はじめてブーン系小説を読む方は
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ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽーん。
耳がおかしくなりそうなほど連打されるチャイム。
こんな小学生みたいなことをするのは「彼」しかいない。
( <●><●>)「はいはい、今開けますよ」
さっきまで読んでいた本を片手に玄関の扉を開けると、そこにはジョジョ立ちをした「彼」が立っていた。
(・∀ ・)「よお、ワカッテマス! プレステ貸して!」
( <●><●>)「……」
(・∀ ・)「ドア閉めようとすんな」
彼、斉藤またんきは小学校の時からの幼馴染だ。
どのクラスにも一人はいる、クラスの中心的存在。
そんな彼は、教室の片隅で本を読んでばかりの私に話しかけてきた。
気が付けば傍にいて、休みの日にはこうやって家にまで押しかけてくる。
もう高校生だというのに、彼と私の関係は小学校の時から全くと言っていいほど変わらない。
( <●><●>)「それで、何の用ですか」
(・∀ ・)「さっき言ったろ、プレステ貸してって。
友達の友達にゲーム貸して貰ったんだけど、俺ハード持ってないからさー」
( <●><●>)「又貸しはよくないですよ」
(・∀ ・)「俺が貸して貰ったんだからセーフだろ。てかハードについてはスルーかよ」
またんきは私の部屋に入るや否や、ベッドの下からゲーム機を取り出してコードを繋ぎ始めた。
とりあえず彼の好きなポテトチップ(Wコンソメ味)とファンタオレンジを机の上に置いて、ソフトを手に取る。
( <●><●>)「『スーパーアルファベット対戦Z』……?」
(・∀ ・)「対戦もできるんだぜ。ほら早くソフト入れろよ」
真っ暗な画面の次に、ロゴが表示される。
またんきは今流行っているドラマの主題歌を歌いながら肩を揺らした。
ゲームはよくあるアクション系のものだった。
操作もそれなりに簡単だから、説明書をざっと見ただけでそれなりの対戦はできる。
私の場合は、だが。
(・∀ ・#)「むかー! 超むかー! 何で攻撃しようと思ったのに防御してるんだよー!」
( <●><●>)「ポテトチップ食べた手でコントローラーに触らないでください」
(・∀ ・#)「わーってるよ! 次やるぞ次!」
またんきはポテトチップ(Wコンソメ味)を口に詰め込むと手を拭かずにコントローラーを握った。
べとべとのぬるぬるになっていくコントローラーが少し哀れに思える。
( <●><●>)「また私の勝ちです」
(・∀ ・#)「てめー強すぎんだよ! ばーか! ばーか!」
( <●><●>)「油まみれの手で叩かないでください」
べとべとの手で私を何度か叩くと気が済んだのか、またんきはコントローラーをティッシュで拭きだした。
ゲームはもう既に終了して、テレビの電源も切られている。
(・∀ ・)「大体お前、勝ったんだからちょっとくらい嬉しそうにしろよ」
( <●><●>)「嬉しそう、とはどんな風にすればいいのですか」
(・∀ ・)「ん? そうだな、こう……あはははははは、勝ったぞー!……みたいな」
( <●><●>)「……ふむ、笑えばいいのですね。やってみましょう」
( <●>∀<●>)「あはははははは、勝ったぞー」
(・∀ ・;)「きもちわるっ!」
( <●><●>)「……」
あなたがしろと言ったのに、とは言わなかった。
(・∀ ・)「お、もうこんな時間か。俺帰るわ、バイトあるし」
( <●><●>)「そうですか」
(・∀ ・)「本当はもーちょい遊びたいけどな」
( <●><●>)「……」
またんきがバイトをしている理由を、私は知っている。
彼の家は母子家庭だ。父親は彼がまだ幼稚園の頃に亡くなった。
当然母親は働きに出るわけで、彼が幼少の頃から家に一人でいることが多かったらしい。
だからこそ、またんきは私に構うのだろうと思う。
私の家は母子家庭ではないけれども、父親も母親もほとんど家にいない。
両方共浮気をしているからだ。浮気相手の家に転がり込んで、帰って来るのは三日に一度あればいい方。
「一人って寂しいよな」、と彼に言われたのは、確か中学生の時だった。
(・∀ ・)「俺さー、いい大学出て、いい所に就職するのが夢なんだ」
(・∀ ・)「そんで金いっぱい稼いで、かーちゃんに楽させてやる」
( ∀ )「……楽させて、やるんだ」
俯いたまたんきの前髪が目を覆う。だから泣いているのかはわからない、が。
彼の唇が一直線に引き結ばれているのは、見えた。
( <●><●>)「またんき」
( ∀ )「……」
( <●><●>)「今度から遊びに来る時は、勉強道具も持ってきなさい」
( ∀ )「……」
( <●><●>)「留年するのは嫌でしょう。私が勉強教えてあげます」
( ∀ )「……サンキュ」
これが、私にできる精一杯。
玄関の扉を開けて、またんきを送り出す。
彼は数歩歩くと突然立ち止まり、振り返った。
白い歯を覗かせ、どこか吹っ切れたように笑っている。
(・∀ ・*)「ありがとな、ワカッテマス! お前やっぱり俺のシンユーだわ!」
電線に止まった鳩がバサバサと飛んでいく。
あまりの声の大きさに呆気に取られていると、またんきは前を向いて照れたように走り出した。
ああ、そういえば彼は「親友」という字が書けないんだった。
中学生の時にテストで「新友」と書いてたっけ。
ふと唇に触れると、そこは笑むように端が上がっていた。
こんな風に笑うのなんて、いつ振りだろうか。
と、さっき走り去って行った彼がこちらに顔を向けて走ってきた。
( <●><●>)「どうしたんですか」
(・∀ ・)「大事なこと忘れてた!」
( <●><●>)「大事なこと?」
いつになく神妙な顔のまたんきに、らしくもなくたじろいでしまう。
けれど能天気な彼が「大事なこと」と言うのだから、きっととてもとても大事なことなのだろう。
(・∀ ・)「俺まだファンタ飲んでなかった!」
( <●><●>)「さっさとバイトに行きなさい」
おしまい
この小説は2008年9月14日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:az+Da4UP0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
タイトルがなかったので、それっぽいタイトルを付けました
お題・バーカ! バーカ!
・(・∀ ・) あはははははは
ご意見等あれば米欄にお願いします