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(´・ω・`)僕と屋上のスナイパーのようです

 
はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ





20081013210943.jpg




 ―1―


 突然だが、死のうと思う。

 目の前にある低い鉄柵の向こう側には、人通りの多い都会の街並みが広がっている。
 こちら側からあちら側へ飛べば、楽に死の世界へ飛び込めるはずだ。
 なんせこのビルは49階建てで、この目もくらむ高さから落ちて生きている人間はいないはずだからだ。

 今日は満月の夜で、濁った夜空には禍々しい月が貼り付けられている。
 この月に見守られながら、排気ガスを吸って死のう。
 そう思っていたが、少し事情が違ってきた。

川 ゚ -゚)

(´・ω・`)

 僕の隣に、黒いボディスーツを着たスナイパーらしき女性がいるのだ。
 彼女は僕が来る前からそこに居て、鉄柵の間からライフルの銃身を伸ばして地面に寝そべっている。

 話しかけていいものかどうか迷った。
 僕としては死ぬ時は一人で死にたいし、ひょっとしたら出てしまうかもしれない
 お粗末な悲鳴を聞かれたく無かったからだ。

 何とかして何処かへ行って貰えないだろうかと、先ほどから咳をしたり携帯を開けたり閉じたりしている。
 しかしこの女性はとても集中していて、僕の事に全く気がついてない様子だ。


(´・ω・`)「あ、あの」

川 ゚ -゚)「え?」

 意を決して声をかけると、その女性ははっと僕の方を振り返った。
 そして言った。

川 ゚ -゚)「誰?」

 顔は冷静そのものだが、目だけは慌てているようだった。
 おそらく普段は誰も使っていないだろうこの屋上に人がいるのに驚いているようだ。

(´・ω・`)「僕は自殺者です」

川 ゚ -゚)「まだ生きているようですが」

 一瞬冗談かと思ったが、彼女としては真面目な切り返しだったらしい。
 化粧っ気の無い顔が天敵に怯える小動物のように訝しげに歪む。

(´・ω・`)「すいません。言葉足らずでした。これからここで自殺するつもりの者です」

 そう言うと、彼女は「あー」とか「おー」とか言って、理解した事を示しているのか首を小刻みに上下させた。

川 ゚ -゚)「じゃあ死んでください」

 その言葉に耳を疑い、思わず「え?」と聞き返していた。

川 ゚ -゚)「私は暗殺者。姿を見られてはこれからの行動に差し支えがあります。
     なので貴方に恨みはありませんが、今ここで死んで貰います」

 彼女は寝そべった体勢のまま、何処からか拳銃を取り出し、僕に突きつけた。
 ここで普通の人間なら取り乱したり命乞いをしたりするのだろうが、僕は自殺志願者だ。
 死はそこまで怖くないので、極めて冷静に彼女の挙動を見つめ続けていた。

(´・ω・`)「安心してください。どの道僕は死にますから」

 銃を突きつけられている事などお構いなしに、僕は鉄柵に足をかけ、向こう側へ行こうとした。

川 ゚ -゚)「待って!」

 いざ飛び立とうとした瞬間、依然銃をこちらに向けている彼女が叫んだ。
 僕はいかにも不満だという事をため息で表しつつ、足を引っかけ屋上へ戻る。

(´・ω・`)「何でしょう?」

川 ゚ -゚)「今ここで飛び降り自殺なんてしたら騒ぎが起こってしまう。
     遅かれ早かれこの屋上に人が来る事になるし、何よりも私の気が散ります。
     集中を欠き仕事をミスしてしまったらボスに怒られる。
     そうすると私はやけ酒で喉をやられ、ただでさえ下手なカラオケがもっと下手になる。
     だからやめて欲しい。自殺なんて馬鹿らしいですよ」

 最後の台詞は絶対後付だろうと思った。


(´・ω・`)「しかし僕は自殺がしたいんです。
      この世界に一秒たりとも長く居たく無い」

川 ゚ -゚)「それでしたらこのサイレンサー付きの銃で殺してあげます。
     射撃には自信があるので、脳天を一発で撃ち抜いてあげましょう」

(´・ω・`)「殺されるのは癪です。死ぬなら自分で死にます」

 彼女は口をすぼめて、困った顔で僕を見上げた。
 基本的に無表情なのにたまに見せる表情の変化が可愛い女性だった。

川 ゚ -゚)「でしたらこうしましょう。私が仕事を終えた後に死んで下さい。
     そうすれば私はミスをしないし、やけ酒に心を奪われることも無い」

(´・ω・`)「そうするとカラオケで高得点が出せるということでしょうか」

川 ゚ -゚)「私は採点機能で80点以上を出したことがありません。
     どのみち高得点は期待出来ないでしょう」

(´・ω・`)「そうですか。じゃあそういうことにしましょう」

 互いの利害が一致した事により、僕たちの距離はぐっと縮まった。
 僕がそう思っただけなのかもしれないが、少なくとも張り詰めていた空気が和らいだのは感じた。



 ―2―


川 ゚ -゚)

(´・ω・`)

 彼女はライフルのスコープをのぞき込んだまま、微動だにしない。
 照準は道路を挟んだ向こう側のホテルに向いていた。

(´・ω・`)「誰を狙っているんですか?」

 死ぬ前だろうと、初めて会ったプロのスナイパーに興味が出ない訳では無い。
 鉄柵にもたれながら、僕は彼女のあまり期待していない返事を待った。

川 ゚ -゚)「薬品会社の幹部です」

 期待を裏切って彼女が返事をしてくれたのは、僕が質問してから5分後の事だった。
 彼女はスコープを覗いていて、僕は夜空を見上げているので、互いの表情はわからない。

(´・ω・`)「誰に頼まれたんですか?」

川 ゚ -゚)「わかりません。依頼は全てボスが受けているので。
     私はただ命令された事を遂行するだけの存在ですから」

 スナイパー、というか暗殺者の会社は秘密が多いらしい。
 その後もいくつか質問をしてみたが、答えはほとんど「わからない」だった。

 次第に僕は彼女の職業の事より、彼女自身に興味が移っていった。
 こんなに若くて綺麗な女性が何故暗殺者という職業に就いたのか気になったのだ。

(´・ω・`)「いつからこの仕事を?」

川 ゚ -゚)「中学校を出てからです」

(´・ω・`)「早いですね。ということは初めての人殺しは15歳くらいなんでしょうか」

 彼女はスコープから目を離し、ちらっと僕の方を見た。
 僕は戸惑いながらも、月の光を受けて青白く光る彼女の顔を見返した。

川 ゚ -゚)「まだ人を殺したことはありません」

 再びスコープをのぞき込んだ彼女は、思いがけない台詞を言った。
 彼女は暗殺者なのに人を殺したことが無い。
 そうするとこれは、初仕事ということなのだろうか。

川 ゚ -゚)「この仕事は3回目です。以前やった仕事は2回とも失敗しました」

 僕の気持ちを読み取ったのか、彼女はそう続けた。
 正直な話、拍子抜けというか、がっかりした。
 目の前にいるのはプロのスナイパーではなく、駆け出しの暗殺者のひよっこなのだ。
 そう考えると気は大きくなり、質問は止まらなくなる。

(´・ω・`)「いくつですか?」

川 ゚ -゚)「18歳です」

(´・ω・`)「フレッシュ!」

 僕よりも10歳以上年下なのか。
 そういえば暗くてあまりわからなかったが、まだあどけない顔をしている。

(´・ω・`)「どうして暗殺者なんかになろうと思ったんです?
      そんなに若くて綺麗なら、もっといろんな道を選べたはずだ」

 彼女の横顔が少しだけ険しくなった。
 何か触れてはいけないものに触れてしまったのだろうか。

川 ゚ -゚)「私は若くて綺麗だからこそ、暗殺者の道を選んだのです」

 返ってきた答えは、それだけ聞くと訳のわからないものだった。

(´・ω・`)「どういうことですか?」

川 ゚ -゚)「女性スナイパーというとどういうものを想像しますか?」

 僕は頭の中で思い描いたことを言った。
 黒髪で長髪。獲物を睨みつけるクールな眼差し。
 全身は黒一色で、スタイルは良く、とここまで言った時彼女に見事当てはまっていることに気がついた。

川 ゚ -゚)「やはりそういうイメージでしょう。
     私は自分の姿を鏡で見ている内に、スナイパーになるしかないと思い立ったのです」

 僕は「なるほど!」と感心していた。
 そう考えれば彼女の容姿はスナイパーという職業以外考えられない。
 まさしくスナイパーになる為に生まれてきたと言っても過言では無いだろう。
 僕は何という愚問を彼女に投げかけてしまったのだろうか。

川 ゚ -゚)「そろそろいいでしょうか?」

(´・ω・`)「あ、すいません」

 雑談は楽しかったが、仕事の邪魔をしてしまっては悪いだろう。
 僕は彼女と少し離れようと、足を踏み出した。

川 ゚ -゚)「今度は私が質問する番です」

 ところが彼女の方も楽しんでいた節があるらしい。
 よくよく見ると両足を交互にぱたぱたさせて、スナイプというより
 ベッドの上で雑誌を読んでいる女の子みたいな動きをしている。

(´・ω・`)「質問ですか」

川 ゚ -゚)「貴方だけが質問して私だけが答えるというのは、少し不平ではないでしょうか。
     RPGの雑魚敵だって自分の攻撃が終わったら素直に攻撃を受ける側に回ります。
     例え見知らぬ自殺者とスナイパーだろうと、会話のキャッチボールは守らなくてはなりません」

 確かにそれはそうだ。僕はRPGの雑魚敵以下のマナーの持ち主だったということか。
 彼女から離れるのはやめて、反省しつつ彼女の言葉を待った。



 ―3―


川 ゚ -゚)「私の名前はクー。貴方の名前は?」

 そういえば名前を聞いていなかった。
 暗殺者だからという事で無意識の内に遠慮していたのだろう。
 しかしこうやって自分から話してくれるのだからこのスナイパーは優しい。

(´・ω・`)「僕はショボンです」

川 ゚ -゚)「年は?」

(´・ω・`)「29歳」

川 ゚ -゚)「職業は?」

 僕は言葉に詰まった。
 僕の職業はあまり胸を張って言えるものでは無いからだ。

川 ゚ -゚)「答えて下さい」

 クーは無情にも答えを迫る。
 ここで黙りこんでしまっては、今時の言葉でいうKYなのだろう。
 KYというのは空気、読めてないの略で、若者言葉の一つである。

(´・ω・`)「―――です」

川 ゚ -゚)「はい?」

 声が小さすぎて、風にかき消されてしまった。
 僕は恥ずかしいながらも、もう一度その言葉を口にした。

(´・ω・`)「小学校の教員です」

 今度は聞き取れたらしいが、彼女の横顔は何だか不満そうに見えた。

川 ゚ -゚)「本当ですか?」

(´・ω・`)「嘘をつく必要もメリットもありませんよ」

川 ゚ -゚)「でしょうね。けれど、さっき答えにくそうにしていたのは何だったんです?」

(´・ω・`)「わからないんですか?」

川 ゚ -゚)「ええ。さっぱり」

 こんなに鈍感なスナイパーというのはどうなのだろう。
 人の心を丸裸にするような洞察力が無ければ、スコープに映る人間の動きなんて予想出来ない気がするが。


(´・ω・`)「僕が先生をしているなんてちゃんちゃらおかしいとは思いませんか?」

川 ゚ -゚)「いえ、特に」

(´・ω・`)「考えてもみてくださいよ。小学校の先生ですよ。
      まだ考えが未熟で大人の世話が無ければ一人で用も足せないようなガキを相手にするんです。
      おっと、失礼」

 ついつい言葉を荒げてしまった。
 クーは暗殺者として働いている社会人の身ではあるが、まだうら若き18歳の乙女だ。
 もう少し言葉を選ぶ必要がある。

川 ゚ -゚)「用くらい足せると思いますけど……」

(´・ω・`)「馬鹿で純粋無垢な小学生の手本にならなくてはいけない。
      それはつまりどういうことかわかりますか?」

 彼女が何か言っていたような気がするが、僕はそのまま続けた。
 少しの間の沈黙の後、彼女は質問に答えてくれた。

川 ゚ -゚)「やはり、良識ある大人の姿を見せるということではないでしょうか」

(´・ω・`)「50点ですね」

 僕の採点にとても不服そうに口をすぼめる。
 そういう仕草がやっぱりまだ子供らしい。

(´・ω・`)「確かに良識ある大人として彼らに接し、幼い頃から社会常識を身につけさせるのは当然のことです。
     しかしそれだけでは足りないのです。奴らは悪魔だ。大人の悪い面ばかりを見つける天才なんですよ」

川 ゚ -゚)「悪魔ですか」

(´・ω・`)「悪魔です。サタンの申し子です。テストの採点が遅ければ文句を言う。
      成績が悪いのは先生の授業のせいだとケチをつける。
      掃除をしない生徒をしかればアメリカでは業者がやっている事だと
      何処で仕入れたものかわからない屁理屈を言う」

川 ゚ -゚)「しかしそういう生徒を指導して更正させるのが仕事の一つなのでは?」

(´・ω・`)「無理ですよ。あんなの聖人じゃないとやっていられません。
      そもそも教師なんて職業自体がとても不完全で未熟な社会システムの一部なんです。
      誰でも出来そうで誰にも出来ない職業なんです」

川 ゚ -゚)「だから死にたくなったと」

(´・ω・`)「その通りです」

川 ゚ -゚)「では転職なさればいいじゃないですか」

(´・ω・`)「この年になって転職なんて並大抵の努力じゃ無理ですよ。
      死にものぐるいで教職免許を取って、数年かけてガキ向けの営業スマイルを身につけたんですよ。
      安定した給料と未来を保証してくれる職業なんて今のところこの教職しか無いんです」

 クーの表情が徐々に硬くなってきた。
 自殺志願者である僕のどうにも出来ない苦悩の一部に触れてしまったからだろう。
 これ以上彼女の気を散らせてしまってはいよいよ仕事に差し支えが出てくる。
 そう思った僕はしばらく自重して黙ることに決めた。


川 ゚ -゚)「突然ですけど、ガムは飲み込むタイプですか?」

 黙り込みを決意した途端の彼女の一言だった。
 質問の意図がよくわからなかったが、僕はYESと答えた。
 ガムは子供の頃から飲み込んできていたので、もはや癖になっている。

川 ゚ -゚)「私が作ったアメーバガムです。お一つどうぞ」

 これまた何処からか取り出したガムが、彼女の手に握られていた。
 彼女はスコープを見続けたまま、僕の方にガムを持った手を伸ばす。
 短いお礼を言ってガムを受け取り、銀紙をはいで口の中へ放り込んだ。

川 ゚ -゚)「アメーバガムは噛んでいる内に味が変わってくるガムです。
     常に味が変化するのでアメーバという名前をつけました」

 クーの言った通り、アメーバガムは様々な味に変化し、僕の味覚を刺激した。
 最初はイチゴみたいな甘酸っぱい感じだったが、次にメロンみたいな味に変わり、今は焼き肉風味だ。
 ガムを心の底から美味いと感じたのは、これが初めてだった。
 しばらく味を堪能してから、僕はガムを飲み込んだ。


「だ、誰だお前ら」


 か細い男の声が後ろから聞こえた。
 僕はクーと一緒に振り返り、アタッシュケースを持った貧相な男が立っているのを確認した。
 顔は青白く(月の光だけのせいでは無いだろう)、唇は小刻みに震えている。

(;'A`)「何故ここにいる。お、俺が来るのを知ってて、待っていたのか!?」

 かなり動揺していて、細い手足ががくがくと震えていた。

(´・ω・`)「いえ、違います。僕は死ぬ為にここに来たんです」

(;'A`)「死んでないじゃないか!」

(´・ω・`)「言葉足らずですいません。これから飛び降りて死ぬ予定なんです」

 僕があまりにも冷静だからか、男の動揺はだんだんと収まってきた。
 クーは既にスコープに顔を戻している。

('A`)「そこの女もそうなのか?」

 僕は「いいえ、この人は暗殺者です」と言いそうになって慌てて口を塞いだ。
 彼女にしてみれば自分の素性を知られるのはまずいだろう。
 というか姿を見られるだけでかなりまずいはずだ。
 彼女はこの状況をどうするつもりなのだろうか。

川 ゚ -゚)「ショボンさん。私も自殺志願者ということで話を合わせて下さい」

 その時彼女は、小声でそっと言った。
 今までずっと下らないお喋りをしていただけの仲であるが、僕を殺さないでいてくれた恩がある。
 今こそその恩を返すべきだと、僕はガキ相手に身につけた話術を披露すべく男の前へ歩み出た。

(´・ω・`)「彼女は僕の妹です。一緒に死ぬ為にここにいるんです」

('A`)「嘘つけ。全く似てないぞ」

 出だしのジャブはカウンターで返されてしまった。
 ここで素人なら冷静を失い取り乱す所だろうが、僕は腐っても教員なのでそんなことはしない。

(´・ω・`)「実は義理の母の娘なんです。義理の妹と書いて義妹というやつです」

 これなら似ていなくても仕方が無い。
 男は納得したように「へー」とか「ふーん」とか呟き、腕を組んで首を上下させた。

('A`)「二人とも自殺志願者ならちょうどいい。実は俺もそうなんだ」

川 ゚ -゚)「え?」

 クーがこちらを振り返る。
 僕は彼女を安心させる為に、男には見えないように背中で親指を立てた。

('A`)「このビルに爆弾をしかけた。スイッチはこのアタッシュケースの中だ」

 僕は立てていた親指を下に向けることとなった。
 背中で彼女のうめき声が聞こえた。



 ―4―


(´・ω・`)「爆弾というのは本当ですか?」

 男はやれやれといったように、アメリカ人がよくやるジェスチャーをした。

('A`)「嘘をつく必要もメリットも無いだろう。
    このビルが完全に倒壊するだけの爆弾を既に仕掛けておいてある」

(´・ω・`)「それはそうですが、爆弾というのはあまりにも非現実的過ぎる」

('A`)「俺の名前を聞けば現実感が溢れてくるだろうよ」

 男は『ザイコ』と名乗った。
 その名前を聞いた時、寝そべっていたクーがとうとう体を起こした。

川 ゚ -゚)「爆弾魔ザイコとは、貴方のことなんですか」

('A`)「その通りだ」

 爆弾魔ザイコ。日本中を震撼させた狂気の犯罪者だ。
 仕掛けた爆弾は数十に及び、死傷者の数はもはや完全に把握出来ていないほどの数に上る。

('A`)「どうせ死ぬんだから、どうやって死んでも同じだよな」

 ザイコはアタッシュケースを開けた。
 中にはむき出しになった回路と、一つの赤いスイッチが見えた。

(´・ω・`)「待ってください!」

川 ゚ -゚)「待ってください!」

('A`)「何だよ」

 僕とクーの声が重なる。
 顔を見合わしてから、僕の方が先を続けた。

(´・ω・`)「どうせ死ぬなら自分で死にたい。貴方の爆弾で殺されるなんてまっぴらごめんです」

川 ゚ -゚)「そうです。それに自殺なんて馬鹿げていますよ」

('A`)「お前も自殺志願者だろ」

川 ゚ -゚)「そうでした。私も馬鹿げています」

 彼女は口べたな方らしい。
 僕は彼女にウインクして、僕が何とかするという合図をした。

(´・ω・`)「正直に言いましょう。僕は自殺志願者ですが、彼女は違います。義妹でもありません」

('A`)「何だ。違うのか」

(´・ω・`)「彼女は暗殺者なんです」

 背中でうろたえるクーの顔が頭に浮かんだが、僕には考えがある。
 余裕を持って先を続けた。

(;'A`)「暗殺者だって!?」

(´・ω・`)「そうです。今隣のホテルの男性を狙っています」

川 ゚ -゚)「女性です」

(´・ω・`)「訂正します。女性でした」

('A`)「そ、それで?」

(´・ω・`)「彼女は姿を見られた人間を生かしておくことは出来ない。
      ですが僕も貴方も自殺志願者だ。
      だから彼女の仕事が済んで、僕が飛び降りた後、爆弾を爆発させて下さい」

 後ろから「なるほど!」という感心した声が聞こえた。
 これなら三人の目的が全て満たされ、円満な解決となる。

('A`)「確かにそれなら問題無いな。
    俺は一人で死にたかったが、その女は仕事が済んだら帰る。お前は死ぬ。
    いずれこの場所は俺一人になるという訳か」

(´・ω・`)「そういうことです。僕も一人で死にたかったんですが、貴方にお譲りしましょう」

('A`)「悪いな」

(´・ω・`)「いえ、持ちつ持たれつ、仲良く死にましょう」

 ザイコはアタッシュケースを閉じ、鉄柵の方へ歩み寄った。
 腰を下ろし、鉄柵に背中を預ける。
 クーの仕事が済むまでそうやって待つつもりらしい。

('A`)「首尾はどんな感じだ?」

川 ゚ -゚)「いけそうな気がするが失敗する気もする。
     確率的に言えば半々といった所でしょうか」

('A`)「そうかい。まあ頑張れや」

川 ゚ -゚)「頑張ります」

 爆弾魔とスナイパーは、口を歪ませて微笑みあった。



 ―5―


 ザイコの本名はドクオという名前らしい。
 見た目より喋り好きらしく、自分から名乗った。

(´・ω・`)「政治体制に不満があった訳ですね」

('A`)「そうだ。だからいっぺん全てをぶち壊したくなったのさ。
    それで俺は爆弾魔になったって訳だ」

 犯罪者の動機は三つに分けることが出来る。
 一つは女、二つ目は金、三つ目は思想だ。
 彼はその三つ目の動機で連続殺人を犯したらしい。

(´・ω・`)「ではどうして自殺なんて?」

 疑問に思うのはそれである。
 政治を変える為に爆弾魔になったとしたら、まだ目的は遂行されていないはずだ。
 不平等なシステムに苦しむ人民を救えていないまま死ぬのは死んだ後も未練が残るのではないだろうか。

('A`)「俺は十分に人を殺した。
    政治家やマスコミ関係者を狙ったが、その実関係の無い一般人もたくさん殺した。
    取り返しのつかないことをしたと思ってきたが、今更どうにかなるもんじゃない。
    だったら最後にでかい花火を上げて死んでやろうと考えてな」

(´・ω・`)「なるほど。しかしこのビルにも一般人は大勢いますよ」

('A`)「知ったこっちゃねえよ。1000人が1001人になっても大して変わんねえだろ」

 この男は罪の意識によって死ぬんじゃなくて、単に人殺しに飽きただけのような気がした。
 政治体制への不満というのは自分を納得させる為だけの理由付けなのかもしれない。

('A`)「お前は何で死のうと思ったんだ」

 僕は教員であることと、教員というシステムの矛盾を話した。
 ドクオは時折頷きながら、黙って僕の話を聞いた。

('A`)「そうか。色々大変だったんだな」

(´・ω・`)「ええ。疲れてしまったんですよ。色々とね」

 もたれかかっている鉄柵の間から、ビルの真下の大通りを見下ろした。
 既に日付が変わっている時間だったが、車や人の往来は絶えることは無い。
 いつも背中を曲げて歩いていたこちら側の世界が、あちら側に広がっている。
 その奇妙な感覚に体が身震いした。

('A`)「お、おい」

 気がつけば僕は立ち上がり、鉄柵に足をかけていた。
 ビルのふちに足を下ろし、煌びやかに彩られたネオンの街を眼下に捕らえる。

 一歩足を踏み出せば、あちら側へと行ける。
 こちら側にあったような悩みやストレスの無い、夢のような世界へ―――。

川;゚ -゚)「何をやっているんですか!」

(;'A`)「馬鹿なことはやめろ!」

 いつの間にか僕は二人に取り押さえられていた。
 引きずり込まれるようにして屋上へ引き戻される。

(;'A`)「お前が飛び降りたら人が来るかもしれないだろうが!」

川;゚ -゚)「今死なれたら仕事が失敗します!」

(´・ω・`)「も、申し訳ありませんでした」

 正座して二人の説教を聞いている間も、足がうずいて仕方が無かった。
 僕の意識は既にこちら側には無かったのだ。



 ―6―


 ドクオについて、気になることが一つあった。
 聞いていいものかどうか迷っていたが、どうせ死ぬんだからと勇気を出すことに決めた。

(´・ω・`)「ザイコさん」

('A`)「ドクオでいい」

(´・ω・`)「ドクオさん。どうして貴方はザイコと名乗っているんですか?」

 ドクオはまだ火のついている煙草を鉄柵の向こう側に放り投げた。
 ゆらゆらと舞いながら落ちていく煙草に、一瞬目を奪われる。

('A`)「それは、そうだな。お前が死ぬ直前に教えてやるよ」

(´・ω・`)「今がそうなんですが」

('A`)「まだわからない。ザイコの名前の意味は墓まで持って行くつもりなんだ。
    もし不測の事態が起こってお前が死ななかったら後々困るからな」

(´・ω・`)「うーんなるほど」

 僕としては既に死んでいるも同然なんだが、ドクオは心配性らしい。

('A`)「おい、そっちはどんな感じだ」

川 ゚ -゚)「ターゲットが男連れで部屋に入るのを確認しました。
     彼が愛人なのは確認済みなので、すぐにベッドに向かうでしょう」

('A`)「ところで狙っているのは誰なんだ?」

川 ゚ -゚)「薬品会社の幹部、井出麗子という女です」

(;'A`)「井出!?」

 素っ頓狂な声を出したドクオは、落ち着きの無い様子で視線をさまよわせた。
 スコープに注意しているクーの代わりに、僕が尋ねる。

(´・ω・`)「知っている方なんですか?」

('A`)「し、知っているも何も、俺がいた会社の上司だ」

(´・ω・`)「ほう、そうなんですか」

('A`)「ああ。何かにつけて口うるさい嫌な女だったよ。そうか。あいつか。へへへ」

 相当嫌っていたらしく、暗殺されるのが面白くて仕方無いらしい。
 手に持っているルービックキューブをとてつもないスピードで操り始めた。

(´・ω・`)「何ですかそれ」

 その時初めて、ドクオがいつの間にかルービックキューブを持っていることに気がついた。
 何処から取り出したのだろうか。

('A`)「何ってルービックキューブだよ」

(´・ω・`)「いやそれはわかるんですが、どうして今それを?」

('A`)「爆弾魔っていやルービックキューブだろ?
    そう思っていつも持ち歩いているんだ」

 言われてみればそんなイメージが無い訳でも無い。
 しかしドクオはルービックキューブが苦手らしく、二面が揃っただけでそこから進んでいない。

('A`)「完成させた事が無いんだよな。これ。
    死ぬ前に一度は完璧に揃えたいと思ってるんだけど、中々難しいんだ」

 その後無言になったドクオはルービックキューブと格闘を始めた。
 今日はいつもより調子が良いらしく、僕が見ていた内に三面まで揃えた。


川 ゚ -゚)「きた」

 ルービックキューブがガチャガチャ回る音に混じって、クーの声がした。
 顔は無表情に近いが、緊張に満ちている。
 どうやらターゲットを視界に捕らえたようだ。

 僕は邪魔しないように口を押さえて待った。
 ドクオは少し距離を置いて、なるべく音を抑えるようにしてルービックキューブと遊んでいる。
 一分、五分、十分と時間が経つ内に、僕の緊張は解けていった。
 しかし彼女の方は微動だにせず、緊張した顔のままスコープを覗いている。

 最もスナイプの確率が高い瞬間を狙っているのだろう。
 並の人間なら途中で目を離してしまうかもしれないが、そこは流石にプロだ、瞬きすらせず機を狙っている。

川;゚ -゚)

 まだ出会って間もないのだが、彼女の仕事の成功を心の底から祈った。
 成功しようが失敗しようが彼女は逃げるだろうし、その後は心置きなく死ねる。
 しかしどうせなら仕事を成功させて喜ぶ彼女を見てから死にたいものだ。


「あ、あ、あ」

(´・ω・`)「?」

 犬のあえぎ声みたいな声が聞こえた。
 ドクオの方から聞こえた気がしたが、彼はこちらに背中を向けているのでわからない。
 再びクーの方を振り返った、その時だった。

('∀`)「出来た――!!」


 感極まったドクオの叫びが、屋上のアスファルトに反射して辺りに響き渡った。
 その瞬間ライフルの引き金に当てていたクーの指が、びくっと震えたのを、僕は見た。


川;゚ -゚)

(´・ω・`)「クーさん」


川;゚ -゚)

(´・ω・`)「撃ったんですね?」


 ライフルの引き金が軽いかどうかなんて僕は知らない。
 きっと種類によってまちまちなんだろう。
 18歳の乙女が使うライフルの引き金は、果たして驚いた拍子に引いてしまう程軽いものなのだろうか。


川;゚ -゚)「撃ちました」

(´・ω・`)


('∀`)「見て見て! ほら、完璧!」

 見せびらかすようにして、六面が綺麗に揃ったルービックキューブを顔の前に持ってくる。
 僕はそれを振り払って、クーの目を睨みつけるように見返した。

川;゚ー゚)「当たりました」

 初めて見せた彼女の笑顔だった。
 玩具を与えられた子供のように、馬鹿で純粋無垢な輝きをしていた。

(´・ω・`)「そうですか」

('∀`)「やったぜ――! いやっほ――!」

川;゚ー゚)「ふふふふふ」

 ドクオとクーは手を取り合って、満月の下で踊り始めた。
 不格好なワルツを見ながら、ようやく死ねるという開放感に身を委ねた。
 クーはまだいるが、もう我慢出来ない。僕は鉄柵に足をかけ、一気に乗り越えようとした。

 眼下にパトカーの大群を見つけたのと、警官隊が突入してきたのは、ほぼ同時だった。



 ―7―


(,#゚Д゚)「動くなゴルァ!」

ミ,#゚Д゚彡「もう逃げられんぞ!」

(;'A`)「え?」

 ワルツをやめたドクオは、武装した警官隊を見て呆然としていた。
 それは僕も同じだった。呆けた顔で、まるで他人の夢を見ているような感覚で、そこに立っていた。

川;゚ -゚)「はめられた」

(´・ω・`)「何ですか、それ」

川;゚ -゚)「切り捨てられたんです。組織に」

(´・ω・`)「だからどういう意味―――」

川;゚ -゚)「私が使い物にならないから、裏で取引されたんですよ!」

 そこまで聞いても、どうにも理解出来なかった。
 だから僕は一瞬の間に、彼女と組織、そして警官隊が突入してきたことの意味を考えた。

 おそらく彼女がいる組織と警察は何らかの繋がりがあるのだ。
 彼女がいらなくなった組織が彼女を犯罪者として警察に引き渡すことにより、警察は功績を得る。
 警察側は組織のやったことを一部黙認する。
 そのようにして互いに利潤のあるシステムがあるに違いないと予測した。

( #゚∋゚)「一人も逃がすな!」

(#'A`)「うるせえ! これを見ろ!」

 ドクオはアタッシュケースを広げ、中身が見えるように高々と掲げた。
 腐っても警官である彼らは、それが何かわかったらしく、動きが止まる。

(´・ω・`)「どうしよう。まあ今捕まっても、僕に何の罪も無いけど」

川 ゚ -゚)「いえ、大ありです。貴方は既に私の仲間になっている」

(´・ω・`)「そんな馬鹿な。いくら警察が無能でも話せばちゃんとわかってくれます」

川 ゚ -゚)「いいえ、貴方の体には、既に組織の者であるという証拠があるんです」

(´・ω・`)「は?」

 クーの言っていることがわからない。
 僕はただの自殺志願者であり、犯罪者では無いはずだ。

川 ゚ -゚)「アメーバガムには、組織の組員であることを示すナノマシンが入っています。
     胃の中で溶けたガムからナノマシンが体内に注入される。
     警察はこのことを知っているでしょうから、貴方の体も調べるでしょう。
     そうすれば言い逃れは出来ません。一生檻の中です」

 言葉が出なかった。
 ナノマシンなんていうゲームか漫画でしか聞かないものを彼女が持っていたことにも驚いたが。
 それよりも僕を道連れにしようとしている彼女に、僕は呆れて言葉が出なかったのだ。

(;'∀`)「ひゃはははは! 逃げられねーのはてめーらの方なんだよ!」

(,;゚Д゚)「くそ、話が違うぞゴルァ!」

( ;゚∋゚)「い、一旦退いて体勢を整えないと!」

(;'∀`)「もう手遅れなんだよ!」

 手遅れか。確かにそうだ。
 死ぬと決めた時から、僕はとっくに手遅れな状態だったんだ。
 こちら側の世界に、僕が生きる術なんて一つも残ってなかったんだ。


('∀`)「ショボン!」

(´・ω・`)「は、はい」

('∀`)「俺のザイコっていう名前はなあ、会社に残ってる在庫の薬品から爆弾作ってるからだ!」


 約束、覚えててくれた。
 それにしても、何だか、


(´・ω・`)「間抜けな理由ですね」

('∀`)「おう! どうでもいいんだよ名前なんてよ!
    まあ、俺自身が人間の在庫っていう意味もあるかもしれねえけどな!」


 二つの意味で、ザイコなのか。
 誰からも選ばれず、誰からも望まれず、ただ破壊だけを繰り返す存在、ザイコ。
 そう考えれば、あながち馬鹿らしくもないかもしれない。


川 ゚ -゚)「ショボンさん!」


 背中に投げられた怒声に反射的に振り返る。
 クーは、鉄柵の向こう側にいた。


川 ゚ -゚)「早くこちらへ!」

 彼女は何処から取り出したのか全くわからないハンググライダーに体をくくりつけていた。
 ここから飛んで逃げようというつもりなのか。


(;'∀`)「最後のパーティタイムだ! クラッカーの準備はしなくていいぜ!
     俺がもう取り付けてあるからよ!」

川;゚ -゚)「早く! 時間がありません!」

(´・ω・`)「でも、僕は」


 死ぬんだ。
 こちら側の世界から、あちら側へと行かなくてはいけない。

 でも、待てよ。

川 ゚ -゚)「貴方のことをもっと知りたい。どうか、死ぬなんて考えないでください」

 今彼女がいるのは、こちら側じゃない。
 鉄柵の向こう側、あちら側だ。


(,;゚Д゚)「やめろぉぉぉぉ!!」

('∀`)「人生そう単純にはいかないもんだぜ。ルービックキューブみたいにな」

 ごめん、ドクオ。
 墓の中に持って行くはずだったザイコの名前、僕は抱えて飛ぶことにするよ。


(´・ω・`)「クーさん。好きだ」

川 ゚ -゚)「私もです」


 鉄柵を乗り越え、クーの体にしがみついた。
 「しっかり掴んでおいてください」彼女がそう言った途端、僕たちは高層ビルから飛び立った。
 風が最高の流れを作ってくれているみたいだ。
 まるで滑空する鳥のように僕たちは夜空を舞った。

 こちら側だった場所から、耳をつんざく爆発音が聞こえた。
 あちら側にいる僕たちの鼓膜を突き破る。
 無音になった世界で、月だけが優しく笑っていた。



 人生なんて、アメーバガムみたいなものなんだな。







     僕と屋上のスナイパーのようです  完






この小説は2008年9月11日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆CnIkSHJTGA 氏



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/08 19:55 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(2)

相変わらず素晴らしいなあ
最高のブーン系の一つなんじゃないだろうか
[ 2010/07/13 13:49 ] [ 編集 ]

面白いなこれw
ザイコの由来には笑った
[ 2011/11/10 16:36 ] [ 編集 ]

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