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<ヽ ∀ >ストーリーテラーのようです

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




遥か昔、まだ言葉が絶大な力を持っていた時の話だ。
その世の中で恐れられていたものは、武力でも、魔法でもなかった。
人の想像力により生み出され、言葉にして語り継がれるもの。

そう、”物語”だった。

その時代、ひとつ物語を語れば、聞いたものは聞く耳を失い、
語ったものは語る口を失くし、描くものは筆を持つ手を失い、
記憶にとどめようとしたものは、その頭を狂わせることとなる。

しかし、このように恐れられる物語の力を、生まれながらの素質で抑制し、使役する者たちがいた。
その者達は尊敬と畏怖の感情から、こう呼ばれた。


”ストーリーテラー”と――




20090527235532479.jpg


 
――

残酷に荒れた大地を照らす太陽のもとを、一人の男が歩いていた。
男は、つばの広い帽子を目深にかぶり、左肩には食料などが入った頭陀袋をしょっている。
ジーンズを履き、その腰には、ガンベルトのようなものが巻きついている。

しかし、そのベルトのホルダーに下げられているものは銃ではなかった。
それは、ストーリーテラーであることの証。
錆びの浮いた錠で閉じられた、分厚く、大きい本だった。

<ヽ ∀ >(らしくねえことをしたニダ……)

さて、このえらの張った貧相な顔の男。名前をニダーという。
一週間ほど前に、ある街でストーリーテラーとしての仕事をし、
ろくに準備も整えず、逃げるように街を出たのだった。

そのせいで、乗っていた馬は三日前に倒れ、腰に下げた水袋は昨日全て空になってしまった。
しかしこの男、特別な訓練を積んでいたため、
意識的に汗を抑え、唾液を抑え、小便を抑えることで、
ろくに水分を取らなくとも一カ月は生きていける男だった。


<ヽ ∀ >(まあ、次の街まであと三日ほど……
      持たないことはないニダ)

そんなことを考えながら、ニダーは荒れた大地をゆっくりと、一歩ずつ踏みしめていた。
その時だった。

<ヽ ∀ >(後ろから馬が来る……)

ストーリーテラー特有の超人的な耳が、はるか後方の馬の足音を聞きとった。
こんな荒野の真ん中で、馬のペース配分も考えずに飛ばしている。
命を捨てるような大馬鹿者の乗り方だった。

<ヽ ∀ >(近づいてくる……でも、きっとウリには関係ないニダ)

ニダーはそう期待して、足を止めずに大地を踏みしめ続けた。
だが、その期待は裏切られることとなる。


――
  _ 
( ゚∀゚)「”残虐語りのニダー”ってのはアンタか?」

ニダーの目の前で馬を止めた眉の太い男がそう尋ねた。
彼の腰のベルトにも、ストーリーテラーの証、大きな本が備え付けられている。

<ヽ ∀ >「……」

ニダーはその歩みを止めず、男の横を素通りしようとする。
だが、眉の太い男はそれを許さなかった。
馬から降り、腰のホルダーからガチャリと本を抜き取ったのだ。

<ヽ ∀ >「若造……その行為がどういう意味を持つか、知らないニカ?」

ニダーは足を止め、振り向かずに何日ぶりかの声を出した。
水分をとっていないため、ガラガラにかすれている。
  _ 
( ゚∀゚)「知ってるさ。俺はアンタと命の取り合いをしに来たんだ」

眉の太い男は汚いものを吐き出すかのようにそう言った。
怒りで唇がめくれ、歯をむき出しにしている。

<ヽ`∀´>「仇討……そうニカ?」

ニダーは振り向いて、右手の人差し指でつい、と帽子のつばを上げた。
人を小馬鹿にするような、細い両目が眉の太い男を見つめる。
  _ 
(# ゚∀゚)「わかってるなら話が早い。
     ……なぜ親父を殺した?」

<ヽ`∀´>「ウリにはその質問の意図がわからんニダ。
       ウリ達ストーリーテラーは物語を集めることが仕事の一つのはずニダ。
       ……なぜ貴様はもっと早く父親に語らせなかったニカ?」

自分の行為がさも当然のことだったかのようにニダーは言った。
その言葉に、眉の太い男は激昂する。
  _ 
(# ゚∀゚)「てめえっ!! よくもそんなことが言えるな!!
     ストーリーテラーでもない一般人に物語を語らせるというのはっ……!!」

男の言葉を遮り、ニダーがその続きを語る。

<ヽ`∀´>「その当人を死に至らしめることと同じ……
       そんな教本に載ってるようなこと、ウリが知らないとでも思ってたニカ?」
  _ 
(# ゚∀゚)「……ならどうしてそんなことをした!?」

<ヽ`∀´>「それが……仕事だからニダ」

その言葉を皮切りに、眉の太い男は勢いよく本を開いた。
バラバラバラとページをめくり、真ん中あたりで指をはさんで止めた。
  _ 
(# ∀ )「お前だけは殺してやる!! 絶対に……!!」

<ヽ`∀´>「悪いがこの命、そう簡単にくれてやるわけにはいかんニダ」

ニダーは頭陀袋を横に放り投げ、ジーンズの右ポケットから小さな鍵を取り出すと、
素早く本の錠を開け、ガチャリとホルダーから取り外した。
しかし、本を開くその前に、眉の太い男が朗読を始める。
  _ 
(# ∀ )『見ろ!! 黒き雲に覆われたあの空を!!
     感じろ!! 大きく震える大地の怒りを!!』

男の叫びのような朗読に呼応して、目の前の空間に黒い穴が現れた。
ニダーはその間に本のページを一瞬で開いた。
  _ 
(# ∀ )『雷が落ち、山は燃え、全てを闇に包む魔王が世を支配した!!
     何人もの勇者が魔王に挑んだが、帰ってくるものはいない!!』

眉の太い男の朗読がそこで区切られると、突如黒い穴から一本の巨大な腕が飛び出して、
ニダーに向かって拳を振るう。

<ヽ`∀´>「!」

ニダーのいた場所が、黒い拳に押しつぶされた。
土埃が舞い上がり、辺りは土色一色に染まる。

  _ 
(# ∀ )『人類は絶望に打ちひしがれ、世界は魔物の跳躍跋扈!!
     今この時より、魔王による世界の統治が始まったのだ!!』

休む間もなく黒い腕が、同じ場所に拳を連打する。
その手数の多さは、散弾銃かマシンガンかのように思えるほどだった。
そして、土埃であたりが見えなくなったころ、眉の太い男は本を閉じ、
  _ 
( ゚∀゚)「読了……だ」

憑き物が落ちたような顔で、そう呟いた。
腕が黒い穴に引っ込み、穴は縮小して消えた。
  _ 
( ゚∀゚)「あっけない終わり方だったな……拍子抜けだ」

眉の太い男が本をホルダーに戻す。
そして、踵を返し、馬に乗ろうとしたその時だった。

<ヽ`∀´>「待つニダ」

  _
(; ゚∀゚)「!?」

眉の太い男は声のする方に振り向いた。
土埃が晴れ、そこには両の足でしっかりと大地を踏みしめる、無傷のニダーの姿があった。
  _ 
(; ゚∀゚)「なぜだ!? なぜ生きている!?」

<ヽ`∀´>「舐めてもらっちゃ困るニダ。
       あんなレベルの物語でやられるほど、ウリは半端な訓練を積んでいないニダ。
       あと、その物語『魔王降臨』を読むのにそんな大声は邪魔になるニダ」
  _ 
(# ∀ )「ち……ちくしょおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!」

男は再び本を抜き、同じ物語を朗読する。
黒い穴が再度開き、大きな拳がニダーを狙う。
しかし、先と違うのは、ニダーが華麗に拳をかわし始めたことだ。

<ヽ`∀´>『おとこのこが一人、母が一人、
       なかむつまじく、つつましく暮らしている』

ニダーは黒い拳の連打をかわしながら、静かな口調で朗読を始めた。

<ヽ`∀´>『心をあわせるかの如く、寒い日には体を寄せ合い、
       互いにさいわいを運ぶかの如く、
       二人はけんめいに働く』

ニダーの目は手元の本から離れない。
それでも、黒い拳がどこに振るわれるのかわかっているかのごとく、踊るように攻撃をかわす。
  _ 
(; ゚∀゚)(なんなんだあの物語は……
     どこまで朗読すれば発動しやがるんだ?)

男はニダーの朗読する物語を聞き、そんな疑問が頭に浮かんだ。
並みの物語であれば、とっくに効果が発動してもおかしくない文量だった。
しかし、そんなことも気にせず、ニダーは朗読を続ける。

<ヽ`∀´>『天はこのおやこに、
       どうしてかのめぐみをあたえないのか、
       ふしぎにおもえて仕方がない』

ニダーはそこで一旦文章を区切った。
そこまで読んでも何も効果が発動しないまま、ニダーは黒の拳をかわし続ける。
  _ 
(; ゚∀゚)「ハ、ハンッ!! ハッタリかよ!!
     びびらせやがって!!」

男がそう声を張り上げたとき、ニダーは男に背を向けた。
そして、頭の帽子を再び目深に被る。


<ヽ ∀ >『しかし、世の物事を全て斜めに見る男、
      この親子をみてこう言った。
      「あの母親からは、血の匂いがする」』

ニダーは最後にそう呟いた。
その言葉が、眉の太い男の聞いた最後の言葉だった。
  _ 
(; ゚/ /∀゚)「は?」

突如、男の目の前に鋭い刃物が現れ、男の頭から股下まで真っ二つに切り裂いた。
男は、断末魔を上げる暇もなく絶命し、荒れた大地を血で潤すことになった。

<ヽ ∀ >「隠れた暴力は大っぴらな暴力よりも性質が悪い……
      先人の言葉通りニダ」

ニダーは本を閉じ、ホルダーにしまって、先ほど投げた頭陀袋を拾い、

<ヽ ∀ >「謝罪と賠償なら、ウリがそっちに行ったときにいくらでもくれてやるニダ。
      だから今は……」

<ヽ ∀ >「さようなら、とだけ言わせてもらうニダ」

そう呟いて、再び荒野を歩き始めた。


――

荒れた大地を踏みしめながら、ニダーは考えていた。

<ヽ ∀ >(あの男……なぜストーリーテラーなんてやってたんだニカ?)

そして、ニダーはある考えに辿り着いた。
前の街で物語を語らせた男――「殺してくれ」と泣きついてきた、彼の父親のことである。

<ヽ ∀ >(彼の父親は物語を頭に入れてしまったせいで、ほぼ廃人同然になっていたニダ……
      もしかすると彼は……)

ニダーは立ち止まり、肩越しに後ろを見た。
もう、父親思いのストーリーテラーの横たわる姿を見ることはできない。


<ヽ ∀ >(まあ、嫌われることには慣れてるニダ)

ニダーは前を向き、再び荒野を踏みしめる。
すでに日は落ちて、ニダーの周りを暗黒が支配し始めていた。
それでもニダーは歩みを止めず、荒れた大地を踏みしめ続けた。



~おわり~





この小説は2009年4月27日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:FJDOtV5+0 氏



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[ 2010/01/09 20:47 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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