574 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:40:17.28 ID:0PMGzxSc0
本当に何もしない夏休み。大学入って最初の夏休み。
初めての一人暮らし、ドキドキのキャンパスライフ。想像していた夢の生活、は本当に何もなかった。
俺はなぜか当然のようにぼっち。ひとりぼっち。
そして本当に何もしない何もしない夏休み。部屋にひきこもりっぱなし。
('A`)「…」
何をすることにも飽きてしまい、寝ていた。気付いたら猛烈に腹が減っている。
あれ?今日、飯食ったっけ?昨日は?そもそも何してたっけ?
…まあいいや、とりあえず冷蔵庫を開く。ああうん、見事に何もないね。何もない。
なんでもいいや、食べ物、買いに行こう。時間を見れば夜の12時。近くのスーパーは開いてない。ちょっと遠いがコンビニまで。
外を見れば豪雨。が、このまま何も食べないで餓死、孤独死するよりかはましだ。
というか、なんか唐突に感じたのだ。外に出ないとやばい。このまま出られなくなってしまうかもしれない、と。
あまり身を守ることが出来なそうなぼろいビニール傘を掴んで久しぶりの外へ歩き出した。
577 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:42:54.84 ID:0PMGzxSc0
・
まさに豪雨、しかしなんとかコンビニにたどり着き食料も無事入手できた、あとは帰るだけだ。
アパートまであとほんの少しといったところで、突然炸裂するような光。真っ暗になる辺り。少し遅れて響く不気味な音。
雷だ。それもわりと近くに落ちたようだ。そして停電である。
真っ暗だ。何度も言うけど停電だ。この辺りの電気が停止していますよ。
街灯も周りの家の明かりも消えて、本当に何も見えない真っ暗。もう暗いっていうか黒い、だな。
あれ、普通に今ここ外だよね。こんなに真っ暗になれるものだっけ?
何も見えないぞ、何もない。こんな真っ黒な中で当然歩くこともできず、傘をさしたまま突っ立ってることしかできない。雨は相変わらず強い。
もう全身が、もちろんぐちゃぐちゃに濡れている。なんとも嫌な状態。最悪なコンディション。いやむしろ壮快か?そういえば最後に風呂入ったのいつだっけ?
578 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:44:27.24 ID:0PMGzxSc0
そんな中でも、基本妄想で生きている俺は、ありがちでつまらない妄想を、足りない頭でせっせと考え始める。傘さして突っ立ったまま。
そうだ、この停電による真っ黒な世界から始まる妄想。そうだな、まあ例えば…
世界が明るくなる。電気が回復したな、と思ったら、あれ?そこはさっきまでいた場所とはまるで違う世界!
俺は雷の直撃によるショックで、別の世界へ飛ばされてしまったのだ!異世界!異世界!あるいは未来!それか過去!
そこで待っているのはファンタジーとバトルともちろん美少女!川 ゚ -゚)
いまいち、いや全然駄目だ。そんなありがちなネタを面白いものにできるほど頭も良くない。
妄想は好きだが、これ自分で考えるより普通にラノベ読んだほうがまだ面白いな。
579 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:47:07.13 ID:0PMGzxSc0
あるいは、暗闇と豪雨の中、どうすることも出来ずに突っ立っている俺に、唐突にかけられる怯えたような女の声
川 ゚ -゚)「そこに、誰かいるのか?」
真っ黒の恐怖を打ち消すように、始まる会話。二人は真っ黒の世界の中で相手の姿も見えないまま、心を通わせて行く。
…なんだっけ、あらしのよるに?こんな話だったような。つまらん、都合良すぎ、却下。
もしかしたら、あれだ。このまま電気がついて、俺は普通に部屋に帰り、普通に生活する。しかし、さっきの雷は俺に普通に直撃していて、実は俺はもう死んでしまっていたのだ!…とか。
いや…ありがちかな。主人公がすでに死んでいるって、面白いけど、俺の場合死んでしまっているとしてもあまり話が進まない気がするなあ。
そういうのって大体感動モノに落ち着くじゃん。物語の最後、俺が死んでしまっていること気付いた恋人とかに
川 ゚ -゚)「ドクオが死んでいるなんて私も信じたくはない!逝かないでくれ!」とか言われたりさ。
俺には当然のごとく、恋人も、友達もいないし…家族も…普通だけど別にな…
大学が始まるまで気がついてもらえないんじゃないか。いや、気付いてもらえるかな…はあ…
582 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:49:29.67 ID:0PMGzxSc0
しかし、自分の想像力のなさに絶望しそうだ。期待もしてなかったけどさ。普段人話すこともないから、妄想ばっかしてる気がしていたのだが、ろくな妄想力もない。
なんかもう死んでたほうが面白いのに、とか、自分でもくだらないと思う妄想になぜか魅力を感じてしまっている。
とんでもなく淋しいやつだな。
あー、うつだしのう、と、と実際口にはしないけど口癖のような言葉が浮かぶ。
でも絶対死なないんだよな。有言無実行。
死にたいとか、お前メンヘラ?かまってちゃんかよ、いや、他人に対して言ってないからいいのかな。
違う、なんだろ、ああもう。死にたい。やっぱり駄目だ。しかし具体的に何が駄目なのかも良く解らない。駄目すぎて。
俺はくだらない人間だ。もう軽々しく言っちゃうよ?
('A`)「死にたい」
584 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:51:03.62 ID:0PMGzxSc0
今度はちゃんと、声に出して。しかし雨のせいで自分の言った言葉もよく聞こえない。
その時、ぱーっと光が射す、もう真っ黒ではなくなる。電気がついたか?と思ったが違った。車の光。
まっすぐの道を、こちらへ向かって来る、車。そのライトだった。スピードは、出ている。
ああ、よし、飛び込もう。18年間、何もしないで自分の意思が何もなかった俺が、強く思ったのだ。
「今あの車に轢かれて死んでしまいたい」と。車の運転手にはとんでもなく迷惑な行為だが、知ったことか。ああ、俺は最悪だ。やっぱり絶対死ぬぞ。
歩道から、車道へ飛び出す。車に向かって。絶妙なタイミングで。
586 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:53:48.42 ID:0PMGzxSc0
飛び出す、はずだった。
しかし自分はまだ歩道にいた。情けない格好で地面に伏せていた。
すべって、転んだのだ。水たまりに浮いている、ビニールのようなゴミが見える。こいつで、すべって転んだ。しかも派手に。
車はあっという間に通り過ぎて行ってしまった。
残されたのは、転がってる俺と傘と食料の入ったビニール袋。
('A`)「…」
587 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 02:57:52.43 ID:0PMGzxSc0
('A`)「…」
俺は結局死ななかった。死ねなかった。
傘は骨が折れてひどい形状になってしまっている。もういいや、放置だ。そもそも傘をさす必要ないくらい濡れている。
さっき買ったばかりの食料は…転んだ拍子に放り投げてしまっていたが、袋に入ったままでなんとか無事そうだ。食えるだろう。
そうだ俺は腹が減っていたのだ。飯を買いに外へ出たのだ。
早くアパートの部屋へ、帰らなくては。飯を食うのだ。いや、まずシャワーを浴びるぞ。
風邪ひくし。で、飯を食うのだ。うん。
そこでようやく気がついた。明るくなっている。電気が復旧したのだ。雨もずいぶん弱くなっている。
588 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 03:05:36.56 ID:0PMGzxSc0
さっきまで死のうと思ってたのに。どうしたんだろう俺。
なんか急に明るい気持ちになっている。なんかこう、スイーツ(笑)みたいな切り替えの速さだ。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、アタシは生きている!強く生きて行くわ!」みたいな
俺の決意はどうしようもない。まさに意思もなにもない。
情けない。くだらない。自分は馬鹿だ。
しかしあまりにも情けないできごとに、愉快になってしまった自分がいる。
591 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/29(金) 03:23:40.03 ID:0PMGzxSc0
もちろん、なんとなく楽しい気分になっているのは今だけだろう。
きっとこの先も俺はずっと駄目なままで何度も死にたくなり、そして結局死ねないのだろう。
自分の底の浅さが見えたような気がする。でも気持ちが楽になったのだ。
開き直り?
もう、なんでもいいや、飯だ飯。あとスイーツ(笑)食うぞ!がんばった自分へのご褒美(笑)!
いや、なにをがんばったんだ俺。死ななかった自分へのご褒美?(笑)
でも本当に、悪い気分ではなかった。悪くない、悪くない、良い夜だ。
('A`)「良い夜だ」
口に出して言うと馬鹿みたいだ。
でも気分の良い俺は、またくだらない、ありがちな妄想を展開させながら、自分の住む部屋へと歩き出した。
('A`)豪雨と真っ黒の夜のようです
おわり