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ジョルジュは命を売るようです

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




昔、ある一人のギタリストがいた。
彼のプレイは、決して飛びぬけて上手かったわけではなかった。

が、突然の失踪から数か月後。
ギター一本でアメリカを渡る彼は、世界に名を知られるほどのブルース・ギタリストへと変貌していた。


『悪魔に魂を売り、引き換えにブルース・テクニックを手に入れた』


皆口々にそう噂し、彼の音楽を称賛した。

彼はその後、27歳という若さで命を落とすことになる。

悪魔が彼の命を奪いにきた。

そんな伝説が、あるのだ。



20090215184655.jpg


 
本棚に一人向かい、面白そうな本を探していた。
誰もいない、古くて大きな家の中。
小説でも、絵本でも、塗り絵でも、医学書でも、なんでもよかった。

最近の若者は本を読まないらしい。
俺はそんなメディアが垂れ流す胡散臭い情報を、信じてはいない。
昔の人は本を読んでいたのか?
食い物さえ入手困難な戦時中、読書だけは欠かすことがなかったのか?
縄文人が本を読んだとでも?

最近の若者である俺は、本を読むのが好きだ。少なくとも、俺は。

( ゚∀゚)「んー・・・・・ん?」

棚の隅に、他の本よりも分厚く、且つ小さな本を見つけた。
埃にまみれ、薄汚れている。
自然と、俺の手は本棚の隅へ伸びていった。

( ゚∀゚)「へぇー・・・」

俺は一目でこの本を気に入った。
重くも、軽くもない。良質な革でできたカバーは、時代を感じさせる手触りだ。
決して安っぽくはない、深みのある黒に、銀押しの十字架が施されている。

( ゚∀゚)「・・・」

中を開くと、予想通り俺には見当もつかない言語で書かれた文章が、びっしりと紙を埋め尽くしていた。

( ゚∀゚)「聖書・・・かな」

本自体は気に入ったが、読めないのでは仕方がない。
古代ヘブライ語、というやつだろうか。いや、ありえない。
世界遺産ともなりえるほどに古い書物が、俺の家の本棚の隅で、埃まみれになっている理由が見当たらない。

( ゚∀゚)「まあ・・・いいか」

アンティークとしてなら使えるのではないかと、部屋へ持っていこうとした時。
その時だった。

俺の現実が、派手な音を立てて、脆くも崩れ去ることになったのは。
この時俺は、何も知らなかった。


(; ∀ )「う・・・うぁ・・・!」

突然の目眩と、暗転する世界。
俺は戸惑い、床に膝をつく。

(; ∀ )「なん・・・だよ・・・ぐ」

違う。いつもの発作とは、明らかに違う。
誰かの意思を、はっきりと感じる。
それでも俺の貧弱な心臓はあらん限りの力を振り絞り、体の中で暴れまわっていた。

(; ∀ )「ぐうっ!」

呻き、吐き気を感じた。
胃の奥から這い上がってきた夕飯が、俺の喉を突く。

(; ∀ )「う・・・おぇっ・・・く、そ・・・・!」

口からおぞましい何かが吐き出されるのが分かったが、確認することはできなかった。
見ることは、重要ではない。
感じること。それだけだ。

(; ∀ )「ちく・・・・・しょう・・・だれ、だ・・・よ」

そして俺は耳にする。

『ようこそ』

今でもはっきりと耳にこびりついている。
あの、信じられない響きを持った、囁きが。



『悪魔の領域へ』



俺は誰だ?

最初に頭の中に浮かんだ言葉が、それだった。
俺は誰だ?

アイデンティティを、何か汚らわしい存在に奪われるような感覚が、体中を駆け巡る。
俺は誰だ?

思い出せ。急がなければ、取り返しのつかないことになる。

( ゚∀゚)「俺は・・・俺は」

『キミは』

( ゚∀゚)「俺は・・・長岡ジョルジュ・・・そうだ」

『長岡ジョルジュという、名前。本当にそうか?』

( ゚∀゚)「ああ・・・間違いない。俺の名前だ・・・取り戻したぞ」

『他には?』

( ゚∀゚)「・・・17歳・・・男・・・高校生だ。なんだ、簡単じゃないか」

『ふむ、若い。キミにはまだ長い未来が待っているな』


記憶は戻った。
思考はまだ混乱しているが、もう自分を失う心配はないだろう。
余裕が出てきたことで、今の状況が気になり始めた。

( ゚∀゚)「ここは・・・どこなんだ」

『考えてみなさい。時間はたっぷりとある』

( ゚∀゚)「・・・暗い。自分が見えない。地面はどこだ?俺は、どこに・・・」

何も見えない。自分の体を触ってみた。大丈夫、ちゃんと形を保っている。
落ち着きを取り戻し、記憶をたどる。物凄いことが起きた。
それは確かだ。

黒い表紙に、銀の十字架。
聖書。

( ゚∀゚)「本・・・そうだ、本を手にした。きっと、聖書だと思った。
     そのすぐ後に・・・」

『そこだ。ようやくたどり着いたな』

何よりも先に聞くべきことだったのだけど、どうしても聞けなかった。
あまりにも大きく、あまりにも邪悪なものだったから。

体中のエネルギーのすべてを振り絞って、声にする。

( ゚∀゚)「あんたは誰だ?」

俺の声は震えていた。

『悪魔と呼ばれている。君達からは』

( ゚∀゚)「・・・へぇ、じゃあここは、地獄?」

暗闇。決して誰でも手に入れることができるわけではない、黒。

『悪魔の領域』

( ゚∀゚)「悪魔・・・ね」

『信じないか?』

( ゚∀゚)「いや、信じるよ。他にすることがない」

『本題に入ろう。なぜこの悪魔が、キミをここへ連れてきたのか』

( ゚∀゚)「・・・」

『教えてやるよ』


取引だ。

悪魔はそう言った。何も見えない漆黒の闇。その空間。
悪魔と名乗る者の存在は、俺には確かに感じられた。
あいつは巨大すぎる。

『俺に、キミの一部をよこせ。代わりに、私の一部をキミにやる』

( ゚∀゚)「一部」

『そうだ』

まさか悪魔と取引をする日が来るとは、夢にも思っていなかった。
俺はどうすればいい?

『キミは何が欲しい?』

悪魔の言葉に、俺は少し考えた。ほんの少し。
そしてこう言った。

( ゚∀゚)「心臓が欲しい。あんたの心臓。悪魔の心臓だ」

『心臓か・・・ふむ。キミは何を差し出す?』

( ゚∀゚)「俺の」

視界が揺れる。闇しか見えないが、確かに揺れた。
俺は今、人生の岐路、十字路に立っている。

( ゚∀゚)「心臓だ。あんたの心臓と、俺の心臓。取引だ」

『・・・』

『・・・悪くない。悪くないぞ。人間の心臓か』

( ゚∀゚)「どうだ?すぐにできるか?今、すぐに」

焦りを悟られないよう、精一杯の平静を繕う。
十字路だ。

『いいだろう。すぐに』

途端に、胸に激痛が走った。この世のものとは思えない痛み、苦しみ。
声も出せずに苦しんでいると、徐々に痛みは引いていった。


『・・・なんだ、これは』

( ゚∀゚)「こ、これが・・・悪魔の心臓の、鼓動かよ。すげえな」

『人間の心臓とは、これほどに弱いものなのか。おい、これはなんだ』

( ゚∀゚)「悪魔の、心臓・・・俺は手に入れたのか・・・信じられない」

『キミに聞いているんだ。この感覚はなんだ。キミの心臓に張り付いていた、この機械は』

( ゚∀゚)「・・・ん、ああ、言ってなかったな。悪い」

詐欺師とは、いつもこんな気分なのだろうか。
人を騙し、突き落とし、利益を貪る。
うん、悪くないかもしれない。


( ゚∀゚)「ペースメーカーっていうんだ」

『・・・心臓が・・・動きを、止めようと』

『している・・・キミは・・・』

( ゚∀゚)「それがないと、俺の心臓は動かなかったんだ。ありがとう、愚かな悪魔」

悪魔の声は、もう聞こえてこなかった。
暗闇から、やつの存在が消えた。
代わりに、俺の形がはっきりとしてきた。
何でもできる。そんな気がする。


いつ戻ってきたのかは分からない。
ただ、あれからあまり時間は経っていなかった。
暗い部屋の中で、俺はひどく古めかしい聖書を手に持ち、一人で立ち尽くしていた。

( ゚∀゚)「・・・悪魔の、心臓」

俺の身体の中で、得体のしれないものを送り出している物体が、ドクン、ドクンと動いている。
それにどれほどの価値があるのか、少なくとも、金では買えない代物だ。


( ゚∀゚)「・・・もう、夜か」

悪魔は死んだのだろうか。俺には分からない。
ただ、眠ろうと思った。

俺の未来に備えて。





この小説は2008年12月18日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:IAZ2CSvt0 氏
タイトルがなかったので、それっぽいタイトルを付けました



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/09 10:20 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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