753 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:04:23.50 ID:vUjLd5h1O
投下します
お題
はじめての○○
雪合戦
756 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:07:33.18 ID:vUjLd5h1O
ざっくざっく。積もった雪を踏み締めて、ぼくは本屋へ向かう。
ざっくざっく。平日のお昼、中学生のぼくは雪を踏み締めて本屋へ向かう。
ざっくざっく。ざっくざっく。
('A`)枯木包丁のようです
760 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:10:05.11 ID:vUjLd5h1O
むっすりとした顔で、ぼくは本屋を出る。何故また延期になるんだ、しかも十
日過ぎたあたりってアバウトな……。今月はじめての外出だったのに。
ざっくざっく。商店街に入った。古臭い八百屋や魚屋、さっきの本屋とは段違
いの、やはり古臭い本屋が並ぶこの商店街は、今日も人が少ない。時間が時間だ
から、仕方ないのかもね。
なんとなく辺りを眺めながら歩いていると、ふと記憶に無い建物を見つけた。
骨董品と書かれただけの簡素な看板に、赤い壁と木製のドア。何故か入りたい。
ぼくは一種の、懐かしさに似た感情を抱きながら、ドアノブを捻った。
761 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:14:43.91 ID:vUjLd5h1O
中は薄暗く、埃臭かった。怪しい甲冑、剣、鏡と、一通り見てみたけど、面白
そうな物は特に無かった。
('A`)「つまらないなあ」
ホント、声に出すほどつまらなかった。
/ ,' 3 「おう、いらっしゃい」
誰もいないと思っていたから、この突然の声にぼくはびっくりした。慌てて振
り返ると、眼鏡をかけた老人が立っていた。
/ ,' 3 「つまらないかい、ここは」
頷き肯定すると、老人はぼくの顔を一瞥した。数秒ののちに、老人はニヤリと
笑顔を作った。
/ ,' 3「待ってろ、イイモノもってきてやる」
それだけ言って、老人は奥に引っ込んでしまった。
763 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:17:32.53 ID:vUjLd5h1O
/ ,' 3「おうボーズ、これを、おまえにやるよ」
戻ってきた老人に、ぼくは一本の包丁を渡された。
/ ,' 3「それを枕の下に敷いて寝てごらん、面白い夢が見られるぜ」
ギヘヘ、と老人は笑った。
764 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:18:42.91 ID:vUjLd5h1O
すっかり日は沈み、時刻は六時。とくにやることなないぼくは、もう寝ることにした。
ふと勉強机に目をやると、そこには老人に貰った包丁が置いてあった。それを
手に取り、枕の下に突っ込むと、ぼくは電気を消して瞼を閉じた。
766 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:21:25.58 ID:vUjLd5h1O
ぐるぐるぐるぐる回る回る。僕の視界がぐるぐる回る。螺旋階段がぐるぐる回
る。紫色がぐるぐる回る。ここは、どこだろう。
上下感覚がイマイチ掴めないまま歩くと、僕の勉強机があった。もちろん包丁
もその上に、置いてあった。
包丁を手に、さらに奥まで歩を進める。さっきから視界にちらつく紫色や、螺
旋階段がうざったい。
いらいらが募るなか、ぼくはまた勉強机を見つけた。ただし、ぼくの物ではな
い。
引き出しを開けてみた。上から一段目にアルバムが入っていただけで、あとは
何も無かった。
しょうがないので、ぼくはアルバムを開いた。瞬間、ぼくの目の前が真っ白に
なった。
767 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:24:28.59 ID:vUjLd5h1O
ざっくざっく。雪を踏み締める音が聞こえる。
ざっくざっく。それも沢山、五つくらいかな。
音が止まったので顔を上げると、みるからに意地悪そうな子どもが、ニヤニヤ
しながらぼくを睨んでいた。そのニヤニヤした目つきにデジャビュを覚え、ぼく
は記憶の海に潜った。
そうだ。彼らは、ぼくが、しょうが、く、せいの、と、き、の。クラスメート
だ。
768 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:27:02.58 ID:vUjLd5h1O
なるほど。ぼくは木に縛りつけられている。あのときと同じ状況だ。というこ
とは、あのときと同じことが……。
(・∀ ・)「君はいじめられっ子の分際で俺に反抗した。なぜだ」
そうだ、休み時間の雪合戦で、彼に、雪を、ぼくが、当てた。だから彼は怒っ
ているのだ。
('A`)「偶然なんだ、ごめんなさい」
ぼくの顔に雪玉が投げられる。
(・∀ ・)「偶然? そうか、偶然か」
ハハハ、と彼は笑い、ぼくの腹に蹴りをかました。
(・∀ ・)「悪いね、『偶然』当たってしまったよ」
彼がカラカラ笑うと、彼の後ろの取り巻きもカラカラ笑った。このあとぼくは
解放されたのだけど、左腕を折られてしまった。
770 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 20:29:27.01 ID:vUjLd5h1O
ああ、憎い。
気づけば、ぼくは籠の中にいた。確かな憎悪を胸の中に潜ませて。
ああ、憎い。
気づけば、木が籠の中にあった。
ああ、憎い。
気づけば、籠の中の木に彼が縛りつけられていた。ぼくの手には包丁。彼の体は木に。彼、木、包丁。枯
木、包丁。枯木包丁。
ぼくは涙を流しながら助けてと哀願する彼の前に立ち、腕を振り上げた。
835 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 23:05:17.27 ID:vUjLd5h1O
けだるい体を起こし、ぼくは窓の向こうを見る。空が綺麗に焼けていた。
不登校だったぼくが学校に行きたいと急に言ったので、親はかなり驚いた。そ
して、涙を流して喜んだ。つらいな。
ぼくは小さく「ゴメン」と呟き、家を出た。
おそらく、あの夢は試練だったのだろう。なんの試練かと聞かれても、うまく
は答えられないけど。
結局、ぼくは彼を刺さなかった。代わりに、自分を刺した。彼が、憎かったか
ら。
839 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 23:10:24.13 ID:vUjLd5h1O
クラスメートは笑顔でぼくを迎えてくれた。久しぶり、とか、アメリカ
旅行はどうだった、とか、みんな優しかった。
「おい」
首を捻ると、そこには彼がいた。ちょうどいい、ぼくも彼には用があったんだ。
(・∀ ・)「ちょっとこい」
彼に屋上へ連れていかれた。ぴゅうおう、風が頬を撫でる。
841 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/02(火) 23:14:04.20 ID:vUjLd5h1O
(・∀ ・)「悪かったな」
彼は開口一番、謝罪した。
('A`)「どうして謝るの?」
ぼくは彼に問う。どういう心変わりだ。
(・∀ ・)「なんか、変な夢を見てさ。ちょっと考えたんだよ。おまえが何を考
えていじめられていたのか」
彼はぼくに背をむけ、言葉を紡ぐ。
(・∀ ・)「そしたらさ、スゲー胸糞悪くなって、申し訳なくなっ……」
今わかった。あの夢は、ぼくの考え方を変えるため試練だったんだ。彼の背中
から生える包丁を眺めながら、ぼくはなんとなくそう思った。
('∀`)「『偶然』刺さってしまったよ、ごめんね」
彼は出血多量で、死んだ。
842 :
愛のVIP戦士@ローカルルール議論中:2008/12/02(火) 23:17:37.52 ID:vUjLd5h1O
商店街の一角に、それはいる。悪魔か天使か、はたまた神か。彼は今日も、不
思議な道具を悩める子羊に渡すのだ。
じゅうにがつふつか
ごうごうとうなるかぜ
くるしいよ、かぜ
いきたくない、いきたくない
きがくるってしまうよ
うつたどくお