从 ゚∀从「もう話しかけんなよ」
530 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/19(月) 19:48:33.28 ID:tfHiwFzZO
それから妙なやり取りを続けることになった。
朝教室に入ると、手の届く範囲に居る相手に、「おはよう」のメールを打つ。
帰ってくるのは「おはよう」で、きらきらした絵文字がやたらついていた。
(´・ω・`)「……」
从 ゚∀从「……」
会話は一切ない。
目を合わせることもない。
僕らは超至近距離で、電波を飛ばし合う。
なぜ『飛ばし合う』なのかと言えば、メールでの高岡さんはすごく饒舌なのだ。
饒舌、というか長文って言えば正しい日本語、だろうか。
彼女は僕の慣れない一行や二行のメールに対しても、最低五行以上で返信する。
そこには村への愚痴やら僕への罵倒も混ざっていた。
だけれど、何故だろう、嫌な気持ちには全くならなかった。
むしろ、すごく楽しかった。
授業中でも何度かメールをし、
放課後、相手が席を立つときには、必ずどちらかが「バイバイ」のメールを送った。
531 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:50:33.65 ID:tfHiwFzZO
それから一週間が過ぎ、ふと思いついた疑問を聞いてみた。
どうして僕とこんなにメールしてくれるの?
それは授業中のことで、彼女が息を飲むような雰囲気を感じた。
返信は、要約すればこうだ。
メールする相手が誰も居なくなったから。
彼女が引っ越す前はたくさんの友達が居て、僕と同じようにたくさんのメールをしていたという。
しかしこちらに来た途端、そんなメールは一通も来ず、普段の日常から彼女は切り離されてしまったのだ。
仕方ないとも言えるだろう。近い距離で交わされるメールの内容は、その二人の周りの出来事が中心になる。
从 ∀从「……」
当時のことを思い出し、今の状況と比べているのか、彼女が鼻をすする音が聞こえた。
ここで僕は思う。
やはり、直接言葉を交わすのが一番だ、と。
今帰ってきたメールからは、彼女が鼻をすすっている情景など想像ができないものだったのだ。
532 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:51:39.76 ID:tfHiwFzZO
僕は授業中なのに静かに振り向き、ハインを見た。
彼女は顔を伏せては居たが、携帯はしっかり握っている。
そこで、僕は携帯を没収した。
从 ゚∀从「!!」
はっとした顔で頭をあげた彼女。
その眼は、誰がどう見ても濡れていた。
(´・ω・`)「泣きたかったら、泣いてもいいんだよ。ハイン」
僕の背後に居るであろうモナー先生も、僕とハイン以外の生徒も、僕らを見ているのがわかった。
从 ;∀从「ありがと……ショボン……」
その言葉の意味は少しわからなかったけど、肩に泣きついてきたハインを僕は拒まなかった。
教室のみんなは、全員微妙な顔をしていた。
533 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:52:04.43 ID:g3JjbSig0
( ^ω^)「急展開過ぎてワロタ」
('A`)「どうなってるの?」
(´・ω・`)「ハインはやっぱりさびしかったんだよ」
彼女はあのあと、真っ赤な顔をさらに赤らめ、モナーの制止を振り切って帰ってしまった。
僕とはその後も少しメールをしたんだけど。
( ^ω^)「細かい事情はいいお。なら一緒に遊べるお!」
(´・ω・`)「うん。それからみんなに謝りたいってさ」
('A`)「じゃあ明日は早く行かなきゃな」
(´・ω・`)「そうだね」
これでどうにか、次の一歩を踏み出せそうだ。
僕はなんだか嬉しくなった。
なんだか、とは言ってみたけど、理由はわかるよね?
535 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/19(月) 19:52:49.05 ID:g3JjbSig0
从 ゚∀从「みんな!!ごめんなさい!!」
(´・ω・`)「うん、みんなすまない。ハインは不器用なんだ」
翌日、朝からみんなにハインと仲良くして欲しいとの旨を伝えていた。
無理矢理そう思え、ということではなく、彼女の謝罪を聞いた後に、
彼女の言葉を聞いてその上で判断して欲しい、といったところだけど。
从 ゚∀从「俺、やっぱり一人は嫌だ。寂しくて不安で、ずっとイライラしてて――」
以降の彼女の謝罪は、僕とのメールの時と同じような、『長文』であった。
( ^ω^)「って、もう人気者?」
('A`)「年上のねーちゃんは居なかったもんなぁ」
(´・ω・`)「ブーンのポジションは奪われるかもね」
ハインの言葉には嘘が無いことがよくわかるものだった。
なぜなら、僕への罵倒が頻繁に覗けたからだ。
時折下級生達はそれに笑い、僕をニヤニヤ見つめてくる始末。
けど、それでも良かった。
これで、クラスに一人ぼっちは居なくなったから。
536 :
(´・ω・`)はほっとけないようです[]:2009/10/19(月) 19:53:32.35 ID:g3JjbSig0
( ´∀`)「一時間目とっくに始まってるけど………まあ、いいモナ」
廊下に一人佇む教員。
彼はなかなか空気が読めるようだ。
从*゚∀从「こら!男は抱きつくな!」
( *^ω^)「うはwwwwwwイタスwwwwwwww」
('A`)「そうだ、俺も携帯買おう……」
(´・ω・`)「現役だともう転校生は来ないと思うよ?」
('A`)「そっかぁ……じゃあやめよう……」
(´・ω・`)「うん、そうしなよ(ハインとメールできるのは僕だけ!!)」
なんとなく時計を見ると、針は既に一時間目を過ぎている。
(´・ω・`)「みんな座ろうよ。廊下の先生も困ってるよ」
そして、今日も滞りなく授業は始まる。
僕と彼女の電波も、滞りなく続く。
(´・ω・`)はほっとけないようです・終わり
538 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/10/19(月) 19:54:58.37 ID:g3JjbSig0
>>477携帯電話
>>479みんなの相談役
>>484泣きたきゃ泣きなさい
でした。批評とかください。レスするかは微妙ですが確実に読みます
やっぱたんぺんむずいね。みんなの相談役、消化しきれてないね