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( ゚∀゚)は救済者のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




帰りのHRが終わり、がやがやと生徒が帰り始めたある雨の日。

傘を忘れた男女二人が教室の窓際で、
止むかもわからぬ雨を眺めて話していた。

川 ゚ -゚)「そういえば昨日家庭が崩壊した」

( ゚∀゚)「へー…え?は?もっかい言って」

川 ゚ -゚)「そういえば昨日家庭が崩壊した」

この不思議ちゃんは一体何を言い出すのだろう。
苦笑いすらできないままジョルジュはそう思った。

いやちょっと違う。何を言っているのかくらいはわかる。
何故そんな重大(そう)なことをまるで
今日は良い天気ですねというようなテンションで言えるのかが今の僕には理解できない。
つまりそういうことだ。

そこまで考えを巡らせたところで、考えるだけ時間の無駄だということにようやく気がついた。



20080710205429.jpg




( ゚∀゚)「うん言いたいことはわかった。とりあえず産業で詳しく聞こうか」

川 ゚ -゚)「母の浮気が発覚
      父発狂
      離婚成立後母実家へ」

( ゚∀゚)「おいおい笑い事じゃねーぞ」

川 ゚ -゚)「まあな。それで私だけ取り残されたわけだ。糞親父の下にな」

( ゚∀゚)「援交バレて警察行ったダメ親父か」

川 ゚ -゚)「ああ」

ジョルジュは時々クーから大して興味のない愚痴を聞かされるが、何故か割合覚えていた。
まず中身のある会話というのをあまりしないので、
滅多に感情を見せない彼女のそれが僅かでも含まれた話なら、記憶に残るのも仕方ないかもしれない。

川 ゚ -゚)「連れてって欲しかったのに。酷い人だよ」

( ゚∀゚)「ついてったって学校どうすんだよ」

川 ゚ -゚)「東北だから転校だな」

(;゚∀゚)「俺が一人になるじゃねーか。勘弁してくれよ…」

しゃれにならない、といった様子でジョルジュは苦笑する。
同時に心から安堵した。クーは気付かなかったようだが。

しかし彼女は少し声のトーンを落とし、悲しげに目を逸らして言う。

川 ゚ -゚)「…お前は、一人でもやっていけるだろ。私と違って」

( ゚∀゚)「……」


自嘲気味にそう言った彼女の、机の上をちらりと見る。

油性マジックを消した痕、掘り込まれたいくつもの罵言。
クーが普段から黒のシンプルな下敷きを使っているのはこのせいだ。

端的に言えば、彼ら二人はクラスから浮いていた。

最初こそ容姿美麗な二人の周りには人が寄ってきたものだが、本人達がそれを拒否するのだ。
理由は彼らが多勢の集団を嫌い、そして単純に人付合いが苦手だったから。

もし二人が出会っていなければ、きっと不器用ながらも友達をつくる努力くらいはしたことだろう。

しかし幸か不幸か幼なじみとして今まで過ごしてきた二人は

『気付いたら一緒にいた』

それだけの理由でこの上ないほどにお互いを信頼し、
家族を除く他の人間を徹底的に遠ざけた。


類は友を呼ぶものだ。
クーとジョルジュはクラスを敵にまわそうと、互いさえいれば恐くなかった。

人見知り同士、長い間一緒にいたからこそ彼らはただ一つの友情だけを築いてきた。

上辺だけの友達が何人いるよりも
たった一人の頼れる親友がいるのだから
二人はそれでよかったし、それがよかった。


その小さな幸せが壊され始めたのは、もう随分前のことだ。
ある日クラスの女子たちが、その特有の陰湿さを剥きだしにしたのだ。

初めは油性マジックの落書き。
いつしかそれが掘り込みになり、上履きを隠されたり
直接暴言を吐かれたりもしたが、その時はジョルジュが彼女を庇った。

標的は残酷にもクー一人。
こういう場合、見た目のいい男子というのはまず餌食にならない。

異性から憧れられる立場としてはクーも一緒だが、
男子はそんな理由でジョルジュをイジメるほど馬鹿ではない。



この日から今日まで、クーだけがその馬鹿の被害を受けることとなった。

川 ゚ -゚)「疲れた」

( ゚∀゚)「?」

クーが唐突に口を開く。
窓の向こう、止むどころか勢いを増した雨をじっと見つめて。

川 ゚ -゚)「学校も家庭も。お前以外に安心できるところさえ無くなった。本当に疲れた」

ジョルジュは考えるように少し間を置いてから、彼女の手をとって握り締めた。
しかしクーは振り向かない。

( ゚∀゚)「俺なんか最初っからお前しかいないぜ?」

励ますように、そしてどこか必死なニュアンスを含ませながら続けた。

( ゚∀゚)「俺はお前の存在にずっと救われてる。お前が辛いなら、俺が助けるから
     …できる限りはさ」

ここでクーはようやく顔を向けた。
ほんの少しの笑みを口元に携えながら。

その唇の歪みは嘲笑であり、諦めであり、悲しみの表れだった。




川 ゚ -゚)「…そうか。じゃあ、私を救ってくれよ。私を」



――殺してくれよ。



ジョルジュには、確かにそう聞こえた。

(;゚∀゚)「…殺…?」

川 ゚ -゚)「殺してくれと言った。私を救ってくれるんだろう?」

ジョルジュは言葉に詰まって目を泳がせた。
いつもなら冗談と受け取るところだが、彼女の雰囲気がそうではないことを物語っている。

クーは本気だ。本気で、殺してほしい、と彼に願った。

(;゚∀゚)「…イジメのことだったらさ、俺が守るって!明日にでも直接あいつら殴りに行ってやるから!
     朝から放課後までだってずっと一緒にいてやるしさ…それじゃ…ダメなのかよ?」


なんとか説得しようと少し声を張るが、
彼女の返答は今までにないほど冷たいものだった。







川 ゚ -゚)「ダメだな。お前じゃ」

川 ゚ -゚)「辛いんだよ…本当に。耐えられないんだ。私はもうお前が思ってる以上にボロボロなんだ。
     こんな性格だから伝わらないかもしれないが」


はっとジョルジュはクーの今置かれている現状を思い返す。


度重なるイジメに家庭崩壊。頼れる人間は自分だけ。
その自分も、彼女に救われることはある。
が、自分は何をもって彼女を救っていると言える?

存在?一緒にいること?イジメる側を殴ること?

思えばあの日から、一度だってクーを完全に救ってやれたことなどない。


なら自分にできることは――やはり、それだけなんだろうか。

いくら考えても、答えが他に見つからない。

でも、それでも――


(  ∀ )「お前が死んだらさ…俺はどうすればいいの?何を糧に生きてきゃいいの?」

川 ゚ -゚)「…悪い。私にはもうそんな余裕はないよ」

お前の幸せまで考える余裕などないと言いたいのだろうか。
まったく薄情な人だ。きっと母親に似たんだろうな、とジョルジュはぼんやり考えた。

( ゚∀゚)「でもさー…まずお前殺したら殺人犯じゃん俺。お先真っ暗じゃん?」

最後の手段と言わんばかりに彼は正論を突き付けた。


大切な幼なじみを犯罪者にしてしまう。

さすがの彼女も、これなら考え直してくれるのではないかとジョルジュは思った。

果たしてこの事実が
彼女を思い止まらせることができたか?


――否。


クーは微笑んでこう言った。



川 ゚ ー゚)「殺人犯なんかじゃないさ。お前は、立派な救済者だよ」

川 ゚ ー゚)「確かに世間的にはただの人殺しかも知れない。
     でも私は間違いなく、その人殺しによって救われる。
     自殺よりお前に殺された方がずっと幸せだ。だから、お前は救済者」


ああ、勝てないな、とジョルジュは思った。


彼は諦めたように暫くうなだれて、十数分ほど経っただろうか。

突然立ち上がり、クーの手を引いて床に倒した。
少し小煩い音が室内に響く。


川 ゚ -゚)「…やってくれるのか」

( ゚∀゚)「わからん。心の準備が…でも」


お前が救われるなら。

俺が救ってやれるなら。



( ゚∀゚)「できるさ」

ジョルジュはあお向けのクーの首に手をかけた。

( ゚∀゚)「もう、会えないんだな…」

川 ゚ -゚)「ああ」

( ゚∀゚)「俺達これが最後なんだよな…」

川 ゚ -゚)「…ああ」

( ゚∀゚)「それでも…お前はいいのかよ…?」

確かめるように問う。
そしてその答えははっきりと、耳に届く。


川 ゚ -゚)「…嫌に決まってるだろ…お前と離れるのは嫌だよ。でも」


川 ゚ -゚)「このまま生きてる方がもっと嫌だ」

( ゚∀゚)「…そうか」

ジョルジュはいよいよかけた両手に力を込める。
その力に比例して、強く強く目をつむった。


川  - )「…っう」


一気に苦しそうに顔を歪めるクー。


漏れたうめき声に緩めてしまいそうな手を必死で押し付けた。





やがて彼女の瞳から一筋、涙が流れ出す。
苦しいからなのか、それとも別の感情からなのか。
どちらにせよ、ジョルジュにはそれを拭ってやることはできないのだ。

涙を流しながらクーは最後に言おうとした。


川 ; -;)「…あ…りg……っ」


しかし
彼は彼女のあごを押すようにして口を塞いだ。

ありがとうなんて言われたくなかった。

言わせたくなかった。




その代わりに、彼は最後にこう言った。




( ;∀;)「ごめんな…クー…大好きだよ…」





クーは開けられない口元を三日月にして目を閉じ、やがて動かなくなった。






一分が経ち、十分が経ち、一時間が経った。

クーはまだ目を覚まさない。
わかっていてもそれを望んでしまう少年がいた。

二時間が経ち、教室を照らす光が弱くなってゆく。

雨は止まない。



(  ∀ )「なあクー…俺は…救済者なんだよな…」

(  ∀ )「お前を救えたんだよな…俺は殺人者だけど、救済者なんだよな…?
     お前がそう言ったんだから…そうなんだよなあ…」


( ;∀;)「じゃあなんで、こんなに悲しいんだろう…
      なんでお前を救えたのに…嬉しくないんだろう…」




もう答えなど返ってこない。




降り続ける雨を背に、
自ら呼吸を止めさせた愛する人を抱きしめ、泣いた。



-fin-





この小説は2008年7月2日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:KEsJACILO 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです



お題
言えなかったありがとう



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/07 20:46 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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