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川 ゚ -゚)二人で見上げる田舎空('A`)

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




20090524205652859.jpg


 
             *

田舎のお墓っていうのは面白いもので、
山の斜面だとか、あるいは小高い丘の頂上付近だとか、
なかなか見晴らしのいいところに建てられているものだ。

そしてなぜか、学校に近い。
田舎の学校の裏手には、だいたいお墓さんが控えている。

教師たちはよく「お墓に入っちゃいけません」って注意していたものだ。
守っている生徒なんかこれっぽっちもいなかったけど。

田舎のお墓は景色がいい。なんでかなって、ずっと疑問に思ってなかった。
疑問に思ったのは、いま、こうして大人になって、墓の上から故郷を眺めて。

川 ゚ -゚) 「どう思うかね、ドクオ君?」

('A`;)「いいから墓石の上に座るな! そこ町内会長んちの墓だぞ!」


春の日差しが眩しい。その眩さの中で、
田舎の真昼の風景が、各々刀の刃のように白く縁どられて見える。

私は目を細めた。懐かしさに涙が出てくる。だって女の子だもん。

('A`)「なにが女の子だ。二十七にもなってあつかましい」

川 ゚ -゚)「うるさいな。久しぶりの友達に、それが向かって言うセリフか?」

('A`)「久しぶりに帰郷した友達が、なんの前触れもなく家に乗り込んできて
    朝からあちこち連れ回してくれたあげく、学校の裏の墓の町内会長んちの墓石に
    でけー尻のせてなけりゃ、俺だってこんなこと言わねーよ」

白のTシャツにジーンズ、首にはタオル、頭には麦わら帽子。
痩せた背の低い農家の跡取り息子は、サンダルを鳴らしながら、すでに日焼けした顔でわたしを見上げる。

故郷の土地に足をつけて生きている友人の姿を、私は誇り、持参したおにぎりを差し出す。

('A`)「……中身は?」

川 ゚ -゚)「なにも」

('∀`)「しょうがねぇやつだな。 ま、おにぎりは作り手に似るってなw」

川 ゚ー゚)「悪かったな、からっぽでw」

のばされたドクオの手におにぎりをのせ、かわりに頭の麦わら帽子を拝借する。
かぶれば、彼の汗の臭いがした。

それが嗅覚を目覚めさせたのか、吹いてきた、形があるのならきっと丸っこい風。
乗った花の、草の、土の匂いが、一斉に感じられた。

自然に細められていた眼が捉えたのは、五年ぶりの故郷、墓石の上から見た春の半ば。

子どものころ、毎年のように眺めていた平凡な景色は、
いま、なにも持たないわたしにとっては、あまりにも彩りに溢れすぎている。

目が細まるのも仕方がなく、わたしは、麦わら帽子を目深にかぶりなおした。



                    *

テレビドラマの中でしか、少なくともこんな山間の田舎町では見ることはできない。
いや、テレビドラマでもお目にかかることはできないだろう。

上品なモノトーンのパンツスーツにバック、脚もとには黒のヒール、そして頭には麦わら帽子。
腰までまっすぐに伸びた長い艶やかな黒髪を風に翻し、彼女は町内会長家の墓石に腰かけていた。

手にしたおにぎりを頬張ることなく、細めた目を隠すように、麦わら帽子を目深に。
泣いているのか? わからない。少なくとも横顔には、涙の伝う筋は見受けられない。

思えば、いや、思わなくても変だった。

今朝、彼女が訪ねてきた。
成人式以来会っていないから、かれこれ七年振りになる。

前触れもなく現われては戸惑う俺を外に連れ出し、俺の軽トラック、荷台の上に横になり、


川 ゚ -゚)「三時間ほど流してくれ」

それから三時間後、こうやって墓の上にいる。
彼女は墓石の上でおにぎり片手に、スーツ姿で麦わら帽子を目深に。

('A`)「なにがあった?」

川 ゚ -゚)「会社辞めてきた」

横顔が、景色から目をそらさずに言う。俺は驚く。

('A`;)「辞めた? 辞めたっておまえ……聞いた話じゃ、天下のVIP商事に就職したって……」

川 ゚ -゚)「まあね」

('A`;)「それを……辞めただって? バカか? いつ?」

川 ゚ -゚)「一時間前」

('A`;)「一時間前? バカ言うな、そんときはトラックの上……」

川 ゚ -゚)「メールで辞表送った。簡単だね。こうもすんなり受理されるとは」

ようやく彼女は麦わらの縁を上げ、眼を見せた。
愉快そうに弧を描いている。クックックと笑っている。

小、中、高と変わらない彼女の笑い方に、俺は唖然として言葉も出ない。
それでも振り絞ってなんとかひとつだけ質問。

('A`)「いったい、なにがあったって言うんだ?」

川 ゚ -゚)「なにもないさ。あそこにはなにもないから、辞めてきたんだ」

ヒールを脱ぎ捨てると、麦わら帽子に手をかけ、ひょいと墓石の上から飛び降りた。
靴下でナイスな着地。それからニカっと笑いかける。

川 ゚ー゚)「天涯孤独の身は楽さ。縛り付ける土地もなければ、重しになる関係もない。
      おまけに私は二十七で無職。好きな所へ歩いて行ける。好きに人に会いに行ける。だけど……」

彼女と向き合う。ヒールがないと、身長は同じくらい。
同じ高さの眼線から得たのは、麦わら帽子の下に隠れた寂しげな笑い顔。

川 ゚ー゚)「好きなところは三時間で回り切った。会いたい人も片手の指で数えるほど。
      いや、これはなかなか。でも味気ない」

ようやくおにぎりにかぶりついて、彼女は元来た道をトラックの方へ。
麦わら帽子が風にあおられ、吊られた紐にぶら下がり黒髪の上から背中にかかる。

('A`)「で、これからどうするんだ?」

川 ゚ -゚)「そうだった。とりあえず、この辺に部屋ない? ほら、昔わたしが住んでた部屋とか」

('A`)「おまえが出て行ってすぐ取り壊されちまったよ」

川 ゚ -゚)「ほかにいい物件は?」

('A`)「簡単に言うがな……田舎で女が一人暮らしできる所ってそうはねぇぞ?」

川 ゚ー゚)「なんなら、おまえの家でも構わんが?」

('A`)「バカ言うな。大体、大企業を辞めて、なんでこんなところに戻ってきた?」

トラックの荷台に彼女が寝転ぶ。スーツが汚れる。きっともう使わないのだろう。
運転席の扉を開けながら問いかけた。頬についた米粒をひとつ舐め、彼女が答えた。

川 ゚ -゚)「そうさなぁ……中身のあるおにぎりを作れるようになるため……かな?」

('∀`)「ふひひw なんのこっちゃw」

呆れ顔で笑い、俺は運転席に腰掛ける。
トラックは動き出す。

バックミラーから見た景色は、
遠ざかる墓石、手を伸ばすようになびく黒髪。麦わら帽子。

そして、バックから取りだした中身のないおにぎりを食べる、無職の女。




                                       おわり





この小説は2009年4月23日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:NUpvBNU60 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
タイトルがなかったので、それっぽいタイトルを付けました


お題
・おにぎり
・無職


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/09 20:33 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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