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渋澤は帰省するようです


700 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:37:39.97 ID:icajr7CwO

青い空に白い雲。緑の木々にそれの真ん中には薄茶色の道。
じりじりと首筋を真上に昇った太陽がこれでもかと焼き付ける。
俺はこの田畑の広がるドがつく田舎に久しぶりの帰省をしていた。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ったく、何が嬉しくて男なんざ連れて帰省しなきゃいけねぇんだよ」

俺はそう言いながら煙草の煙を肺に取り込むと、次にそれをため息混じりに吐き出した。
白い煙は青い空に浮かび一つの雲のようになったかと思うとすぐに風に流されて消えた。

( ・∀・)「いいじゃないですか、それに一度行ってみろと言ったのは渋澤さんじゃないですか」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「一緒に来いとは言ってねぇ」

( ・∀・)「またまた」

俺の隣を歩く男モララーは俺の後輩に当たる。いつもヘラヘラと笑っていて締まりが無い。俺の嫌いな人種だ。
やるときはしっかりやる奴ならいいのだが、こいつはいざという時もヘラヘラだ。
どんな時にはヘラヘラ。常に緩みっぱなし。これが何かの機械ならすぐに修理に出すだろう。



701 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:38:55.75 ID:icajr7CwO

( ・∀・)「いやー、それにしても素晴らしいですね!」

モララーはそう言いながら麦藁帽子を被ったまま上を見上げた。
ハワイか何かと間違ったのか、モララーは派手なオレンジを基調としたアロハシャツに麦藁帽子という出で立ちだ。
ここは日本だぞ。もっと普通の格好は出来なかったのだろうか。

( ・∀・)「青い空! 白い雲!」

モララーは両手を高く空に突き上げながら、叫ぶように言った。
なぜこんなにもテンションが高いのだろうか。この暑い日差しの中でよくはしゃぎまわれるものだ。
俺はさっきから出来るだけ最小限の動きで歩いているというのに。

( ・∀・)「うひょー!」

意味も無く叫ぶ。

( ・∀・)「いやっふーい!」

意味も無く走り、戻ってくる。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ふう……」

俺はいつまでモララーの体力が持つか考えながら、煙草片手に歩く。
あいつは俺の向かう家までどれくらいあるのかわかっているのだろうか。
煙草から立ち上る煙は青い空へ我先にと上って行くが途中で消えた。

    ――渋澤は帰省するようです――



703 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:40:06.20 ID:icajr7CwO

(;・∀・)「いつになったら着くんですか……」

モララーの体力はあれから数分と持たなかった。
先程とは打って変わり、両腕をだらし無く垂れながら半ば足を引きずるように歩いている。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「もうすぐだ」

(;・∀・)「さっきもそう言ったじゃないですか……」

俺の返答にがっくりとうなだれるモララー。
まあ、無理もないかもしれない。炎天下の中、代わり映えしない田畑ばかり広がる道を何十分と歩き続けたのだから。

(;・∀・)「バスとか無いんですか……」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「無い」

(;・∀・)「うへぇ」

モララーは俺の言葉に情けない声を出すと、汗を腕で一度拭い取ると言った。

( ・∀・)「なんか嫌ですねぇ……田舎って……ほら、僕は都会っ子じゃないですか
      だから、こういうのって苦手ですよ……あーやだやだ」
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「素晴らしいって言ってたくせによく言うな」



708 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:41:24.89 ID:icajr7CwO

( ・∀・)「あ、なんだあれ」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「? ああ、あれか……」

モララーが声を上げたのに合わせて俺もそちらの方向に顔を向けた。
そこには三階建ての木造校舎があった。
くすんだ外壁には細い草木が絡み付き、窓は砂埃で覆われており校舎内を朧げな風景に変えていた。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「あれは俺の母校だよ」

( ・∀・)「うふぇ……幽霊が出そうですね」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ああ、もう廃校になっちまってな……」

俺の通った小学校。
もう大分廃れてしまっていたが、昔の面影を残すその校舎を見ると昔のやんちゃだった自分を思い出す。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ここまで自宅から3kmあってな、毎日朝早起きして歩いて通ってたんだ……」

(;・∀・)「さん……!?」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ここが1番近かったからな」



711 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:42:29.53 ID:icajr7CwO

そう言えば廃校になるって聞いて六年生の時の同級生で集まろうって話しがあったっけ。
結局俺はその日仕事で行けなくって、正直もうどうでもいいと思っていた。
けど、こうして廃れた校舎を目の前にして少しばかりの後悔が俺の中に生まれた。
俺はランドセルが嫌いで風呂敷に教科書包んで行った。
友達が俺の真似をして風呂敷ブームが起きたっけか。
紫の風呂敷は人気で、それを持って行った奴はちやほやされて……。

( ・∀・)「これだから田舎は……都会に生まれて良かった……」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……」

変わって行くんだ。
昔のままではいてくれない。昔はアルバムの中でしか昔のままではいてくれないのだろうか。



715 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:43:35.89 ID:icajr7CwO



(;・∀・)「あぁ……やっと着いた……」

モララーは俺の実家に着くなり玄関の床に倒れ込んだ。情けない男だ。
俺は玄関にモララーを残すと、客間に向かった。
板張りの床は古い物だが、しっかりと俺の体重を支える。軋むことも無い。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ふう……」

俺はほぼ衣類しか詰まっていない鞄を隅に置くと、畳の上に寝そべった。
実家は親戚が住み、管理していたが今日俺が来ると聞いて久々にどこか旅行に行くと言って俺に家を任せた。
まあ、田舎では空き巣などをする輩はいないだろうが、人がいないのは助かる。静かに休みを満喫出来る。

( ・∀・)「なんか、祭があるみたいですよ」

こいつがいなければもっといいのだが、このだだっ広い田畑しかない中に放り出すのは気が引ける。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「祭?」

( ・∀・)「ええ、チラシが入ってましたよ」

モララーはそう言いながら、手に持ったチラシを畳の上に置いた。
黄色い紙に薄い黒で祭について書かれていた。といっても場所と時刻だけが書かれた味気無い物だ。



718 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:44:58.02 ID:icajr7CwO



  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……」

上を見上げると、都会では到底拝むことのできないような満天の星空が広がっていた。
そして、その下ではかき氷やチョコバナナと言った定番の出店が並んでいる。
提灯や出店の明かりでそこにいる老若男女をオレンジ色に照らしていた。

( ・∀・)「かき氷食べましょう!」

その中から俺に向かって言うのはかき氷の屋台の前にいるモララー。
モララーは俺の返答を待たずにかき氷屋の店主に二つのかき氷を注文していた。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……ガキか」

俺は人の少ない端で名の知らぬ木に寄り掛かりながら、はしゃぐモララーを見て呟いた。
無邪気な笑顔で二色のかき氷を両手に持つ姿はまさに子供のようだ。
あれで本当に社会人なのか疑ってしまう。

( ・∀・)「渋澤さんはイチゴでいいですよね?」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……」

何を見てイチゴでいいと判断したのかはわからないが、貰わないわけにはいかず、俺はモララーの片手に握られた容器を取った。



720 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:46:20.35 ID:icajr7CwO

細いストローの先にスプーン状に広がった部分でイチゴシロップに染まった氷を掬い上げた。
そして、それを口に入れると口の中の熱で溶かすように咀嚼する。
途端にシロップ独特の甘い味が口の中に広がった。安っぽくて、懐かしい味だ。
そういえば最後にかき氷をいつ食べたのか忘れてしまった。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「これで練乳があればいいんだがな」

( ・∀・)「お、渋澤さん甘党ですか?」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「かき氷に練乳は普通だろ。シロップの安っぽい甘さに練乳の甘さが加わるとな、引き立つんだよ」

( ・∀・)「何が引き立つんですか?」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……まあ、色々とな、それになんか豪華だろ練乳って」

( ・∀・)「そうですかね」

モララーは興味なさそうに言うと、かき氷を口の中に掻き込んだ。
頭が痛くなるぞ。そう言ってやろうとしたら、案の定頭を抑えて悶え出した。本当に子供のようだ。



724 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:47:21.62 ID:icajr7CwO

それからしばらくモララーがかき氷と格闘していると、不意にどこかから口笛のような音が響き視界の上から光が点滅するのを感じた。
花火が始まったのか。俺はかき氷に向けた目線を空に移した。
モララーも痛む頭に顔をしかめながら、空を見上げている。

( ・∀・)「おー、始まりましたねー」

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……」

それから断続的に空には花火が打ち上がった。
赤緑黄色と様々な色が空に花を咲かせていく。
その度に周りからは「たーまやー」「かーぎやー」と一連の流れが繰り返される。

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……」

この花火も昔に見た気がする。
子供のころ、かき氷にがっついて頭の痛みに悶えながら見上げた気がする。
安っぽい味と頭の痛み。提灯のオレンジの明かりに花火の光り。
懐かしい昔に見た記憶が目の前にあった。



725 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:48:22.98 ID:icajr7CwO
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「変わらねぇ……」

昔と変わらぬ花火を眺めながら呟いた。
モララーは横で口を半開きにさせている。
小学校は廃校になって、俺は歳をとった。
だけど、まだ近くにはバスは全然通っていないし、花火は昔のままだ。
少しずつ変わっていくんだ。昔はアルバムの中にしか残らないのだろうか。

( ・∀・)「たーまやー!」

いや、俺の中にも残るだろう。
忘れてしまうかもしれないけれど、また思い出すだろう。
変わっていく風景の中で昔の風景を見つけるのも、またいいかもしれない。
明日にでも廃校に忍び込んでみようか、モララーはビビってしまうかもしれないが、それでも面白がって着いてくるだろう。
彼の中にもまた今の風景を刻んで、思い出させてやろう。
そう思ってから、なんだか叫びたくなって久々に子供のように叫んだ

  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「かーぎやー!!」




終わり







728 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/23(土) 22:49:38.07 ID:icajr7CwO

お題
花火
帰省
煙草

終わりです。何かおかしな表現とかあったら指摘してほしいです。



[ 2008/08/23 23:23 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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