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少年少女達の『百年祭』のようです


136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:27:32.48 ID:8y62l+L10



人類の寿命が十倍に延びる技術が開発された。



開発した科学者達は喜びに満ちた表情をして、政府にこの事実を告げた。



生命倫理上、この発明は普及しないで貰いたい。
今までの人類の歴史を冒涜する行為だ。
人間の根底からの存在意義。生命のあり方を根本から否定する技術だ。


等の理由からもちろん、延命技術に否定的な研究者は多数居た、が。


徐々に、しかし確実に情報は一般人たちに漏れて、政府はとうとうその技術を一般公表する。
技術提供を受けた全ての人間は歓喜し、技術を開発した研究者達は教科書に名を残す人物となった。
何百年も寿命が増えたのだから、天才達は専門分野の研究に研究を重ねて文明は急加速を見せた。


が、やがて代償はやってきた。




139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:29:35.62 ID:8y62l+L10

星の体積は埋まり、かつては周囲が海であった島国も人工島により現在は大陸と繋がってしまった。
一層進む大気汚染によるオゾン層の破壊、二酸化炭素濃度の上昇、地球温暖化、森林伐採。
いや、森林などもう既に存在していない。 だが人類はお得意の代用エネルギーでなんとかこの星の生命を保っていた。

回転率の悪すぎる人間たち。
人口が増えすぎたため、事件や事故の発生率は急上昇を見せたし、それによる死亡率も格段に上がった。
解決策に発展した文明を利用して、宇宙進出までしているが、到底追いつけるものではない。


上記の他殺に対して、こちらは自らの問題。
個々が持っているであろう、誰にでも引き起こされるであろう症状。

肉体に対して、精神が先に悲鳴をあげる現象は珍しくない。 寧ろ通常だ。
気が狂う、人生に飽きる、人間関係が疲れた、何百年間続くか想像も出来ない労働。
技術が開発される前でさえ、将来に不安を持つ人間が多かったと言うのに、十倍に延びればなおさらだ。

技術発表時に政府が説明した様に、肉体だけなら何年でも生き続けるのだろうが、我々は感情を持つ生き物だ。
理論上、技術を施した人間が寿命を迎えるまで上限が約八百年間。そう言われているが、データが示す事実は二百年ほどだった。

何故、四分の一なのだ、と言う質問に、ある科学者がこう返答している。
「研究の成果を身に染みて感じ始める二百年頃。
 その期間に到達する以前に、もし到達しても、すぐに自殺してしまう」と。

技術が世間一般に施されてから、天寿を全うした人間は、居ない。


これらの問題の根本的な解決策は、まだ見つかっていない、と科学者達は口をそろえて言う。



142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:31:17.66 ID:8y62l+L10

肉体に合わせて精神構造を変化させるか?

 いや、それだと活気の無い廃人が出来上がるぞ。

ならどうすればいい?

 それを今から見つけるんだ。

  我々には――八百年間も時間がある。





天才に見えた科学者達は、馬鹿の集まりで、ここまで来ると滑稽だった。



          *          *          *



145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:33:48.24 ID:8y62l+L10

――とある魔列車内――

『百年祭』

これが終了するという事は、百年間の義務教育の終了を告げるという、祭りだ。
全国の何処でも行われている祭りで、
この寿命が延びて回転率の悪くなった人類達をふるいにかける試験とでも言えばいいだろう。

祭りと言えば通常、ただわいわい騒ぐだけの物だろうが、『百年祭』の中身は全然違う。
いわば、『社会に出る権利』だろうか。 社会に出ても、使える人間を選別する儀式だ。

もう少し詳しく説明するとしよう。

九十九年間。
かつての人類であれば、産まれてから天寿を全うして死ぬまでに、八割以上の人間が死に至っているであろう年数。
その全てを、勉強に使う。 これは『義務』だ。

覚える出来事は膨大にあるし、現在進行形で広がり続けて加速する文明を学ぶ時間も、十分あった。
義務教育を終えれば、すぐに社会に出て働かなければならない。 つまり、百年間の間に社会に出る準備をしなければいけないのだ。
義務教育以外で学習する事はほとんど無い。 なので、百年間で覚えた知識に死ぬまで頼ると言ったことも珍しくない。

小学生ぐらいの体系の人間が、成熟した肉体を持つ体系の人間と変わらない、知能を持ってることになる。
会社では優秀なエリートの子供が、部下の中年男性を顎で使うようになっていても何ら不思議ではない。
類稀ではあるが、そういう会社も存在している。

義務教育とはいえ、個々に差が出るのは当然で、現在人間で溢れている社会は、使えない愚図を必要としない。
しかしやはりこの教育は『義務』なので、途中退学は許されない。
それではまったくその存在を必要としない人間たちをどうするのか?

解決策が、義務教育卒業を迎える百年目に行われる、『百年祭』である。



146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:35:31.04 ID:8y62l+L10

( ^ω^)「ほら、見るおドクオ! これがあの有名なバベルの塔だお!」

重層構造をした甲冑を装備して飛び跳ねるため、胴体を覆う甲(よろい)と、
現在は背に垂れている――頭にかぶる冑(かぶと)が接触しと音を立てる。
背には大柄な彼の体の横幅の倍ほども大きい、鎧と同じ色の汚れ一つ無い純白の白い盾が固定されていた。

がしゃがしゃ、と鉄同士が接触する音が列車内に響く。

座席の背もたれに体重を預けて列車の窓から、ただ蒼いだけの空を見続ける少年に向かって、聖騎士風の男が声を発する。
窓から空を見続ける少年は、真っ白な聖騎士風の男とは正反対の服装をしていた。
軽装にも程がある軽装。 黒色無地の長袖シャツに藍色のジーンズ。 まるで部屋で寛いでいるかのような服装だ。

正反対なのは顔も性格もだった。

列車内にもかかわらず鎧を装備している少年はいつも笑っているような、
愛嬌のある顔の造形をしていて、誰にでも分け隔て無く接する性格をしていて。

ドクオと呼ばれた、窓から空を見ていた少年はいつも不健康そうな、
一歩間違えれば犯罪者と間違えられるような顔の造形をしていて、
親しく無い人物とは、自ら話しかけることがほとんど無い、面倒事の嫌いな性格をしている。

('A`)「知ってるっつーの……俺も今見ていたところだよ」

古代に存在していたといわれる伝説上の建造物、バベルの塔。
実現不可能な天に届く塔を建設しようとして、崩れてしまったといわれているが、現在の塔は――、



149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:37:49.26 ID:8y62l+L10

( ^ω^)「おー! やっぱ高いお!」

('A`)「八十ぐらいの時に修学旅行で見たが、何度見ても高いな」

( ^ω^)「地上の門から見上げたら頂上が見えないから焦ったお」

('A`)「まぁ現にこうやって雲よりも高いんだけどな」

( ^ω^)「文明は凄いおね」

('A`)「あぁ、凄いな。 でもそれよりなブーン……」

( ^ω^)「何だお?」

('A`)「甲冑、脱げよ」

おぉ……、とよく分からない言葉を残してブーンと呼ばれた少年は何処かへ行ってしまった。

少年達の現在地は、魔列車内部。 そして、雲の上。
外見が紫一色で彩色された列車の形を成した乗り物は、空に敷かれた目に見えないレールの上を進む。
この魔列車には『VIP学園』に籍を置く少年少女達が乗車しており、『百年祭』が開催される島に到着するまで各自各々暇を潰している。


そろそろ、『百年祭』の内容の説明をしておこう。



152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:40:08.73 ID:8y62l+L10

だが、その前には、まず現在の文明の状況から離さなければならない。
加速し続ける文明は、一方向だけにではなく、枝分かれして様々な変化を星に齎した。

使えるはずの無かった、妄想上だけの術式であった『魔法』が使用が可能になり、
出来るはずの無かった、空想上だけの行動であった『武術』の行為が可能になり、
存するはずの無かった、夢想上だけの生物であった『龍族』の存在を可能にした。

つまり、現在この星の世の中は――

魔法により空飛ぶ列車があったり、
自らの腕に炎を宿したり、
桜色の龍が人間を背に乗せて運んだり、と。

誰もが一度は夢見たことのあるような世界に変わっていた。


先程も記した通り、現在世界は、星は、宇宙は、人間で溢れている。
個々同士競い合う姿勢は人口が増えたことによってさらに切磋琢磨して、文明をさらに発展させる。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとあんたウザいわね! さっさと甲冑脱ぎなさいよ!」

( ^ω^)「嫌だお! 何が起こるか分からないからブーンは絶対脱がないお!」

声のする方向に視線を向ければ、先程の大柄な少年が、金髪の少女に怒鳴られていた。
少女の容姿はとても可憐で、まるで西洋人形の様に精巧な顔の造形をしていた。
二つに結った金色の髪の毛は、縦にウェーブしている。



153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:42:20.10 ID:8y62l+L10

耳を劈く耳障りな怒声。 反発する少年の大声。 冷やかな周囲の目線。
がしゃがしゃと音を立てる少年の甲冑。 立ち上がり揺れる少女の膝丈まである黒いコート。
この騒音と光景は、精神を統一したい者にとってそれは不愉快極まりないもので、

川 ゚ -゚)「静かにしてくれないか?」

列車の背もたれに体重を預けて腕を組み、漆黒の鞘に納められた刀を抱えている少女が耐え切れないと言った様子で口を開いた。
先程の金髪の少女の顔立ちが洋風ならば、この少女は和風だろう。 

腰まであるかと思わせる長い黒髪に、細筆で描いたかのように鋭い眉。
真っ直ぐ通った鼻筋に、艶やかな唇。 そして全てを見透かすかのような黒く透明な瞳。
白い道着に白い袴。 道着を緩めているのか、膨れる胸を押さえるためのサラシが巻いてある。

ξ#゚⊿゚)ξ「いいから脱げってんでしょ!!」

(#^ω^)「なんでブーンがあんたの命令に従わなきゃいけないんだお!!」

ぴくり、と黒髪の少女の眉が反応した。
そしてもう一度同じ台詞を、威圧する様な声色で発する。
が、当の本人達には聞こえてないようで、不愉快極まりない言い争いを繰り返していた。



155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:44:49.83 ID:8y62l+L10


一閃。


黒髪の少女が立ち上がり、刀に手を触れた。
刹那――銀色の刃が鞘から引き抜かれて少年の眼前に突きつけられた。
あまりの速度にその光景を見ていたにも拘らず首を傾げる者が多数居た。

一部の例外を残して。

川 ゚ -゚)「やめろ、目障りだ」

拒否を許さない、威厳に満ちた命令。
刃を眼前に突きつけられた少年は完全に動きが止まり、金髪の少女は青ざめている。

('A`)(――! そろそろか)

ピー、ガガガガガガ――、とノイズの音が各車両に設置されているスピーカーから流れ、少女は刀を鞘に納めて再び席に座った。
ブーンと言う少年はそのまま立ち尽くしており、金髪の少女も慌てた様子で座席に戻った。
そして、逸早くノイズの音に気が付いたドクオと呼ばれた少年は窓の外を見る姿勢を崩す事無く放送に耳を傾ける。

『ガー、ピー、ガガガガ。 何これ? ガガガ。 すげぇ接触悪いよ――ガガガピー』

ノイズと男性の肉声が交じった放送が直方体をした灰色のスピーカーから流れ出てくる。
真剣に耳を傾ける者。 苦笑を交えて友人と会話する者。 放送が流れていることすら気付かない眠ってしまっている者。



157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:46:36.20 ID:8y62l+L10

『ピピー、ガー。 ちょっと貸してみ――……』

ザザザッ、と一際大きなノイズが魔列車内に響き、数秒すると何事も無かったかのように放送が始まった。

『えー、VIP学園の皆さん、おはようございます。
 現在義務教育終了を告げる、といいますか、卒業試験といいますか、言われ方は様々ありますが――、
 皆さんも知っていると思いますが、百年祭の期間説明をさせて頂きます』

( ^ω^)「……」

『現在は、四月ですね、四月一日です。 言うまでも無く今日が開始日です。
 そして、百年祭終了日、三月三十一日ですね。 期間日数は三百六十四日間でございます。
 あ、これは決してエイプリルフールのネタではありませんので、あしからず』

('A`)「……」

『来年の四月一日にまで生き残っていた生徒が、義務教育を卒業した人間。 
 つまり社会に出て働ける権利を勝ち取った人間です』

ξ゚⊿゚)ξ「……」

『今回の百年祭の舞台となる会場は、例年通りVIP島で決定しております。
 それでは皆様、ご武運をお祈りしております――』

川 ゚ -゚)「……」

ブツンッ、と乱暴に放送が切断された。
騒然としていた車内はいつの間にか静寂に満ちており、全員覚悟を決めた顔に変貌する。
例外として、口を半開きにして涎を垂らし、だらしない顔をして寝ている者も居るが。



158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:49:36.39 ID:8y62l+L10

ザザザッ、ともう一度激しいノイズ音が聞こえて、再びスピーカーに意識が集まる。
同じ男性の声を、聴覚が捉える。

『あー、言い忘れましたが、既にVIP島の真上に居ます。
 高度にして約六千メートルでしょうか。 つまり何が言いたいのかと言うと――、
 残り数秒でこの魔列車は消滅するって事です』

瞬間、蒼い、蒼い大空に投げ出される体。

(;^ω^)「おっ!」

(;'A`)「うおっ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ!」

川;゚ -゚)「っ!」

『それでは皆様、ご武運をお祈りしています――』

教員達はまったく関せずに、一年間生徒達だけを完全に隔離された島へと移動させる。
そして、期間終了日にまで残っていた者が義務教育終了――つまり卒業を迎えることが出来るのだ。

『百年祭』の中身は、バトルロイヤル。 
生徒同士の殺し合いだ。



160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/22(月) 01:51:01.89 ID:8y62l+L10

花は散るから美しい。


造花を目指して何の意味がある。


死のない人生なんてつまらない。





少年少女達の『百年祭』が今――始まった。







――少年少女達の『百年祭』のようです――


[ 2008/09/22 12:30 ] 総合短編 | TB(0) | CM(1)

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
増えすぎた生物には絶滅が必然
[ 2009/09/29 20:42 ] [ 編集 ]

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