はじめてブーン系小説を読む方は
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今は昔。
様々な国が天下に覇を唱えんとしのぎを削る、戦乱の世。
その中において、ここビップ国は希代の知将・内藤ホライゾンの統治する西の大国として、
一目置かれる存在でありました。
内政、外交、戦等、あらゆる面で非凡な才を発揮し国を治めているホライゾンでしたが、
天下に最も近いとさえ呼ばれるこの男にも、一つ悩みがありました。
後継者です。
ホライゾンには三人の娘がおりました。
武勇に優れる長女ハインリッヒ。
謀略に優れる次女クール。
人心掌握に優れる三女しぃ。
女だてらに国の中枢を担う優秀な娘たちでしたがそれぞれの主義主張は全く異なり、
あろうことか姉妹で後継者争いを始めようとしてしまうほどに不仲な姉妹なのでした。
从 ゚∀从「天下をまとめるのは圧倒的な武力だ!」
川 ゚ -゚)「他国を抑え込むのは緻密な謀略だ」
(*゚ー゚)「民を纏めるのは寛容さだよ」
( ^ω^)「たまにはとーちゃんの話も聞いてくれお…」
姉妹の不仲は徐々に彼女らの部下にも浸透し、
ビップ国に三つの派閥を作りつつありました。
今でこそホライゾンの圧倒的実績と指導力でまとめてはいるものの、
姉妹の誰かを次期指導者とすれば派閥同士で争いが起き、
ビップ国がバラバラになってしまうであろうことは目に見えていました。
そこでホライゾンは娘たちを集め、
なんとか三人で協力するよう話すことにしました。
( ^ω^)「ところで今日は三人に真面目な話が…」
从 ゚∀从「親父ー、そろそろ引退したらどーだ?」
( ^ω^)「まだまだ現役でいるつもりだおwwwww」
川 ゚ -゚)「後は若い人間に任せて老人は老人らしくだな…」
(#^ω^)「とーちゃんはまだ三十代だお!」
(*゚ー゚)「いつまでも元気でいてほしいけど、空気は読んでね?」
( ^ω^)「くうきwwwwwwwwwwwww」
川 ゚ -゚)*゚ー゚) ゚∀从 シネ
( うω;)(ツン…娘たちはツンに似てお転婆だお…)
( ^ω^)「さて、今は戦乱の世。どこもかしこも争い事ばかりだお。
その中で我が国は物資や地形的には恵まれなくともよくやっているお。
お前たちがそれぞれ得意な分野で活躍してくれてるおかげだお」
( ^ω^)「しかし同時にお前たちは互いを出し抜こうとしているお。
身内で小競り合いをしながら生き抜けるほど余裕は無いと言うのに…」
川 ゚ -゚)「父上がさっさと後継者決めれば良いのでは?」
( ^ω^)「それで皆が納得するかお? アルファ初期の西塔東塔みたいになるお」
(*゚ー゚)「民主的に多数決で決めるのはどう?」
( ^ω^)「過半数取れる勢力が無いってのは、ねじれ国会みたいなことになるお」
从 ゚∀从「いっそのことガチンコで…」
( ^ω^)「やったら共倒れで他国に食われるって話をしてるんだお…」
川 ゚ -゚)*゚ー゚) ゚∀从 ムー
( ^ω^)つ↑「…で、ここに一本の矢があるお。
一番腕力の弱いクール、折ってみるお」
川 ゚ -゚)「…? まぁ、このくらいは簡単に…」
ポキン!
( ^ω^)つ≡「折れることはわかってたお。
じゃあ次に三本束ねた矢を一番力の強いハインリッヒ、折ってみるお」
从 ゚∀从「このくらいは簡単に…」
ググッ…グッ…
(*゚ー゚)「ハイン姉さんはクー姉さんの倍は力があるのに、
全然折れそうにないなんて…!」
( ^ω^)「こんな細くて脆い矢でも、三本束ねただけでこんなに強くなるお。
この矢はお前たちだお。三人力を合わせれば天下に敵は無しだお!」
川 ゚ -゚)*゚ー゚) ゚∀从「…なるほど」
( ^ω^)「それぞれ、部下とよく話して考えると良いお」
( *^ω^)(とーちゃん超カッコいいお!)
ホライゾンの話にそれなりの感銘を受けた三人は、
その日それぞれの領地に戻ると部下を集め、ホライゾンの話を伝えました。
一方ホライゾンはちょっと上手いことを言えちゃったので、
亡き妻の墓前で調子に乗っていました。
( ^ω^)「この話は歴史に残るwwwww」
从 ゚∀从「今日はな、親父から斯々然々でな」
( ФωФ)「ほほぉ…さすがは大殿様でございますな…」
从 ゚∀从「まぁな。こんな細い矢でも三本束ねりゃ…良い話だぜ」
( ゚∋゚) フンッ!
バキーン!
( ФωФ)「おお、流石は強力無双のクックル! 五本束ねて苦もなくへし折るとは!」
( ゚∋゚)「何本束ねようと圧倒的な武力を持てば折れる。
故に後継者はハインリッヒ様以外におりますまい」
( ФωФ)「それもそうである! 良いことを言うであるな!」
从;゚∀从 ァゥァゥ
川 ゚ -゚)「今日はな、父上から斯々然々でな」
( ・∀・)「( ;∀;) イイハナシダナー」
川 ゚ -゚)「うむ、やはり我々は三人力を合わせて…」
('A`)「刀で切れば良いのに…」
( ・∀・)「そういやそうだな。そのために刀があるんだし」
川 ゚ -゚)「いや、そう言う意味では…」
('A`)「刀…武具、農具、あらゆる道具が不可能を可能にしてきました。
それらの道具は人間の頭脳により生み出され、磨かれてきたのです。
五本束ねようと十本束ねようと、
然るべき道具を然るべき者が然るべき方法で振るえば…おそるるにたらず」
( ・∀・)「素晴らしき人類の叡知! 知恵こそ牙や爪に勝る大きな武器なわけだな。
やはり後継者はクール様しかいない!」
川;゚ -゚) エー
(*゚ー゚)「今日お父様から斯々然々でね」
( ゚д゚ )「ほほぉ…素晴らしきお言葉。感服いたしました」
(*゚ー゚)「やっぱりそれぞれの長所を活かして…」
( ゚д゚ )「しかぁーし! それはそれ、これはこれ! 出でよギコ衆!」
(,,゚Д゚),,゚Д゚),,゚Д゚),,゚Д゚),,゚Д゚),,゚Д゚) ゴルァ!
( ゚д゚ )「この束ねられた矢! 総力をあげてへし折るのだ!」
ソイヤッ! ソイヤッ! ソイヤッ! ベキーン!!
(,,゚Д゚)「束ねられた矢でも、皆で力を合わせれば屁でもねぇぜ! 戦いは数よ!」
( ゚д゚ )「しかし数が集まるほどに抑えつけることは困難となる…
だからこそ抑えこむのではなく、同じ目的へ自ら進ませなければ。
それには武力でも謀略でもない、忠誠心を育てる人望こそが必要となる。
それを持つのはしぃ様のみ。後継者は決まったも同然ですな」
(;゚ー゚) ゥゥゥ…
(;`・ω・´)「殿!一大事でございます! 謀叛! 謀叛でございます!」
( ^ω^)「ちょwwwwwどこのどいつがwwwwwwwwwww」
(;`・ω・´)「ハインリッヒ様、クール様、しぃ様がそれぞれ独立を宣言しました!」
( ^ω^)・;゚. ブフゥ
_
( ゚∀゚)「殿wwwww娘さんマジパネぇっすねwwwwwwwww」
( ^ω^)「wwwwwwwwww」
_
( ゚∀゚)「どーすんのwwwwwパパwwwwwwwww」
( ^ω^)「戦の準備をするおwwwww三人ともぶっ潰すおwwwwwwwww」
_
( ゚∀゚)「うはwwwww愛のムチwwwwwwwwwwww」
( ^ω^)「wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
(`・ω・´)(この草の量…殿は本気だ…!)
それから一月のうちに、娘たちの軍勢は瞬く間に制圧されました。
猛将ボッコスに知将ジョルジュ、ヒッキー隠密隊にシャキン外交官、
その他あらゆる才能が幾重にも束ねられたホライゾン率いるビップ国の前に、
娘たちは手も足も出せず降伏することとなったのでした。
( ^ω^)「勝ったwwwwwwwwwお前ら強すぎワロタwwwwwwwwwww」
_
( ゚∀゚)「殿さすがwwwwwwwwご褒美くれwwwwwwwwwwww」
(`・ω・´)「敵将の…いえ、ハインリッヒ様、クール様、しぃ様を捕らえお連れしましたが」
_ ∩
( *゚∀゚)彡「キタwwwwwwご褒美wwwwww三人ともくれwwwwwwww」
⊂彡
( ^ω^)「やらねーよ下がってろ噛むぞ」
_
( ゚∀゚) ケチ!
ホライゾンは娘たちに罰を与えました。
領地と財産を没収。主要な部下たちは謀叛に荷担したとして一兵卒へ降格。
そして小さな国と幾ばくかの兵を与え、
その国を三人で大きく豊かにする義務を課しました。
( ^ω^)「お前たち三人で協力して、あの荒れた地を統治してみるお。
寄騎としてショボ爺を同行させるから心配はないと思うけど、
五年で結果が出せなかったら嫁ぐか死ぬかしてもらうお!」
(´・ω・`)「かつて殿を育てたように厳しく教育しますゆえ、お覚悟なさいませ」
川*゚⊿゚)*゚⊿゚)*゚⊿从「べ、別に感謝なんかしてないんだからねッ!」
( ^ω^)(ああ…ツンの面影が…。
ツンと似て、強く美しく育っているお…)
(´・ω・`)「殿が尻に敷かれる日も近うございますな…」
( ^ω^)「うっせwwwww三本の矢なんざ土下座でへし折ってやんよwwwwww」
それから数年の後、娘たちは見事に国を豊かに発展させました。
三人がそれぞれの長所を活かし、短所を補い合い、
一つの目標に向かって足並みを揃え国を率いれば不可能はありません。
ホライゾンはそうなることを予期してはいましたが、
想像以上の成果に驚き、また喜びました。
(´・ω・`)(この三姉妹を手懐ければ、内藤ホライゾンなどおそるるにたらず!
さすればこの乱世を平定し天下を手中に納めるのは)
(´・ω・`)(このショボン様さ!)
やがて天下分け目の大決戦と呼ばれる戦争がおき、
ビップ国もまた国の存亡をかけ戦うこととなりますが、それはまた別の話。
しかし、「三本の矢」の話をしっかりと心に留めた娘たちなら、
きっと立派に戦い抜くことでしょう…。
おわり
この小説は2008年11月8日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:DKxqfPkYO 氏
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