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('A`)大雪の夜のようです


456 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:21:12.60 ID:BfH88GvL0

──今日はVIP市内でも珍しい大雪で、電車のダイヤなどに影響が──

('A`)「……んなもん、わかってるっつーの」

レトロなステレオから流れてくる能天気なウェザーリポートに耳を傾けながら、煙草に火をつける。
こんな雪の夜に出歩こうなんてやからは居ないらしく、辺りは静まりかっていた。
せわしなく動くワイパーの音にまぎれて、深々と降り積もる雪の音まで聞こえてきそうな。
そんな、静寂。
さっき寄ったコンビニで買った、まだ開けていない缶コーヒーは既にぬるくなっている。

──視界も悪くなっていますので、ドライバーの皆様は安全運転で──

安全運転? もちろんしていた。
それでも、動けなくなる時はなるものなのだ。車というのは。
雪の降る事なんて珍しいこのVIP市で、冬だからといってスタッドレスに履き替えている人間がどれだけいるのか?
彼のも然り。夏タイヤのまま走っていた18年落ちのパオは雪に足をとられスリップし、そのまま行動不能になってしまった。


('A`)「どうしろってんだよ……」

一人では押す事も引くことも出来ず、JAFを呼ぼうにも間の悪い事に携帯も家に忘れてきている。
缶コーヒーを開け、一口。
手持ち無沙汰な思考はいろいろな所へ飛んでいく。


('A`)「……」

そういえば、と。
彼の思考は過去の記憶を、その引き出しから取り出してくる。



457 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:21:30.94 ID:BfH88GvL0

そう、たしかに。
状況こそ違えど、あの日も雪がふっていて。
車も動けずにいたんだった。
だけど、あの時は、一人じゃなくて、二人だった。


('A`)大雪の夜のようです



458 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:22:35.16 ID:BfH88GvL0

2007年 12月某日

その日は酷い大雪で、市内の幹線道路は大渋滞だった。
彼と、彼の彼女を乗せた車はその渋滞に見事に捕まっていた。

──今日のVIP市は珍しい大雪で、幹線道路などでは2km以上の渋滞が発生しており──

('A`)「おいおい、今日中に帰れるのかよ?」

カチリ、カチリと時を刻む純正のアナログ時計は、11時を少し回った所を刺していた。
レトロなデザインのステレオから聞こえてくるのは、間の抜けたウェザーリポート。
思わず、悪態の一つもつきたくなる。

川 ゚ -゚)「そう焦ることは無い。この積もり具合じゃ、明日は大学は休講だろう」

助手席に座る女性が言った。
凛。という表現が、まさに似合いの美人。
何故こんな美人が、こんな冴えない男と? と。彼自身がそう思っているくらいだった。

('A`)「まぁ、確かにそうだろうな。でもなぁ」

17年物のキャンパストップが雪の重さで破れるんじゃなかろうかと、内心ヒヤヒヤしながら答える。
自然現象の前に人間なんて、と妙な感慨がふと浮かんできた。

川 ゚ -゚)「それにな」

心が浮気していたから、それは不意打ち同然だった。

川 ゚ ー゚)「君と二人で居られる時間が増えるのは、嬉しい」



459 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:24:33.26 ID:BfH88GvL0

あんまりにもストレートな言い回しに、思わず噴出しそうになってしまった。

(;'A`)「は、恥ずかしい事言うなよ……」

川 ゚ ー゚)「なんだ? 君は私と一緒に居たくないのか?」

彼女の口調には、多分にからかいのニュアンスが含まれていた。
今にも、クスクスと笑い声が聞こえてきそうな。
少し、間をおいて。
時計の長針が、カチリと一つ動いた頃。

川 ゚ -゚)「なぁ、どうなんだ?」

('A`)「……え?」

川 ゚ -゚)「君は、まだ私の問いに答えていない」

助手席を見れば、既に真顔に戻っている彼女が居て。
その眼差しは、僅かな不安に揺れている。
とても綺麗だと、素直に思った。
素直に、なんていうのは本来彼女の専売特許なのだけれど。

川 ゚ -゚)「言ってくれ。早く」

ずいり、と。彼女が身を乗り出してきた。
ただえさえ狭い車内。二人の距離は、一気に縮まる。



460 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:26:04.59 ID:BfH88GvL0

('A`)「お、俺も……きだよ」

川 ゚ -゚)「え? 聞こえなかった」

('A`)「だから、好きだって言ってるんだよ」

川 ゚ ー゚)「そう、か。良かったよ」

表情を柔らかくした彼女は。

川 ─ - ─)「……ん」

そのまま、目を瞑った。
それがどういう事かと、分からないほどの野暮でも彼は無い。
二人の距離が、さらに縮まる。

──運転中の皆様は、くれぐれも脇見運転などせず、安全運転で──

連なる、赤いテールランプの列。
レトロなステレオからは、間の抜けたウェザーリポートが聞こえてくる。
そんな、クリスマスの、少し前の日。
寒い、酷く寒い雪の夜。



461 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:26:31.11 ID:BfH88GvL0

その後何があったかと問われれば、いろいろあったとしかいいようが無い。
結果として、彼が今一人で車内に居る事にはかわりが無い。

('A`)「……ちっ」

なんでこんな時に、余計に気が滅入るような事をと。思わず舌打ちが出る。
純正のアナログ時計を見れば、既に30分近くたっている事が分かった。
その間、一台の車も通らなかったのか。通っても気づかなかったのか。
確かめる術もなく、新しい煙草に火をつける。
そこで思い出して目線を落とせば、フロアマットの上に灰とフィルターが散らかっている。

('A`)「……」

今日は、間違いなく厄日だ。そうに違いないと思う。
外は、相変わらずの雪模様だった。
ラジオでは、馬鹿みたいなテンションのDJが今週のヒットチャートを紹介している。
その時。
後ろの方から、車の音が聞こえてきた。
だが、こんな日だ。どうせ、乗ってるやつの心なんてのは降り積もる雪みたいに冷たくて、通りすぎていったしまうんだろうと。
そんなネガティブな発想にしかたどり着けなかった。
だから、その車が少し離れた場所に止まった時、心底驚いた。
こんな雪道には強いのであろう、四輪駆動のSUV。スバルのフォレスターから誰かが降りてきた。
そして、彼の車の運転席のウィンドウを、コンコンとノックする。
その控えめなノックにウィンドウを開けてみれば、そこに立っていたのは以外にも女性だった。

ζ(゚ー゚*ζ「あの、大丈夫ですか?」

可愛らしいデザインの、フワフワした暖かそうなコートを着ている。
こんなかさばる服装で、よく車なんか運転していたものだ。



462 :愛のVIP戦士@ローカルルール7日・9日投票:2008/12/07(日) 03:27:01.41 ID:BfH88GvL0

('A`)「いや、その……」

これもまた、出会いの形の一つであって。
レトロなステレオからは、穏やかなクリスマスバラードが聞こえてくる。
そんな、クリスマスの、少し前の日。
寒い、酷く寒い雪の夜。


おわり。


[ 2008/12/07 20:17 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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