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( ・∀・)無題


146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/17(日) 00:24:39.84 ID:E+JVFud+O

先程から秋雨がしきりに体を打ちつけている。微風も相俟って身が凍みる思いだが、
長年かけて付着した全身の汚れはそう簡単に流れ落ちたりしない。
この分だと我が家は全壊だろう。公園に向かう男の足取りは、枷が填められているかのように重かった。

足を引き摺って路傍を歩く男に向けられる衆目は冷たい。
かつての白衣と綿のパンツは余す所なく茶色に汚れ、
下駄は歯が磨り減ってサンダルと化し、頬は痩けているが目だけは異様にぎらついている。
そんな不気味な浮浪者への反応としては当然だろう。攻撃しないだけましかもしれない。

数年前の生活に思いを馳せ、現在の境遇を顧み、いつかの再起の糧とする。
執着という下卑な感情で、男は気力を留めていた。

(ヽ・∀・)「ゲホッ、ゲッホッ」

あの時、肯いていれば。あの時、従っていれば。あの時、抗わなければ。あの時、背かなければ。

何千と繰り返した後悔。帰着点は常にそこしかないのだが、
その思索は癒着か同化かしたのか放棄することができない。
不快感を全て自責に変換し、その度に自傷して心を落ち着けていた。
額と頬にはいつしか傷跡が残った。

雨が止み、太陽が顔を出し、虹が架かる。雲が移ろい、空が晴れる。
人々が未来へと動き回っている中、彼の時間は未だ止まっていた。



149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/17(日) 00:27:10.74 ID:E+JVFud+O

公園に辿り着くと、泥まみれで走り回っていた子供達が、足を止めて彼を見た。
彼はそれに反応せず歩き続け、子供達も気にせず遊び始める。彼の存在は極めて希薄であった。

誰も触らないし、誰も障らない。傍観という立場は至高の安息地。
物心付いた頃から男の持論は変わらない。

( ・∀・)「あー……」

男は雨が止んだことに今更ながら気づき、自分の汚い白衣を弄る。
ポケットに入れていたシケモクはぐじゃぐじゃになっており、手を腰に戻した。

公園内を歩き回り、親しんだ場所へと向かう。青いベンチの後ろ、進入禁止の立て札の更に奥、
正午に木陰となる芝生の上に設置した建築物が、彼の寝床だった。

上部に位置する枝葉のおかげで全壊は回避。しかし、人が住めない程度には崩壊していた。
トタン板と段ボールと青いビニールシートで構築されていたそれは、
資材が折り重なっており、直立している部分がほぼ皆無だった。

彼は舌打ちをした後、ポケットに手を突っ込んだ。ぐちゃりと煙草の潰れた感触がし、
ばつが悪そうに頭を掻いた。

ゴミの処理は後回しにしようとその場を去り、舗装された地面に降りる。
足下の白いプランターには、赤色の彼岸花が咲いていた。

――その花に男はある少女の面影を見る。



151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/17(日) 00:29:50.61 ID:E+JVFud+O

(;・∀・)「フーッ……、フーッ……」

六年前、男が逃がした少女。健啖家で快活、豪快な笑い方が印象的だった、赤みがかった茶髪をした実験体。
頭から振り払おうと、過度に深呼吸を繰り返す。しかし、幻影はいつまでたってもその場を去らない。

浮かぶ容姿は六年前と寸分違わず。自分へ笑いかけている彼女は、過去あるいは虚構に過ぎないのだ。
いつまで執着している、身が朽ちるまでか、馬鹿馬鹿しい。君もそんな目で俺を見ないでくれ。

(  ∀ )「……フーッ」

研究員から裏切者、浮浪者と、形容する普通名詞を変えていった男。
モララーという固有名詞はその過程で乖離した。

つむじ風が吹き、男はよろける。足下の彼岸花は一度揺れただけで再び直立した。

( ・∀・)「花に群がる虫……か」

根を下ろした彼女の生き方と、あちこちを渡り歩く自分の生き方。
男の比喩は残酷で、しかし正鵠を得ていた。

「彼女と関わった者は皆不幸になる」。フラフラと魅力に誘われ、近づいたのが運の尽き。
しかし、彼女と過ごした一年間は、男にとって掛け替えのない物となった。

( ・∀・)「悪い虫は寄りついてはいけない……」

願望と矛盾する行動に、男は今日もくつくつと自嘲するのだった。







152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/17(日) 00:33:47.73 ID:E+JVFud+O

以上です。お題は

人体実験
球根
つむじ風
ビニール
青いベンチ

でした、全部使ったつもりです。批評、感想ありましたらお願いします

あと、ヴァニラアイスさんすみませんでした。>>146,149,151です


[ 2008/08/17 19:55 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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