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隅っこの二人のようです


71 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 14:57:28.81 ID:GSP4p9V1O

('A`)「また来たのか」

ぶらあんぶらあんと揺れながら呆れたように言う彼。
足が地面についていない宙ぶらりんの状態だというのに、
それを苦にする様子もなく無表情なその姿はなんだか滑稽に見えた。

川 ゚ -゚)「……他に話し相手がいないからな」

('A`)「寂しい奴」

川 ゚ -゚)「お前もな」



73 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 14:59:44.79 ID:GSP4p9V1O

私は空気だ。騒がしい教室の中、いつも一人。
友達はいない。輪の中に入って行こうともしない。必要ともされない。
それでも無理して輪の中に入ろうとは思わないし、辛いとも思わなかった。

教室の隅っこで一人佇む私が、運動場の隅っこで一人佇む彼を見つけたのは一週間前。

川 ゚ -゚)「……なあ」

私が話しかけると、彼はとても驚いた顔をした。
彼の首には白くて太い紐が巻かれ、それは真上にある木の枝に括り付けられていた。



74 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:02:13.08 ID:GSP4p9V1O

('A`)「お前、俺が見えるのか」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`)「……そうか」

それから私達は色々な話をした。
彼の名前はドクオ。歳は私と同じ。
数年前にこの場所で首を吊って自殺したらしい。
どうして自殺したのかは聞かされなかったし、聞かなかった。



75 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:04:18.37 ID:GSP4p9V1O

('A`)「俺の姿を見ることができたのは、お前が初めてだ」

川 ゚ -゚)「ふーん」

(;'A`)「……もっと驚くとかしろよ」

川 ゚ -゚)「わーびっくりー」

(;'A`)「……」

私は運動場に、正確には運動場の隅っこに入り浸るようになった。
私が教室から出て行っても、帰って来ても、視線を向けてくる人は誰もいなかった。
時には彼の好きそうな物語の本を手土産に、私はドクオに会いに行った。



76 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:06:26.16 ID:GSP4p9V1O

(*゚ー゚)「あっ、この筆箱可愛い!」

プリントを回してきた女子が、私の筆箱を見て声を上げた。
普段から声をかけられることがない上にぼんやりとしていたので、必要以上に驚いてしまう。

(*゚ー゚)「いいなー、これ。どこで買ったの?」

川;゚ -゚)「あ、ああ。確か駅前の……」

ふと窓から運動場を見やる。

ドクオがいなかった。



77 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:08:42.69 ID:GSP4p9V1O

('A`)「俺、もうすぐ消えるんだと思う」

持っていた本が手から滑り落ちた。
胸を強く叩かれたような衝撃が、体の中を駆け巡っていく。

('A`)「存在感っていうのか? 今"薄い"だろ、俺」

川 ゚ -゚)「……なるほど。私がお前を認知できなくなっていたわけか」

言われてみれば、ドクオの存在感が虚ろになったように思える。
幽霊に存在感というのもおかしな話だが、そうとしか表現できない。

そして次の日の朝、ドクオはまた見えなかった。



78 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:10:27.26 ID:GSP4p9V1O

川 ゚ -゚)「しかし、些か急すぎやしないか」

('A`)「元々が不安定な存在だからなぁ」

ぶらあんぶらあんと揺れながらドクオは言う。
ここ一週間、日が経つごとにドクオが見える時間が減っていった。
ドクオは既に存在感どころか、体まで薄く透けていた。後ろの景色が見えてしまうほどに。

('A`)「なあ、今だから言うけど」

('A`)「俺、いじめられてたんだ」



79 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:12:53.18 ID:GSP4p9V1O

川 ゚ -゚)「……なんだ、やぶからぼうに」

('A`)「いいから聞いてくれ」


ドクオの話は、ありふれたものだった。

性格がお世辞にも明るいと言えなかったドクオ。
最初はクラスの不良にからかわれた。それだけだった。
しかしドクオは言い返しも、怒りもしなかった。相手は味をしめた。

水に波紋が広がるように、それはクラス中に広がっていく。


('A`)「でも俺、死んでから初めて生きたいと思ったんだ」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「お前は俺みたいになるなよ。絶対に」

川 ゚ -゚)「……ああ」



80 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:14:40.60 ID:GSP4p9V1O

私が頷くと、ドクオは微笑んだ。彼の笑顔を見るのはこれが最初で、多分最後だろう。
ドクオの体が足元からすっと薄くなっていっても、私は取り乱さなかった。

('A`)「じゃあな、クー」

ドクオは初めて私の名前を呼んだ。
笑顔を見せてくれたことも、名前を呼んでくれたことも、これが最初で最後になった。



82 :隅っこの二人のようです:2008/11/02(日) 15:17:09.50 ID:GSP4p9V1O

そういえば私はドクオの名前を一度も呼んだことがなかったな、と苦笑する。
ドクオが消えても、涙は流さなかった。彼はそんなこと望んでないだろうからだ。

(*゚ー゚)「クー! 食堂行こう!」

川 ゚ -゚)「ああ、今行く」

私は運動場の隅っこから視線を外し、遠くで手を振る友人の元に歩いて行った。


おわり


[ 2008/11/02 16:43 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
よかったなぁ、クー
[ 2009/10/17 21:22 ] [ 編集 ]

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