FC2ブログ










初対面ではないようです


216 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:26:19.59 ID:GtsRKWOCO

私は彼に、なんて言おう。
おはよう?
こんにちは?
初めまして?
いや、私と彼は初めまして、ではない。
既に会ったことがあるのだから。
なら、おはよう、か、こんにちは、かな。



217 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:27:53.60 ID:GtsRKWOCO

さて。
陽は気付けば大分傾き、それでも明かりを点けない古めかしいアパートの部屋に、橙と黒のコントラストを描いている。
それは私がこの部屋の主を待つ間にも刻々と変化していき、飽きさせることはない。
しかし、ただひたすら部屋の真ん中で体育座りをしていると、このままでは――特にどうということはないが――陽が沈んでしまうのではないかと、心配を始めるとまもなくドアが開いた。



222 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:29:48.24 ID:GtsRKWOCO

(,,゚Д゚) 「……初め、まして……?」

耳障りな甲高い音をたてドアを開けそこに立っていたのは、くたびれた顔をした中年の男性。
それにわざわざ合わせたようなよろよろの背広を着て、首を少し傾げながら私が誰か問う。

ミセ*゚ー゚)リ 「違うよ、こんにちは」

手に持ったリボルバーの質感を、確かに感じながら立ち上がる。熱は既に失われていて、冷たい。
スカートに付着した埃をぱんぱんと払いながら、込められた弾丸の数を数える。あと三発。

(,,゚Д゚) 「一体……アンタ……」



223 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:31:53.62 ID:GtsRKWOCO

そこまで言い掛け、何かに気付いたように目を見開く。

ミセ*゚ー゚)リ 「やっと思い出し――」

(,,゚Д゚) 「な、なんだ……その……赤い、のは」

――――なぁんだ。
彼は気付いたのではなく、私のスカートを染めている赤色と、それの元である床を流れる赤を尋ねたのだった。

ミセ*゚―゚)リ 「そんなこと、聞かなくたって分かるでしょ?
      それとも―――その眼で確かめる?」

奥の部屋へと続く通路を塞いでいた私は、すっと体をずらし、導くように静かに、優雅に手を伸ばし指し示す。
その手の先にはもう夕日は届いておらず、踏み込まないと何も覗けはしないだろう。

(,,゚Д゚) 「……ぁ……」



225 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:34:23.74 ID:GtsRKWOCO

彼は言葉にならない声を発し、恐れるように、逸るように一歩ずつ進んでいく。

―――……彼は見るのだ。

そう考えると笑みが抑えられない。

ミセ* ー )リ 「飽くるまでひたすら眺めればいい。
      そして怯えればいい。
      愛し、愛された者を、生きる意味を喪った恐怖に溺れればいい」



226 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:37:31.39 ID:GtsRKWOCO

ついに堪えきれず、笑い声をあげようかと思ったが、次には床に倒れて天井を見ていた。
顔に鈍い痛みが遅れてやって来て、殴り倒されたことが分かる。

(#゚Д゚) 「お前……! お前が……!」

彼は私に馬乗りになり、更に一発見舞おうとする。
痛みなどどうでも良かったが、それは面白くない。
だから、私は彼を止めるために話し掛ける。

ミセ* ー゚)リ 「まだ思い出さないの?
      私はあなたを覚えていたのに」

拳が私の顔に触れる寸前に、止まる。
ようやく彼は気付いたようだ。

(,,゚Д゚) 「お前……。お前、は―――」



228 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:39:19.56 ID:GtsRKWOCO

乾いた花火のような音がした。
それは彼の腹部からだった。
するとどうだ。
彼は急に怯えた表情になり腹から血をドバドバと垂れ流しながら、開いたままのドアから出ていってしまった。
彼をこのまま見送る、という考えが浮かんだ。
けれど、やっぱり……

ミセ* ー゚)リ 「バイバイ」


229 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:41:41.99 ID:GtsRKWOCO
花火の音が夕日満ちる廊下に響く。

男はうつ伏せに倒れ、橙の夕日とけして混ざることのない赤の血を流している。
そして男は、全く身動きをしなかった。

男が出てきた部屋のドアに寄りかかり、それを満足そうに確認した少女は、部屋の中へと戻っていった。



233 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 00:58:13.58 ID:GtsRKWOCO

(* ― )

(* ∀ )

ミセ* ー゚)リ 「ふふふ」

奥の部屋には、屍が一つ。
それと―――

(*゚∀゚) 「う……ん」

可愛らしい幼い少女が一人。
彼女の服の脇腹辺りは、既に黒くなりつつある赤で染まっている。
屍には頭に弾痕が二つ。

ミセ* ー゚)リ 「おはよう、そしてさようなら」

私は少女に優しく語り掛け、静かにリボルバーの銃口をこめかみに。


パン。



235 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 01:02:02.27 ID:GtsRKWOCO

―――……薄れゆく意識の中で、私はいろいろと考えた。

(*゚∀゚)

少女の顔は、痛覚が麻痺しているのか、歪むことなく人に媚びることのない純粋な微笑みのまま、ぴくりとも動くことなく私を見ている。
こめかみから血を噴き出している私を。

そう遠くない未来、彼女は気付くだろう。
己の両親の血にまみれた孤独に、自己の中でどこまでも螺旋を描き渦巻く憎悪に。
その孤独を打ち消す術は? その憎悪をぶつける相手は?

私は前者も後者も経験してきたが、それを教える義理も必要もない。
ともあれ、私はこれで復讐の鎖から抜け出せる。

次は彼女が鎖を紡ぐ番。
また、新しく鎖を紡ぐ番。
また、誰かに鎖を渡すのだ。
彼もしたように。



237 :初対面ではないようです:2008/11/06(木) 01:04:23.64 ID:GtsRKWOCO

そして、私はもう、何も、考えなくて、いい。





初対面ではないようです 終


[ 2008/11/06 21:18 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/718-6fca5ceb