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lw´‐ _‐ノv雨模様のようです

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




今の天気を上手く例えるならば、私達の関係と良く似ている。
晴れ渡らない空、しかし曇るだけで一向に降らない雨。

降るなら降ればいいのに、晴れるなら晴れればいいのに。
曖昧な空に怒りをぶつけてしまえばそれまでなのに、
私は今日も曇ったままの空を仕方ないと片付けてしまった。

それはまるで、貴方に対する私の想いのようだった。



20090215155539.jpg



lw´‐ _‐ノv「傘を持って行くといい」

事を済ませた後、私の顔も見ないままロマネスクは帰宅の準備をしていた。
気怠さがまだ身体に残っている私はベッドの上でだらしなく横になっている。
真っ白な天井を見上げたまま発した言葉はロマネスクにまで届き、間髪入れずに私へ返される。

( ФωФ)「必要ない」

lw´‐ _‐ノv「今宵は雨だろう。傘くらい携えて行け」

( ФωФ)「必要ない」

はっきりとした声でロマネスクは言う。
その声に怒気が含まれているような気がしたが、実際の所顔を見ていないから真意はわからない。

数秒遅れて、ドアを開ける音がした。
外気の冷たい風が部屋に流れて来る。
流れて来る風に触れ、寒くなった私は布団を身体に包ませて身体を温める。

( ФωФ)「また来る」

lw´‐ _‐ノv「次はいつ来るのだ」

( ФωФ)「わからない。だが、また此所で逢おう」

その言葉を聞いた直後、部屋に侵入していた風が止んだ。

白く、狭い部屋には私だけ。
先程まで熱を共有していたロマネスクが此所にいたのが嘘のようだ。

シーツを抱き締めれば彼の温もりと匂いが鼻を霞める。
自慢ではないが昔から嗅覚は優れていた。匂いだけで人や物を嗅ぎ分ける事が出来る。

ロマネスクの残り香を肺一杯に吸い込みながら瞼を閉じれば彼の小さな背中が浮かぶ。
それはいつか見た情けない後ろ姿だった。



ロマネスクと出会ってから思っている程月日は流れていない。
たかが数ヶ月前、雨で濡れる公園でロマネスクを見たのが始まりだった。

消え入りそうな人とは彼の事を言うのだろう。
初めて見た時の彼は、まるでこの世の終わりを目の当たりにしたような瞳をしていた。

ブランコに腰掛け、遠くを見つめる視線の先には何も捕らえていない。
そんな事が数日もの間続いていたのだった。

lw´‐ _‐ノv「いつも何を見ているんだ」

その日は酷く雨足が早かった。
傘を差しているにも関わらず身体は濡れて、もはや傘などその存在意味を成していないも当然だった。

遠くを眺めているロマネスクに声を掛けると、彼は視線を変えずに呟いた。

( ФωФ)「死を見ているのだ」

変わった事を言う男だ。
死を見るなど、物体でも何でもない物なのに何を言っているのだろうか。

私の思っている事が伝わったのか、はたまた予め予想していたのか、
ロマネスクは何も言わない私に気にせず言葉を続ける。

( ФωФ)「我にはもう生きる意味などないのだ」

lw´‐ _‐ノv「何故そう思う」

( ФωФ)「家も、家族も、愛する人もなくしたからだ」

成程。ならば絶望に打ちひしがれるのも無理はない。
彼の身の上事情など、さほど興味もない。なくしたからといって私が何かする訳でもない。
ただ、彼の死に対する姿勢に惹かれたのだった。

彼の上に傘を差す。
元々濡れているのに今更傘を指しても何も変わらないのはわかっている。
何となく、彼を傘の中に入れたかったのだ。

lw´‐ _‐ノv「名は何という」

( ФωФ)「名前などとうに捨てた」

lw´‐ _‐ノv「ならばお前の名は今日からロマネスクだ」

( ФωФ)「……お主の名は」

lw´‐ _‐ノv「シュール。シューで構わない」

それから私は何も言わずにロマネスクを家に入れた。
ロマネスクもまた何も言わずに私の家に入り、私を強く抱き締めた。

独り身の女の家に男を連れ込んだのだ。こうなる事は何となく予想していた。
けれど私を抱くロマネスクの手は不思議な位優しく、不気味な位温かった。
名前しか知らない相手に此所まで優しく出来るものなのだろうか

熱に浮かされながら視界に入るのは、暗く陰っているロマネスクの瞳。
私を抱きながら何を考えているのだろうか。光のない目から心を読み取る事は出来なかった。



( ФωФ)「別れた妻の子に良く似ている」

初めて抱かれた日、身仕度を整えていたロマネスクは不意にこんな事を呟いた。
実際はどれ程かわからないが、ロマネスクの外見は結構歳を感じるような一面があった。

lw´‐ _‐ノv「ならばこれは近親相姦だな」

冗談で笑いながら言うと、ロマネスクは困ったような笑いを浮かべてそうだなと返した。

それからというもの、ロマネスクは時折私の家に来ては私を抱いていた。
連絡手段が一切ないロマネスクは、野良猫のようにふらりと家に来てはまた何処かへ消えて行く。
一度だけ普段は何処にいるのかと聞いたが、ロマネスクは何も言わずに答えを受け流したのだった。



一滴、二滴。沢山の水滴が落ちる音が響く。

lw´‐ _‐ノv「だから言ったのに」

次第に水滴の量は増えていく。数分も経てばそれは雨となり、豪雨となった。

lw´‐ _‐ノv「さて、行くとするか」

床に散らばった衣服を拾い、身に着けると傘を持って外に出る。
外はモノクロ掛かっていて、今が夕方なのか夜なのかわからなかった。

傘を差し、雨の中を歩く。
薄いシャツはすぐに濡れて身体に張り付いた。
お気に入りのズボンは水溜まりに弾いて裾が濡れてしまった。


行く先はただ一つ。彼はきっとあの場所にいる。

彼と初めて出会った場所。
彼に新たな名を名付けた場所。
彼が存在しえうる唯一の場所。

誰もいない公園の中心、そこにロマネスクは一人立ち尽していた。
あの日と同じように死を見つめているのだろうか。視線は空を捕らえている。

私の視線に気付いたのか、こちらを見るなりロマネスクは悲しそうな表情を浮かべていた。

( ФωФ)「何故ここに」

ロマネスクの問い掛けに私は答えない。逢いたいという以外に答える理由がないからだ。
私より頭一つ分大きなロマネスクに傘を被せる。必然的に傘を持つ手を掲げる事になった。

lw´‐ _‐ノv「迎えに来たのだ」

ロマネスクの目を見据えて言うと、ロマネスクは少し戸惑ったような表情をした。
視線を泳がせ、行き場を失くしたそれは足元に落としてしまう。
ロマネスクらしい。何故だかそんなことを思ってしまった。

( ФωФ)「シュー。我はわからない。何故今もこうして生きているのか。
       何故あんなに妻を愛していたのに忘れかけているのか。
       何故今も死ぬ事を考えながらも死に切れないのか」

視線を落とすロマネスクの目は見えない。
しかし声が震えている。
顔を見なくとも何となくどんな表情をしているのか予想出来た。

視線を落としたロマネスクの頬に触れる。
ようやく私の方を見てくれたロマネスクに、私は黙ったままロマネスクを見上げた。

無言で見つめ合う私達。
雨は止む気配はない。未だ降り続いている。
先に動いたのはロマネスクだ。今にも泣きそうな目をして私を見ている。

( ФωФ)「我は何の為に生きればいい。何を持って生き続ければいい」

実に不思議な男だ。
死を見つめていると言っておきながら、生きたいと願う。
しかし人というのは、きっとそういうものなのだろう。

もしロマネスクが死にたいと願っているのなら、私から名を授かることもなかっただろう。
私の部屋に通い、また来るなどという約束を告げることもなかっただろう。

( ФωФ)「死にたいはずなのに、心の何処かで生きたいと叫ぶ我がいるのだ」

生きたいのだ。本能がそう叫んでいるのだ。
ロマネスクは私を抱き締めながら、涙で濁った声でそう言った。

胸に温かい涙が染み込んで来た。
尚も泣くことを止めないロマネスクの頭を撫でる。
一瞬肩をびくりと震わせたロマネスクは、ほんの少し顔を上げて私の方を見上げている。

こんなに何かを愛しく思うのは二度とないのかもしれない。
頬を緩めてロマネスクを頬を両手で包み込み、囁く様に言葉を紡ぐ。


lw´‐ _‐ノv「ならば私の為に生きればいい」


lw´‐ _‐ノv「もしなくした妻や子を思って死にたくなったなら、私の隣で死ぬといい」


lw´‐ _‐ノv「だからそれまでは生きていて欲しい」


lw´‐ _‐ノv「他の誰でもない、私からの願いだ」


傘を打つ雫がその力を失くしていく。
気が付けば空は晴れていて、傘を下ろすとそこには雲に隠れて月が顔を出していた。

泣き腫らした目をしたロマネスクの顔が月明かりに照らされて良く見える。
初めて見るロマネスクの顔に私は笑ってしまった。
ロマネスクは少し恥ずかしそうにそっぽを向くと、不機嫌そうな様子で髪を掻き毟った。

大量の水を含んだロマネスクの服の裾を引っ張りこちらを向かせると
自分でもこれ以上ない位の笑顔を見せて、想いを告げる。


lw´‐ _‐ノv「愛しているぞ、ロマネスク」


雨は止んだ。
溜まっていた雫は地上に落ち、空は晴れ渡っている。

けれど、私の気持ちが止むことはなかった。
先の見えないこの関係は、きっと幸せな物になるだろう。





この小説は2008年11月29日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:Vuch1Z3/0 氏



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/09 10:10 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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