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( ^ω^)の調査報告書のようです


56 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 01:42:41.59 ID:0tiPdoeSO

( ^ω^)の調査報告書のようです



"好きだよと言えずに 初恋は ふりこ細工の心
放課後の校庭を走る君がいた
遠くで僕はいつでも 君を探してた
浅い夢だから 胸を離れない"

~初恋・村下孝蔵~


僕は村下孝蔵という歌手が大好きだ。

若くして鬼籍に入られてしまわれたことが、残念でならない。
告別式にも足を運んだものだ。

この初恋は、彼の代表曲。

調査を終えた僕は、CDを引っ張りだし、聴いていた。


初恋、か・・・



57 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 01:46:09.58 ID:0tiPdoeSO

人探しをお願いしたいと、依頼者は言った。

30代前半、センスの良いスーツに身を包み、腕には一目で高級品と分かる時計。
ルックスもなかなかのものだ。

差し出された名刺の役職には、専務とある。
おそらくこの会社の2代目なのだろう。

不公平な神様に、心の中で軽く舌打ちをする。

話を聞くと、対は中学時代の同級生の女性。
名前と当時の住所しか分からないと言う。

しかも、対は家族一同で夜逃げ同然で引っ越したらしい。

夜逃げだとすると、足取りを追うことは非常に困難になるだろう。
行き先を示して夜逃げする人など、いるわけがない。


( ^ω^)「どうしてもと仰るのであれば、受けなくもありませんお。
でも、成功する可能性は低いと思いますお。
調査方法によっては、非常に高額になることもありますが・・・」


僕が言うと、依頼者はしばらく考え込んでいたが、お願いしますと言った。

調査方法を考え、おおよそのかかる費用を後日伝えると告げ、面談は終わった。



59 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 01:51:08.77 ID:0tiPdoeSO

その夜、事務所では会議(飲み会)が開かれていた。

('A`)「名前と夜逃げ前の住所だけ、15年も前の話・・・無理だろJK」

ξ゚⊿゚)ξ「その後にも引っ越してるかもしれないしねえ」

( ><)「偽名とか使われてたら、わかんないんです」

川 ゚ -゚)「ビールくれ」

( ^ω^)「ま、当時の同級生を手当たり次第に当たるお。
一応住所からも追ってみてお」

依頼者から卒業アルバムと同級生名簿を借り、調査に当たることにした。



調査開始から2週間経ったが、一向に手掛かりすら見つからない。

実は夜逃げ先は判明したのだが、対の一家はそこからもいなくなっていた。
その後の足取りは不明だった。

これ以上調査を続けても、見つかる可能性は低いだろう。
費用だけが掛かり結果に結びつかないのは、申し訳ない。

僕は、依頼者にここまでの結果を知らせ、調査を終了させることを提案した。



61 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 01:56:03.17 ID:0tiPdoeSO

依頼者はとても残念そうにうつむいた。
一体何が、彼をここまで思い詰めさせているのだろう。
失礼を承知で、探している理由を聞いてみた。

(´・ω・`)「・・・僕は、彼女を裏切ってしまいました」

しばらく押し黙っていた依頼者だったが、ゆっくりと話し始めた。

(´・ω・`)「中学2年生の時です。
僕と彼女は同じクラスで、仲の良いグループでした。
いつしか僕は彼女を好きになり、彼女も僕を好きになってくれていました」

押し殺され溜まっていた感情が、言葉となり、堰を切って溢れ出す。

二人は自然と距離を縮めていった。
まだ幼さも残る恋だったが、それでも二人は幸せだった。
だがその幸せは、ある日突然に終わりを告げる。

(´・ω・`)「彼女の父親の事業が失敗し、会社が倒産したんです。
その会社は僕の父の会社と取引があって、
倒産のせいでこちらにも損害が生じたようです」

当時彼は、彼女が父親の会社の取引先の娘だということを知らなかった。
彼女から聞き、初めて知ったらしい。

彼は戸惑いながらも、親と自分たちは関係ないと、彼女を勇気付けた。
親には反対されるだろうが、それでも彼は、彼女を愛し続けた。



62 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:04:40.05 ID:0tiPdoeSO

(´・ω・`)「でも彼女の家は、とても深刻な状況だったようです」

ある日突然、彼女は姿を消した。
彼女の家の事情は誰もが知っていたので、夜逃げだろうと噂された。

(´・ω・`)「すごく傷つきました。
何も言わないで去った彼女に、裏切られた気がしました。
そりゃあ言い出せなかった気持ちも分かるし、それを伝えられたからといって、
僕に何か出来るわけでもないのは分かってます」

(´・ω・`)「でも・・・悲しかった」

ここまで話すと、彼はまた黙り込んだ。
こみ上げる感情に、じっと耐えている。

僕はかける言葉を見つけられないまま、ただうつむく彼を見ていた。


(´・ω・`)「・・・でも、違ってたんです」

火を点けた煙草が灰に変わりきった頃、彼は口を開いた。



63 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:09:14.12 ID:0tiPdoeSO

(´・ω・`)「2年前です。
彼女からの手紙を見つけました」

彼女は夜逃げの前に、彼に手紙を出していた。

まだ携帯もない時代。
彼の親に電話もつなげてもらえない彼女は、わずかな望みをかけて。

だが、その望みは叶わなかった。
差出人は書かなかったが、怪しんだ彼の親が、彼に隠していたのだ。

(´・ω・`)「手紙には、最後に会いたいと書かれていました。
日にちと時間、僕らの思い出の場所を待ち合わせ場所にして」


彼女はどのくらいの間、待っていたのだろう。

待ち合わせの時間を過ぎても、その場を立ち去れなかったに違いない。

何度も諦めて、そのたび思い直して。

その時の彼女の心情を思うと、胸が痛くなった。



64 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:16:39.38 ID:0tiPdoeSO

15年という時を経て、彼は彼女の気持ちを見つけた。
裏切られたと思っていた自分が、情けなくなった。
裏切っていたのは、彼女ではなく自分だったのだと思った。

そんなことはないのだが、待ち続けていただろう彼女を思ったら、
己を責めずにはいられなかった。


(´・ω・`)「実は、ここで4社目なんです。
どこも彼女を見つけられませんでした。
お金はいくら掛かってもいい、もう一度お願い出来ませんか」


僕はしばらく考え込む。そして依頼者の目を見据え、聞いた。

( ^ω^)「もしも見つかったとして、あなたはどうするおつもりですかお?
もうずいぶんと時間が経っていますお。
彼女は家庭を持っているかもしれないお。
あなたが現れることで、彼女を新たに傷つけるかもしれないんですお?」

そこまで話した時、ドアが開いた。



65 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:21:43.59 ID:0tiPdoeSO

ツンだった。

彼女はこの事務所立ち上げ時に、一緒に配属された仲間だ。
何もない所から始まり、二人で苦楽を共にしてきた信頼出来る仲間。
その彼女が言う。

ξ゚⊿゚)ξ「別にいいんじゃん?
ブーンは感情移入し過ぎだよw
私たちの仕事は探すだけ、でしょ?
その後のことは依頼者さん次第だよ。
それに、もしブーンが依頼者さんの立場だったらどうする?」

( ;^ω^)「んー・・・会いたい・・・かお」

ξ゚ー゚)ξ「でしょ?
たしかに新しく傷つくかもしれないよ。
でも、すれ違ったままよりいいと思う。
私なら、本当のことを知って傷つきたい」

・・・ツンには、いつも上手く丸め込まれる。
でも、ツンの言う通りかもしれない。
感情移入し過ぎてしまうのは、僕の悪い癖だ。

そう考えていると、依頼者が言った。

(´・ω・`)「僕は間違っているかもしれません。
あなたの言う通り、もう触れないでいるのがいいのかもしれない」

(´;ω;`)「でも、会いたい。会いたいんです!
・・・僕の初恋なんです」



66 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:31:05.32 ID:0tiPdoeSO

彼は泣いていた。
こんな純粋な想いを、ドラマや映画でなく現実で見せられるとは。
その涙は、僕の心を強く揺さぶった。

( ^ω^)「・・・見つかる可能性は変わらず低いままですお。
無駄足に終わることを覚悟していただけますか?
それでも良ければ、僕なりに全力を尽くしますお」

そう告げると、彼は構いませんと言い、頭を下げた。

希望がつながったことが嬉しかったのだろう。
最初の落ち込みを忘れ、憑き物が落ちたかのような顔で、彼は事務所を後にした。

仕方ない。
本部には最小限の費用での続行を伝えておいて、
内緒で空いてる人員を全て投入するとしよう。

ξ゚∀゚)ξ「お人好しだねえ」

ツンが笑う。

( ^ω^)「・・・そう仕向けたのは誰だお。
だいたい、盗み聞きするんじゃないお、まったく」

また丸め込まれてしまった。
くすくす笑うツンの頭を軽く小突いて、席に戻る。

ξ゚ー゚)ξ

まだ笑ってるお・・・



67 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:36:26.32 ID:0tiPdoeSO

調査のやり直しだ。
もう一度洗い直しすることにした。
行き詰まった時の基本だ。

そういえば、仲の良いグループって言っていたな。
依頼者以外にも、夜逃げを伝えていたかもしれない。
対といちばん仲の良かった友達を、当たってみることにしよう。


依頼者に聞いた人物には、一度話を聞いていた。
何も知らないと話していたが、警戒していたからだろう。
事情を話せば、もし何か知っていたら教えてくれるかもしれない。



果たして、予想は当たった。
僕たちを借金取りか何かと疑っていた彼女は、口を閉ざしていたのだ。
必死な思いで説得すると、彼女は答えてくれた。

対と彼女は、7年前まで交流があった。
たまの手紙のやり取りが主だったが、十分だ。
取りあえず7年前の住所が分かる。

僕とツンで、手紙に書かれた住所に向かうことにした。



69 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:40:33.92 ID:0tiPdoeSO

車で3時間ほど走り、手紙の住所に着いた。
家族向けのアパートだった。

7年前だ。もう引っ越しているかもしれない。
そうじゃなくても、結婚などで家を出ている可能性もある。

だが他に手掛かりがない以上、当たってみるしかない。


郵便受けには、対と同じ名字が書かれていた。
俄然気持ちが色めき立つ。

偶然同じ名字なのかもしれないが、対の家の可能性が高くなった。
しばらく張り込んで、様子を見よう。


アパートの入り口にビデオを向けて、注視する。

ξ´¬`)ξ「・・・zzz」

ふと隣を見ると、ツンが爆睡していた。

( #^ω^)“・・・ぶちころすお”



71 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:47:39.81 ID:0tiPdoeSO

対の部屋と思われるドアが開いた。
ビデオをズームし、出てきた女性を収める。

年齢的には合っている。無駄を省くため、早速この映像を依頼者に見せよう。
年数は経っているが、本人か別人かくらいはわかるはずだ。

僕はその場で依頼者に電話し、事務所で落ち合うことにした。


(´;ω;`)「ああ・・・」

彼は泣いていた。
ビデオに映る女性は、正に彼が愛したその人だった。

様々な想いが絡み合いこみ上げた涙に、
思わずもらい泣きしそうになるのを堪え、煙草に火を点ける。

( ^ω^)「・・・では、これで調査終了でよろしいですかお?」

彼はまだ泣きながら、しかしこれ以上はないだろうという笑顔で、
何度もうなずいた。

ξ゚ー゚)ξ「後はあなた次第です。
どうなるかは分かりませんが、頑張ってください。
心から応援しています」

ツンが依頼者に言った。

彼は声にならない声で、ありがとうございますと繰り返した。



72 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:52:57.49 ID:0tiPdoeSO

15年前に止まっていた時間が、今、動き出した。

遅すぎたかもしれない。
忘れたままの方が幸せだった結果が、待っているかもしれない。

それでも彼はこの瞬間を望み、そしてそれは叶った。

ツンの言う通り、後は彼次第だ。

せめて、祈ろう。
この純粋すぎる初恋に。



ξ゚∀゚)ξ「んー、よくやったなあ~」

依頼者が事務所を去ると、大仕事をやり終えた後のように
満足気にビールの栓を開け、笑顔で言うツン。

少々釈然としないが・・・まあいいか!
素直に乾杯しよう。
他のみんなが帰ってきたら、祝杯だ。



74 : ◆1/33.L9V1A :2008/10/15(水) 02:55:12.59 ID:0tiPdoeSO

村下孝蔵の優しい歌声が事務所に響く。

"好きだよと言えずに 初恋は ふりこ細工の心
放課後の校庭を走る君がいた
遠くで僕はいつでも 君を探してた
浅い夢だから 胸を離れない"


初恋、か・・・
僕も、初恋の人に会いたくなったなあ
今頃どうしてるんだろう

そんなことを考えていると、見透かしたようにツンが言う。

ξ^ー^)ξ「何浸ってんの?キモッw」


( #^ω^)“・・・ぶちころすお”


[ 2008/10/15 20:25 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
Yes,we can !
[ 2009/10/05 23:04 ] [ 編集 ]

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