はじめてブーン系小説を読む方は
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( ´_ゝ`)「我ら華麗なる」
(´<_` )「盗みのプロ」
( ´_ゝ`)+『怪盗、流石兄弟!』+(´<_` )
(´<_` )「で、兄者よ。実際怪盗と泥棒ってどう違うんだ?」
( ´_ゝ`)「格好良く言ったやつの方が、怪盗なんじゃないか」
ある研究所の裏手で、こそこそと話している男が二人。
雲一つない、満月が浮かぶ夜空の下で、顔をくっつけあって何かを話しています。
彼らは流石兄弟。微妙に鼻と目が違う双子の兄弟です。
鼻の下で頭巾を結び、全身タイツを着ている姿は、どうみても泥棒です。
二人とも背中に色々入ったリュックを背負い、いかにも手慣れたような格好をしていました。
( ´_ゝ`)「よーし。では早速、今日の手順のおさらいをする!」
(´<_` )「もう何度聞かされたか。研究所の新薬を盗んでくるんだろ?」
( ´_ゝ`)「…そう。そしてその新薬を闇の企業とかなんちゃらかんちゃらに売り込んで、大金持ちになるのだ」
(´<_` )「兄者、そんな危なそうな所とパイプあったっけ?」
( ´_ゝ`)「無いに決まってるだろ。おっかない」
(´<_` )「それじゃ駄目だろ」
変な掛け合いを続けながら、二人はもう一度作戦を確認しあいます。
兄の方は、リュックからペンライトと研究所の地図を取り出し、
弟へ向けて、地図を照らしながら侵入経路を指差しました。
( ´_ゝ`)「ここは正面玄関入り口、我々の少し先にあるのが裏口、そして、研究室真上には、天窓」
( ´_ゝ`)「廊下の窓は全部鍵がかけられており、強化ガラスで出来ているため、開ける事は出来ない」
(´<_` )「ならばここは無難に、裏口からピッキングでもなんでもして入るべきじゃないか」
( ´_ゝ`)「俺フィッシングしかできない」
(´<_` )「しかも2chのだろ。でも俺も出来ないし…じゃあ天窓から入るしか無いか」
地図には、天窓の位置に赤ペンでバツ印がつけられていました。
兄者も最初から、ここに入るつもりだったのでしょう。
二人は雨樋に鈎付きの紐を引っ掛け、慣れた足取りでするすると壁をよじ登っていきました。
研究所と言っても、そんなに巨大な施設ではありません。
例えるなら、街によくある、小さめの病院のような見た目をしています。
川 )「…れは素…らしい… が…まで…金庫に…封…」
二人は特に何事もなく、天窓にたどり着きました。
下を見ると、美人の博士が大きな金庫の前に立ち、助手と話している所です。
細い色白の手には紫色の錠剤が入った、小さな小瓶を持っていました。
きっとあれが、二人が狙っている新薬なのでしょう。
音を立てないように天窓に耳をひっつけ、二人は中の会話を聞いていました。
(´<_` )「…余り聞き取れなかったが、もう少しで金庫にしまわれてしまうんじゃないか」
( ´_ゝ`)「金庫の番号までは把握出来ていない。入れられる前に盗まなければ」
(´<_` )「というか兄者、前に下調べした時、男の博士に女の助手がいるって言っていたよな」
( ´_ゝ`)「確かにそうだったんだが、見た目が違う。…ここにはあの二人しかいなかったと思うのだが」
(´<_` )「まぁいいさ。じゃあ俺がここで縄梯子を下ろす準備をしているから、
兄者はここをぶちやぶって侵入してくれ」
( ´_ゝ`)b「合点承知」
弟者が、近くにあったパラボラアンテナの土台に縄梯子を固定し、
兄者はバール(のようなもの)で窓を割る準備をしています。
下では男の研究員がいなくなり、研究室に残るのは、美人の女博士だけになりました。
その時を狙って、兄者は窓ガラスをぶち破り、下へ降り立ちました。
(;´_ゝ`)「あだっ」
川;゚ -゚)「…!? なんだお前は!」
(;´_ゝ`)「あだだだ腰打った… 名乗る程ではない。しばらく黙っててもらおう!」
どすんと鈍い音がした後、震える声で叫ぶ、兄者が前もって暗記しておいた台詞が聞こえます。
刹那。
研究室の中、割れた天窓から、 パン と、軽い破裂音のような音が響きました。
その直後悲鳴が上がり、ばたりと床に何かが倒れる音と、兄者の指笛が聞こえたので、
その合図に反応し、弟者は素早く縄梯子を下ろしました。
( ´_ゝ`)「よーし大成功だ弟者。薬はばっちりゲットしたぞ」
(´<_`;)「それはいいんだが兄者!もしかして殺したのか?いつのまに銃を準備していたのだ!」
(´<_`;)「盗みはするが、殺しはやらないのが俺たちのポリシーだったろ!」
( ´_ゝ`)「あれ猫騙しだから」
(´<_` )「じゃあいいや」
縄梯子を引き上げて追って来れなくした後、
素早く研究所から去り、深夜の街を走りながら、会話を続けます。
しばらくして見つけた商店街の路地裏へ、身を潜める事にしました。
二人はペンライトを当て、小瓶をくるくると回しながらラベルを眺めています。
(´<_` )「…ナンニーチュワン、ルレナニコダサ、ンテクャギウユシ…成分は、わけわからないものばかり入ってるな」
(´<_`;)「名前は書いてないし…効果もわからない。くそっ、ラベルに何か書いてあると思ったのに」
( ´_ゝ`)「でも、素晴らしいとか言ってたしな。体に悪い物じゃないだろう」
(´<_` )「若返りとか?」
(*´_ゝ`)「媚薬かも」
想像を膨らませながら、薬の効果を考える二人。
でも、薬の効果はまったく想像できません。
素晴らしいというのだから、悪影響があるとは思えないのですが。
( ´_ゝ`)「…どんな素晴らしい物なのか、飲んで確かめてみようではないか」
(´<_` )「兄者が飲むのか?」
( ´_ゝ`)「俺は絶対嫌だ。弟者飲めよ。弟なんだし」
(´<_`;)「普通、そこは兄の方が率先して飲むものだろ」
( ´_ゝ`)「じゃあ…致し方ない。あそこを歩いている女で試してみよう」
(´<_` )「よしきた。早速縛り上げてくる」
そういうと、弟者は素早く路地裏から飛び出し、
近くを歩いていた女性を後ろから襲い、路地裏へ引き込みました。
女性が驚いて声を出す暇もないうちに、二人は手早くリュックから紐やガムテープを取り出して、
口を封じ、亀甲縛りをし、声も出せない、身動きも取れない状態にしてしまいました。
(*´_ゝ`)「涙目、拘束、亀甲縛り、強調される乳…なんという鬼畜展開」
(´<_` )「亀甲縛りは兄者がやったんだろうが。じゃあ早速薬を飲まそう」
( ´_ゝ`)「…弟者ってさ、殺しやんないとか言ってるけど、結構酷いやつだよな」
(*´_ゝ`)「それにこんな状態の女を見てもはぁはぁしないなんて。性欲とかそういう物はないのか?」
(´<_`#)「今は仕事中なんだ。そんな煩悩どっかに押しやれ」
从;'ー'从「ふがもが~(なんでもいいからたすけてぇ~)」
※
一方こちらは、兄弟が立ち去った後の研究所。
コーヒーを持って来た助手が倒れた博士を発見し、とんでもなく驚いています。
顔色の悪い、貧相な助手。ショックのあまりカップを床に落とし、
慌てて倒れている博士の元に駆け寄り、声をかけました。
(;'A`)「さっきなんか聞こえたけど大丈夫ですか博士!?怪我は無いですか!?」
川;゚ -゚)「そんなくっつくな。大丈夫だなんともない」
(;'A`)「平気?本当に?大丈夫?博士が死んだら俺…」
川 ゚ -゚)「だから平気だって。猫騙し食らってビックリしただけだから」
('A`)「なんだ大げさなんだよ」
川 ゚ -゚)「君って時々酷いよね」
博士はふるふると頭を振り意識をハッキリさせた後、
手の中にあったはずの小瓶が無くなっている事に気づきました。
天窓から落ちて来たガラスの破片を横に払い、助手に命令をします。
あの薬は、信用出来る知り合い以外には教えていない、未知の薬。
泥棒に盗まれたとなったら、たちまち闇の世界に出回っていってしまうでしょう。
川 ゚ -゚)「大変なんだ。薬を盗まれた。あれが世に出回ったら…」
('A`)「早くおいかけましょう」
助手を先頭に、二人は夜の街へ飛び出していきました。
※
流石兄弟は辺りをきょろきょろと見渡して、自分達以外に人がいない事を確認すると、
兄者は小瓶の蓋を回し、何粒か手の平に乗せて、女に迫っていきました。
その兄者の動きに女はよりいっそう怯えて、じたばたと、足をばたつかせて抵抗を試みました。
从;'ー'从「ふが~(やめて~こんな不細工に犯されるなんてイヤ~)」
( ´_ゝ`)「何か今失礼な事を言われた気がする」
Σ(´<_`;)「なんでもいいから早く薬を…あっ!!」
足だけは無事だった女性が、兄者の手を蹴り上げました。
手の平に乗っていた紫の錠剤が、きらりと中に舞います。
そしてその内の一粒が、喋っていた弟者の口の中に…。
(´<_` )'「ごくん」
(;´_ゝ`)「…弟者…? …飲んだ?今もしかして飲んだ?」
(´<_`;)「……」
青ざめる弟者。
不安げな表情で見つめる兄者。
拘束されっぱなしの女。
弟者はしばらく呆然とした様子で突っ立っていた後、唐突にもの凄い悲鳴をあげ、
ゴミだらけの路地に転がり、悶え始めました。
(;<_; )「ぎゃぁぁぁぁぁあっ!!」
(;´_ゝ`)「弟者!大丈夫か弟者! くそっ、全然素晴らしくなんてないじゃないか!」
(;<_;#)「うがぁぁぁぁ股間が潰れそうだぁぁぁ それと胸焼けしたみたいな痛みがぁぁぁぁ」
(;´_ゝ`)「おい!弟者!」
(;<_;#)「うわぁぁぁ 痛い!股間が!痛いのよぉ~!!」
从;ー;从「うぐぅ~!(きゃ~なんか怖いよ~!)」
※
近くの路地から、凄まじい悲鳴が聞こえてきました。さっきの男の声に似ています。
もしかしてアノ薬を飲んでしまったのではないかと、博士と助手は慌てて路地に駆け寄りました。
川;゚ -゚)「もしやあの声は… くそっ。面倒な事になった」
(#'A`)「俺の博士を困らせるなんて… 泥棒め!」
そして、二人が路地裏で見た物は、
先ほど窓を突き破った男に過剰に絡む、男と同じ格好をした ボン キュッ ボンの女。
男に似た顔の女は、愛の言葉を口走りながら路地裏の壁に男をおしつけていました。
女は男の股間をまさぐり、キスを迫り、見るからにヤバい状態です。
∬*´_>`)「兄者~っ!好き好きっ!早速ここでヤっちゃいましょうよ~」
(#;_ゝ;)「ぐぁぁぁぁぁ助けてぇぇぇ」
∬*´_>`)「嫌よ嫌よも好きのうち……ふふっ、恥ずかしがっちゃって♪」
(#;_ゝ;)「恥ずかしがってなんか無い!ナチュラルに嫌なんだ!
煩悩を捨てろと言ってたのはどこのどいつだっ!」
∬*´_>`)「なんだっていいじゃない。愛はいつでもどこでもフリーダムなのよ!」
从;ー;从「んん~! もぐぐぐ~(ふぇぇ~!最高に気持悪いよ~)」
('A`)「…なんだあれ」
川 ゚ -゚)「まずはあの女を助けよう」
助手は素早く女性に駆け寄り、紐をといてやりました。
口に貼ってあったガムテープをはがし、女性に逃げるように命令します。
そして、そんな博士と助手を見つけた兄者。女のキスを拒みながら、涙目で助けを求めました。
( ;_ゝ;)「助けて!あんな薬盗んで悪かったから!どうにかして弟者を元に戻して!
∬*´_>`)「何でそんな事言うのよ兄者の馬鹿ちん☆」
(#;_ゝ;)「きもぉぉぉぉぉぉ」
川 ゚ -゚)「こ れ は ひ ど い」
('A`)「取りあえず、この縄で二人とも縛り上げちゃいましょう」
助手が、さっき女を縛っていた縄で、二人をぐるぐる巻きにしました。
女は文句を言って騒いでいましたが、兄者は安心したのか、疲れたのか、
ぐったりした様子でおとなしくしばられ、そのまま研究所に連行されていきました。
川 ゚ -゚)「…あの薬は素晴らしい物だが未完成のうえ、解毒剤がまだ出来ていない」
川 ゚ -゚)「だから解毒剤が出来るまでと、完成品が出来るまで、金庫に封印しておくつもりだったのだ」
川 ゚ -゚)「だが、あんな形とはいえ君たちにはあの薬の効果を知られてしまった…」
川 ゚ -゚)「だから、全てを話そう」
先ほどの研究所に戻って来た四人。流石兄弟は相変わらず縛られたままですが、
博士と助手は研究室のソファーに座り、コーヒーをすすりながら説明を続けます。
川 ゚ -゚)「あれは元々私の夢だった、性別が逆になるのを実現させた、素晴らしい薬だ」
川 ゚ -゚)「動物実験で試した所、見事にちん◯が無くなり、まん◯になった」
川 ゚ -゚)「安心して、助手と共に薬を飲んだのだ…。
だがしかし、動物実験ではわからない、重大なミスがあったのだ」
川 ゚ -゚)「そう。今までの性格がまったく逆の物になり、容姿まで逆になってしまったのだ」
川 ゚ -゚)「元々は私も、余り容姿がいいとは言えない小太りの男だった」
川 ゚ -゚)「助手も、つんつんして時々でれる可愛い子だったのに、今では正反対」
川 ゚ -゚)「そして時間が来れば元に戻れると思っていたのに、三日待っても元に戻る様子が無い」
川 ゚ -゚)「だから私はこの薬を世に出すのを取りやめ、完成品を作り上げようとしていたのだ」
美人博士はほろほろと涙を流し、コーヒーに波紋を作ります。
兄者は普段ならそんな話、絶対に信じなかったでしょう。
しかし目の前で、あんなに冷静沈着だった弟者が女になり、
いきなりべたべたするようになったのを見たのですから、信じずにはいられませんでした。
川 ゚ -゚)「未完成だが、こんな薬の噂が世に広まったら、性格が反転してもいいから!
と、薬を求めに来る客が絶えなくなるだろう」
川 ゚ -゚)「だから、薬の効果を知られてしまった君たちを不用意に世に解き放つ事は出来ない」
川 ゚ -゚)「だが解毒剤が完成したら君の弟君を元に戻して、解放してあげよう」
川 ゚ -゚)「解放する代わりに、約束してくれ。外へ出ても、この薬の事は誰にも言わないと」
(;´_ゝ`)「わ…わかった」
この先どれだけ待たされるのか想像もできませんでしたが、
兄者は博士の提案に、仕方なく同意しました。
すると、博士が話している間黙っていた女が、ふと口を開きました。
∬´_>`)「…というか、さっきから思ってたんだけどねぇ」
∬´_>`)「その薬をもう一度飲めば、また全てが逆転して、結局は元に戻れるんじゃなぁい?」
川;゚ -゚)『な、なんだってー!?』('A`;)
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( ><)「ほら、さっさと歩くんです!」
( ´_ゝ`)「そうして俺らは元に戻り、警察に突き出される事になりました」
( ´_ゝ`)「怪盗の身で、薬の効果を言ったとしても誰も信じてくれません」
( ´_ゝ`)「薬を信じてくれたとしても、盗みを働いたのはまぎれも無い事実なので、逮捕は免れません」
( ´_ゝ`)「正直、あの時の弟者の空気の読めなさに流石の兄者もぶちぎれそうです」
(´<_`;)「なぜか口が勝手に…。正直スマンかった」
( ><)「ぶつくさ言わずに、早く車に乗るんです!言い訳は署で聞くんです!」
(;´_ゝ`)『…不運だよな俺ら』(´<_`;)
流石兄弟の不運なる深夜 のようです 終
この小説は2008年5月16日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:l+96gnCD0 氏
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