FC2ブログ










('A`)物語が始まるようです…


28 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:10:08.46 ID:TxZfKNnF0

せっかくの休日をアパルトマンに籠って過ごすのも勿体無いと思ったから、街を歩くことにした。
共通玄関の扉を開けた瞬間、埃っぽく暗い空気と、太陽光で輝く空気の、その境目のにおいをかいだ気がした。
やはり引き籠るのは体によくないことなのだと痛感する。

アパルトマンの前はT路地になっている。
右手に折れれば新鮮な魚介類が手に入る大きめのスーパーマーケットへ、
左手に折れればうまいホットドックと泥水みたいなコーヒーのアンバランスなハーモニーが楽しめるカフェへ、
まっすぐ進めば人々で賑わう市場の通りになる。

どこへ行こうか。と僕は悩んだ。
どこに行きたい、という希望はない。食料品は買いこんであるし、お腹もあまり空いてはいない。
ならば賑やかな方へ行こうと思った。

つまりまっすぐ進む。
そうだ、今日はとにかくまっすぐ進んでみよう。
何か楽しいことが始まる予感がした。

その時突然、アパルトマンを揺らす大きな音がした。
位置的に言って僕の部屋の隣のギコの所だろうか。
音は一度大きくなっただけで、後は静かなものだったので、たいしたことではなかったのだろうと思った。
おおかた、起き抜けのギコが寝惚け頭をふらつかせて足を滑らせたのだろう。

そういえばギコにはこの間美味しい鮭入りのホワイトシチューを御馳走になったばかりだ。
そのお礼も兼ねて、帰り際にでも市場でお土産を見つくろおうか。



29 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:11:38.34 ID:TxZfKNnF0

(,,゚Д゚)「お、おいお前冗談じゃねえぞ、止めろゴラァ!」

( ゚д゚ )「……」

(,,゚Д゚)「黙ってんじゃねえよ。いきなり入って来て人にナイフ突きつけやがって、な、何考えてんだよ!」

( ゚д゚ )「……」

(,,゚Д゚)「な、なんだよ、言いたいことがあるなら口で言えよ」

( ゚д゚ )「すまない」

(,,゚Д゚)「はあ?」

( ゚д゚ )「私には金がない。こうやって君を脅迫するしかないんだ」

(,,゚Д゚)「何の話だよ」

( ゚д゚ )「娘が誘拐された。ひょっとしたら殺されるかもしれない。警察も当てにはならない。
     探偵ギコ、君自身が殺されたくなかったら、どうか私の娘を見つけると誓ってくれ」



32 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:12:39.65 ID:TxZfKNnF0

市場に続く長い一本道は高い空を見上げるのにはうってつけの道だ。
両側がアパルトマンや雑貨屋に挟まれていると、青い空が両側から挟まれて
見える範囲が限られてしまっているように思うかもしれないが、
しかし実際にはその区切りこそが空を高く遠く見せてくれている。

気持のいい空だった。薄い雲とからりと光る太陽。綺麗な空のスパイスはそれだけで十分だ。
こんな日は日差しを楽しみながら一歩一歩ゆっくりと歩きたいものだ。

それなのに真横をすれ違った、小太りだがどこか愛嬌のある顔立ちの男と、長く美しい髪を風に揺らせた綺麗な女のカップルは、
世界の終わりをくいとめる会議の出席者みたいな顔して深刻に何やら話し合っていた。

朝早いとは言えないが、まだ朝寝坊の人は寝床にいるような時間帯だ。
寝起きに彼らの重苦しい雰囲気を見止めた人は、とてもじゃないが縁起のいい一日を過ごすことはできなさそうだと思った。



33 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:13:45.63 ID:TxZfKNnF0

川 ゚ -゚)「ブーン……もう一度言ってくれないか?」

( ^ω^)「別れよう、と。クー、僕は僕たちの恋人関係を解消しようと言ってるんだお」

川 ゚ -゚)「朝からいきなり呼び出して何かと思えば。笑えない冗談を」

( ^ω^)「笑えなくったっていいんだお。僕は本気だお」

川 ゚ -゚)「……随分と急な話だな」

( ^ω^)「ごめんだお。ずっとずっと言おうと思っていて、今朝遂に言おうと決心したんだお。
      黙ってて、そして身勝手な話で、本当にすまないと思ってるお」

川 ゚ -゚)「理由――」

( ^ω^)「理由は、その……」

川 ゚ -゚)「――なんてものは聞きたくもないな。ブーン、君は本当に、本心から私と別れたいのか?」

( ^ω^)「……ごめんお」

川 ゚ -゚)「よし分かった。じゃあ君を殺して私も死のう」

( ^ω^)「え?」



34 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:15:05.58 ID:TxZfKNnF0

市場はやはり午前中とはいえ人でごった返していた。
朝とれた新鮮な生鮮食品などが多く並ぶ市場だ。
スーパーマーケットもいいが、市場の猥雑な雰囲気の中の買物だって悪くない。

そうだ一つりんごでも齧りながら歩こうかと思って果物の屋台を覗くと、女と屋台の兄ちゃんが言い争っていた。
すでに少しばかりの野次馬が集まっている。割って入ってまで買い物するのは骨が折れるだろう。
僕は静かに辞去したが、野次馬は増える一方だった。

まあ、市場ではたまにある光景だ。ここでぼやぼやしていたら、せっかくの休日が無駄になってしまう。



35 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:16:37.77 ID:TxZfKNnF0

('、`*川「だぁーかぁーらぁー、このりんごの傷! この致命的な汚点に対して然るべき誠意を示せっつってんのよ!
     単刀直入に言えば値引け!!」

( ・∀・)「へっ、なにが傷だよ、こんなもん汚れのうちにも入りゃしねえ! 買う気がねえんならとっとと出てってくれ!!」

('、`*川「いーやーだ! 私はこのりんごを買うって決めたの! それも定価よりも安くね!!」

( ・∀・)「なんて我儘な女だ! 人として間違ってる! しかしどんな破綻者相手だろうと、値引かんぞ、俺は絶対に値引かんぞ!!」

('、`*川「はん、市場で値切って早17年のこのペニサスさんから値引かないなんてことができると思わないことね!
     伊達や酔狂で5歳からごねて値切ってきたわけじゃないんだ!!」

( ・∀・)「ははっ! 俺だって16で店ェ持ってからのこの5年間一度も値引いたことないのがひそかな自慢よ!
     いくらあんたがごねようともこの信条は曲げてたまるかってんだ!」

('、`*川「あんた年下だったの!? だったら年長者の意見は素直に聞くものよ!?」

( ・∀・)「あんたが年長者だなんて誰が認めるかよ! ってか年長者だったら大人しく買って大人しく帰りやがれ!!」

('、`*川「何よ!」

( ・∀・)「何だよ!!」



36 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:17:46.59 ID:TxZfKNnF0

ぼんやりと歩いていたら市場を抜けてしまった。
けれどそれもいいだろう。元より目的があって歩いているわけじゃないんだ。何も買わずに市場を過ぎるのも良しだ。
僕には気の赴くまま脚の赴くまま歩いていれば、いつかは目的足りえる何かに出会えるかもしれないと言う、淡い期待があるだけ。

ふいに街を割るような、高い鐘の音が響き渡った。
この街で一番高い建物、それは何といってもほぼ中心に据えられた時計塔だ。
時計塔の長針がてっぺんをさすたびに、この鐘が鳴ると言う寸法だ。
街の住民のおおよそは、この音を聞いて行動する。僕たちは時計台を中心に生活していると言っても過言では無い。



38 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:19:33.34 ID:TxZfKNnF0

lw´‐ _‐ノv「しょぼくれー、鐘が鳴ったねー」

(´・ω・`)「そうだね。そろそろお腹減ったでしょ。市場でも行こうか?」

lw´‐ _‐ノv「いやー、それよりもこの鞄の中身を見てくれ。こいつをどう思う?」

(´・ω・`)「何これ、小さい時計? なんかいっぱい線が繋がってるけど」

lw´‐ _‐ノv「ノン! こいつはマジもんの爆弾さ。こんなナリして時計塔の一つや二つは軽くぶっ飛ばせるんだぜ……!」

(´・ω・`)「ええっ!? い、いきなり何言ってるの?」

lw´‐ _‐ノv「しょぼくれー世の中つまんないよー全部ぶっ飛ばしたいよー」

(´・ω・`)「ちょ、ちょっとシュー?」

lw´‐ _‐ノv「時計塔ももう見たくないよー親父やお袋の住むこの街を火の海に沈めたいよー」

(´・ω・`)「なんという危険思想。駄目だこの幼馴染、早く何とかしないと……」



39 :('A`)物語が始まるようです…:2008/09/25(木) 20:20:16.92 ID:TxZfKNnF0

市場を抜けてさらにしばらく歩いて、ようやく行き着いたのは河だった。
きらきらした水は滴の一つ一つが透き通るような鮮やかさで大きな流れを作っていた。
わりに大きな河で、向こう岸は見えない。つまり僕の目には空と河を分かつ水平線が映っていて、
その区切りははっきりしていて頼りがいがあるようにも、空と水が混じって世界がぐちゃぐちゃになってしまいそうな、
そんな危うさを滲ませているようにも思える。

ここが終点か、と僕は一つ息をついた。
嘆息では無いが、かといって安堵の溜息でも無い。無意識に一つ絞り出た、何の意味もなさない大息。

この川では何かとれるのかな。釣り人はいないから魚が釣れる可能性は低そうだし、
多分ホワイトシチューに入れる鮭は泳いでいないだろうと思うが、残念ながら僕は魚に関してあまりにも無知だ。
もう一度鐘が鳴ればお昼だ。河の流れを見ていると、軽く歩いて随分中身の減ったお腹もあいまって、魚が食べたくなってきた。

ざぶり、とオールが水をかく音が聞こえた。
気づくと、小舟がこちらの岸に着こうとしている。
舟を漕いでいるそいつは、僕のよく見知った顔だった。

そいつに向って大きく手を振った。おーい、とそいつの名前を読んだ。
お昼はそいつと一緒に時計塔の下のレストランで魚料理を食べようと、僕は思った。

('A`)ノシ

('A`)物語が始まるようで少しも始まらない 終わり


[ 2008/09/25 21:54 ] 総合短編 | TB(0) | CM(2)

なんという生殺し
[ 2008/09/26 14:06 ] [ 編集 ]

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん 生きてる限り物語は終わらないんよ
[ 2009/10/02 19:06 ] [ 編集 ]

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/491-47b474f7