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( ^ω^)ブーンは運転手のようです


557 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:36:28.91 ID:If2A6CVj0

ある所に、一人のタクシー運転手がいた。

彼は決まった区間、しかも片道のみしか運転しない。

しかし、そんな使い勝手の悪いタクシーにも関わらず、
利用者は後をたたなかった。

むしろ順番待ちまでして乗ろうとする程の、
超人気タクシーだった。


('A`)「失礼します」


そしてまた一人、気の遠くなるような順番待ちを終え、
黒い革張りの後部シートへと腰を下ろした。


('A`)「ドクオです、よろしくお願いします」




Case1 「鬱田ドクオ」






558 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:38:26.18 ID:If2A6CVj0

バタンと自動でドアが閉まり、タクシーが走り出す。

しばらくは何の会話も無いままタクシーは走り続けた。

窓から見える風景は、夕日が射したかのように真っ赤に染まり、
幻想的な雰囲気を漂わせている。

('A`)「……俺は」

沈黙に耐えきれなかったのか、
男は窓から風景を眺めながら、ポツリと口を開いた。


('A`)「いじめられてたんです」

『……』

('A`)「ほら、俺って見た目もキモいし、人と上手く話せないし、
   対人恐怖症だし……オタクだし……」

『……』

('A`)「いじめられて、当然ですよね……」

『……』


またしばらくの沈黙が支配する。



559 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:41:30.13 ID:If2A6CVj0

『……違うお』

('A`)「え?」

『君はいじめられて当然の人間じゃないお』

('A`)「……」

今まで押し黙っていた運転手が口を開く。

その特徴的な語尾を付ける運転手は、
バックミラー越しに優しそうな眼を向け、
ドクオと名乗った男に語りかける。

『君は自分を、隠す事なく表現していたはずたお』

('A`)「……」

『恥じる事なく、堂々と、趣味や性格を表に出していたと思うお。
 どんな人間にも自分本来の性格や、隠そうとする趣味なんてものはあるもんだお』

('A`)「……」

『でも、人間っていう生き物はどんな生物よりも「調和」を意識するものなんだお。
 他人に合わせる、自分を押し殺す』

ドクオと名乗った少年は、うつ向きプルプルと震えている。

その様子をバックミラー越しに凝視しつつも、
運転手は喋り続けた。



561 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:43:17.91 ID:If2A6CVj0

『そんな人間達にとって、嘘偽りなく自分を表現できる人間は、とっても眩しい存在なんだお。
 本当は自分もそうなりたいのに、周りを気にしてそうはなれないから』


('A;)「……」


『人は、自分は他の人より幸せでありたい。
 他の人より上位に位置する立場でいたい。
 そう願う生き物だお』


(;A;)「……」


『だからこそ、その眩しい存在を迫害しようとする。
 そうする事によって、自分という存在を確立させたいから』


(;A;)「……でも」


『そう……君は犯したお。
 人類として、また君の世界のルールとして、
 犯してはならない禁忌を』


(;A;)「そう……俺は……俺は……」



564 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:46:07.88 ID:If2A6CVj0






『人を殺したお』






(;A;)「ううっ……」




565 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 20:49:57.22 ID:If2A6CVj0

少年は止めどなく溢れる涙を、
拭う事なくシートへと垂らす。

呼応したかのように、
窓の外でもバケツを返したかのような雨が降りだしていた。


『君はこれから、筆舌しがたい苦痛と苦悩を味わう事になるお。
 それは永遠にも違い、気の遠くなるような時間の中で、
 君を、君という存在を蝕んでいくお』


(;A;)「あっ……うっ」


『それでも、その苦悩の中でも……』





( ^ω^)「君という人間、自分を失わないで欲しいお」




(;A;)「……」



567 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 21:03:10.58 ID:If2A6CVj0

『人は植物を殺すお
 人は動物を殺すお
 人は人間を殺すお』


『自分という存在が殺されそうになった時、
 初めてその相手を殺す権利が生まれるんだお』


『だから人間は植物に殺されても、植物には罪は無いお、動物もそう』



(;A;)「……」





( ^ω^)「でも君は、君を殺そうとはしていなかったんだお」




('A;)「……」



569 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 21:08:01.20 ID:If2A6CVj0

『でも君は、君を殺してしまった。
 だから、償わなくちゃいけないんだお』


('A`)「……」


いつの間にか雨は止み、夕日がかっていた窓の外も、
雲の間から光が差し込んでいた。



('A`)「……運転手さん」

『なんだお?』

('A`)「俺……俺が俺を殺してしまう前に、
   貴方に会いたかったです」


その言葉を最後に、タクシーの中で三度の沈黙が訪れた。

しかしそれは重苦しい沈黙ではなく、
どことなくすがすがしい沈黙だった。



571 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 21:10:13.55 ID:If2A6CVj0

やがて、タクシーが目的地へと付き、
ゆっくりとタイヤの回転を止める。

そして、乗った時と同じ様に、ドアが自動で開いた。

('A`)「……行って……きます」

ドクオがそう言い、片足をタクシーから地面へ下ろそうとする。

『辛かったおね。
 君は君を守ろうとしただけなのに』

('A`)「……」

トン、とその足を地面へ着けた瞬間、

タクシーの周りの地面から、
無数の黒い影が浮き上がり、
ドクオへとまとわり付く。


;;;A`)「……」



572 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 21:12:31.00 ID:If2A6CVj0

そしてドクオは連れていかれた。


『……』


運転手はそれを見届けると、
キィ、とドアを閉めるボタンを押し。

そして来た道を、また走り始めた。





( ^ω^)「自殺、鬱田ドクオ……○、と」


次々と名前の浮かんでくる乗車名簿にペンを入れ、
次の乗車待ちの者を迎えにいく。



574 :( ^ω^)ブーンは運転手のようです:2008/10/31(金) 21:15:40.59 ID:If2A6CVj0

内藤ホライゾン

幾人もの人をタクシーに乗せ、その殆どを殺害、遺棄。
逮捕され死刑。

・死後刑務
地獄へと来た者の搬送。
乗車させた者の絶望を取り除かなければならない。

・刑期
無期限


そしてまた、ドアが自動で開いた。



( ^ω^)ブーンは運転手のようです

Case1  fin


[ 2008/10/31 23:42 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
ドックンの絶望がなくなって良かった
[ 2009/10/16 20:06 ] [ 編集 ]

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