157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:22:37.75 ID:C5lvh147O
強くないよ、私は。
仲間だったものに、こんな扱いを受けて笑っていられるほど。
…いつからだろうか。
覚えていないぐらいに、前からだったような気がする。
川 ゚ -゚)「…」
クスクスと教室に響き渡る笑い声。私に向けられていることはすぐにわかる。
…机がない。椅子はかろうじてあるが、糊や画鋲でとても座れるものではないようだ。
川 ゚ -゚)「…ああ」
いつからだろう
我慢しようと考えたのは。…ごめんな、その時の私。もう我慢は出来そうにない。無理だ。
だが、笑う女子達に向かい、立ち向かうような勇気もないんだよ。
もう、耐えられない。
川 ゚ -゚)破壊と欲望のようです。
159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:24:33.22 ID:C5lvh147O
走った。
私は走った。
その場から逃げ出した。後ろから聞こえる罵声を無視して、心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うほどに速く走った。
プレップルームを左に曲がり、普段は机で通れない屋上への階段を上るため、机を無理矢理退かして、階段を2、3段とばして急ぐ。
ああ早くこの世界から逃げたいんだよ!
川 ゚ -゚)「はあ、はあ、はっ……」
がちゃん! と大きい音を立て、ドアノブを回し開ける。スタスタと早歩きで緑色に少し錆びた色のかかるフェンスまで歩いた。
川 ゚ -゚)「……ごめんなさい、お母さん」
こんなに弱く生まれてしまって。もっと親孝行せねばいけなかったのに。
フェンスをがちゃがちゃと登りながら、心の中で懺悔する。母親に父に妹に……
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:25:43.50 ID:C5lvh147O
とん、と地面に足がつく。
ついた場所は、あと一歩踏み出す幅もないような足場。下を見れば楽しそうに遊ぶ同級生下級生。
上…いや、真ん前には青い空と白い雲。綺麗だった。憎たらしいほどに。深呼吸をして、少し足を前へ出す。これでこの世界とはさよなら、だな。
あとちょっと、あとちょっと……
( ;^ω^)「ちょっ……な、何やってるんだお!! 」
ガシッと、腕を掴まれた。……誰だ、私の邪魔をする者は。
眉間に皺を寄せ、嫌そうに振り向くと、そこには同じクラスの人気者がいた。
お人好しで、この学校じゃあ有名な奴。
名前は…内藤だったか。
161 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:27:11.44 ID:C5lvh147O
川 ゚ -゚)「…内藤くんか。なんだ?私の邪魔をしないでくれ」
先ほどと表情を変えず、突き放すように冷たく喋る。
邪魔なんだ、手が。フェンス越しだから余計にな。
( ;^ω^)「駄目だお!自殺なんて!!まだ、まだ素直さんには未来があるおっ……」
…未来、だと?
ふざけるのもいい加減にしてくれ。私になんの未来があると言うんだ。
ああ、そうだ。コイツ鈍いんだったなあ。何故、私が死にたいのかすら知らないんだろう。
( ;ω;)「素直さっ…ん゙だめだお゙、し、じぬ゙なんでえ……」
ボロボロと顔を崩しながら泣き始める内藤。どこまでお人好しなんだ……。
・・・なんだ?
ふいに覚える、違和感。
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:30:28.96 ID:C5lvh147O
違和感、そう、しつこい違和感……
泣き出す顔、辛そうに顔を歪めて私を引き止める声。……なぜこんなに違和感があるんだ?
…だが、もうそんなことはどうでもいい。
関係ないんだコイツは。私はただ静かに逝きたい。
川 ゚ -゚)「…ありがとうな、内藤くん。だが、さようならだ。」
笑いもせずに一応の御礼だけを言えば、掴まれた腕をするりと抜く。足が揺らぐ。…落ちる。右足、左足、地面から離れて行く。ガクン!と身体が大きく揺れる。
…あんなにも強く引き止めていた腕が軽く抜けたこと。飛んだ私を見た内藤くんが叫んだこと。呼び止める声があまり響かなかったこと、そしてあんなにも泣いていた内藤くんが嬉しいそうに
笑 っ て い た こ と 。
違和感の原因は、これ?
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:31:27.76 ID:C5lvh147O
( ^ω^)「…ばいばあい、素直ちゃん」
手を振り笑う。違和感違和感違和感。
…そうか。わかったよ。君は…、期待していたのか、私の死を。覚えた違和感は、君の好奇の色が伺える瞳だったのか。
ああ、墜ちていく。
教室が見える、人々が見える。…飛び散る肉片。赤黒く染まった校庭の地面。みんなが騒ぎ出す。
さようなら。
今私の存在がこの世界から消えた。
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/06/25(水) 11:33:57.29 ID:C5lvh147O
白い雲と青い空。
下を見れば、赤く染まる地面に集まる、蟻たち。
( ^ω^)「あははは。面白いお」
…しかし、綺麗だなあ。愚かで、美しいものだ。人間と言う生き物は。愚か過ぎて愛しいよ。
最初はね、ただの興味だった。ニコニコと笑う君。…壊してみたくなった。案の定、すぐに壊れていった君の周り。苦痛に歪む顔、…最高だった。
それに、最後の君はとても美しかったよ。輝きがなくなり、生きる気力を無くした君。……とても、素晴らしい。
そして、その顔を造り出したのはこの僕。
( ^ω^)「光栄なことだお」
ああ、愚かで愛しい。
僕の餌食になった君。
・・・さあて、次は誰にしようかなあ?
END