はじめてブーン系小説を読む方は
こちらへどうぞ
(゚、゚トソン「皆様、こんにちは。 ご機嫌いかがでしょう」
( ・∀・)「ストーリーテラーは、私ことモララーと」
(゚、゚トソン「私、トソンの二人が務めさせていただきます」
( ・∀・)「では、本題に移らせていただきましょう」
(゚、゚トソン「この世界に“七不思議”というものがあることは、ご存知かと思います」
(゚、゚トソン「それは中国の万里の長城であったり、インドのタージ・マハルであったり、
ペルーのマチュピチュであったり。
本来、驚くべきもの、素晴らしいものという意味でありました。
しかし、それは長い時間の中で曲解、誤解、時には利用されながら、
違う形で我々の中に浸透していきました」
(゚、゚トソン「今では、不可思議なもの、技術を超越したもの、といったような認識で、世間に広まっているようです」
( ・∀・)「なんでも、今、この世界中にある“七不思議”の数は三桁は下らないのだとか」
(゚、゚トソン「ええ。 ただ、それは統計などによる確実なものではありません。
ですから、流行り好き、噂好きな現代人に対する揶揄として受け取っておくのが適当でしょうね」
( ・∀・ )「その例に漏れず、我が町にも数多の七不思議が存在します。
学校、人物、風土、会社、食材、行事……
今回ご紹介するのは、このVIPの町にまつわる七不思議の一つ、“銀色のお皿”についてです」
( ・∀・)「では、お楽しみ下さい」(゚、゚トソン
* * *
*(‘‘)*「だいばすたー!! だいばすたー!!」
(*゚ー゚)「テレビはもうおしまいよ。 さぁ、お母さんと一緒に寝ましょうね」
*(‘‘)*「やー!! だいばすたーみるのー!!」
(´・ω・`)「こら、ヘリカル。 あまりお母さんを困らせるんじゃないよ」
*(‘‘)*「うっせぇ!! ゆりっぺみるのー!!」
(´・ω・`)「ヘリカル!! あまり私を怒らせない方がいい。お前も皿の上に浮かべることになる」
*(‘‘)*「おさら……?」
(´・ω・`)「そう、銀の皿だ」
(*゚ー゚)「そうね。 お母さんの言うこと聞けないなら、お皿買ってこないとね」
*(‘‘)*「うぅ……」
(´・ω・`)「ヘリカル、ごめんなさいは?」
*(‘‘)*「……」
(*゚ー゚)「悪い子はお皿に乗せて、神様におしおきしてもらわなきゃね」
*(‘‘)*「……ごめんなさい」
* * *
( ・∀・ )「ただいまご覧いただきましたのは、なんてことはない、
どこの家庭でも見られる、わがままな子供を黙らせるための脅し文句。
そう、“銀色のお皿”とは、この地に古くから伝わる伝承なのです」
(゚、゚トソン「伝承については、後程詳しく説明致します。
それでは次のシーンをどうぞ」
* * *
*(‘‘)*「きんいろかかしがおじぎをしたら
いつつめぐったかわいいたまを
ありのへいたいはこんでく
うるしのぬられたおぼんのなかに
ぎんいろおさらがありました」
* * *
(゚、゚トソン「これは……わらべ歌、ですね」
( ・∀・)「そうです。 少女はお手玉で遊びながら、この地方に伝わるわらべ歌を歌っています」
(゚、゚トソン「お手玉? ちょっと待ってください。
私の記憶では、お手玉というのは布の小袋に小豆やビーズなんかを詰めたものだったはずです」
( ・∀・)「ええ、貴女は間違っていない。
私も、祖母の家に行ってはよく、中の小豆を食べようとして叱られたものです」
(゚、゚トソン「……あれは、あの少女の手の中にあるのは?」
( ・∀・)「アンティーク、ですかね。
薄いガラスのボールの中に、水と銀箔、それから街のジオラマが入っています。
綺麗ですねぇ、まるで雪が降っている様です」
(゚、゚;トソン「和んでる場合じゃないでしょう!! あ、いや失礼。
あんなもので遊んで、手を滑らせたりしたら大変ですよ」
( ・∀・)「大丈夫でしょう。 彼女がいるのはふかふかのソファーベッドの上ですよ?
万が一落としたとしても、叩きつけでもしない限り大丈夫です」
(゚、゚トソン「そうは言っても、やはり心配なものは心配ですよ」
( ・∀・)「まぁまぁ、落ち着いて。 まだ、あれで事件が起こると決まったわけじゃないでしょう。
続きを見てみましょう」
(゚、゚トソン「心配です……」
* * *
*(‘‘)*「――――
みこくのひかりにてらさるうちに
おなかがすいたらおいでなさい」
*(‘‘)*「みこく? みこくってなんだろ」
* * *
(゚、゚;トソン「目を離したら――」
* * *
*(;‘‘)*「あっ!! きゃっ!!」
――ぽすっ。
* * *
( ・∀・)「ほら、ね」
(゚、゚;トソン「心臓に悪いです」
* * *
――がちゃん。
*(;‘‘)*「!!」
* * *
(゚、゚;トソン「……」
( ・∀・)「いやはや、確かにベッドの上に落とせば割れない。
ですが、ガラス玉の上にガラス玉を落とせば割ることができる。
彼女、なかなか切れ者のようです」
( ・∀・)「おや、お母さんが音に気付いたみたいですね」
* * *
(;゚ー゚)「どうしたの!? 今、何か割れる音が――」
*(;‘‘)*「……」
( ゚ー゚)「ヘリカル、それ、何?」
*(;‘‘)*「……しらない」
( ゚ー゚)「それ……初めてショボン君に買ってもらった……」
*(;‘‘)*「違うの!! わたししらないの!!」
( ー )「あんたなんか……」
*(;‘‘)*「お母さん!! わたし」
(#゚-゚)「あんたなんか……あんたなんかもう知らない!!
お皿の上にでも連れて行かれればいいのに!!」
*(;‘‘)*「お母さん」
(#゚-゚)「知らない!!」
* * *
(゚、゚;トソン「……」
( ・∀・)「あちゃー、虫の居所が悪かったんでしょうかね。
あの歳の子供にとって、あれは死刑宣告にも等しい発言ですよ」
(゚、゚;トソン「胸の傷が痛みます……」
* * *
*( ;;)*「ぐすっ……ひっく……う」
――どうして泣いてるんだい?
*( ;;)*「お母さんのたからもの……こわしちゃったの」
――ははぁ、それで怒られたってわけかい?
*( ;;)*「うん……」
――ヘリカルちゃんは悪くないよ
*( ;;)*「でも……」
――なに、あんながらくたくらいで怒る方がどうかしてるんだ
*( ;;)*「がらくたじゃない!! たからものなの」
――親にとってはね、子供以上のたからものなんて無いんだよ
*( ;;)*「でも……」
――いちばん大切なのは、子供なんだよ。 それ以外はいくら壊れても構わない、がらくたなんだよ
*( ;;)*「……」
――ほら、ヘリカルちゃんを怒る人はもういないよ
*( ;;)*「ほんと?」
――ああ、だから泣くのをやめてこっちにおいで
*( ⊃;)*
*(‘‘)*「どっち?」
――こっちさ。さぁ、早くおいで
――お菓子もあるし、そうだ、一緒におはじきでもしよう。 かるたもあるし、けん玉だってある
*(*‘‘)*「おはじき!?」
――ああ。一緒におはじきで遊ぼう
――最近、誰も来てくれないから寂しかったんだ
――さぁ、みこくのひかりにてらさるうちに
* * *
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「……」
* * *
(;´・ω・`)「見つかったか!?」
(;゚ー゚)「ううん、どこにも」
(;´・ω・`)「ヘリカル……いったいどこへ……」
(*゚ー゚)「……あたしのせいだ」
(;´・ω・`)「怒るのは仕方ない。 僕だって、その場にいれば怒ったさ」
(*゚ー゚)「違うの……」
(´・ω・`)「?」
(*゚ー゚)「あたし、言っちゃったの。 『あんたなんか、お皿の上にでも連れて行かれればいい』って」
(;´・ω・`)「そんな……馬鹿馬鹿しい。 ただの言い伝えじゃないか」
(*;ー;)「でも……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、二人とも、ヘリカルちゃん、見つかったわ!!」
* * *
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「……」
* * *
(´・ω・`)「……」
*( )*
(*;ー;)「ヘリカル!! ヘリカル!!」
( ^ω^)「……湖の真ん中に……それから、これを」
(´・ω・`)「……おはじき?」
( ^ω^)「ヘリカルちゃんが手に握っていましたお」
(´・ω・`)「綺麗な……銀色の……」
(´ ω `)「……」
* * *
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「トソンさん?」
Σ(゚、゚;トソン「あっ、はい!!」
( ・∀・ )「VIPの街とは、もともとは部落の村でした。
部落に与えられる土地ですよ? 肥えた土地なはずがなく、交通の便も悪い。
その中で、この伝承は産まれたのです」
(゚、゚トソン「金の案山子がお辞儀をしたら
五つを廻った可愛い玉を
蟻の兵隊運んでく
漆の塗られたお盆の中に
銀色お皿がありました。
これは、先ほどの少女が口ずさんでいた童歌です。 さらにこの後、
みこくの光に照らさるうちに
お腹が空いたらおいでなさい。
こうも歌っていましたね」
( ・∀・)「この伝承は、言ってしまえば“生け贄”の風習から産まれたものでした。
では、どのように生け贄を捧げるのか? ですね。 鍵は、この童歌です」
( ・∀・)「“金の案山子がお辞儀をしたら”このフレーズですが、
なにぶん劇中では資料があまり出ませんでしたので、後回しにしたいと思います」
(゚、゚トソン「“五つを廻った可愛い玉を”
玉とは、真珠や水晶のような宝石を指す言葉です。
そして、子供、特に、女の子を指す言葉でもあります。
“五つを廻った”つまり、五つの年を経た、『五歳のの子』と解釈できますね」
( ・∀・)「“蟻の兵隊運んでく”
運ぶ物は、既に明らかになりました。 では、“蟻の兵隊”とは?
蟻は地面を掘りますね。 巣を作るためです。 では、蟻以外に地面を掘るのは?
そう、農民である村人です。
『村人の集団が、女の子を運ぶ』。 いったいどこに?」
(゚、゚トソン「“漆の塗られたお盆の中に”
お盆。 察しの良い方は、既にお気付きでしょうね。
この地形、『盆地』を指す言葉です」
( ・∀・)「“銀色お皿がありました”
これは、トソンさんの仰った『盆地』に関係があります。
へこんだ土地に雨が降ればどうなりますか? そう、水が溜まりますね。
お皿。 つまりそれは、『湖』を指すのではないでしょうか。
では何故、“銀色”なのか? それは後程」
(゚、゚トソン「“みこくの光に照らさるうちに”
みこく、とは、この地方の言葉で『月』を意味します。
『月の光に照らされている間に』。 こう解釈できます」
( ・∀・)「何が照らされているのか。
そう、湖です。 水面が照らされる様。 それをVIPの民は“銀色の皿”と形容したのでしょう。
あるいは、水面に映り込む月自体かもしれませんが」
(゚、゚トソン「“お腹が空いたらおいでなさい”
これはもう、説明は要りませんね。
お腹が空く。 つまり、飢えです」
( ・∀・)「最後に、“金の案山子がお辞儀をしたら”
推測ですが、稲穂の事ではないでしょうか。案山子は、畑や田に立っていますね。
どの田にも必ずいる、金色の案山子。
それが、お辞儀をする。
つまり、『育った稲の穂が重さによって垂れ、それがお辞儀をしているように見える』
ということではないでしょうか。
穂が垂れるのは?収穫の時期、秋ですね」
( ・∀・)「栄えていれば、むざむざ働き手を減らす『生け贄』などという風習は無かったでしょう。
しかし、ここは痩せた土地でした。
飢餓に襲われる事が多々あったのではないでしょうか。
その不作の理由を、神の怒り、主の祟りなど、自分たちの力の及ばない場所におく。
これは気休めとしてはかなり有効ですよ。 なんせ、人を殺しているんですから」
(゚、゚トソン「纏めると、
“秋になったら五歳の女の子を生け贄として湖に浮かべる”
こういうことですね」
(゚、゚トソン「……では、あの少女に呼び掛けていたのは?」
(゚、゚トソン「今ではもう、行われることのない風習なのでしょう?」
( ・∀・)「『最近誰も来てくれないから寂しかった』
これは、この風習が廃れてしまったせいで仲間が来ない。 こういう事ではないでしょうか
仲間とは、『あの湖に共に住む仲間』、ということです」
(゚、゚トソン「あの……」
( ・∀・)「トソンさん」
(゚、゚トソン「……はい?」
( ・∀・)「『火の無いところに煙は立たぬ』、ですよ。
風習自体が無くなっても、童歌になって受け継がれている。
この歌を作った方にはきっと、そうやってまで伝えたい何かがあるのではないでしょうか」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「お化けなんていませんよそんな非科学的な確たる物証を出してから言ってもらいたいものですね」
( ・∀・)「貴女のその思いもまた、煙と言えるのではないでしょうか」
( ・∀・ )「では、またいつか」(゚、゚トソン
( ・∀・)小話のようです(゚、゚トソン 終
この小説は2009年4月6日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:e0nY9/DRO 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
お題・七不思議
・銀色のお皿
ご意見等あれば米欄にお願いします