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('A`)最後のお願いのようです


43 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:49:27.53 ID:2AQWggZE0

電源が落ちた。
こんな日は町へ出る。

~('A`)最後のお願いのようです~

人気のない住宅地を歩く。
涼しい風が耳元で鳴る。
薄紅の九月の空は悲しい。

('A`)「………」

歩きながら目を閉じた。
そこにある真っ暗な別世界を歩く。
自分が歩くべき道だけに細い道ができ、すぐ後ろで消える。
怖くはない、落ちる筈もない道。

何もない世界は邪魔するものもない、俺だけの世界。
いつからか俺はこちらの世界の住人になった。
頭の中に古い映画のように映像が映し出される。



44 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:50:01.19 ID:2AQWggZE0



辺りは静かな興奮に満ちていた。
視線を紙カップのジンジャーエールから上げると、低いステージの上に一人の女性が立っていた。
青白いライトの下、彼女はアコースティック・ギターを撫でるように鳴らすと、ゆっくりと歌い始めた。

从 'o'从「Night bus headed for...」

その優しく透き通った声は、身体にすっと染み込んでゆく。

( ^ω^)「綺麗な声だお…」

俺の隣で友人は呟いた。
先程まではいつものごとくガチガチに緊張していたくせに、すっかり聴き入っている。

('A`)「そうかねぇ…」

とは言ったものの、俺は今、自分が立っている場所を忘れかけていた。
彼女はアコギ一本と自身の声で、地下の小さなライブハウスを別世界に変えてしまったのだ。



45 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:51:58.09 ID:2AQWggZE0

俺達が彼女の歌声に聴き惚れていると、垂れ下がった眉の男が二人の間に割り込んできた。

(´・ω・`)「ああ… アコギのチョーキングの時に鳴る『キュッキュッ』って音が良いね」

(;^ω^)「…チョーキングの時?」

('A`)「ショボン、知ったかぶりすんな」

(´・ω・`)「言ってみたかっただけさ」

そう言うと、友人その2はドラムスティックをくるくると弄んだ。

(´・ω・`)「さあ、もうすぐ僕達の番だからね。
      骨抜きにされてちゃいけないよ」



46 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:54:30.24 ID:2AQWggZE0

( ^ω^)「おっおっ。
      でもあの人は上手いお」

(´・ω・`)「確かに。
      僕は彼女はいつか、一世を風靡するシンガーになるとみるね。
      今のうちに手売りのCD買っといたらプレミアつくかな?」

(;^ω^)「………」

美しい音世界を背景に、友人達はいつものように他愛のない会話をしている。
この空間は、愛しい。

(´・ω・`)「…それにしても、彼女、遅いね」

(;^ω^)「遅いおー…」

しかし、俺はこの空間を壊してしまえる。
たった一言で。



49 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:56:13.93 ID:2AQWggZE0



「おい、お前」

何処からか声をかけられ、立ち止まった。
目を開くと、そこは人影もまばらな寂れたアーケードだった。

「おい」

声のする方を見てみると、一人の女性立っていた。
なんだかどことなく浮世離れしている印象を受ける人だった。

lw´‐ _‐ノv「くるしゅうない」

女はそう言うと、ふらふらと近付いてきた。
女は、俺に鼻先が当たるほど近づくと、顔をのぞき込み、小さな声で言った。

lw´‐ _‐ノv「お前は理由が欲しい。
       苦しみの代償が。
       心を潤すものが欲しかった」

女は俺の額に手を当てるとニヤリと笑った。



50 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 00:58:19.81 ID:2AQWggZE0

lw´‐ _‐ノv「…お前を待っている影が見える。
       行くのだ」

lw´‐ _‐ノv「お前は一言『言わなかった』のだ。
       …解るだろう?」

俺はそっと頷いた。
そしてまた、真っ暗な別世界を歩き始めた。
悲しく響く靴音はおそらく俺とあの女にしか聞こえない。



从 'o'从「We walk on... walk on... walk on...」

最後のコードが鳴らされ、曲は静かに終わった。

从'ー'从「ありがとうございました」

歌い終え、ステージの上でお辞儀する彼女は何処にでもいそうな小さな女の子だった。

( ^ω^)「…チャーミングだお」

(´・ω・`)「歌い終わってみると案外普通な子って印象だね」

( ^ω^)「だが、それがいい」

友人は猛烈な拍手を彼女に贈っていた。



51 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:00:19.64 ID:2AQWggZE0

从'ー'从「今日は、もう一曲やっちゃいます」

彼女は少しはにかみながらそう言うと、アコギを置き、キーボードの前に立った。

从'ー'从「では、聴いてください。
     これは、私の思い出の曲です」

( ^ω^)「みwなwぎwっwてwきwたwww」

一呼吸置いて、彼女は歌いだす。
彼女の指が、軽やかに鍵盤の上を行き来する。

( ^ω^)「多才だお…」

(´・ω・`)「もういっそ、うちに入ってもらおうか」

(;^ω^)「んなことになったらあの人がぶち切れるお…」

(´・ω・`)「しかし… 遅いね」

( ^ω^)「遅いお…」



52 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:02:11.82 ID:2AQWggZE0



目を開くと、全国チェーンの大型書店『デミタス堂』の前に立っていた。
自動ドアのガラス越しに一人の女性を見つけ、俺は驚きを隠せなかったが、納得した。
一冊の本に目を落とす彼女は変わらぬ姿で俺のすぐ近くにいるのだ。

('A`)「こんばんは」

俺がそっと声をかけると彼女は振り返った。
少し驚いた様子を見せたが、俺の姿を見て微笑んだ。

从'ー'从「こんばんは。
     良いギターをお持ちですね」

彼女はあの夜と同じようにぺこりとお辞儀をした。

('A`)「まあ、俺にも未練があったという事かもしれませんね。
    道連れですよ。
    持ち運ぶのも随分と楽ですしね」

俺はそう言うと愛用ギターを懐にしまった。



54 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:04:12.25 ID:2AQWggZE0

从'ー'从「でも、もったいないですね…。
     『本物』はどちらに?」

('A`)「いやあ、部屋に置きっぱなしですわ」

彼女は俺の中ではとても小さく存在していた。
しかし、俺は曖昧に微笑み返しながらも、彼女の内面に秘めた炎を感じていた。
俺の世界を壊してしまえそうな位に。

陽はすっかり沈み、二人を照らすのはガラス張りの店内に差し込む外灯の光のみだった。

('A`)「何を見ていたんです?」

俺は先程彼女が目を落としていた書棚の方を見たが、暗くて何が置いてあるのかよく分からなかった。

从'ー'从「ああ、ここには…」

彼女はそう言うと、書棚に近付きそっと手を伸ばした。

从'ー'从「…私の曲があるのです」

そう言う彼女の表情も暗くてよく見えなかった。
ただ、その声はどこか悲しそうであった。
彼女は本当の嘘をついてしまったのだった。



55 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:06:24.92 ID:2AQWggZE0



照明が落ち、そして明るくなった。
味気ない眩しい光に照らされて、俺は現実世界に引き戻された。

(´・ω・`)「いやあ、良いものを聞けたね」

( ^ω^)「………」

(´・ω・`)「ん? どうしたんだい?」

( ^ω^)「遅いお…」

友人は呟く。
顔色が悪く見えた。

('A`)「そうだな…」

俺は答える。
ジンジャーエールは炭酸が抜けていて、ただ不安な味がした。

やがて、照明が再び落ち、次のバンドの演奏が始まろうとしていた。



56 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:08:39.09 ID:2AQWggZE0



俺は暗い本棚に囲まれていた。
逃げ込んだ視線の先には扉があった。
トイレだと直感的に分かった。

扉の向こうからは呻くような声が聞こえてくる。

('A`)「…久し振りだな、お前ら」

俺は扉を開いた。



57 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:10:28.03 ID:2AQWggZE0



(,,゚Д゚)「Don't say anything! Good bye...」

激しく掻き鳴らされるその音は焦燥に満ちている。
心臓は既に自分の意思を失っていた。
しかし、後ろからの静かな声で鼓動はリズムから外れた。

从;'ー'从「すみません…。飲み物が…」

(;^ω^)「おっ!?」

見ると、友人の背中に謎の染みが広がっていた。

(;^ω^)「なんか冷たいと思ったお!」

(´・ω・`)「あ…! あなたはさっきの…」

(;^ω^)「うおっ!? さっきの人だお!」

从;'ー'从「すみません、すみません…。
      これ、ただの水なんで後は残らないと思いますが…」

彼女はハンカチで友人の背中を拭っていた。



58 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:12:54.14 ID:2AQWggZE0

(*^ω^)「おっ… かまいませんお。
      それよりも、さっきのステージは素晴らしかったですお」

(´・ω・`)「ぐっときました」

从*' -'从「あ、ありがとうございます…」

彼女は照れくさそうに言った。

从'ー'从「あなた達の拍手、とても嬉しかったです」



俺は、あの夜の幻のメンバーと共に『デミタス堂』を出た。
振り返ると三階建ての大型書店は、まるで過去の事なんてなかったかのようにそこに建っていた。

隣に奴らがいる。
共に再開を喜びあった二人の友人達。



59 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:14:40.39 ID:2AQWggZE0

そして、彼女もいるのだ。
しかし、彼女は言った。

「…私の曲があるのです」

その言葉は俺にとってあまりにも非現実であり、現実を見せつけた。

彼女は言う。

从'ー'从「あの夜の演奏は素晴らしかったなあ」

('A`)「嘘だ」

从'ー'从「………」

('A`)「そうだ、あなたはいなかった」



60 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:16:44.45 ID:2AQWggZE0



(*^ω^)「おっ… かまいませんお。
      それよりも、さっきのステージは素晴らしかったですお」

(´・ω・`)「ぐっときました」

从*' -'从「あ、ありがとうございます…」

彼女は照れくさそうに言った。

从'ー'从「あなた達の拍手、とても嬉しかったです」

…違う。
そんな事は言ってない。

从'ー'从「私は憧れ。
     あなたの憧れ。
     それだけ…」

うるさい。
そもそもあんたはいない。



62 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:19:29.32 ID:2AQWggZE0



俺は、あの夜のメンバーと共に『デミタス堂』の前にいた。
三階建ての大型書店は、創立六十年という確かな歴史と共にそこに建っていた。

(;^ω^)「でもドクオ、ボーカルがいないお」

(´・ω・`)「僕が歌おうか」

( ^ω^)「歌わないで」

俺は共に再開を喜びあった二人の友人達に言った。

('A`)「ツンがいるじゃないか」

(;^ω^)「でも、でもツンは来なかったお…」

('A`)「じゃあ、俺達が行けばいい」



63 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:21:26.08 ID:2AQWggZE0



ツンはいつもの十字路で反対側へ曲がった。
それだけでここからは遠く離れてしまった。

('A`)「まあ、ツンは来ないんだよなあ」

俺はそう言うと、ライブハウスを出た。
階段を上がるといつの間にか大きな書店の中にいた。
そのいつもの待ち合わせ場所にツンの姿を見ることは、もうない。



俺は歩きだした。
二人も黙ってついてくる。

少し行くと、十字路に出くわした。
俺は少し思うところがあったが、後ろには彼らがいる。
俺達はその十字路を真っ直ぐに突き進んだ。



64 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:23:09.12 ID:2AQWggZE0

着いたのはあまりにも身近な場所だった。
ふりだしに戻って来たのだ。

俺は見慣れた階段を上り、見慣れた扉を開け、見慣れた四畳半に立った。

('A`)「おっし、やんぞ」

( ^ω^)「………」

(´・ω・`)「こんな所で?」

('A`)「最後のお願いだろ?」

そうだ、もう一度、あまりにも身近な彼女を。
見慣れない閉じた現実にいる彼女を…。



65 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:25:11.46 ID:2AQWggZE0

('A`)「俺の夢にはツンの歌が必要だ」

(´・ω・`)「でも彼女は…」

( ^ω^)「おそらく、ツンはドックンの言ったことで照れてるんだお」


「あんた、なんか言った?」


(;^ω^)「さあ、スタンバイッ!」

友人二人は消えない。
彼等はあまりにも非現実なだけだから。
そしてツンも。
彼女はあまりにも現実であり、非現実を見せつけるから。

('A`)「最後のお願いだよ」

ギターを心からやさしく鳴らす。
俺は俺だけに聞こえる演奏のなかで、幸せそうに光る彼女の歌声を聴いた。
それは俺が一度も聴いたこともない、愛しい声だった。

~終わり~







66 :('A`)最後のお願いのようです:2008/09/20(土) 01:26:07.92 ID:2AQWggZE0

以上です

お題は…十字路、無言

実はこのお題、一年くらい前(たしか去年の八月くらい)にもらったんだけどずっと放置してました
お題くれた人、今更でスマソ



[ 2008/09/20 14:08 ] 総合短編 | TB(0) | CM(3)

ドクオの妄想が現実になったってことかな?
教えてエロい人
[ 2008/09/21 23:16 ] [ 編集 ]

多分、ドクオは死んで(電源が落ちて)、シュー(死神?)に出会って、最後に良い夢見させてもらったとか?
渡辺さんとツンの存在が謎だが
[ 2008/09/22 02:17 ] [ 編集 ]

ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
ドックンの願いは…
[ 2009/09/29 20:31 ] [ 編集 ]

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