はじめてブーン系小説を読む方は
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lw´‐ _‐ノv「知ってるかい、かわいい弟」
(-_-)「何を?」
lw´‐ _‐ノv「人間はね、死ぬと泡みたいに消えるらしい」
(-_-)「あぶく、」
lw´‐ _‐ノv「そう、泡だよ、かわいい弟。水面にね、ぷわりと浮かんで、半球になって、ぱちん」
(-_-)「消えるんだ」
lw´‐ _‐ノv「消えちゃうんだ、ぱちんと、少しの、ほんの少しの波紋のあと、
何事もなかったかのように、水面は元通りのしずかさを取り戻す」
(-_-)「なら、僕らが死んでも、すぐに元通りなんだね」
lw´‐ _‐ノv「うん、たとえどんなに大きな泡でも、たいして波紋が広がる事もなく、元通り」
(-_-)「そっか、そっか、なんだか、寂しいね」
二人は冷たいフローリングに寝転がっていて、何をするでもなく、けれど口だけは動かしていて。
弟の部屋である空間には必要最低限の物しか存在せず、簡素なパイプベッドには乱れたシーツと布団。
脱ぎ捨てた部屋着。
小さな本棚、小さな机だけ、クッションやソファなんて物は存在せず、ひどく片付いた部屋だった。
夕方のオレンジ色が窓から注ぎ込まれ、部屋全体をセピアにしている。
その中でただ寝転がる姉と弟は、怠惰に、惰性で口を動かすばかり。
なんの意味もないやり取りだけれど、二人はどこか楽しそうで。
黒い学生服姿の弟と、白い袖の無いワンピースを着た姉。
姉の身体はひどく冷たくなっていて、顔色も悪く唇は紫色。
手足の先端を真っ赤にしながらも、姉は寒がるそぶりも見せず、淡々と言葉を繋げていた。
弟が僅かに身体を動かして、床に広がる姉の長い髪を一束掬い、握る。
冷たくて細い手触りに、弟はまぶたを下ろした。
lw´‐ _‐ノv「死ぬならね、かわいい弟、どんな死に方がいい?」
(-_-)「よく分からないけど、苦しくないのが、いいな」
lw´‐ _‐ノv「バカだなあ、苦しくない死なんてないんだよ、
身体が死ぬにせよ心が死ぬにせよ、苦しいに決まってるじゃない」
(-_-)「そっか、苦しくて当たり前なんだ、じゃあどんな死に方がいいかな」
lw´‐ _‐ノv「死はね、いつでも自分の腹のなかにあるんだ、生きたくても死ぬし、生きたくなくても死ぬ」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「だったら好きな死に方を選びたい、苦しくて悲しいのなら、好きな死に方がいいよね」
(-_-)「そうだね、どうせ死ぬなら、だよね」
lw´‐ _‐ノv「怒られるかな、死ぬとか軽々しく言うなって」
(-_-)「ああ、怒られるかもしれない」
lw´‐ _‐ノv「怒られるのは、いやだなあ」
(-_-)「僕も、いやだな」
ごろん、と漸く姉が動く。
寝転がったまま弟のすぐ近くまで移動した姉は、腕を伸ばして弟の頭を抱え込んだ。
少し苦しそうにみじろぐものの、弟も姉の胸に顔を押し付ける様に、身体の向きを変える。
姉に抱き締められるようにして寝転がる弟。
弟の頭を抱き締めて、髪を撫でながら唇を押し付ける姉。
白いワンピース越しに感じる姉の体温はひどく低くて、弟は静かに、その柔らかな白い布地を握りしめる。
髪を握る手をゆるめる事はせずに弟は顔をあげて、姉の表情を覗く。
息のかかる距離に存在する、整った姉の顔。
血の気の失せた青白い顔に、握っていた物を離して、姉にしがみついた。
腕いっぱいの、柔らかくて冷たい何か。
lw´‐ _‐ノv「私はね、私はね、きっと死にたいと思ってたんだ」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「でも私が死んだら、ぱちんとはじけたら、少しでも波紋が広がるでしょう、
ほんの少しの、小さな波紋が」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「私はね、私がはじけて消える事によって波紋が生じるのならね、消えたくはないの」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「その波紋は、家族とか、一握りの友達が感じる、悲しみとかだから」
(-_-)「僕は、姉さんが消えたら悲しいよ」
lw´‐ _‐ノv「私も、かわいい弟が消えたら悲しいもの」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「だからね、死なないように、消えないように、頑張りたいの」
(-_-)「僕も、頑張るね」
lw´‐ _‐ノv「うん」
弟の額に唇を押し当てて、ほんのりとだけ笑って見せる姉。
弟は片手をほどいてそっと伸ばし、姉の唇に触れた。
冷たくて少しかたくなっているけれど、それでも柔らかな唇。
紫色の唇の隙間から舌を出して、弟の指先に舌を這わせた。
くちり、と唾液が糸を引く音。
右手の人差し指と中指が、熱い舌によってゆっくりと濡れてゆく。
糸を引いて手の甲に流れる唾液は、夕方のオレンジ色を浴びて、きらきらと。
二本の指を舌の先でさんざん玩んだ姉は、それをそっと口に含み、優しく歯を立てる。
こり、と噛まれた関節が鳴り、弟は僅かに眉を寄せた。
かちゃり。
('A`)「シュー、ヒッキー、夕飯だぞ」
(-_-)「ああ、兄さん」
lw´‐ _‐ノv「ん、ぷ、もう、そんな時間なんだ」
('A`)「シュー、上着くらい着ろって言ってるだろ、ほかヒッキーも着替えて」
(-_-)「はあい」
lw´‐ _‐ノv「はあい」
('A`)「全く、困った妹と弟だな、どうせまたろくな話をしてなかったんだろ」
lw´‐ _‐ノv「兄さんが私に言った事、言って、しただけだよ」
('A`)「人の話を誰かに言わない」
lw´‐ _‐ノv「私と全く同じ事を思ってたんだもの、良いじゃない」
(-_-)「着替えたよ。ああ、そうだ」
('A`)「ん?」
(-_-)「僕も同じ事、考えてたんだ、兄さん、姉さん」
lw´‐ _‐ノv「きょうだい、だね」
('A`)「血の繋がりって怖いな、ほら行こう」
(-_-)「うん」
lw´‐ _‐ノv「はあ、お腹すいた」
('A`)「はいはい、早く降りろよ」
ぱたん。
おしまい
この小説は2008年11月29日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:DbeFltj8O 氏
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