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( ^ω^)の雑貨屋さんのようです


977 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:43:08.32 ID:rr8tfmwV0

並木の銀杏が色づいたばかりの、うららかな正午。
その日、午前の仕事を終えた俺は空きっ腹を抱えて町を歩いていた。

(,,゚Д゚)(ラーメン、は昨日食ったし、馴染みの洋食屋は今日は確か休み)

(,,゚Д゚)(むむ、何にすっかな)

本日の昼食メニューについてぼんやり考えながら、通りを往く。
やっぱり中華に妥協するか、と思ったその時、

(,,゚Д゚)「・・・あ?」

見覚えの無い店が俺の目に入った。

(,,゚Д゚)「こんな店あったか?」

小さな店構えだ。べっこう色の看板には「Boon」とだけ彫られている。
軒先にはいくつもの植木鉢が並べられ、その内の一つの蕾のままの三時草が風に任せてゆらゆら揺れていた。

喫茶店のようにも見えるし、自然派手作り石鹸店にも見える。何の店だろう。
何と無しに近づいた俺は、入り口のすぐ傍に小さなブラックボードがあるのに気付いた。

短く何か書いてある。


『雑貨屋ブーン 眠れぬ方、ご相談承ります』




979 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:46:09.06 ID:rr8tfmwV0

(,,゚Д゚) 「眠れぬ方、ね」

飲食店ではない。そう把握して、さっさと昼飯を探そうと踵を返しかける。
しかしふと、最近少しだけ頭の隅に引っ掛かっていた事項が浮かんだ。
悩みという事でもない、強いて言うなら小さなわがまま。

(,,゚Д゚)「・・・入ってみるかな」

少し覗く程度だ。駄目で元々、解決すれば儲けもん。軽い気持ちで鈍い金色のノブに手をかける。

(,,゚Д゚)「ごめんくださーい」

そうして、扉を開けた俺に飛び込んできたもの。それは、

( ^ω^)「ハフッ!モフッ!!」

太った男が物凄い勢いでコロッケに食らいついている光景だった。
思わず体が固まる。すると、男が顔を上げてこちらを見た。

(,,゚Д゚)「・・・」

( ^ω^)「・・・」

真っ直ぐに視線がかち合う。そのまま、一瞬の沈黙が落ち、

(,,゚Д゚)「間違えました」

俺は扉を閉める事にした。

( ;^ω^)「ああ、待ってぇ!」



981 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:49:01.43 ID:rr8tfmwV0

( ;^ω^)「すみませんお。揚げたてだったもんで、つい」

俺を必死に引き止めた、ここの店主らしい男は手にコロッケを持ったまま、そう謝った。
確かにまだ熱いままのようで、齧られた断面からほこほこと湯気が立っている。
湯気をさかのぼれば、狐色の衣に包まれたジャガイモが見えた。ふかふかしていて旨そうだ。
そういえば、昼食を思案していたのだった。ぐうう、と腹の虫が鳴く。

( ;^ω^)「た、食べますかお?」

男にも聞こえてしまったらしい。手に持ったコロッケを差し出してきた。


うん。有り難いが、それお前の食べかけだろ。



982 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:50:02.65 ID:rr8tfmwV0

( ^ω^)「ハフハフ、それで何をお探しですかお?」

数分後、俺は男に勧められ、レジを挟んで置かれた椅子の片方に座っていた。反対側の椅子には店主の男。
そして、本来は代金やら釣り銭やらを乗せるべきレジ台は、今やコロッケを盛った皿を乗せたテーブルだった。
皿から一つつまんで、熱いそれを小さくお手玉をするように口元へ運んでいく。
噛むと、さくっ、と衣が砕ける音が聞こえた。
同時にほんのり甘いジャガイモとたまねぎ、それと肉の風味が口に広がってゆく。

(,,゚Д゚)「あちち、うまうま。いやな、俺は表に出てた奴見て入ってきたんだけどよ」

( ^ω^)「あっ、お客さん不眠症ですかお?モフモフ」

(,,゚Д゚)「いや、もぐもぐ、そうじゃない」

男が首を傾げて俺を見る。犬っころのような、やけに愛嬌のある表情をしていた。

(,,゚Д゚)「俺はサラリーマンとして働いてるんだが、それでいまいち心ゆくまで眠れないんだ」



983 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:51:34.78 ID:rr8tfmwV0

( ^ω^)「ほお。それは一体どういう?」

(,,゚Д゚)「つまりだな。仕事が終わって家に帰っても、
     結局メールやら電話やらで何かしら舞い込んでくる。コロッケもう一ついいか?」

( ^ω^)「ふむふむ。あ、どうぞ」

(,,゚Д゚)「電源を切っても、もぐ、
     送られてくる事には変わりないし、何で切ってんだってことになるだろ?」

(,,゚Д゚)「まあ、しょうがないと言えばしょうがない事だから、
     せめて安眠グッズなんて有ればと思ってな」

( ^ω^)「分かりましたお」

返事をして、男は店の奥に入っていった。
もう一つコロッケをつまんでいると、ほどなく男が戻ってくる。
そいつの丸っこい手が、ことりと静かに俺の前に置いたのは人指し指ぐらいの高さの黒い小瓶だった。
相当年季が入っているらしく、金属の蓋が少し錆びている。
手渡されたそれを左右に振ると黒色が動きに合わせて揺れた。
どうやら黒いのは瓶ではなく、中身らしい。しかし、それにしても。



984 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:52:57.98 ID:rr8tfmwV0

(,,゚Д゚) 「これは・・・、何だ?」

疑問を素直に口に出すと、男はにやけ顔のままこう言った。

( ^ω^)「これは古い夜ですお」

(,,゚Д゚)「は?どういう意味だ?」

( ^ω^)「まあ、気持ちよく眠るための環境をつくる道具、みたいな感じですお」

( ^ω^)「寝る前にこの瓶を開けて、それから眠ってくださいお」

(,,゚Д゚) 「ふぅん、良く分からないが効くのか?」

( ^ω^)「それはもう、しっかり」

そういうものなんだろうか。しかし、店主の顔はいやに自信ありげだ。
値段を聞くと、そう大した額ではない。

(,,゚Д゚) (ま、たまにはいいか。こんなのも)

結局、購入した。



987 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:54:09.90 ID:rr8tfmwV0

夜、家に帰った俺は折角なので早めの就寝を取ることにし、早い夕食を済ませた。
その後皿洗いをし、風呂に入る。歯もしっかり磨いた。ついでだからと、洗面台まで磨いてしまった。

準備は万端に整った。あとは、眠るだけ。
ベットに腰掛けながら、さて開けようと小瓶を手に取る。
そして、いざ蓋を回そうとした。しかし、これが中々回らない。

(,,゚Д゚) 「固いな」

深呼吸をする。勢いで買ってしまったが、どれほどの効果があるのかは分からないものだ。
もしかしたら、いい大人が深呼吸する程大したもので無いかもしれない。

だがまあしかし。全ては開けてみなくては。
指先に思い切り力を込める。よし。

(#,,゚Д゚)「ふんっ!」

軋むような音を立てて、蓋が開く。
その瞬間、なにやら黒いものがぽたりと瓶から零れた。
しかし、それが何だか確認する隙もなく、あっという間に黒は床に広がり、壁を伝い、天井を覆っていく。
まもなく、俺の部屋は文字通り真っ暗になってしまった。もはや手元すら見えない。

(;,,゚Д゚)「何も見えん・・・」

これでいいんだろうか。小瓶を床にそっと置き、手探りで掛け布団の端を探す。
多少の不安はあったが、布団の温かみに包まれている内に、やがて意識は深い闇に沈んでいった。



988 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:55:34.32 ID:rr8tfmwV0

ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ。
機械的な音が断続的に鳴り響いている。目覚ましのアラーム、止めなくては。

(,,-Д-)「ん・・・」

瞼を開けると、眩しい光がカーテンの隙間から射し込んできた。
ちゅん、ちゅん、と雀の鳴き声が聞こえる。

(,,゚Д-)「ふぁあ」

体を起こすと、自然、大きな欠伸が口から洩れ出てくる。久しぶりに満足に寝れた気がした。
頭は至極すっきりしていて、爽快な朝だ。

(,,゚Д゚)「あー、よく寝た」

床に視線を向けると、当たり前だが黒い小瓶が転がっている。蓋はきっちり閉まっていた。



出勤前に、一応パソコンのメールボックスをチェックしてみる。
しかし、何も新しいものは無かった。



989 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 18:56:40.29 ID:rr8tfmwV0

清々しい気分のまま、会社に到着した俺は自分のデスクに向かう。
すると、上司がすぐに仕事のファイルを手にやってきた。

(´・_ゝ・`)「おはよう。これ、頼むよ。少し急ぎで。」

(,,゚Д゚)「分かりました」

(´・_ゝ・`)「本当は、昨日の夜にメールで送ろうと思ってたんだけどね」

(,,゚Д゚)「はあ。じゃあ何故今朝に?」

(´・_ゝ・`)「いや、もう夜だったから」

(,,゚Д゚;) 「え?」

どういう事なのだろうか。
この上司は、たとえ日付をまたごうとしていても、急ぎだからと容赦なく仕事を送りつけてくる人だ。

(´・_ゝ・`)「じゃ、今日も頑張って」

困惑したままの俺を置いて、上司はさっさと彼のデスクに戻っていく。
俺は首を捻りながら、もう一度思った。
どういう事なのだろうか。



993 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 19:07:24.05 ID:rr8tfmwV0

その日の昼、俺はまたあの小さな店に向かった。
昨日の太った男は、店先の三時草にじょうろで水をまいている所だった。その背中に声を掛ける。

(,,゚Д゚)「よぉ」

( ^ω^)「あっ、こんにちわ。ぐっすり眠れましたかお?」

(,,゚Д゚)「ああ。誰にも邪魔されずによく眠れた」

( ^ω^)「そりゃ良かったですお」

(,,゚Д゚)「なあ、あれは何なんだ?古い夜って言ってたが」

( ^ω^)「そのまんまですお。あれは今は無い、古い夜」

( ^ω^)「昔々の、夜という時間が不都合へと繋がっていた頃の夜ですなんですお」

そう緩やかに言った男はドアにかかっている「OPEN」の木札をくるりと裏返し、店内に戻っていった。

何故か、追い掛ける気にはならない。
残されたのは、「CLOSE」になった木札と空きっ腹の自分。


(,,゚Д゚)「・・・コロッケでも食うかな」




994 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/08(月) 19:08:44.86 ID:rr8tfmwV0



今でも俺はあの小瓶を持っている。

そして、どうしようもなく疲れきってしまった夜にそれを開けたりする。
指に思い切り力を入れ、錆びきった蓋を捻る。

するとたちまち黒が躍り出て、ただひたすらの闇、闇、闇・・・・。









[ 2008/12/08 19:26 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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