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ζ(゚ー゚*ζ虐げるようです

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ

作者注※閲覧注意、百合注意




 河合デレ、女子高生。
 学年は二年で、クラスは一組。帰宅部。
 成績は平均で、運動神経も平均、得意科目は家庭科と国語系。

 顔も平均的で、性格は気弱。
 一人っ子で両親はいつも忙しく、一人でいる事が多い。
 性格の問題で友達は少ないけれど、一緒にお弁当を食べる人は居た。
 特別裕福な家庭では無いのでおこづかいは多くはない。

 身長体重も平均的だけれど、体型は少しだけ太めかも知れない。


 それが、私。
 私から見た、私の全て。

 そんな私の制服は、今日も、汚れ、破れている。

 その理由は、そう、



20090221224142.jpg



 私は今、いわゆる、虐めにあっている。




 始まりは何だったのだろう。
 何か悪い事をしたのか、気にさわる事をしたのかは、わからない。

 けれど虐められている事は確かだと、私は思う。

 朝に登校すれば机に花を飾られ、体操着などを汚され、上履きを隠され、
 昼休みや放課後、暇がある時に呼び出されては殴られ蹴られ、唾を吐かれ。

 これらを虐めと言うならば、きっと私は虐められているのだろう。


 原因も、理由も、何もわからない。
 ただ、ある日突然、教室中の女子から無視された。

 それが始まりだった、筈。



 重い足を引きずって登校した私の席には、いつも通り、白い花。
 椅子を引いて腰かけると、画鋲が刺さる。
 机に手を入れたなら、剃刀が。

 そんな私を見て笑う女子達。
 もう良い、慣れてしまった。
 慣れてしまったんだ。

 多少の痛みは我慢できる様になった。
 多少の苦しみは噛み殺せる様になった。

 休み時間にトイレに連れ出されて、便器の水を飲まされる事も。
 体育の時間に、ボールをわざと当てられる事も。
 上履きの中に虫や小動物を入れられ、それを履く事を強要されるのにも。
 みんな、慣れた。


 抵抗はした、けど無意味だと知った。
 虐めの首謀者である少女の笑顔を見ていると、無意味だと理解してしまった。


(*゚ー゚)「デレ、ちょっと来て?」


 昼休み、お昼ご飯の菓子パンの袋を開けていた私の前に立ち、にっこり笑う少女。
 私は小さく返事をして、菓子パンを置いて席を立った。

 教室から私を連れ出したしぃさんは、とても可愛い。
 少し小柄で、髪は綺麗な焦げ茶のセミロング。
 成績優秀で運動神経もよく、人当たりも良い。
 クラスだけでなく、全学年、教師からの評判も良い女の子。

 友達の少ない私とよくお昼を一緒にしてくれたり、話しかけてくれた彼女は、


(*゚ー゚)「ね、上、脱いで?」


 まち針を片手に、笑う。

 とてもとても、愛らしく。



 首謀者たる少女は、とても愛らしい。
 女の私から見ても、見とれるほどに可愛らしい。

 首謀者、しぃさん。
 普段は優等生の顔をしているしぃさんは、
 私を呼び出して虐める時、笑顔を見せる。

 それはもう、それはもう可愛らしい最高の笑顔を。


 完璧とも言えるしぃさんに憧れていた私は、彼女に虐められる様になった時、ひどいショックを受けた。

 尊敬してて、大好きで、憧れていたしぃさんに虐められる。
 それはひどく悲しくて、苦しくて、悔しくて。


 でも、私もどこかおかしいのだろう。

 私はしぃさんに虐められる事が、特別なのだと思ってしまった。
 僅かな優越感を抱いてしまった。


 もちろん苦しいし、悲しいし、悔しい。
 虐められたくなんか無い、痛いのは嫌。

 けれど、私は彼女にとっての特別なのだと
  そう、思わなければ、やってられなかった。


 二階の廊下の一番奥、角を曲がった先にある、みんなから忘れ去られた様な、使われていない教室。

 そこへ連れてこられた私は、言われるがままにセーラー服の上を脱ぐ。
 指先が震えてうまくチャックを下ろせない私は、埃っぽい教室の真ん中
  古びた椅子と机に挟まれながら、冷や汗を流す。

 もたもたとどんくさい動きでセーラー服を脱ぐ私の姿に、しぃさんはまた、にっこり笑った。


(*゚ー゚)「もう、愚図なんだから」


 左手にまち針を持ったまま、しぃさんは右手を私の胸元へと伸ばす。
 細い指先が、私のセーラー服のチャックを、ゆっくりと下ろして行く。

 すい、とすぐ近くまで寄ってきたしぃさん
 反射的に身を引いた私は、古びた机につまずいて机の上に倒れ込む。

 がたん、私の重みが机にかかる音。
 上半身を机に乗せて、仰向けに倒れる様な格好になった私。

 その机に膝を乗せたしぃさんが、私に覆い被さるみたいにして、
 セーラー服の上をゆっくり、ゆっくり脱がせていった。

 セーラー服の上を脱がされれば、あらわになる白いキャミソール。
 キャミソールの下に何もつけていない私の胸は透き通り、冷たい空気に僅かに反応した。

 そして、何も出来ずに呆然とする私、
 その視界の真ん中に存在する、しぃさんの笑顔。


(*゚ー゚)「綺麗よね、白い肌、すごく柔らかい」


 しぃさんの指先が私の鎖骨を撫でると、その指が思ったよりも冷たくて、私の身体がぴくりと跳ねる。

 何をされるのかと怯えた顔をする私を見て、また、しぃさんは笑う。
 腹が立つほどに愛らしく、にっこりと。


(*゚ー゚)「ね、デレ? 私が怖いかしら?」

ζ(゚-゚*ζ「……はい」

(*^ー^)「そう、良かった」

ζ(゚-゚;ζ「な……っぁ、うっ」


 ぷつり。


 キャミソール越しに突き立てられた、細いまち針。
 寝転び、重力に従って流れる乳房
 その少し上の辺りに刺さった針の痛みに、私は眉を寄せた。

 大した長さも太さもないまち針は、身体を少し傷付けるだけ。
 ただそれだけだと分かっていても、胸に近い所を刺されれば、痛む。とても。


ζ( - ;ζ「い……っづ……ぅ」

(*゚ー゚)「良い顔ね、痛がってる顔」

ζ( - ;ζ「抜い、て……く、だ……さい……」

(*^ー^)「あら、私に指図? 偉くなったわね、デレ」

ζ(゚-゚;ζ「違っ、ひ、ぃっ! …………っぁ、あ、……ぎ、うっ!」


 ぷつん。ぷつん。

 ソーイングセットから新たに取り出された二本のまち針が、
 私の乳房に、突き刺さる。

 右胸の横辺りに刺された二本のまち針を指先でつつくしぃさん。
 ほんの少ししか刺さっていない筈なのに、胸から走る痛みは、相当なもので。

 私の目尻から、ぽたりと、涙が流れる。


 優越感を抱こうが、私はしぃさんに、強い恐怖を感じている。
 ちいさな優越感なんて飲み込むくらいに、大きな恐怖を。

 その恐怖の対象が、笑うのだ。私を傷付けて、ひどく楽しそうに、笑うのだ。

 今は、痛みと恐怖しか感じられなかった。


 机の足を強く握って痛みに耐える私の涙を、そっと掬うしぃさんの冷たい指。
 その反対側の手が、胸に刺さるまち針をゆるゆる動かして遊ぶ。

 赤い染みのついたキャミソールを、出来るだけ見ないように、固く目を瞑る。
 奥歯を噛み締めて痛みを耐えようとするけれど、しぃさんがまち針をぐりぐりと動かせば、
 私の口からはかすれた悲鳴が漏れるだけ。


ζ( - ;ζ「や、ぁ……ひっ、ぎ……はっ、ぁう……っ」

(*゚ー゚)「あら、声を殺しちゃ意味がないわ? ほら、もっと泣くの、ね?」

ζ( - ;ζ「あ、あ、あっ────っぐ、ぁああぁぁああああっ!!
       ああ、ああああっ!!」

(*^ー^)「うんうん、やっぱりこうじゃなきゃよね?」

 ぴんと立った乳頭をキャミソール越しにぎりりとつねりあげられ、
 その持ち上げられた胸の先端に、ぶつり。

 今までよりも強い痛みに身体をびくびく跳ねさせて、私は悲鳴を上げた。


ζ( - ;ζ「はっ、ぁ、ぐ……っは、……はっ、はっ……」

(*゚ー゚)「あら、息荒くしちゃって。
    汗かいて、キャミソールも余計に透けて、色っぽいわよ?」

ζ( - ;ζ「やっ、やっ……あっ、ひぃっ! もっ、や……触ら、な、でっ!」

(*^ー^)「痛みに敏感なのかしら? そんなに痛がると、嬉しくなっちゃうわ。
     ほら、胸を揉まれるのは嫌? 気持ち良くないかしら?」


 針の刺さった右胸を掴まれ、ぐにゃぐにゃに歪ませる様に揉みしだかれる。
 無論、訪れるのは痛みだけ。

 汗を流して机の足を掴んだまま、身体をがくがく震わせる。
 胸が熱い、右の胸が焼けるみたいに、熱い。
 針の刺さってるところが脈打つみたいに、どくどく、熱くてうるさくて。

 呼吸を荒くして、視界を涙で歪ませる私は胸を上下させ、
 浅い呼吸で酸素を肺へと送り込む。
 すると、横から乳頭を貫いたまち針を弄ぶしぃさんが、ふと顔を上げた。


 どうしたのかと僅かに首を巡らせれば、微かに耳へと舞い込む、足音。


 助かった、と一瞬思った私の胸に、新たに襲いかかる痛み。
 驚いてしぃさんの方に顔を向けたなら、胸に刺さる針が一本、増えていた。


ζ(゚-゚;ζ「もっ……も、やぁっ! 嫌っ!」

(*゚ー゚)「あら、嫌? 止めてほしいの?」

ζ(゚-゚;ζ「いやっ、嫌っ! 止めて、もぉ嫌ぁあっ!!」

(*゚ー゚)「じゃあ止めましょうか、抜くわよ?」

ζ(゚-゚;ζ「へ…………ぁ……あぐぅっ! ひ、ぃんっ、きゃあぁっ!」


 勢い良く引き抜かれた針。
 二本、三本と躊躇無く抜かれる針に、私はまた痛みに震える。
 喉を晒して身体を震わせ、声をかすれさせる私。

 それを見てしぃさんは笑いながら、
 まち針をソーイングセットに仕舞い、私のセーラー服を正した。


 がらがら、開かれる教室の引き戸。
 するりと教室に入り込むのは、複数の女子。
 その先頭には髪を染めた女の子が、短くしたスカートから白い太股を覗かせていた。


从 ゚∀从「さっきの悲鳴なんだぁ? しぃ」

(*゚ー゚)「あらハイン、空耳じゃないかしら?」

从 ゚∀从「ふぅん」


 私と机から降りてスカートの埃を払うしぃさんは、
 先頭に立つ女の子、ハインさんに微笑みかける。

 ふらふらと机から降りた私は、二人のやり取りと、その後ろに立つ数名の女子に、また怯えるのだ。

 ハインさんはしぃさんの仲間とか友達と言う訳じゃない。
 ただしぃさんが始めた虐めに、遊び感覚で参加している女子の一人。
 それだけだ。

 どうやら本人は高い位置に居ると思っているみたいだけれど、
 実際はそんな事はない。
 しぃさんからすれば、ただの道具のひとつ。そんな見方をされている。


 どうして分かるのかなんて、きっとナンセンス。
 私は、しぃさんをいつも見ているからだ。


 じゃあやるか、とハインさんが笑い、やって来た女子達と共に私の前へと。
 未だにふらつく私の腹部を狙い、突き出される足。
 腹部に強く叩き付けられた足に、ひゅっと息を吐いて倒れ込む私
 私の重みでがらがら音を立てて倒れ転がる椅子と机。

 その中に埋もれるように倒れた私に、容赦なく襲いかかる女子達の足。
 腕や腹部、腰に脚。
 様々な場所を蹴られて、踏まれて、紺色のセーラー服はどんどん白くなる。

 まきあがる埃を吸い、腹部やら胸やらを蹴られた私は激しく咳き込む。
 口の端からだらしなく唾液をたらして、
 顔を庇う様に腕を持ち上げる私の目には、いっぱいの涙が溢れていた。


 腕と女子達の隙間から見上げたしぃさんの顔は、さっきと変わらない笑顔だった。


 ああ、身体中が、いたい。


 頭を踏まれれば二つに結った髪がほどけ、私の癖毛が床に広がる。
 染めていない、黒くて長いネコ毛。

 ほどけた方の髪を踏まれ、反対側の髪を掴まれて、私は痛みに泣く事しか出来ない。


(*゚ー゚)「ハイン、顔は駄目よ?」

从 ゚∀从「分かってるよ、跡が残るからな」

(*゚ー゚)「……そうね」


 みんな、しぃさんの言う事はきく。
 それはしぃさんが怖いからか、可愛いからか。

 しぃさんはみんなの中心で、一番上。
 成績優秀だから、可愛いから、そして怖いから。

 みんなの一番上に席を置かれた、女王様みたいな彼女。


 ああ、どうして女は、崇める物を作りたがるのだろう。


 私を蹴り、踏む足達の動きはなかなか止まない。
 私が悲鳴をあげて震えながら泣いて謝罪する、この無様な姿を見て楽しんでいる。


 謝罪の理由も意味も無いのに、女子達は私に謝れ謝れと笑うのだ。
 その行為はひどく無駄な事
 けれど女子達からすれば、謝罪を求める事が快感に繋がる。

 謝らせる事で、私が女子達より下の存在だと言いたいのだろう。
 認めさせたいのだろう。
 理由の無い上下関係。
 それは、女子が好む物。


 理由よりも自分の気持ちが、意味よりも今の楽しさが大事。
 そんな事で蹴られて、踏まれて、殴られて、謝罪を求められるのだ。


 どんなに下らないと、理不尽だと思っても
 私には、彼女達を非難なんて出来ないのだけれど。



(*゚ー゚)「あら、そろそろ時間ね。行くわよ、ハイン」

从 ゚∀从「あ? ……ったく、しょうがねぇな」

(*゚ー゚)「あなた達も、いつまでも遊んでいないで、さっさと行きなさいな?」


 ようやく止んだ暴力と罵声、
 そしてしぃさんの一言で、ぞろぞろと離れて行く女子達。

 それはしつけられているのではなく、ただの本能。
 逆らわない方が良いと、本能で感じているのだろう。


 だって、ほら。
 しぃさんがじろりと睨んだだけで、みんな身体を強張らせて教室を出て行く。

 好んで私を虐める女子達は往々にしてしぃさんが、
 無言で睨みながら笑うしぃさんが、怖いのだろうな。
 ただの女子高生が、怖いのだろうな。


 ただ、頭が良くて可愛いだけの女子高生が。



ζ( - ζ「……何が、ただの……女子高生、よ……」


 ぽつん。
 私一人になった教室で、私は呟く。

 倒れた椅子と机に埋もれたまま、唇を噛んだ。


 その、ただの女子高生に一番怯えているのは、私の癖に。
 誰にも言えずに怯えて怯えて、暴力を受け入れてる癖に。


 ああ、でも
 皆が皆、私を獲物としてとらえるこの学校に、逃げ場なんて無いんだな。
 親にも誰にも言えないこの状況。

 私はただ、理由も分からず、少しずつ殺されて行くのだろう。


 意気地無し。
 逃げてばかり。


 でも、でも、でも、

 虐める人が悪いとか、虐められる人が悪いとか。

 虐める人も悪いのだが、虐められる人も、もしかしたら、悪いのかも知れない。

 怖いから、理由があるから。
 そう言って、抵抗とかやり返すとか、何も出来ないで居るのは、
 紛れもなく虐められている私なのだから。


ζ( - ζ「……弱虫」


 誰が悪いの? 私が悪いの? みんなが悪いの?
 もう誰が悪でも良い、その悪を憎めば私は私を保てる。

 もう、頭がぐちゃぐちゃだ。
 何も分からない、何も分からない、分からない分からない。



 私は汚れたセーラー服を整えて、倒れた机と椅子を元の位置に戻し、
 虚ろに天井を見上げていた。
 汚れた床にへたりこんだ私の視界は、なんだか、歪んでる。


 何も分からない。
 何も、分からない。
 分からない。

 分からないって、逃げれば楽だった。

 楽なの、楽なのよ。
 なんの解決にもならないってわかってるし、
 意気地無しで弱虫で馬鹿で卑屈だって事もわかってる。

 それでも、それでも、勇気も力も何も何も、出てこないの。
 出てこないの、出てこないの、このくそったれな涙以外。


 ぽたぽたぽた。
 頬を伝って顎から滴り落ちる涙が悔しくて、私は余計に、涙を溢す。


 机と椅子にぶつかった背中が、暴力を受けた身体中が、とても、痛かった。




 ある日突然始まった、友人だと思っていた子からの虐め。
 それは止む事はなく、
 賢く可愛く恐ろしいその子にくっついて、虐める人が増えるばかり。
 毎日の陰湿な虐め。
 毎日の過激な暴力。
 慣れてしまったと笑えば強くみえるだろうか、それとも弱くみえるだろうか。
 最早そんな事よりも、そんな事よりも、


(*゚ー゚)「ほらデレ、あーん」

ζ(゚-゚ ζ「あー、ん」

(*^ー^)「美味しい? その辺に落ちてたコンドーム」

ζ(゚-゚ ζ「は、ひ」

(*^ー^)「あらあら、よくそんな気持ち悪い物が美味しいなんて言えるわね。
      変態さんかしら? それとも淫乱?」

ζ(゚-゚;ζ「ち、ちが、」

(*゚ー゚)「じゃあその縛ってある口、ほどいて、中のを嘗めなさいな?」

ζ(゚-゚;ζ「っ! や、嫌、」

(*゚ー゚)「あら、嫌なの? 飲ませてほしいの? それとも止めてほしい?」

ζ(゚-゚;ζ「やめ……て、ほしい、です」

(*゚ー゚)「なら止めましょうか、その代わり頭出して?
     こっちに、下を向いて」

ζ( - ;ζ「……はい」

(*゚ー゚)「そうそう、はい、ぎゅうっ」

ζ( - ;ζ「うっ、く……ぅ」

(*^ー^)「あはぁ、頭踏まれてるデレ、可愛いわ」

ζ( - ;ζ「……り、が……とう、ござい……ます」


ζ( ー ζ


 そんな事よりも
 こんな扱いを受け続けて、笑えるようになった私は、
 いったい、どうしてしまったのだろう。


 私はおかしくなったのだろうか。
 私は変になったのだろうか。
 しぃさんに肉体的苦痛を与えられていると、
 無意識のうちに、へらりと笑うようになってしまった。

 しぃさんは気付いているのかいないのか、
 ただ、いつもと同じように私を虐めるだけ。
 どちらにせよ、苦痛に変わりはないのだが。


 使われていない教室、机に座るしぃさん、
 その足元に這いつくばって頭を踏まれる私。
 私は頭を踏まれて笑いながら、思い立つ。

 聞こう、と。

 どうして私を虐めるのか、理由を聞いてみようと。
 聞くのが些か、遅すぎる気もするが。


ζ( - ζ「……しぃ、さん」

(*゚ー゚)「あら、なあに?」

ζ( - ζ「…………何で、いじめ、るん、ですか……」

(*゚ー゚)「分からない?」

ζ(゚-゚ ζ「……分からない、です、そんなの」

(*^ー^)「腹が立つの、うざったいの、鬱陶しいの、イライラするの。
      これ以上の理由が、必要かしら?」

ζ( - ζ「……」


 この人は、ああ、この人は

 何を言っても、きっと、無駄。

 優しく愛らしくにぃっこりと笑うしぃさんに、私は静かに絶望した。

 聞くだけ無駄だろうと分かっていた筈なのに聞いた、私の愚かさに。
 たまらなく愛らしい笑顔で吐き捨てたしぃさんに。



 絶望と、それとは違う何かが、私の中で沸き上がるのを、感じた。




 四時間目の移動教室。
 その準備をしていた私は、机から教科書を取り出したところで、
 後ろから、肩を掴まれた。


ζ(゚-゚;ζ「っ」


 しぃさんはもう教室を出たはず、
 私に触れようとする女子なんてそんなに居ないはず、
 声ではなく肩を掴んだと言う事は、ええと、ええと。

 掴まれた肩をびくんと震わせた私の頭には、そんな事が一瞬で駆け巡った。
 教科書を持つ手が震え、肩に手を乗せる誰かをなかなか確認できない。

 妙に怖くて、怖くて、耳の後ろにかかる息が、怖くて。


从 ゚∀从「ちょっと、ついて来いよ? 河合」

ζ( - ;ζ「! ……は、ぃ」


 耳の後ろからかけられた低い声に、恐怖した。
 けれど、それと同時に、僅かに安堵した。

 知らない人ではない事に安堵したけれど、
 私はハインさんが、怖い。

 この人は私に暴力をくわえて喜ぶ。
 けど、しぃさんと違ってハインさんは、私の反応を見たいからではなく
 ただ、ストレス発散で私を虐めている、そんな感じが、して。

 この人は加減を知らない。
 しぃさんに止められなければ、ずっとずっと暴力を振るおうとする。
 一度それで頭を打って気絶した事があるのだが、
 その時はしぃさんに怒られたらしい。

 やっぱり、しぃさんはよく分からない。


从 ゚∀从「おら、さっさと歩けよ河合」

ζ(゚-゚ ζ「は、い……」


 ハインさんに引き摺られる様にして歩く私。
 セーラー服の襟を掴まれているから、少し息苦しかった。


 連れてこられたのは、いつもの教室。
 埃臭い教室に押し込まれた私はよたよたと数歩歩き、ハインさんを振り返る。

 振り返ったその先には、にやりと笑うハインさん。
 教室の扉を閉めてつかつかと私の前までやってきて、頬を、叩いた。


ζ(゚-゚;ζ「きゃっ、ぁ……う」

从 ゚∀从「本当、抵抗しないよな」

ζ(゚-゚;ζ「……う、あ」

从 ゚∀从「まあその方が楽だから別に良いけどさぁ、イライラするよな、お前」

ζ( - ζ「ごめ……なさ、い……」

从 ゚∀从「ほらな、そう言うとこがイライラするんだよ。
      まあ……楽しいから良いけど、よっ!」

ζ( - ;ζ「きゃあっ!」


 頬を叩かれた衝撃で尻餅をついた私に再び襲いかかる、ハインさんの手。
 しゃがんで私の顔を覗き込んでいたハインさんは、力一杯私を殴り飛ばす。

 そして私はまた、飽きる事なく身体を縮めて、小さな悲鳴を上げるのだ。

 そう、飽きる事なく
 飽きる事なく、暴力を受け入れるのだ。
 抵抗もせずに、肩を抱いて、助けを待つ訳でもなく、
 全てを諦めた様な虚ろな目に涙をいっぱい浮かべて。

 ああ、馬鹿みたい。
 私の弱さが鬱陶しい。


从 ゚∀从「ほら泣いてみろよ! 何時もみたいにゴメンナサイつってよぉっ!」

ζ( - ζ「ごめん、なさい……ごめんなさい……」

从 ゚∀从「はっ、気持ち悪いなあお前はよっ!」

ζ( - ζ「ぎゃうっ、ぇほっ……げほ、っげほ……」

从 ゚∀从「はははっ! おらおらぁっ!」


 どす、どす。
 床に這いつくばって丸くなる私、蹴られて痛むお腹を押さえる腕。
 その腕ごと蹴っ飛ばし、踏みつける足。

 今日はハインさん一人だけ、ハインさん一人だけ、だから大丈夫、大丈夫。
 何時もみたいに沢山の人に蹴られる訳じゃない。
 だから大丈夫、何時もより、ずっと、マシ。


 げほ、げほ、げほ。

 ずき、ずき、ずき。

 ごめんなさい、ごめんなさい。


 終わらない。何も終わらない。
 何も、何も、終わらない。

 お腹が、全身が、いたい。


 いたい。


 少しずつおかしくなって行く。
 おかしくなって行く、何か。

 何がおかしくなって行くの? 私? 誰か? みんな?

 そんなの分からない。
 分かる事を止めたのだから、分かる訳がない。
 それでも何故か、おかしくなって行くのは分かる。
 矛盾だ。矛盾だ。ひどい矛盾だ。


 そして私の頭に浮かぶものは、
 「踏み潰されちゃえば良いのに」と言う言葉。

 何が踏み潰されれば良いのだろう。
 何に踏み潰されれば良いのだろう。


 やっぱり何も分からなかった。
 もう、分かる事はほんの一握り。

 私が私にイライラしていると言う事は、よく理解できた。
 踏み潰されちゃえば良いのに。


从 ゚∀从「ただ蹴るだけじゃつまんねぇよなあ……」

ζ( - ζ「けほっ、けほっ……ぇ、う」

从 ゚∀从「今から電話して男共は来るかね…………まあ来たら、面白いけどよ」

ζ( - ζ「おと……こ……?」

从 ゚∀从「女子校で胸のでけぇ女子犯せるぞっつったら、来ると思うか?」

ζ( - ;ζ「っ!?」

从 ゚∀从「ま、物は試し……っと」

ζ( - ;ζ「や……嫌、いや、やめ、て……止めて、下さい……っ!」

从 ゚∀从「はぁ? 誰がお前のオネガイきくかっつーの、バカじゃねぇ?」


 そんなの、嫌。
 男の人なんて、嫌。

 複数の男の人に無理やりなんて、考えるだけで吐き気がする。虫酸が走る。

 嫌、絶対に嫌。


 ポケットから携帯電話を取り出すハインさんの足に、
 私を踏みつける足にすがり付く。
 そして口の端から唾液を垂らしながら、頭を左右に振って拒絶した。
 それだけは嫌、と。

 男の人なんて、そんな、汚ならしいもの、嫌。


ζ(゚-゚;ζ「ハイン、さ……お願いです……や、め」

从 ゚∀从「くっついてんじゃねぇよ気持ち悪いッ! 離れろおらぁっ!」

ζ( - ;ζ「ぁうっ! 止、めて……止めて下さい……いや……いやぁっ!」

从 ゚∀从「んだよ鬱陶しいな……」


 踏みつける足に力を込められても、顔を殴り飛ばされても、ハインさんから離れようとしない私。

 突然その耳に、部屋に響いた音。それは、


 がらり。

 扉の開く音。


 一瞬頭に過った最悪の展開は、再び響いた音に、声によって崩された。


(*゚ー゚)「あらハイン、居ないと思った……ら、…………」


 扉を開けて姿を現したのは、あの、しぃさん。

 立って携帯を握るハインさんを見て声をかけたしぃさんは、その足元で必死な顔をする私を見て、
 言葉を止めた。

 男の人じゃない事は、喜ばしい。
 ああ、でも結局、痛くて苦しい事に変わりはない。


从 ゚∀从「おう、しぃじゃん。今からこいつ」

(*゚ー゚)「黙れ、帰れ」


 嬉々としてしぃさんに話し掛けたハインさんの言葉が、冷たい声によって切られる。
 初めて聞くその冷たい声音に、私もハインさんも、目を丸くしてしまった。


 ハインさんは不思議そうな顔で首を傾げ、少し困った顔をして携帯をひらひらと動かす。


从 ゚∀从「あ……い、今から男呼んで、こいつ」

ζ(゚-゚;ζ「や、止めて、止めて下さい……っ」

从 ゚∀从「っせんだよテメェは!」

(*゚ー゚)「うるさいのはあなたよ、ハイン」

从 ゚∀从「……は?」


 二度目の言葉に、ハインさんは流石に戸惑い、私から足を退けて頬をひきつらせる。
 無表情の中、口許だけにほのかな笑みの形を持たせるしぃさん。

 普段の行動や言動からは想像も出来ないしぃさん言葉は、私をも戸惑わせる。
 いったい何を言ってるのだろうと、ハインさんと私は戸惑いを隠せずにしぃさんを見つめていた。

 ひたり、こちらに歩いてくるしぃさんは、言いようの無い威圧感を纏っていた。


(*゚ー゚)「ハイン」

从;゚∀从「……お、う」

(*゚ー゚)「黙れ、帰れ、デレに触るな」

从;゚∀从「お、おい……どうしたんだ? しぃ。
      お前、こいつが嫌いなんだろ?」

ζ(゚-゚;ζ「きゃっ……! や、痛、い……っ」

(*゚ー゚)「ハイン?」

从;゚∀从「……なん、だ」

(*゚ー゚)「私、言ったわよね?」

从;゚∀从「……え、あ、」

(*^ー^)「黙れ、帰れ、デレに触るな。
      人の話が聞けないクソッタレな耳なら、ちぎっちゃって良いわよね?」


 すぐそばまで近付いたしぃさんはにっこり、満面の笑みで胸に抱いていた教科書や筆記用具を机に置いた。
 そして、筆箱の口を開くと、するり。
 小振りで細いカッターナイフを取り出して、笑顔のまま小さく首を傾げてみせた。


从;゚∀从「しぃ、待てよ! 待てって!」

(*^ー^)「移動教室帰りだから筆記用具持ってるの、カッターもあるわ?
      そこに座ってよ、耳、切るから。
      ねぇ、座って? クソ雌」

从;゚∀从「ぁ、あ、ぁぁあ、」

(*^ー^)「ああそうだ、その口も閉じちゃおうか?
      ソーイングセットならいつでも持ち歩いてるから、針と糸もあるわ。
      座り込んだって事は耳を切ってって事よね?
      どうせなら目も抉っちゃう?
      ああ、抉らなくても黒目に針を刺したら視覚は死んじゃうわね」

从;゚∀从「やめ、ひっ! しぃ止め! 止めて!!」


 ハインさんの足から離れた私。
 腰を抜かした様に、私の前にへたり込んだハインさんは、しぃさんを見上げて顔を真っ青にしている。

 がちがち奥歯を鳴らして怯える姿は、いつものハインさんからは、想像出来ない姿。
 けれど、無理も無い。

 だってにこにこ笑うしぃさんの手には、カッターと針が握られていて
 今にもハインさんの顔をめちゃくちゃにする為に、牙を剥こうとしているのだから。

 ぎちぎち軋みながら刃を出したカッターが、座り込むハインさんの頬に当てられた。
 ハインさんは更に顔色を無くして、目尻に涙を浮かべる。


(*゚ー゚)「うるさいわね、この雌
     デレに止めてって言われても止めなかった癖に烏滸がましいわ」

从;゚∀从「し、しぃだって止めなかったじゃねぇか! あたしだけじゃっ!」

(*゚ー゚)「あら失礼ね、私はデレに止めてって言われたら止めてたじゃない」


 ああ、そう言えば。
 確かにしぃさんは、私が止めてと言えば、それ以上はしなかった。
 ただ、やり方が変わるだけだったけれど。


 絶望した様な、白い顔のハインさん。
 その目の前に立ち、ハインさんを見下ろして笑うしぃさん。


 この人は、いったい、何?
 どうして怒ってるの?
 どうして、どうして笑ってるの?


 私は今さら私に何を分かれと言うんだ。


(*^ー^)「もう一回言ってあげるわねハイン?
      黙れ、帰れ、デレに触るな。
      優しいでしょう? 仏の顔も三度までって言うし、三回は見逃してあげる」

从;゚∀从「は、ぅ、ぁあ」

(*゚ー゚)「四回目、言ってほしい?
     四回目は耳、五回目は口、六回目は目だけど」

从; ∀从「ひっ、ぃ、あ……っうわぁあああっ!!」


 ぷつ、と、ハインさんの頬にカッターの先端が刺さった。
 しぃさんの笑みが崩れて、口許だけが笑う以外は無表情。

 小さな口からまろび出る死刑宣告に似た言葉に、ハインさんは悲鳴を上げ、
 床を這い、よたよたと立ち上がって、教室から走って出ていってしまった。

 その後ろ姿はひどく弱々しくて
 不良と言う扱いを受けてもおかしくはないハインさんには、不釣り合いで。

 私はやっぱり、目を丸くしたまま呆然としていた。


 残されたのは、床に座ったままの私と、カッターの刃を仕舞うしぃさんだけ。
 ぼんやりとハインさんが出て行った扉を見つめ、私は何も考えられずにいた。


(*゚ー゚)「あら、行っちゃったわね。私は別に何回でも良かったんだけど」

ζ(゚-゚*ζ「……しぃ、さん」

(*゚ー゚)「大丈夫? デレ
     ああスカートが破けちゃってるわね、体操着持ってきてあげましょうか?」


 スカートの裾が裂けていた事に、しぃさんに言われて、初めて気付いた。
 ハインさんに踏まれた時に引っ張られたのか、縦に大きく裂けてしまっている。

 太股まで裂けたスカートを指先できゅっと纏めて握り、ぼんやりした目のまま、私はしぃさんを見上げる。

 この人は、いったい何なのだろう。


ζ(゚-゚*ζ「何で、?」

(*゚ー゚)「あら、だってそのままじゃ動けないでしょ?」


 私の中の分からないが大きくなる。
 もともと大きかったそれは、しぃさんの奇妙な行動によって更に肥大した。

 どうして私を虐めるの。
 どうして私を嫌うの。
 どうして私を助けたの。

 あなたはいったい何がしたいの。

 意味が分からない、分からない。分からなすぎて、イライラ、する。


ζ( - ζ「……っ何で助けるんですかっ!?
       私を虐めてる癖に、先頭に立って私を虐める癖にっ!!
       私が嫌いならもう放っておいてよぉっ!!」

(*゚ー゚)「あら、あなたが好きだからよ?」

ζ(゚-゚ ζ「……へ、?」

(*゚ー゚)「好きだから、愛してるからよ?
     好きだから虐めたいの、あなたの泣き顔が可愛いから」


 この人が何を言っているのか。
 目の前で微笑むこの人が、いったい何を言っているのか、私はなかなか理解できなかった。

 そして少しの間をあけて、言葉のそのままの意味を理解した私の、
 私の胸に浮かぶ物は、怒り。

 私が、好き?
 愛してる?
 誰がそんな言葉を信じるものかふざけるな。


ζ(゚-゚ ζ「う、そ……だ……」

(*^ー^)「嘘だなんて失礼ね、私がいつデレの事を嫌いって言ったの?
      ただあなたが苦しそうにする顔、たまらなく気持ち良いの。
      その可愛さに腹が立つし、怯える姿がうざったい、
      悪い事してないのに謝るとこが鬱陶しくて、誰にでもおどおどするのにイライラする。
      でも、その全てが愛しいの、あなたを愛してるの、私」

ζ(゚-゚ ζ「…………そ、……な」

(*^ー^)「理解なんて要らないし、恨んでも憎んでも良いのよ?
      愛してるから全て許せなんてクズみたいな事は言わないから。
      それでも、私はあなたを愛してるの、デレ。
      怯えた顔も憎しみのこもった目もみんなみんな大好き

      あなたが私を殺してくれるなら、それすら幸せに感じるほど」


 笑顔で語る言葉は、愛の言葉。
 崩れて、潰れて、腐った様な愛の言葉。

 その愛を嬉しそうに、楽しそうに語るしぃさんは
 へたり込んだままの私の前にしゃがんで、顔を覗き込みながら、ただ笑う。

 しぃさんの言葉の影に隠れた真意が、僅かに顔を覗かせていた。


(*^ー^)「罵ってよデレ、気持ち悪くて腹が立つって
      あなたに与えられる全てが私の幸せになるから。
      ほら我慢せずに言って、ぶつけて、殺してみせて?
      何度でも言うわ、私はあなたが好き、愛しいの、女として」

ζ( - ζ「…………る、てる…………狂ってる、狂ってる、狂ってるっ!!
       あなたは狂ってるんだ!! 狂ってるんだぁっ!!」

(*゚ー゚)「……」

ζ(゚-゚#ζ「大嫌い! 大嫌い! 死んじゃえ!
       気狂いっ!! 最低っ!! 大っ嫌い!!」


 そして私はその言葉の、本当の意味には気付かないまま
 口を開いて、俯いて、頬に触れたしぃさんの手に、感情を弾けさせる。

 強い強い拒絶を、口にする。
 それは今まで溜め込んだ怒りや苛立ちも全て含まれていて、
 ただただ私は、頭の悪い罵倒を繰り返した。

 その言葉がしぃさんにとって、どんな物かも知らずに。
 ただ、ぶちまけた。


 しぃさんを罵倒する言葉を吐き出した私は、顔を歪めてしぃさんを睨む。
 まだ足りない、まだまだ言い足りない。
 もっと噛み付いても良い筈だ、私はあれだけ不条理な扱いを受けて来たのだ。


 最低だ。
 しぃさんがじゃない、私がだ。

 自分から諦めて暴力を受け続けていただけの癖に
 いくらでも抵抗出来た筈なのに。

 何もしなかったのは私で、諦めていたのも私。
 なのに今は言えるから、ただひたすらにしぃさんを罵倒している。

 よく言うよ、弱い自分が悪い癖に。気持ち悪い。


 ぜぇぜぇ、肩を上下させて乱れた呼吸を整える。
 大きな声を出したから、胸の空気をみんな吐き出したみたいになっていた。
 酸素が足りなくて、頭がクラクラする。

 私の罵声を全身に浴びたしぃさんは、笑顔を少しだけ崩して首を傾げていた。
 余裕があると言うか、微笑ましそうな目で、私を見ている。


 そしてにっこり、再び満面の笑みを浮かべたしぃさんが、口を開いて、


(*^ー^)「ありがとう」

ζ(゚-゚#ζ「っ!」


(*^ー^)「言ったでしょう、あなたから与えられる全てが私の幸せになるの。
      恨みも呪いも憎しみも、みんなみいんな愛しいの。
      ほら、もっと罵ってごらんなさいな?
      頭の悪いあなたにも、それくらいは出来るでしょ?」


 にこにこ笑ったまま、私の頬を撫でるしぃさんの冷たい手のひら。

 私を馬鹿にする言葉も、笑顔も、手のひらも。
 全てが、私は馬鹿だと優しく罵るみたいで、

 私は何の躊躇いもなく、その計算ずくの挑発に、乗っかる。

 まだ気付かない私の頭は、半分くらいが熱くてどうしようもなくなってるのに
 もう半分は、この部分は、何故か冷静なままだった。

 私の中にはしぃさんに対する色んな感情がぐちゃぐちゃになっている。


ζ(゚-゚#ζ「ッ死ね! 死ね! 死ね! 死んじゃえ気狂い!! 死ねぇっ!!」


 憧れの対象。とても可愛らしくて魅力的なしぃさんが大好きな気持ち。


(*^ー^)「ふふっ、語彙が貧相ね、デレ?
      可愛いわ、その頭の悪いとこ、だぁいすき」


 憎悪の対象。突然私を虐める様になったしぃさんが大嫌いな気持ち。


ζ(゚-゚#ζ「~~~~ッ!!」


 恐怖の対象。頭が良くて奇妙な権力を持つしぃさんが恐ろしい気持ち。


(*゚ー゚)「もう……まだ分からないの? 本当にバカなんだから」


 嫌悪の対象。同性の私を愛してると言うしぃさんが気持ち悪い思う気持ち。



 要するに私の中のしぃさんは
 私にとって、ひどくひどく、


ζ(゚-゚#ζ「……なん、ですか、気狂い」


 特別な存在で、


(*゚ー゚)「私は、あなたに罵られたくて虐めてたのに」


 それは良い意味でも悪い意味でも、


ζ(゚-゚;ζ「なっ、!?」


 私はしぃさんと関わっていたい、関わりを切りたくない


(*^ー^)「バカね、私が望んだ事、私がそうなるように仕向けた事、分からずに罵って。
      私はこんなに幸せなの、気付いていなかったなんて」


 だから私は、しぃさんの暴力なら、受けられた


ζ( - ;ζ「……なん、なの……あなた……」


 だから私は、しぃさんの暴力を受けて笑った


(*^ー^)「気狂いじゃないの? あなたが言ったんじゃない、可愛い可愛い私のデレ。
      もっと、ほら、罵って? おぞましいと叫んで笑って、ねじ伏せて?
      気味が悪いと唾を吐いて、醜いものだとせせら笑って? それすらも幸せになるんだから」


 つまり私は、しぃさんが好きなのだ。
 こんな扱いを受けていても、好きなのだ。

 私の中にずっとわだかまっていた、様々な物が混ざりあった気味の悪い感情は
 ひどく屈折して腐りきった、好きと言う純粋な気持ちだったんだ。


 胸がすっとした。

 しぃさんに対する気持ちが、一気に片付いた。
 ああなんて急展開、両思い? ふざけないで気持ち悪い。

 好きなんだ、けれど嫌いなんだ。
 私が片付けて見付け出した答えは正解かもしれない。
 だからって納得できる訳じゃない。

 冷静な部分はしぃさんが好きだと言う。
 熱い部分はしぃさんが嫌いだと言う。

 それはどちらもが正解であって間違いなんだ。
 ああめんどくさい、気持ち悪い。何が好きだ、何が嫌いだ。気持ち悪い。

 罵る。
 感情をみんな見せて、声を荒くする。
 それしか出来ないんじゃなくて、そうしたいのだ。

 罵りたいんだ、私は。
 好きだの嫌いだのどうでも良いんだ、ああどうでも良いんだ。
 罵倒させろ、踏ませろ、蹴らせろ、殴らせろ。


 わたしはこいつをなかせたい。



ζ(゚-゚*ζ「……変態」

(*゚ー゚)「あら、やっと分かったの? 本当にバカね、デレったら」

ζ(゚-゚*ζ「…………嘘みたい、ただの、サディストだと、思ってたのに」

(*^ー^)「残念でした、ただのマゾヒストよ、普段のあなたと同じ」

ζ(゚-゚*ζ「私は、しぃさんみたいな変態じゃ、ない」

(*゚ー゚)「嘘つき。私に踏まれて、あなた笑ってたわよ?
     とても気持ち良さそうに、にっこり」

ζ(゚-゚;ζ「そっ、んな事……!」

(*^ー^)「ふふ、気付いてないなんて可愛い。
      それとも図星かしら? どちらにしても可愛いわぁ」

ζ(゚-゚#ζ「うっ……うるさい! 笑うな変態! 気持ち悪い!!」

(*゚ー゚)「そうそう、もっともっと私を気持ち良くして? ほらもっと罵りなさいな?」

ζ(゚-゚#ζ「うるさいバカ! 黙れぇっ!! 喋るなぁっ!!」

(*゚ー゚)「いやぁよ、そんなへなへなした声で命令されても聞けないわ?」

ζ( - #ζ「黙れ気狂い女ァッ!! お前のその高慢ちきな喋り方が大嫌いッ!!
        鬱陶しい!! 死ねェエッ!!」

(*゚ー゚)「ぁ……」

ζ( - #ζ「お前が笑うのを見てるとヘドが出る!! 声を聞くのすら嫌っ!!
       姿なんて見たくもないッ!! 私はお前が大嫌いなんだぁぁあッ!!」

(*゚ー゚)「ふっ……う、ふふふっ……」

ζ(゚-゚#ζ「何を笑って、っ!!」

(*^ー^)「ふふふ、デレ?」

ζ(゚-゚#ζ「……離、し、」

(*^ー^)「さぁいこぉ」

ζ(゚-゚#ζ「なっ!」

(*^ー^)「最高よデレ、その頭の悪いとことか大好き。
      わざわざ私を気持ち良くしてくれるなんて、本当に幸せ。
      その目が素敵、素敵よデレ、流石は私が愛した女の子、思った通り最高よ?」

ζ(゚-゚#ζ「は……ッなせ、この変態っ!!」

(*^ー^)「あはぁゾクゾクする、だぁいすきよ? デレ
      だから、もっともっと、罵ってちょうだいな?」

ζ(゚-゚#ζ「ッのアマァッ! 私に触るな気持ち悪いッ!!
       お前は地べた這いずって靴でも嘗めてりゃ良いんだよッ!!」

(*^ー^)「やん、デレ可愛いわぁ。ね、もっと、ほら、踏んで見なさいな?
      それくらいなら愚図のあなたにも出来るでしょう?」

ζ(゚-゚#ζ「うるさいッ! 黙って靴嘗めてろよクソ雌がァッ!!」


 別に、憎悪から罵ってるんじゃない。

 私は、しぃさんを罵る事が好きなんだ。気持ち良いんだ。

 ああどこで間違えた?
 いつから私はこうなった?
 こうも見事にしぃさんの罠に掛かるなんて、完璧に思い通りになるなんて。

 悔しいとは思う、けれどそれは少しだけ。


 だって、しぃさんに怒鳴り付けた時、凄く気持ち良い。
 踏みつけた時も、蹴った時も、押し倒す時も。


 凄く、気持ち良いの。


 しぃさんが好き、しぃさんが嫌い、しぃさんが怖い、しぃさんが気持ち悪い。
 けれどしぃさんは気持ち良い。
 もう、もう、どうでも良い。気持ち良いを貪りたいから。
 どうでも良いの。どうでも。





 あはぁ。








 朝、登校して。
 授業を受けて。
 お昼を食べて。
 幸せな昼休み。


 私は一人で歩いていた。
 廊下を進むに従い、人はまばらになり、居なくなる。
 私が発する音しか感じられなくなった廊下を歩いた、その先。

 一つの教室、使われていない教室。
 引き戸をがらりと開いて、足を踏み入れる。
 埃臭さと甘い匂いが、鼻に抜けた。


(*゚ー゚)「お帰りなさい、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「ただいま、しぃさん」


 セーラー服に、首輪と鎖。
 可愛らしく微笑むしぃさんは、私を見ると四つん這いになった。

 扉を閉めてしぃさんに歩み寄り、私はその背中に腰掛ける。

 しぃさんの綺麗な焦げ茶の髪を指に絡めて、頭を撫でる。
 するとしぃさんは、幸せそうに笑う。
 それが憎らしくて、私も笑う。



 間違ってるとか間違ってないとかどうでも良い。
 しぃさんは私に虐げられて幸せを感じ、私はしぃさんを虐げて幸せを感じる。

 みんなみんなどうでも良い。

 これが私達にとっての幸せなのだから


 これは所謂、ハッピーエンドなのだろう。



  おわり。





この小説は2009年1月25日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆tYDPzDQgtA 氏



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[ 2010/01/09 11:00 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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