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夜、(ようです)


457 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:04:23.97 ID:GYkEsDqyO

やあ、みんな案外怖い話のストックってあるもんなんだなあ。
もう話してないのは僕だけか。
困ったなあ。あいにく僕はみんなのように心霊体験をしたことがないんだ。
幽霊なんて見たことないし、ましてや話したことなんて皆無だ。
こういった夏の風物詩である怖い話大会に参加できないのは無味乾燥なものだね。


でも、みんなが話したのに僕だけありません、ではつまらないだろう。
だから話したいと思うんだ。いや、そんな期待した目で見ないでくれ。
さっきも言ったように僕は幽霊を見たことないし話したこともなければ触ったこともない。
僕が感じた恐怖が君たちに伝わるかどうかわからないし、伝わってもあまり怖くなくて拍子抜けするかもね。
まあ、それならそれでしょうがない。じゃあ、話すよ。



458 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:05:20.12 ID:GYkEsDqyO







夜、(ようです)










460 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:07:28.25 ID:GYkEsDqyO

僕が大学一年の時――まあ去年だね。
僕の趣味は旅行なんだ。
とはいっても普通列車を乗り継いでふらふらするだけなんだけどね。
大学の夏休みは長い。バッグ一つ持って海外に飛んじゃう人も多いけど、あれバカだよ。正直な話。
日本のこともロクに知らない癖にね。
え? ツンは去年イタリアに? ……。


――えーおほん。
とにかく、僕は日本国内を旅するのが好きなんだ。
特に、奈良とか京都とかその辺。
歴史深い情緒溢れる町が好き――なのかな。
実際歴史にあまり興味はないんだけれど。



461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:09:18.44 ID:GYkEsDqyO

僕の旅行は無計画だ。
事前に宿をチェックするだとか、時刻表を確認するだとかはしないことにしてる。
だってその方がイレギュラーがあって楽しいだろう?
まあそんなのだから野宿してホームレスと仲良くなったり、実業家に拾われて一夜を豪華な屋敷で過ごしたこともある。
かと思えば若者たちにおやじ狩りされたこともあったな。
金? 渡したさ。だってあいつ等金属バット持ってるんだ。頭を割られちゃたまらないね。



462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:12:20.99 ID:GYkEsDqyO

まあ、そんな感じでどことも分からないところに行ったんだ。
いつものごとく、宿の予約はしていなかったから野宿だ。
慣れたもので、そこら辺のホームセンターで安売りしてた寝袋を買った。
なかなか田舎だったから、探すのには苦労したよ。
その時僕が行った所は田舎も田舎、田んぼが一面に広がった所だ。
民家もまばらにしかないような所だ。
まあ、野宿するにはちょうどいいんだけれど。



463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:13:28.83 ID:GYkEsDqyO

道からちょっと外れたあぜ道で寝ることにした。
蛙がうるさかったよ。ちょうど今ぐらいだったな。夜でも暑かった。熱帯夜だったね。


げこげこ。げこげこ。


そりゃあもちろん、眠れなかったさ。もともと寝つきがいい方でもないしね。
僕は立ち上がった。眠れなくても問題ないかな、と思ったんだ。
徹夜の経験なら何度もあるし、大した苦にはならないと踏んだんだ。
僕は暇をつぶそうとした。
でもさっきも言った通り、何もない田舎だ。
辺りには蛙の鳴き声だけ。


げこげこ。げこげこ。



464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:15:35.64 ID:GYkEsDqyO

ふと、近くに山があるのが見えた。
山というのもおこがましい高さだったけどね。
大きい丘ぐらいの感じかな。
でも、周り360度は見渡せそうだった。
田舎の夜景が綺麗とは思えなかったけど、登ることにした。


登るのは楽だったよ。さっきも言ったけど、大した高さじゃなかったし。
僕は蛙の鳴き声を聞きながら登頂に成功したんだ。


げこげこ。げこげこ。





468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:17:45.66 ID:GYkEsDqyO

頂上からの景色は思った通り、というか想像以上に暗かった。
深夜だったし、民家の明かりすらなかった。
天気は曇りだったから星明かりも月明かりもなかったしね。
まるで僕だけが闇の中にポツンと取り残された感じだったよ。


頂上はちょっとした公園のようになっていた。
流行っているとは思えなかったけどね。
公園の中心には大きな石があって、それを取り囲むように4つのベンチ。
更にそれを囲むように最低限の遊具があった。


中心の石に興味が湧いた僕はそれに近づいていったんだ。



469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:20:16.24 ID:GYkEsDqyO

それは、この地域の守り神的な石だった。
暗いから説明はよく読めなかったけど、千年単位前からここにあったらしい。
僕は何の気なしにそれに触ったんだ。


しん。


正にその擬音がピッタリだった。
僕の周りにある音だとか、光だとか、公園の風景だとか、そういったものが失われてしまったんだ。
あれほどうるさかった蛙も黙ってしまった。
僕は死の闇というものの存在を初めて垣間見たきがしたんだ。


その石――千年を乗り越えた石に触れた瞬間に思ったんだ。
自分はなんてちっぽけで矮小な存在なんだろうと。
今まで僕は自分のことを何か特別な人間だと思っていたんだ。
そんなことないのにね。
その石に比べれば自分の矮小さたるや――わかるよね?



478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:51:39.79 ID:GYkEsDqyO

気づけば僕は自分の部屋にいた。
あの石や、公園や、山や、蛙や、寝袋や、まばらな民家や、あぜ道や、ホームセンターや、自分は幻だったのかもね。


でも、その出来事は僕の心の一番底にこびりついてしまったんだ。
それは決して取れはしないんだ。
僕の心の中で、あの石は永遠に存在し続けるんだ。



479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/01(水) 18:54:21.46 ID:GYkEsDqyO

( ・∀・) 「これで、おしまい」


部屋には重苦しい空気が漂う。
モララーは自分の作り出した空気の居心地の悪さに声を出した。


( ・∀・) 「あんまり怖くなかったろ?

      さ、飲もうぜ。グラス持ってくるよ」


そういってモララーはキッチンへと向かう。


( ・∀・) 「お待たせ―……と、あら?」


既にリビングには誰もいなかった。
この部屋にいた五人の男女は煙のように消えてしまった。


( ・∀・) 「仕方ないね」


そういってモララーはビールのプルタブを開ける。


夜、はまだ長い。


[ 2008/10/01 19:52 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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