はじめてブーン系小説を読む方は
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―( <●><●>)―
(;<●><●>)「いやー…いやいや。…着いた着いたー…」
待ち合わせ場所はここで会っていた筈。
階段を駆け上がってきたのですっかり息が切れてしまいました。
時計を確認すると、約束した時刻より十分程過ぎていました。
シューはまだ来ていないみたいです。
あそこに立っている自販機でお茶でも買って飲んでいようか。
そんな事を考えていると、鞄の奥で鳴る携帯の着メロが微かに聞こえました。
シューのアドレスからかかってきた時に鳴るように設定した曲です。
( <●><●>)「報告かな」
もう少し遅れるから適当に暇つぶししといて、とか。
待ち合わせ時刻に間に合いそうにない時に彼女がよく告げる言葉です。
そこに喫茶店があるから入って待つのもいいですしね…えーとどれどれ……
lw´‐ _‐ノv『おそっ。なかなか来なくて暇だから、高校生徒諸君と共に棒高跳びして遊んでるからね』
( <●><●>)「……なんぞ…」
―lw´‐ _‐ノv―
この寒空にレディを待たせて何を考えているんだ、あの目玉。
休憩がてらに携帯を弄くり、ついでにメールを送ってみたが、ワカッテマスからの返信は未だにない。
私が跳ぶ度、ギャラリーの男子生徒達はウオオとかキョワーオとかいちいち盛り上がる。
このバー、そんなに高く設置されていないのに。
あーそれにしてもスカート穿いてくるんじゃなかったな。寒い、ひたすらに寒い。
というかスカートしか穿くもの無かったしな、下。
シュールシュルシュルシュールシュル
長袖短パンの女子生徒が、ポールを手に駆け出した。
足長ぇ、と身体を舐めるように観察しつつ、しつこく鳴き続ける携帯を開く。
ワカッテマスだな。メールで送ったんだからメールで返せと。
( <●><●>)『今着きました。…というか、どこにいるんです?』
lw´‐ _‐ノv「vip高」
(;<●><●>)なんでそないなところに…』
lw´‐ _‐ノv「だって君遅いんだもの。美女を待たせちゃいけないよ、美女を」
( <●><●>)『誰が美女ですか。…迎えに行くので絶対そこ動かないでくださいね』
lw´‐ _‐ノv「さぁそれはどうかなぁフヒヒ!」
(#<●><●>)『動 か な い で く だ さ い ね』
ぶつりっ。
強制的に電話が切られ、私は顰め面で画面を睨む。
冗談の通じないやつめ。
―( <●><●>)―
丁度体育の授業を行っていたようです。
グラウンドの一角に集合した生徒達の最前列に、シューは紛れ込んでいました。
いい大人が何をしているのかと…。
( <●><●>)「…シュー」
lw´‐ _‐ノv「おおーうワカッテマス!やっと来おったか」
手なんか振っている場合じゃないでしょ、呑気な人め。
( <●><●>)「全くもう、人様に迷惑かけて…。どうもすみませんでした、授業中にこの馬鹿女が…」
lw´‐ _‐ノv「こら、誰が馬鹿だ誰が。美女を馬鹿呼ばわりするでない」
( <●><●>)「だから誰が美女だと。ほら、さっさと行きますよ」
すみませんどうも、と何度も頭を下げつつ、私達は逃げるようにその場を去りました。
男子生徒達の悔しそうな声やらため息を背に聞きながら。
こんなの彼女にしたら身が保ちませんよ、と言いたかったのですが、
本人がここにいるので言わずにおきました。
lw´‐ _‐ノv「いやー良い汗かいた」
( <●><●>)「…良い汗かきましたか」
私は悪い汗をかきました。
lw´‐ _‐ノv「ワカッテマスぅ」
( <●><●>)「なんですか」
lw´‐ _‐ノv「久々に運動したからぁ……お腹と背中が…くっつきそうなのぅ」
シューは腰をくねらせながらそんな事を言ってきました。
正直不気味で気持ち悪いです。
( <●><●>)「…要するにお腹が空いたと」
lw´‐ _‐ノv「そうともゆぅ」
クレヨンしんちゃんみたいな声色でそう言うと、シューは再び身体をくねらせました。
―lw´‐ _‐ノv―
時間帯が時間帯だからか、ファミレスには殆ど客がいない。
当たり前か。三時に食べる昼食は昼食であって昼食ではない。
俗に言う午後のスイーツ(笑)ってやつに分類される。
lw´‐ _‐ノv「君もまだ昼食食べてなかったのかい?」
( <●><●>)「食べました」
lw´‐ _‐ノv「おや、そう」
さらりと答えるギョロ目。
こういう時は『君と一緒に食べようと思って、昼食はお預けしていたのサ☆』とか言うべきだろう。
女心を分かっていないな。
lw´‐ _‐ノv「ここの納豆パスタ、いまいちだな」
( <●><●>)「二人前も平らげておいてそんな事いうか」
ワカッテマスはウーロン茶を頼んでちびちびと飲みつつ、メニューを再び読み返している。
lw´‐ _‐ノv「なんか頼もうぜブラザー。寂しいじゃないの」
( <●><●>)「そのつもりです…貴方もまだ食べる気満々のようですから。
すみません、"ぷるぷるプリン"一つ」
お前は最近のスイーツ女子高生か。
lw´‐ _‐ノv「男ならもっとドッシリしたもの頼みなさいよ」
( <●><●>)「だってもう昼食食べ終えましたし」
lw´‐ _‐ノv「丼ものなら軽く食べられるだろう。米とか米とか米とか」
( <●><●>)「貴方の胃と私の胃を一緒にしないでください」
ワカッテマスの頼んだ"ぷる何とかプリン"はすぐに運ばれてきた。
それと一緒に、私がさっき頼んだお茶漬けも運ばれてきた。
( <●><●>)「ありがとうござい……あ、お茶漬けはそちらです」
間違えられてやんの。
もうそのまま米食っとけ。
――とろとろのカルメラソース。
――その上に乗っかったふわふわの生クリーム。
――その横に添えられた桃色のサクランボ。
しまった。割とうまそうだ。
頼めば良かったな。
―( <●><●>)―
lw´‐ _‐ノv「ワカッテマス」
( <●><●>)「…何でしょう」
スプーンでプリンに触れようとした直前で声をかけないでください。
というか、絶対計っていったっぽいです。この顔は。
lw*´‐ _‐ノv「ちょっと分けて♪」
( <●><●>)「そんだけ食っておいてまだ食うつもりか」
lw*´‐ _‐ノv「その生クリームとサクランボだけでいいからぁ♪」
シューは身体をくねくねとくねらせています。お色気作成とかいうものでしょうか。
貴方がそれをやると不気味なだけです。
大体、生クリームとサクランボ取り除いたらただの"プリン"じゃないですか。
( <●><●>)「プリンもサクランボも生クリームと一緒に食べるのが美味しいのに…」
lw´‐ _‐ノv「君の好みは知らん。さぁ寄越せさぁ貢げ」
物をもらうときの態度にしては威張りすぎではなかろうか。
ワカワカワカワカ...
( <●><●>)「おっと、失礼。電話が…」
lw´‐ _‐ノv「むぅ。くりーむ…」
( <●><●>)「…勝手に取ってってください」
お茶漬けについてきたスプーンを目で示し、とりあえずプリンをシューの方へ。
電話をかけてきたのは友人のようでした。
店内なので小声で話します。
―lw´‐ _‐ノv―
( <●><●>)「…そうそう……ですよねー…それでね、……」
( <●>∀<●>)「…はははは」
lw´‐ _‐ノv(笑い顔きめぇwww)
ワカッテマスは笑いながら鞄の中へ手を突っ込むと、メモ帳とペンを取り出して何やら書き始めた。
何の話をしているのだろう。激しく気になるが、盗み聞きすると怒られるので止めておく。
lw´‐ _‐ノv「………」
生クリームをすっかり舐め終え、サクランボも種ごと丸呑みした。
とりあえず、待っているのも退屈なのでお茶漬けをかっ込む。
透明な器に乗った丸坊主のプリンは、見た目が地味でどこからどうみても普通の"ぷっちんプリン"だ。
これじゃあ食べる側のワカッテマスも寂しいだろう。
ただのプリンを食べるんじゃ、コンビニでぷっちんプリン買った方がうまい。
lw´‐ _‐ノv(もうひと味何か……)
米でも乗せてやろうか。
そんな事を考えつつチラリとテーブルの端を見遣った時。
小さな小瓶に入れられた真っ黒い醤油が目に入った。
―( <●><●>)―
lw´‐ _‐ノv「どっかーん」
(;<●><●>)「だから再起動すれば済むって話でエエェエエエェエエエ!?」
シューが僕のプリンに思いっきり醤油をぶっかけました。
唐突に。何の前触れもなく。そんな会話もしていないのに。
というか、それ蓋に穴空いているからわざわざ蓋開けなくてもかかるのに!
(;<●><●>)「ちょっと!何してくれてるんですか貴方!」
lw´‐ _‐ノv「何って。寂しそうだったから一味加えたんだよ」
(;<●><●>)「寂しそうって誰が?」
lw´‐ _‐ノv「プリンと君と…時々私?」
(;<●><●>)「全然寂しくないし寂しそうでもないし!」
lw´‐ _‐ノv「これであの高級食材ウニの味が楽しめるそうだからいいじゃないか。
プリン食らうよりよっぽど至福だよ」
誰ですか、『プリンに醤油かけるとウニの味になる』って言い出した人。
lw´‐ _‐ノv「ほい、返す。生クリームとサクランボありがとね」
( <●><●>)「…いや、この状態で返されても……あーあ、でろでろ…」
――カラメルソースに混じった醤油。
――プリンを伝い、でろり…とお皿の底に溜まっていく醤油。
――カラメルソースの甘さに加えられた醤油のしょっぱさ。
…貴方はこれを私にどうしろと?
lw´‐ _‐ノv「食え」
( <●><●>)「無茶言わないでください」
( <●><●>)「…でも残すのはお店に悪いしなぁ」
プリン醤油を前にして、とりあえずスプーンを握ってみます。
携帯から聞こえる友人の声が遠くなっていきます。
とりあえず電話を切っておきました。
lw´‐ _‐ノv「ちょっと毒味してみてよ」
( <●><●>)「味見じゃないんですか」
lw´‐ _‐ノv「間違えた味見。ほれほれ、プリンが食べて食べてと甘じょっぱい声を上げておるぞ」
シューに促され、とりあえずプリンを一口すくってみます。
なんでしょう、この、醤油とカラメルソースとプリンが入り交じったこのドロドロの物体が放つ不気味さ。
―lw´‐ _‐ノv―
( <●><●>)「…もー……貴方も半分食べてくださいよ」
lw´‐ _‐ノv「君はその気持ちの悪い物体をレディに食せというのかね」
( <●><●>)「というか貴方のせいですよねコレ」
( <●><●>)「あー……プリンがかわいそうに…」
とかいいつつちゃんと食べるのは分かってます。
ぱくりっ。
スプーンにすくったそのおどろおどろしい物体を噛みしめる内、ワカッテマスの顔が歪む。
やっぱりうまくないのか。良かった、私が食べるんじゃなくて。
(;<●><●>)「…すごく……吐きそうです…」
lw´‐ _‐ノv「がんばれがんばれワーカーちゃん♪」
( <●><●>)(帰ったら同じもの食わせてやる…)
その後、好物のプリンを強いて食べているワカッテマスを手伝い、私も少し食べてやった。
なるほど確かに『まずい』の一言に尽きる味だった。
せっかくデザートに食べた米の味を舌先に残したまま帰ろうとしていたのに、台無しだ。
でもまあ。
なんだかんだで楽しかったから、良しとしよう。
この小説は2009年2月27日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:33KSNiU30 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
お題お腹と背中が…
棒高跳び
どっかーん
ご意見等あれば米欄にお願いします