FC2ブログ










( ^ω^)はプログラマーのようです


803 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:21:24.49 ID:yjUG9qzF0

完成したんで投下します

お題
スロットマシーンAM-7
ラッキーセブンシュール
ロシアン通勤



805 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:22:34.13 ID:yjUG9qzF0

カクテルパーティー効果をご存知だろうか?
大雑把に言えば、どんな喧騒の中にいようと自分が興味のある音、
関係のある音だけは聞き取ることが出来ると言う聴覚効果の事を言うらしい。
みんなも体験したことがあるのでは無いだろうか。
僕? 勿論ある。と言うより、現在体験している最中だ。

( ^ω^)はプログラマーのようです



807 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:23:37.54 ID:yjUG9qzF0

パチンコ屋というのは、それはそれは酷いものだ。
遊戯台から鳴り響くサイレンの音で話し声は聞こえないし、
絶えることなく立ち上る紫煙で空気は悪いし。

それでも連れの声は聞こえるから不思議なものだ。
固く結ばれている僕らの絆が現実世界に具現化して
会話を助けているとしか思えないほどに。

('A`)「お、綾波演出」前言撤回。やっぱりこいつは親友でも何でもない。
( ^ω^)「こっちは何もかからんお……」



808 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:25:00.92 ID:yjUG9qzF0

('A`)「こりゃ2桁連は来るだろ。いやー、これだからフリーランスはやめられない。
仕事が入ってない時はこういう熱いイベントに朝から並べるし」
周りの台を見回しても当たっている台はない。
それどころか熱い演出の一つすら入っていない台もあった。
座席には金髪の青年、憤怒と絶望が混じった表情で遊戯しつづけている。
わざわざ朝一から並んでド嵌りか……ご苦労様な事だ。
僕らはまだプログラマーという職があるから良いが、
彼の風貌から判断するにどう頑張ってもプーにしか見えない。
彼もまた、熱いイベントと信じて今日と言う日を迎えたのだろう。
頑張れ、と背中に声をかけたくなった。



809 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:25:55.10 ID:yjUG9qzF0

( ^ω^)「……やめだお。これ以上やっても金食われるだけだお。ちょっと台見てくるお」
('A`)「……ん? おお、そうか。まあ駄目でも落ち込むな。後で飯奢ってやるから」
河豚刺しでも奢らせてやろうか。

台から離れ向かったカウンターでドクター・ペッパーを買う。
この2時間で3万も飲み込まれてしまった。こんな精神状態じゃ拾える小役も拾えない。
生暖かく自己主張をするドクター・ペッパー片手に台選びを始めた。



810 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:27:05.14 ID:yjUG9qzF0

そこは、ぽっかりと口をあけていた。人に溢れる店内で、そこだけが静かに佇んでいた。
どんなに古い機種でも一人二人は打っているものだ。それがイベントの日となればなおさら。
それなのにこの空きよう。閑古鳥が鳴くとは正にこのような事を言うのだろう。
( ^ω^)「スロットマシーン……AM-7?」
聞いたことのない機種だ。新機種なのだろうか。
いや、それにしては汚れすぎている。とにかく奇妙な台だ。
僕がそのスロットで遊ぼうと思ったのは、その奇妙さに惹かれたからだと思う。
その魔力のような奇妙さに。



812 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:27:49.97 ID:yjUG9qzF0

座席座ったところで僕は目を見張った。
( ^ω^)「なんだお、このリール……」
普通のスロットはリールの目にチェリーやリプレイがあるはずだ。それが一つも無い。
リールの目には1から9の数字が並んでいるだけだった。
「本当に、何なのだろう」疑問は膨らんでいたが、
好奇心と……先ほどの負けで僕の不安定になった精神状態はそれを特に問題としなかった。
とにかく打ってみよう。



813 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:28:53.52 ID:yjUG9qzF0

一回転目。そろった目は1、2、6
メダルが10枚出た。
( ^ω^)「……は?」
どういうことだこれは。全く訳がわからない。処理系にバグでも入っているのか?
混乱した頭で二回転目。3、5、9
メダルが8枚出た。
ちょっとまて。どういう原理なんだこれは。
最初に出た目。1、2、6と次に出た目3、5、9には何の相関性も無い。それなのにメダルは出る。
……もしかしてこれは、稼げる台なのではないだろうか。
そう思って回した三回転目は2、4、8
メダルが15枚出た。
( ^ω^)「おっおっおっ」
やっぱりそうなのだ。どういう仕組みかは全く理解出来ない。
しかしこれは「回せば回しただけメダルが出る」機種なんだ。
もしや、今日のイベントはこれの事なんじゃないか。いや、兎に角打とう。負けを取り返さないと。
この台に誰も座っていない理由、それを考えることも無く僕は回しつづけた。



814 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:29:52.46 ID:yjUG9qzF0

三百回転を過ぎた頃だった。
その頃には僕のメダルは3600枚をオーバーし、この店の換金率なら負け分の半分は取り戻すことは出来ていた。
この調子なら直にでも勝ちに転じる。そう思った瞬間。
7、7、7
( ^ω^)「おっ、本日初の大当たりだお!」
これほど奇妙な機種だ。
連荘機能があるかもわからないが、これで一気に稼ぐことが出来るのは事実だろう。
何枚の金貨が出てくるのか。期待に胸膨らませていたその時。
( ^ω^)「おっ?」
気のせいだろうか。いま少し台が動いたような。

疑問は直に氷解した。



815 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:30:48.18 ID:yjUG9qzF0

「グワォォォォォォォオオオオオ!」
( ^ω^)「う、うわぁぁぁぁ」
目の前の台から叫び声が響き渡り、台に手足が生えた。
右手は鋭い爪が生えたような、左手は鋭利な槍のようなフォルムだった。
そのどちらもがあまりに機械的な形をしていたから、僕は驚きの中に一種の納得を覚えた。
しかしその納得は劫火の中に落ちた一滴の水であり、脳が認識するより早く驚愕に塗りつぶされた。
慄いてあとずさると、後ろの台にぶつかる。台? パニックに陥った頭に、奇妙な感覚を覚える。
椅子はどこにいった?
振り向くと、そこには目の前にみた怪物と同じ怪物が居た。いや。そこだけでない。この列全てに同じ怪物がいた。
総勢20以上の異形が僕に向かってくる。あるモノは右手を振りかざしながら、あるモノは左手を構えながら。
そこに至って僕の頭は、ようやく一つの命令を繰り出した。
逃げろ。
逃げろ。逃げろ。逃げろ。逃げろ。



823 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/12(水) 23:56:34.83 ID:yjUG9qzF0

気づいた時にはパチンコ屋の外に居た。途切れた息。ガクガクと振るえる膝。
地面が揺れている気がする。トランポリンの上に立っているようだ。崩れ落ちてしまいたい。
「おい」
( ^ω^)「ひぃっ!」
慌てて飛びのく。振り向くと其処にはあっけに取られた表情のドクオがいた。
( ^ω^)「ド、ドクオかお……」
('A`)「お前どうしたんだ? すげー絶叫が聞こえたと思ったらお前が必死の形相で走って外に出てくし。
追いかけてきて声かけたら、すげー勢いで飛びのくし」
( ^ω^)「い、いや。その……」声にならない。一体何といえばいいのか。
何も言い出すことの出来ない僕を見て、何か悟ったのだろう。ドクオが呆れたように、しかし優しげな響きで言った。
('A`)「詳しくは聞かん。とりあえず、飯でも食いに行こうや。奢るぜ。今日は店じまいだ」
この日ほどドクオの優しさが身に染みた事は無かった。



825 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/13(木) 00:00:57.90 ID:Vb5F2OJe0

( ^ω^)「美味しかったお……」
('A`)「やっぱりスロットの後はラーメンだよな」
行きつけのラーメン屋でラーメンを啜った後、僕らは家路に着いていた。
空には夜の帳が降りかけている。街には喧騒と会社帰りのサラリーマンが溢れている。
何時の間にこれほど時間がたっていたんだろう。
('A`)「しかしそろそろ仕事とらないとなぁ」
( ^ω^)「そうだおね、流石に1ヶ月も働いてないと体が鈍るお。金もなくなりかけてるし」
('A`)「今日は大負けだったからな、お前」ぐうの音も出ない。
何となく悔しくなって、顔を背ける。そこには疲れきった様子で俯きこちらへ歩いてくる中年の男性が居た。



826 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/13(木) 00:03:47.33 ID:Vb5F2OJe0

体中から負の感情が、それは怒りではなく恐怖や絶望と言った類の感情に見えた、溢れているかに見える男性だった。
彼と行き違う時、おびえたような声で紡ぎだされる弱音を聞いた。
「明日も会社だ明日も辛い上司にいびられる後輩にバカにされる」
その声を聞いたとき、はっとした。
あの怪物の正体はわからない。しかし、今道を交差した彼を怯えさせているのもあの怪物なのだろう。
人の心にある本能的な恐怖を呼び起こす存在。
それが彼にとっては会社というものであって、僕にとっては人生を脅かすものなんだろう。
そう思うと気が楽になった。足取りが自然と軽くなる。
雰囲気で気づいたのだろう。横にいたドクオも軽く笑みを浮かべた。



827 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/13(木) 00:06:00.03 ID:Vb5F2OJe0

これから先も僕の人生は誰かに、何かに脅かされつづけることだと思う。
それは僕に仕事を委託した人かもしれないし、僕の大切な人を奪う予想も出来ない災害かもしれない。
若しくは、想像外の存在であるかもしれない。
だけど僕はどうにかやってそれを乗り切ることが出来ると思う。
友の力を借りるかもしれない。逃げ出すかもしれない。
しかしそれでも、生き延び人生を守りきるだろう。
そしてまた、今日のように美味いラーメンを食ってまた明日を夢見るのだ。
空を見上げる。一陣の星が流れた。今流れた星に誓おう。
騒がしい街の中でドクオの声が聞こえた。
そうだ、例え何があっても僕は光を見つける。カクテルパーティ効果なんだ。




[ 2008/11/13 22:56 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
待遇差が激しい職種
[ 2009/10/19 21:20 ] [ 編集 ]

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/746-44f5455e