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('A`)独り言のようです


546 ::2008/07/06(日) 20:30:38.34 ID:hGJ46Dm2O

そこは絵に描いたような弱肉強食の世界だった。
強いものが弱いものを肉とし食する、無慈悲な原始のルールが支配する大草原だった。
その大草原の中心に動物がいる。
喉と腹を裂かれ横たわるヌーと、その腸を悠然と貪るライオン、
そしてそれらを遠巻きにするハイエナたち。
強弱の差は歴然としていた。
百獣の王と呼ぶにふさわしい堂々たる体躯のライオンは己が仕留めた弱者の肉を悠々と食し、
隙あらば肉を掠め取ろうと機を窺うハイエナたちは、
ライオンに一睨みされるたびに怯えたように後ずさる。

('A`)「美しい光景だと思いませんか? この完璧なまでの弱肉強食。
    人間社会では滅び去った、完全にフェアな優勝劣敗」

川 ゚ -゚)「さぁ。私には人間社会との違いなど見い出せない。
     強きが支配し弱きは淘汰される、何一つ違いの無い世界だ」

恍惚とした表情で呟く青年に、女は抑揚の無い声で応じた。
彼らの目の前でまた一匹の弱者が狩られた。
無謀にも肉の強奪を試みたハイエナが、ライオンの鋭い爪に顔を抉られのたうち回っている。
片方の眼球が潰れ唇が裂け、血が顔の半分を染めてなお滴り続ける。
青年はその光景をやはり恍惚とした表情で見つめていた。

('A`)「人間社会とはまるで違います。
    弱肉強食、それすなわち生きるべき個体が生き死ぬべき個体が死ぬ。
    故に常に均衡が保たれているのです。
    しかし人間社会は死ぬべき個体を生かすため生きるべき個体が命をすり減らしている、
    その結果がこの歪みきった社会なのですよ」



547 ::2008/07/06(日) 20:31:49.05 ID:hGJ46Dm2O

川 ゚ -゚)「過去の実績にとらわれ、今この瞬間に発揮できる能力を軽視している、
     と言うことかね?
     我々には成長や衰えというものが無いのでな、いまいち実感がわかん」

女は滑るように一匹のハイエナの元へ移動すると、無造作に人差し指を突き出した。
女の指は音も無くハイエナのこめかみに突き刺さり、
手首を返すとハイエナは静かにそして唐突に事切れた。

川 ゚ -゚)「君が望むなら私の力を貸し与えよう。
     君が不満を持つ社会を破壊するには充分過ぎる力だ」

女は自らの力を誇示するかのように青年に目を向けたが、青年は驚きも喜びもしない。
かわりに失笑し、ライオンの元へ歩み寄った。

('A`)「私は世界を変えることなど望んではいません。遅かれ早かれ人間は滅びるのですから。
    これは遺言、言わば独り言です。
    私は人間として死ぬのではなく、より生物らしい死を望んでいるのです。
    あなたへの願いはただ一つ。ここで、あなたと別れることです」

青年はヌーの上に腰を下ろした。
青年の目と鼻の先には肉を咬み千切る巨大な顎がある。

川 ゚ -゚)「叶えよう、その願いを」

女は音も無く浮き上がり、そのまま天高くへと昇っていった。
その姿が太陽と同化するまで見送った青年が視線を落とすと、
初めてライオンと視線が交わり、お互いがお互いの存在を意識し合う。
そしてその瞬間、青年は肉と化した。
微笑みを浮かべ、遠くに故郷を見ながら。


[ 2008/07/06 20:34 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
一つの真理
[ 2009/09/06 12:43 ] [ 編集 ]

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