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夏休みのようです


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( ><)「行って来ますなんです!」

 僕はラジオ体操のカードを持って家を出ました。
 綺麗に咲いた朝顔が僕にいってらっしゃい、と言ってるんです。
 僕が公園に着く頃にはもう町内会の人達が集まってます。

( <●><●>)「お早う、ビロード」

( ><)「ワカッテマスくん、お早うなんです!」

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ!」

( ><)「ちんぽっぽちゃんもお早うなんです」

 近所に住んでる二人、ワカッテマスくんとちんぽっぽちゃんはもう公園に来てました。
 この二人は入学式の日からの友達で、入学してから三ヶ月の間に何回も遊んでました。
 そんな二人との毎日はとても楽しいんです。



20080806201651.jpg



( ><)「今日でラジオ体操も最後なんです」

( <●><●>)「ビロードがご褒美目当てなのは分かってます」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ」

 そうなんです、この二人の言う通り、
 僕がこの一週間ずっとラジオ体操に参加していたのはこの日のためなんです。

 ラジオ体操のカードに貼ってある六つのシール、
 それはラジオ体操に参加した証拠で、今日の分と合わせて七つシールを貼ってもらえば、
 それと交換でお菓子を貰えるようになってるんです。
 だからこの一週間は朝早くに起きて辛くても参加しました。

( <●><●>)「もうすぐ始まりますね」

 そしてそんなワカッテマスくんの言葉の後、ラジオから元気なお兄さんの声が聞こえてきました。


‐‐‐


( ><)「終わったんです!」

 早速カードを交換する為にワカッテマスくんと一緒に並んで、お菓子とカードを交換してもらいました。
 袋の中には色んなお菓子が詰まってます。

(*><)「やったー! ……あれ、ちんぽっぽちゃん?」

 僕は気付きました、ちんぽっぽちゃんがお菓子を貰っていないことに。
 そしてそれが何故なのかは、すぐに分かりました。
 三日前、ちんぽっぽちゃんは熱を出してラジオ体操に来れなかったからです。

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

 気にしないで、だなんて言ってるけど寂しいに決まってるんです。
 そんな僕を見兼ねて、ワカッテマスくんは僕に言いました。

( <●><●>)「ビロードの分をちんぽっぽちゃんにわけてあげれば良いのですよ、
         ビロードには私の分をあげますから」

( ><)「分かったんです、ありがとうなんです!」

 後から僕にわけてくれるなら最初からちんぽっぽちゃんにわければ良かったのに、とは思ったけれど、
 それの本当の意味に気付くのはまだ先なんです。
 二人とはまたお昼を食べてからこの公園で待ち合わせをすることにして、一旦わかれました。

 僕は一人で歩いていると、どうしても難しい事を考えてしまうんです。
 もう夏休みは残り二日程で、それが終わればまた学校が始まります。
 それからも三人で沢山の行事を楽しんでいくんです。
 遠足も運動会も、そうやってずっと三人で楽しんでいたいんです。

 けれど幼い僕にだって分かります、それが無理だって事くらいは。
 だからオトナになってから後悔しないように今の内に沢山思い出を作りたいんです。
 まだ時間は沢山あるんです。


( ><)「じゃあ行って来るんです!」

 家に帰ってから朝ご飯、それから暫くしての昼ご飯、やっと約束の時間になって僕は家を飛び出しました。
 たった数時間だったけれど、僕にはそれが長く感じられました。
 きっと二人と一緒だったら物凄く早く感じるでしょう。
 そんな考え事をしている内に僕は公園に着きました。

( <●><●>)「ビロード、こっちです」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

 僕が来たら二人は先に公園のベンチに座ってました。
 それから鬼ごっこや隠れんぼ、だるまさんが転んだと沢山の遊びをしてる内にお腹が空いて、
 僕達はお菓子を食べる事にしました。
 僕もワカッテマスくんも、ちゃんとお菓子を持って来てます。

( ><)「はい、ちんぽっぽちゃんにこれとこれあげるんです」

 僕はレタス太郎とグミをちんぽっぽちゃんにあげました。
 他にもラムネを二人で分けたり、ワカッテマスくんの分も貰ったりして皆で食べます。
 そうして食べている内に、僕達は全部食べきってしまいました。

( <●><●>)「もうすぐお祭りですね」

( ><)「金魚すくいやりたいんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

 夕焼け色に染まる空を見てワカッテマスくんは言いました。
 もう神社からお囃子の音も聞こえてきます。

 僕達は夏休み前から一緒にお祭りに行こうと約束をしていました。
 本当は三人で行きたいところですが、僕達一年生は保護者がいないといけないんです。
 保護者と言っても六年生のお兄さんお姉さんで十分なので、
 僕達はワカッテマスくんのお兄さんについてきてもらう事にしてます。

( ><)「じゃあまた神社で待ち合わせなんです!」

 僕達はお金、それにちんぽっぽちゃんは浴衣を着るのでまた待ち合わせをします。
 家に帰って準備をして、早くお祭りに行きたいという気持ちが大きくなっていきます。
 ワカッテマスくんとお兄さんとは先に待ち合わせをしているので、三十分も経たない内に
 僕はまた外へ出て行きました。

 すっかり夕焼け色の空の下、神社に近付くにつれ多くなる人達と当たらないように
 急いで行く僕は、やがて二人を見つけました。

( ><)「お待たせなんです!」

( <●><●>)「そんな事無いです」

(*<●>・・<●>)「ふひひ、浴衣のおにゃの子が沢山……あ、ビロード君こんばんは」

( ><)「お兄さんこんばんはなんです!」

 ワカッテマスくんのお兄さん、サカッテマスさんは六年生で目がワカッテマスくんにそっくりなんです。
 時々変な事を言ってはワカッテマスくんが『鉄拳制裁』とやらを食らわせています。

(*<●>・・<●>)「ビロード君にお兄ちゃんって呼ばれるのも良いですね、今ならショタもいけそうで ぐぇあっ」

( <●><●>)「とりあえず死のうか兄さん」

 ほら今もこうして……。

 僕にはお兄さんの言ってる事がよく分からなかったけれど、
 ワカッテマスくんには分かっているみたいなんです。
 多分ワカッテマスくんが大人びていて物知りなのもきっとお兄さんのお陰なんです。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ!」

( ><)ノシ「あ、ちんぽっぽちゃんなんです!」

 遠くに見える浴衣姿のちんぽっぽちゃんに向けて、僕は手を振りました。
 ちんぽっぽちゃんは僕に気付いて手を振りかえしてくれて、
 僕はいつもと違うちんぽっぽちゃんに内心どきりとしました。


(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

( <●><●>)「じゃあ行きましょうか」

( ><)「はいなんです!」

 すぐにそんな気持ちを忘れて僕らはお店を見てまわりました。
 僕は金魚すくいをやったけど上手くいかなくて、ちんぽっぽちゃんはりんご飴ならぬみかん飴を食べて、
 ワカッテマスくんは射的で沢山景品を打ち落としていました。
 お兄さん曰くワカッテマスくんは『屋台泣かせ』なんだそうです。
 
 そんなこんなで僕達四人は色々なお店を回って、ある程度経った頃、
 ちんぽっぽちゃんがワカッテマスくんに何やら耳打ちしました。

( <●><●>)「あ、そういえば金魚すくいやってませんでした」

( ><)「え?」

 それが終わると急にワカッテマスくんが思い出したように言いました。

( <●><●>)「ちょっと兄さんと一緒に行ってくるんで一旦わかれましょう」

(*<●>・・<●>)「え?」

 ワカッテマスくんは半ば強引にお兄さんを連れて行ってしまいました。
 残された僕とちんぽっぽちゃんはぽつりと立っています、正直気まずいなんてレベルじゃないんです。

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ」

( ><)「あ、はいなんです」

 ちんぽっぽちゃんの言う通り、人が少ない神社の階段に二人で座ります。
 あんなに暑かったのが嘘みたいに涼しいんです。
 しばらく涼んでいると、ちんぽっぽちゃんは無言で僕に何か差し出してきました。

 綺麗な朝顔のハンカチで包まれたそれは、十個程の朝顔の種でした。

( ><)「くれるんですか?」

 僕がそう聞くと、ちんぽっぽちゃんはこくりと頷きました。
 ハンカチは返そうとしましたが、それも貰ってほしいとちんぽっぽちゃんは言いました。

( ><)「ありがとうなんです」

(*‘ω‘ *)「ぽ」

 僕は割れ物を扱うみたいに大切そうにポケットにそれをしまいました。

( ><)「ちんぽっぽちゃん」

(*‘ω‘ *)「ぽっ?」

( ><)「夏休みが終わっても沢山遊ぶんです、遠足とか運動会とかも一緒に楽しみたいんです。
      それでまた、来年の夏休みも、こうやってお祭りに来るんです」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ……」

 ちんぽっぽちゃんは曖昧な返事をして、何かを言いたそうなのに、何も言いません。
 しばらくの沈黙が流れたあと、急にちんぽっぽちゃんは僕の手を取って走り出しました。

( <●><●>)「遅いんですけど」

(*‘ω‘ *)「ぽー……」

 金魚すくいの所に行くとワカッテマスくんに怒られました。
 普通逆なんです、と思いながらワカッテマスくんを見るとあらびっくり。
 ワカッテマスくんの両手に二つの袋、一つの袋にでさえ沢山の金魚が詰まってます。

( <●><●>)「そろそろ花火です」

 ふと空を見上げれば、もうさっきまで夕焼け色だった空の色は、
 今ではもう綺麗な群青色になってました。
 僕達は神社から近くの河原に移ります、神社より花火がよく見えて人が少ない所がここだからなんです。

 座り込んで空を見上げていると、すぐに一発目の花火が空に上がりました。
 続いて幾つもの花火が空を彩り、僕らの顔を薄い緑や赤にしていきます。
 時々何かを象ったものも出て来て、僕らはすっかり花火に見とれていました。

( ><)「……終わっちゃったんです」

( <●><●>)「でも綺麗でした」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽっ」

 そのまま僕達は帰り道を歩いて行きます。
 もう夜なのでワカッテマスくんとお兄さんに送ってもらいます。
 四人で一本ずつ買ったラムネは誰も飲まず皆手に握ったままです。

(*‘ω‘ *)「ぽっ」

( ><)「もうちんぽっぽちゃんの家なんです……」

 ちんぽっぽちゃんは黙って門を開けて、そして振り返って手を振りました。

( ><)「また明日なんです」

(*‘ω‘ *)ノシ「ぽっぽっ!」

( <●><●>)「ではまた」


 そのままちんぽっぽちゃんは家に入って行きました。
 ちょっと間が空いてから、僕らはまた歩き出しました。
 お祭りの後は何だか虚しい気持ちでいっぱいなんです。

( ><)「わざわざありがとうなんです」

( <●><●>)「いえいえ、ではまた明日」

(*<●>・・<●>)「また弟と遊んで下さいね」

 僕はワカッテマスくんとお兄さんともお別れして家に入りました。
 その時、何も知らなかったのは僕だけでした。





(♯><)「どういう事なんですか!」

( <●><●>)「黙っていて悪かったのは分かってました」

( ><)「なら、なんで……」

 数日後、学校が始まった日、僕は初めて知りました。
 最初は先生もワカッテマスくんも何を言ってるのか分からなかったんです。

 ちんぽっぽちゃんが転校してしまった、だなんて。

 あの日、お祭りの日、二人きりの時にした約束は守れなくなってしまいました。
 もっと時間はあると思ってたのに。
 思ってたのに――……。


( ><)「……あ」

 起きるとそこは僕の部屋で、気付けば近くではワカッテマスくんが本を読んでいました。
 そう、夢だったのです。
 あれから約十年、僕は毎年夏休みにはこの夢を見てしまいます。

( <●><●>)「起きましたか」

 ワカッテマスくんは読んでいた本、千里の野に虎をは夏をぱたりと閉じて僕に話し掛けてきました。
 いつの間に家にいたのでしょう。

( <●><●>)「上がらせてもらったら寝てたので」

( ><)「そうですか……」

( <●><●>)「またあの夢、ですか?」

( ><)「はい」

 やっぱりワカッテマスくんは何でも分かっています。
 夢のあの頃のワカッテマスくんから、今ではそれなりに格好いい男の子に変わっていました。
 あの頃も、それなりにかっこよかったのですが。

 そのくせ、僕は高校一年生になっても子供っぽいなんて。
 ああ畜生……。

 はあ、とワカッテマスくんは溜め息を吐いて口を開きました。

( <●><●>)「貴方が彼女に未練があるのは分かってます」

( ><)「別にそういう訳では、無いんです……」

 僕は弱々しく言いました、きっと心の奥底で僕に未練があるからなんです。
 だから夢をみてしまうのです。
 誰かの歌で『君がいた夏は遠い夢の中』なんて歌詞がありますが、全くその通りなのもいいところなんです。

( <●><●>)「だったらその瓶と庭の朝顔は何なのでしょうね」

 ワカッテマスくんは意地悪く聞いてきます。

 その瓶、はラムネの瓶の事、綺麗なビー玉が日の光に反射して机に乗せてあります。
 庭の朝顔はちんぽっぽちゃんから貰った種を植えて、毎年育てては種を取っての繰り返しの結果でした。
 ちなみにハンカチも大事にとっておいてます。

 僕は何も言えずに空を見上げていました。

( <●><●>)「……大丈夫です」

( ><)「何がですか?」

( <●><●>)「ちんぽっぽちゃんにも未練がある事は、分かってますから」

 また本を開いてふっと笑うワカッテマスくんは、自信があるように言った。
 すると家のチャイムが鳴りました。

( <●><●>)「ビロードのお母さんは貴方が寝てる間に出掛けて行きましたよ」

( ><)「じゃあちょっと行って来るんです!」

 新聞の勧誘なのか、それとも宅急便でしょうか。
 この暑いなか、クーラーの効いている部屋から抜け出し、階段を降りて行き、
 僕は面倒だけどドアを開けました。


「ビロード!」


 ドアを開けた瞬間、ドアの向こうの相手を確認する前に、相手は僕に抱き付いてきました。

 抱き付いて――あ。


「ぎゃあっ! だ、誰ですか!?」


 声からして女の子だと思うその子は、僕から離れてくれました。
 その顔と声は、十年近く見ても聞いてもいなかったけれど、僕にはすぐに分かりました。


「ちんぽっぽちゃん……」


「来てましたか」

「ワカッテマスくん!? ま、まさか……」

「全て分かってました」


 やっぱり何も知らなかったのは僕だけでした。
 けれど、今ではそれでも良いんです。


「また、こっちに来たからよろしくだっぽ!」


 あの夏休みからずっと果たせなかった約束は、またこうして蘇ったんです。


(* ><)「はいなんです!」




おしまい






この小説は2008年7月6日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:jiiRkgQ0O 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです



お題
ちんぽ
千里の野に虎をは夏
ラジオ体操皆勤のごほうび
君がいた夏は遠い夢の中
朝顔



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/07 21:32 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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