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ξ ゚⊿゚)ξと繭のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ

※ 若干グロテスクな表現があります




瞬間、芋虫は真っ二つになって宙を舞った。
黄緑色の体液を撒き散らして、前半分は彼の足元に落ちた。
幼少期、自宅の庭にいた巨大な蚯蚓(ミミズ)と遊んだ記憶が甦ってきた。

蚯蚓の奴は二つに切っても、両方のパーツが暫くの間うねうねとすけべな動きをしていた。
その生命力のなんとやら。幼心に関心、そして感動したものだ。
だが世の中というものは、悲しいがな、そのような強い者ばかりではない。

のろのろと地面を這う事しか出来ない、芋虫は、幼虫は、子供は、弱者だ。
その弱さを咎める事は無くとも、力無きそれらが死に伏した所で彼は何も感じなかった。

彼は空を見上げた。これといった特徴が無いのが特徴の、春の空だ。
ただ漠然とした青が広がる空間を、一匹の蝶がひらひらと飛び回る。
優雅な午後三時を楽しむように、アゲハ蝶は燐粉を散らし、舞った。


ずるいな。
彼は思った。
重力を無視して宙を行く、あいつらが好きになれなかった。

それは一種の嫉妬だったのかもしれない。蝶の色彩とは本当に見事だ。
温度条件、太陽光、彼も詳しくは知らなかったが、
人間達がその光彩を見て美しいと認めたのは事実であろう。

吸い込まれそうな程深い黒と、太陽光に触れて輝く金色の組み合わせは、
ミステリアスという褒め言葉が良く似合う。
誰もが敬遠する愚者の象徴だった芋虫が、
地を離れ、美貌を持って、やがてあの青へ飛翔した。


ずるいな。
足元に転がる芋虫の頭部を見つめ、彼はもう一度思った。



1_20100102185356.jpg






妹が化粧を覚えた。
中学生の妹が髪を染め出した。
中学一年生の妹がパーマにまで手を出した。
ついこの間までランドセルを背負っていた中学一年生の可愛い妹が援助交際に走った。
今、僕が見ている妹の顔は、僕の知っているそれではなかった。
美しさを追求する度に、素の自分から遠ざかっていく。
しかもそうしてまで得た『美しい』が本物なのかというとそうではない。
僕は妹が好きだった。
ライクとかラブとかそんな下らない単語は駅前の英会話教室まで蹴り飛ばしてやる。
この気持ちを言葉に表す事自体が間違っているのだ。
想像するだけで興奮が収まらない。ましてや、本人と対面している現状なんて。

ξ ゚⊿゚)ξ「どいてよ」

(;'A`)「あ、うん……ごめん」

僕を害虫でも見るような目で睨みつけると、妹のツンは外出するべく玄関へ向かっていった。
振り返る。後姿だけでも分かった。間違っている、と。
露出が多く、赤を主体とするその派手な格好は、
中学生に相応しいか否かは、常識のある人間なら迷わず判断出来るだろう

(;'A`)「ツン……」

ξ ゚⊿゚)ξ「何よ」

(;'A`)「また変な男の所に行くのか? 会っているだけだよな?
    その……変な事されてないよな? もしツンを泣かせるような事する奴だったら
    兄ちゃんそいつぶん殴りにいくからな。何があっても俺がツンを守るから」

質問も宣言も、全ては自分のためのもの。
『会っているだけ』『変な事などされていない』
声に発して己に言い聞かせ、無理矢理安心しようとしている。
否定してくれ。嘘でもいい。僕はただ立ち尽くし、ツンの言葉を待った。


ξ ゚⊿゚)ξ「キモ……一番泣かせるような事をしているのは誰よ。
       仕事もしないでプラプラしてる愚図なんかに指図されたくない。
       守ってくれなくて結構。どうせそんな覚悟も無いヘボの癖に」

一度も僕の表情を窺う事も無く、吐き捨てるように僕の言葉を無碍にした。
正論、真実。ごもっともだ。言い返せない。
そこに悔しさは無かった。悔しいと思う資格すら無いと思ったからだ。
今の僕には、ツンに触れる事すら許されないような気がする。

(;'A`)「ごめん……」

会話はそこで途切れた。
ドラマだったら、ここで僕が我が妹を後ろから抱き締めて涙ながらに「行くな」と囁くのだ。
月九なら瞬間最高視聴率25%は固い。
だが現実はそう上手くいかないもので、主役が一歩を踏み出すのを躊躇ってしまっている。

ξ ゚⊿゚)ξ「いってきまーす」

もう僕と関わりたくないのだろう。ツンは一目散に出て行ってしまう。
残された僕といえば沈黙するだけだった。
ただ真っ白な感情が脳内をぐるぐる渦巻いて、気付けば涙が頬を伝っていた。

本当に情けない兄だ。
高校には行かず、仕事もせず、退屈で毎日を消化する日々。
妹も救えないわ、顔は酷いわ、虚弱体質だわ。

('A`)「それでも……それでも兄ちゃんは……」

妹が好きだ。
愛している。
これだけは揺るがない。譲れない。
しかしツンがこれ以上人としての道を外れていくというなら、僕は――――



記憶の糸を辿っても、どこから歯車が狂いだしたのか、結論に達する事は無かった。
脳裏を過ぎるのは幼き日。
あの綺麗な蝶が欲しいと強請ったツンのため、一心不乱に虫網を振り回した僕がいた。
自分はお世辞にも運動神経が良いとは言えない。
どう頑張っても、蝶の動きを読んで網で捕らえる、という事が出来なかった。

だから一から育てようと考えた。
適当な毛虫を拾い、プラスチックケースに入れて育て始めた。
早く大きくなれよと念じながら葉っぱを与える日々。

ツンは毛虫という奴がどうも苦手なようで、僕が見せる度に泣き叫んでいた。
これがお前の欲しがっていた蝶になるとは知らないのだろう。
無理も無い。ツンは当時三歳。僕は八歳。こっちは五年お前より長く生きているんだ。
人生経験が違うんだよ。そう、人生経験。

大人ともなると、自分だけではなく、他人の感情も理解してあげなければならない。
もそもそと葉っぱに虫食い穴を増やしていく緑色の毛虫を見て、「寂しかろう。寂しかろう」
と、そんな考えが浮かび上がった。僕だってこの一戸建ての住宅に一人ぽつんと取り残されたら悲しい。

父さんがいて、母さんがいて、ツンがいるから、僕は僕でいられるのだ。
誰だって一人ぼっちは嫌だ。

新しい入居者は真っ黒い毛虫だった。自宅近くの公園で見つけたのだ。
道中にはしげるも転がっていたが、一瞬迷ってそれは拾わないことにした。

黒い後輩はよく食う奴だった。
緑の先輩にあげた分の葉までムシャムシャと喰らい尽くす強欲ぶり。

学校の図書室で昆虫図鑑を読んだ。それで僕は博識になったつもりでいた。
間違いない。この子達はやがてサナギという形態に姿を変え、長い時を経て蝶となる。
確信に近かった。ツンの喜ぶ顔が浮かんだ。僕はニヤけていた。

二匹手に入ると、三匹目四匹目が欲しくなるのが子供心だ。
あくる日も、学校帰りに僕は公園へ向かった。
遊具には目もくれない。用があるのは奥の雑木林だ。いるいる。のそのそ。ここは巣屈だ。

しかし待っていたのは虫だけじゃなかった。先客がいた。
背丈は自身と変わらない。麦わら帽子に白いワンピースの少女だった。同様に肌も白い。
それだけの描写ならロリコン歓喜だが、やっている事が奇行そのもので、とてもじゃないが迂闊に近寄れない。

興味より不気味さが上回り、僕は逃げる事を選択した。
が、意外にもその少女が話し掛けてきた。思わずファイティングポーズを取ってしまった。


lw´‐ _‐ノv「そこまで気になるなら教えてやろう」

僕は何も聞いていない。


lw´‐ _‐ノv「蟻の巣に米をつめているのだ」

今の僕には理解出来ない。

lw´‐ _‐ノv「この世は弱肉強食である。ふむ、確かにそれはそうだ。間違いではない。
       草は草食動物に食われ、草食動物は肉食動物に食われる。これサバンナの掟なり。
       しかし稀にシマウマがライオンを倒すケースも無い訳ではない。
       自然の摂理に逆らう事は、中々どうして爽快だ。
       そこで植物が動物に反抗する瞬間も見てみたいと思い、今に至る」


当時の僕には難しくて、少女の主張はさっぱり分からなかったが、
要約すると、食われる立場の米が蟻を殺せるかという実験らしい。
正直、意味不明だ。米は蟻に何の恨みがあるのだろうか。

僕は質問した。
何故、蟻と米なのか。
異種格闘技戦にも程がある。

lw´‐ _‐ノv「蟻は生物界のトップだと思っている。
       針を持ち、毒腺を持ち、仲間を持ち、何より社会を持つ。
       どんな地でも生きていける。人間よりも遥かに強い生物だと思わないか。
       こんな身近に生息する蟻こそが生物の頂点に相応しいと私は考えました」

ならば米は。

lw´‐ _‐ノv「米は食物界のエースである。白く輝くボディと豊富な栄養は最早芸術だ。
       日本が、いや地球が誇る食べ物である。こめこめ。
       つまり私は二大スター夢のバトルを実現しているのだ」

一方的に蟻の巣に米を流しているだけではないのか。
蟻からしてみればテロだろう。
そもそも蟻は米を食うのか? それすらも分からん。

可哀相だ。それに米も勿体無い。
こんな下らない勝負で(勝負かどうかも微妙だが)コシヒカリ一袋使うなんて。


lw´‐ _‐ノv「他人の可哀想は楽しいぞ。御主もそう思うじゃろう」

2_20100102185356.jpg



僕はコシヒカリを取り上げた。



('A`)「いかんな。ツンがどこから変わったか記憶を探っていたのに……
    何時の間にかお前と出会った時の事を思い出していたよ」

僕が立っているのは公園の奥の雑木林。
視線の先にいるのは、麦わら帽子で、白いワンピースの女。

('A`)「シュー、それ楽しい?」

lw´‐ _‐ノv「……ビタミンETVくらい楽しい」

('A`)「そりゃ相当楽しいんだな」

ぐさ。
また一匹、ダンゴ虫が爪楊枝の餌食となった。

このシューという女は困ったもので、高校に入ったものの全く登校せず、朝から晩まで
この場所で昆虫と戯れているのだ。現在は二年生。進路はどうするつもりなのだろうか。
僕が他人の事言えた義理じゃないのは分かっているが。

僕は日の沈む頃にこの場を訪れる。
そこでシューと他愛も無ければ自愛も無い世間話をする。
基本的に彼女は僕と目を合わさず、毎日変わる『愛人』の相手をしながら話す。

虫の虐待行為は小学校低学年で卒業するべきだが、この歳になってまで夢中なのだから
一生彼女はこの調子で日課を続けていくのだろう。
それに対して僕は特別呆れる事も無く、これも生き方の一つだと認知してしまっている。
何にせよ他人の人生に僕が干渉する必要性などダンゴ虫程も無い。


lw´‐ _‐ノv「欲しいか少年A」

ダンゴ虫の串刺しをこちらに手渡そうとしてくる。
十人十人がいらないと答えるだろう。僕もその十人に同意だ。いらん。
僕は首を横に振ると、「そうか、今日も買い手が見つからなかった」と肩を落とし、
土をシャベルで掘り、そこに爪楊枝ごと愛人を埋葬した。

lw´‐ _‐ノv「愛すべき者達よ、今日も至福の時間をありがとう」

ぱんぱん、と手を合わせた。それは間違っている。それは墓の前でやる事じゃない。
だが僕はそれをわざわざ指摘するような野暮な真似はしない。
その代わり「満足したか?」と訊く。

lw´‐ _‐ノv「そこそこ」

潰した生命の価値はそこそこ程度のようだ。
そこそこ以下の人生を送っている僕に比べたらマシだ。
とでも思ってやるのがここは筋だろうか。いや、やはりどうでもいい。


lw´‐ _‐ノv「さて、ミッションの時間だ」

シューはそう呟き、服の埃を払いながら立ち上がった。
彼女の言う任務とはコンビニのバイトを指す。
僕は怖いのでその店に立ち入った事は一度も無いが、彼是一年続いているらしく、
案外仕事は真面目にこなすタイプらしい。

('A`)「俺も仕事探すか……」

明日から。




人生で初めて好きな娘が出来た。
ライクとかラブとかそんな下らない単語は英語教師の顔面に叩きつけてやる。
この気持ちを言葉に表す事自体が間違っているのだ。
想像するだけで興奮が収まらない。ましてや、本人と対面している現状なんて。

( ^ω^)「フヒッ、フヒヒッ! 三度目の席替えでも隣同士なんて!
       僕とツンたんは運命の赤い糸で結ばれているに違いないお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「不愉快……この前も言ったわよね。私に顔を近づけないで。
       常にハァハァ言ってるし、アンタ自分がキモいって自覚無いの?」

( ^ω^)「おうあ――――ッ! もっと罵ってぇ!」

棘のある言葉一つ一つが、神経をチクチクと刺激して快感と変わる。
そうかそうか、これが恋愛なのか。
止め処なく涎が溢れる。それを拭う暇すらツンは与えてくれない。

彼女の瞬き一つ見逃したくなかった。美し過ぎるのは、やはり罪だ。
彼女に出会う事が無ければ僕は授業に集中出来たし、自宅では妄想に耽る事無く勉学に取り組んだ。
エリート小学生とまで呼ばれた僕だが、中学の定期テストでは後ろから一番目という結果に終わってしまった。

それは彼女の横顔を凝視していたからだ。ペンすら握らなかった。零点で当然だ。
しかし僕は何の後悔もしちゃいない。これが僕の青春であり、使命だからだ。
脳内アルバムの写真は日々増えていく。無論、ツンしか写っていないのだが。
何月何日何時何分何十秒と言ってくれれば、僕はその時間帯のツンを鮮明に思い出せる。
勿論24時間監視している訳では無いので、穴は当然ある。が、そこは妄想でカバー。

今でこそ何の変哲も無い普通の中学一年生だが、
それまで僕は、どちらかというと斜に構えていた。
常にクールを演出し、自分はお前らとは違うんだよオーラを放っていた。

その風貌はというと、テンガロンハットにサングラスを着用。小学生だ。保安官じゃない。
今にして考えるとCOOLかどうかは微妙だが、当時の僕は本気と書いてマジだった。
ガイアが僕にもっと輝けと囁いていたのだ。
ちなみに卒業式もそれで通した。

変化の時は始業式に訪れた。
西部劇スタイルから一新して、今度は海底スタイルで攻める事にした。
スキューバダイビングの格好だ。
完璧だと思った。小学校時代で叶わなかった友達作りも、これならいけると踏んだ。
が、斬新過ぎた。誰も話し掛けてこなかった。生徒はおろか、教師までも。

  _
( ゚∀゚)「えー、はい。今日からこのクラスの担任とかになる長岡だ。
     やっぱアレだね。楽しみとかは共有したいじゃん。何でも。
     そのためには友達の事とか知っておかなきゃね。
     つーわけで出席番号が若い順から適当に自己紹介してって。はいスタート」


恒例の自己紹介が始まった。
どうでもいい奴が、名前に趣味等どうでもいい事を並べていく儀式。
僕の隣の席であるツンの番になった。

金髪のツインテール。小柄で細身。中々どうして魅力的だ。
第一印象は『可愛い娘』だけで、その時点ではまだ気付いていなかった。
彼女の発言が、次の日からの僕を大きく変える事になるというのに。





ξ ゚⊿゚)ξ「ツンと言います。好きなものはスイーツとケータイ小説。
       嫌いなものは、私の隣にいる害虫のようなキモい男です」





ズキューン。

僕は死んだ。スキューバ(笑)



  _
( ゚∀゚)「口は災いの元だぞ。いくら内藤が本当にキモくても、本人の前でわざわざ
     言う事無いだろう。今後気をつけるように」

担任の長岡先生のフォローは全く意味を成していなかった。
しかし、そんな事はもうどうでもいい。僕の心の中の何かが弾けた。
この僕がキモい。考えた事も無かった。屈辱だった。
下っ腹が熱くなった。言葉に出来ない黒い何かがムクムクと膨れ上がっていく。

認めさせてやろうと奮闘した。意地でも自分の魅力を伝えてやろうと思った。
そのためには彼女と同じ土俵、一般人の目線で自分を磨く必要がある。
今までの僕はいささかエリート過ぎた。高尚なもの程、凡人には認知されない。

『モテる男』でググると、黒いジャケットを羽織った男前な奴が画面に現れた。
これが世間的にカジュアルと言われるらしい。
それに加えてボトムスはブラックジーンズとかいうものを着用するのだとか。
早速ブックオフで購入し、翌日それらを身に着け登校した。


ノハ ゚⊿゚)「おもすれええええええ! 暫くネタに困る事無さそうだぜええええええええ!」

二年で新聞部のヒートとかいう女がカメラを片手に僕を撮りまくった。
次の日記事になって昇降口に貼られると思うと気恥ずかしいが嬉しかった。
僕がニヤニヤしていたが、制服着て来いと長岡先生に教室を追い出された。

翌日、学校新聞の見出しを確かめると、

『変態現る』

そうデカデカと書いてあった。


僕はツンの虜になっていた。
彼女を振り向かせようと努力すればする程、自分が彼女に惹かれていった。
基本的に彼女は僕をストーカー扱いしてくる。だが僕からして見れば、それで結構。
僕という人物を頭の片隅に置いて貰えるだけで幸せなのだ。

僕は最後列窓際の席。ツンはその隣りの席。
こんなに近いのに、距離は埋まらない。
しかし高嶺の花だとも思えない。もう少し頑張れば、届く。

手は精一杯伸ばしている。あとちょっとなんだ。ほんのちょっとなんだ。
ほんのちょっとだけツンが僕を好きになって、
ほんのちょっとだけ家に誘って「今夜は私一人だけなの……」
とか言い出して、ほんのちょっとだけ熱い一夜を共に過ごして、
ほんのちょっとだけ結婚式に漕ぎつけるだけでオールオッケーなのである。


だが運命とは残酷なもので、決まって神様は主人公に無理難題を押し付ける。
僕が話し掛けても、無視するか素っ気無い返事をするかで終わり。
こっちがいくら笑顔を振り撒いても、「キモい」「寄るな」「こっちみんな」
そんな言葉で片付けられてしまう。

触るな、と怒られた事もある。
呼吸すんな、大気が汚れる、と怒られた事もある。
そりゃあ無いぜ神様。いくら僕がイケてるメンズだからって嫉妬すんなよ。

と、ここまで調子こいた発言を繰り返してきた僕だが、ある日を境に一変する。



放課後。本来ならばこの時間、生徒達は部活か帰宅に励むのが常例であるが、
この日はクラス全員が着席させられ、視線は長岡先生に向けられていた。
  _
( ゚∀゚)「えーっと……だな。俺としてはさっさと帰りたい所なんだが、
     一応担任として問題は野放しに出来ない」

耳を穿りながら、やる気無さげに長岡先生が言った。
それに対して一部の女子生徒が「真面目にやってくださーい」と批難を浴びせた。
他の連中も早く部活動に行きたいらしく、苛々を隠そうとしないでいる。


僕はというと、押し黙っていた。言葉も出ない程、その時の僕は――――

  _
( ゚∀゚)「知っての通り、ツンの体操服が盗まれたっぽい。
     もしこの中に犯人がいたら名乗り出てくれ。まぁ無理だと思うが」


――――怒りに震えていた。

言葉も出ない程、その時の僕は怒りに震えていた。



誰だ。
誰がやった。
僕ですら越えていない一線を踏み外しやがった。
一体どこのどいつだ。外道畜生糞野郎的下衆愚図クズカス犯罪変態人間Zめ。

僕の許可無しにツンの私物を奪うとは、在り得ないを遥かに超越する在り得なさだ。
そいつはどうするつもりだ。ツンの体操服で何をする気なんだ。
僕のツンを汚すな。僕のツンを。僕だけのツンを。誰が誰が誰が誰が誰がれがれがれがれ。


  _
( ゚∀゚)「ま……まぁ悪いのは、今時ブルマなんて使ってるウチの学校だと思うぜ。
     俺はお前らを信じているからこれ以上追求しないが、万が一犯人がいたら、
     ほとぼりが冷めた頃に、俺に白状してくれ。じゃ、解散!」


「ちょっと待って下さい! ここは持ち物検査をすべきじゃないですか?」


女子の一人が叫んだ。どうあっても犯人を引っ張り出したいらしい。
ツン以外の女子は芋虫同然だが、僕は心の中で賛同した。
そして盗人が発覚した瞬間、僕はそいつをぶっ飛ばす。
二度とツンに汚らしい視線を向けぬよう、その眼球を潰してやる。

  _
( ゚∀゚)「えー……俺は個人のプライバスィーとか大切にする派だし……」


「ツンさんの気持ちは無視ですか」
「何でもいいから早く帰らせろ」
「プライバシーとかそういうのもういいから」


ブーイングの嵐だ。
こういう時ばかりクラスという集団は異常な団結力を見せる。


長岡先生は長い長い溜息を吐いている。本当に面倒臭いのだろう。
一方のツンは背筋をピンとさせて、すまし顔を保っていた。
被害者という空気を全く漂わせない。
女子生徒が気を使って「大丈夫?」と声をかけても「全然平気」と薄らと微笑む余裕すらある。
無理をしているのだろうか。本当は泣き叫びたくて堪らないのではないか。
ああ、僕の胸に飛び込んでくれれば良いのに。

  _
( ゚∀゚)「あー、もう仕方ねーな。やるよやるよ所持品検査!
     全員カバンを机に上げやがれー」


何故だ。
何故クラス中が、僕を、この僕を、そんな蔑んだ目で見ているんだ。
理由は一つ。僕のカバンの中に、ツンのブルマがお邪魔していたからだ。
そんな馬鹿な。
どうして何で。
いつの間に。
誰が。

  _
(;゚∀゚)「えーっと……ご愁傷様……」

長岡先生までも、動揺している。
ウコンの力を額に当てて「アチャー」とかやらないでくれ。
僕は何にも知らない。盗んだ覚えも無ければカバンに詰め込んだ覚えも無い。

信じてくれ、ツン。


ξ ゚⊿゚)ξ「最・低」

ですよねー。
ヘルプミー。誰か助けてくれよ、あばば。


僕は納得いかなくとも、自然と辻褄が合ってしまった。それが悔しかった。
体育の後は移動教室で、一斉に化学室へ向かう。
体操服を教室に残して皆が移動するのだ。ツンも例外じゃない。
盗むチャンスがあるとすれば、そこだ。

僕は皆より遅れて化学室に到着した。先生にも「遅いぞ」と注意された。
何故僕が遅れたか、それは前の授業の体育に原因がある。
男女揃ってグラウンドでの授業だった。

男子は退屈な走り高跳び。女子は短距離走のタイムを測っていた。
僕は他の男子がどれくらい飛んだかなんて毛ほども興味ない。
視線はただ一点、今からスタートを切るツンだけに向いていた。

白い旗が上がり、ツンが駆け出した。良いスタートだ。二つに分けた金髪が靡く。
ゴールするまでの数秒間は、まさに戦いであった。
太腿も捨てがたい。しかしここで注目すべきは胸だ。

最初から完成されたバストでは無い。まだ膨らみかけ。発展途上だ。だが、それがいい。
ぶるんぶるん揺れる胸は男のロマンだ。
だが、白い体操服の上から存在を主張せんと微かに出っ張り、微かに揺れる双子島もまたロマンだ。

未熟な状態こそ究極。中途半端こそがパーフェクト。
それを目の当たりにして正常でいられる僕じゃなかった。
体育の授業後、僕は素早くトイレという名の無人発電所に潜り込み、自家発電を開始した。

絶頂と共に光の道が見えた。その先にはツンが微笑んでいた。
僕は一歩を踏み出した。そのチャンピオンロードをいざ行かんと走り出したのである。
目が覚めると、そこには汚れ無きツンへの愛の証明が壁に付着していた。純白であった。

おかげで化学の授業に遅れた。


違う。
必死に弁解した。
僕は体操服で走るツンの胸に性的興奮を抱き、それを解消しないと次の授業に支障を来たすので
男子便所の個室でカオス-黒魔術の儀式-を行っていただけなのだ。そうなのだ。

正直に話した。

結果、余計に疑われた。終わった。
批難轟々とはこの事を言うのだろう。

女子生徒のキンキンした声が鼓膜を突き刺す。最低。変態。人間のクズ。
男子生徒の反応は様々であった。女子と一緒に僕を罵倒する者もいれば、
解決しました、めでたしめでたしで部活動に行く者もいる。
僅かだが僕の事を「やるじゃん」と称賛を浴びせる者もいた。


ノハ ゚⊿゚)「盗んだブルマが見つかった時どう思った?」

ああ、またこれも記事にされるのか。
新聞部を筆頭に、他のクラスや学年からも野次馬が押しかけてきた。


兎にも角にも僕が犯人で決定したようだ。
もうこれだけは覆らない事実に認定されてしまった。
それでも僕はやってない。
が、盗品が僕のカバンから出てきたのだ。ここから逆転は無理だろう。
クラスの中には『おかしい』と思っている人もいる筈だ。いて欲しい。
しかし教室内の空気がこういった流れになった以上、誰も僕を擁護したりしないだろう。

  _
( ゚∀゚)「内藤……後で職員室に来なさい。そのブルマもツンに返しとけ」

ξ ゚⊿゚)ξ「こんな奴が触ったモン、気持ち悪くて使えないわよ!」

ブルマはゴミ箱にぶち込まれた。
こんな状態にも関わらず『もえるゴミ』に入れられた事に少しニヤけた自分が嫌だった。
萌えるゴミだって、ブルマが。間違ってない。
それから女子の一人が言った。
「まだ上の体操服が見つかって無いじゃない」
それこそ知らない。が、この後の展開は容易に想像出来る。

「何処に隠しているのよ。出しなさいよ」

出せるワケねー。


僕は狂う事にした。
変態のレッテルを貼られても、それを否定するより認めてしまった方が楽だと気付いた。


( ^ω^)「フヒッ、フヒヒッ! 三度目の席替えでも隣同士なんて!
       僕とツンたんは運命の赤い糸で結ばれているに違いないお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「不愉快……この前も言ったわよね。私に顔を近づけないで。
       常にハァハァ言ってるし、アンタ自分がキモいって自覚無いの?」

( ^ω^)「おうあ――――ッ! もっと罵ってぇ!」


ノハ ゚⊿゚)「今日の内藤……ツンさんに向かって運命の赤い糸とか言い出す……っと」


学校新聞には『今日の内藤』というコーナーも出来た。もうヒーローだろ、僕。
本能剥き出しで生きるのが、こんなに気持ち良いとは思わなかった。
キモいって自覚? あるよ。あるさ。でもそれが何?
誰だって抱く感情を、僕は表面に出しているだけだ。ツンたん好き好き愛してる。
ツンたんのお尻の穴に指を突っ込んでクンカクンカした後、ぺろぺろちゅっちゅしたいよぉ。
みたいな。正常な人間なら一度は考える事を授業参観の日に発表するとか超気持ち良い。




ξ ゚⊿゚)ξ「これって立派な恋愛よね」

彼女は言った。
同じのベッドの上。同じ布団の下。
僕も彼女も生まれたままの姿で横たわっている。
ここは僕の家。自分で言うのもなんだが大豪邸。と言っても親の遺産なのだが。

僕と彼女の始まりは、もう下火となりつつある出会い系サイトだった。
金を釣り針に刺して垂らせば、あっという間に中高生が釣れる。

僕の隣にいるツンも、結局は釣れた魚の一匹に過ぎなかった。

ξ ゚⊿゚)ξ「これって立派な恋愛だよね」

もう一度彼女が言った。
僕は頷いた。
彼女は満足そうに笑った。


ξ ゚⊿゚)ξ「ねぇ」

ある夜の話だ。

ξ ゚⊿゚)ξ「どうして挿れてくれないの?」

ツンが甘く囁いた。

ξ ゚⊿゚)ξ「私はいつだって準備出来てるのに」

いつも通り、ベッドの上。彼女は裸。僕も同様。僕は少しだけ、げんなりした。
今時の中高生は男のそれを女のそれに挿入して出し入れする事が性行為の真髄だと思っている。
それで全てを知った気になっている。偉そうに。出し入れするのは扇風機とコタツだけで十分だ。


ξ ゚⊿゚)ξ「私が中学生だから……? 変な遠慮しないでよ。私は本気だよ?」

僕だって本気だ。だから今自分が出来る精一杯を君にぶつけている。
手抜きなんて言われたら心外だ。だがそんな些細な文句で興が冷めたりはしない。


ツンに覆い被さるようにして倒れる。そのまま唇も重ね、ふさいだ。
まず歯をなぞり、歯茎にまで侵入していく。彼女はされるがままだ。
女は良い匂いがする、というのは幻想に過ぎない。
結局は香水やヴィダルサスーンとかそんなんを身体に髪に満遍なく纏って、自らの体臭を消しただけなのだ。
しかし今の彼女は、間違いなく良い香りを漂わせていた。
それは花の匂いでも何でもなく、口内に広がる唾液が僕と彼女の舌で混ざり合って生まれたものだ。
彼女の呼吸は不規則になり、辛さと快感から発汗しているのも分かる。
そんな汗の臭いと十代特有の何かホルモン的なアレが色々組み合わさり、僕の鼻腔を刺激していく。

これだ。僕が求めていたのはこれなのだ。大人よりも甘く、子供よりも濃い。中学生にしか出せない匂いがある。
この香りに身を悶えさせながら、全身全霊で彼女の中に溶け込んでいくだけ。

僕らの舌は未だ絡まり合う。知恵を使う余裕すら彼女は無いだろう。
よってこの輪は外れない。絡めながら、吸い付いてみる。次に下唇を噛んでみる。
それだけで彼女はぴくぴくと震え、喘ぎ声の混じった吐息を途切れ途切れに漏らした。


中高生というのは、繭だ。
地面を這う芋虫の時代を終えると、奴らは生意気にも空に夢を馳せる。
その時の奴らは無敵だ。周りの大人や法律が自分達を守っていると、勘違いするのだ。
少年法を鎧か何かだと思ってやがる。面倒を見て、自分を庇う親は差し詰め盾か。
羽を身につけ、全ての足枷が外れた時、奴らは初めて世界の広さを知る。
それが大人になる事。夢に見ていた空との違いに絶望する者も現れるだろう。

ツンも例外では無い。
いつか必ず飛び立つ。

嫌だ。僕は今のツンが好きなんだ。
飛ぶ必要なんて無い。鮮やかな羽を広げなくてもいい。
完成したツンなど、僕は愛せない。


互いの舌はまだ絡みついたままだ。
一応ツンは、ツンなりに抵抗をしているようで、巻きつく僕の舌を解こうと懸念しているみたいだ。

それは彼女なりの意地かもしれない。
彼女は、僕は中学生相手に本気にならないと思っている。
大きな誤解だ。僕は今も一生懸命だ。しかし彼女は納得いかないのだろう。

だから抗うような態度を舌で見せた。大人相手に少々生意気だ。
「好き勝手にやって。だけど、どうせなら最後まで弄んで」
これが彼女のメッセージだ。
だが断る。これは僕の中でのルールだ。

『その段階』まで終えてしまったら、彼女は『女』になってしまう。
単なる意識の問題だが、僕にとっては重要な事だ。
『女の子』と『女』の狭間にいるツンだから、僕はこうして愛せている。

唇が離れる。名残惜しそうに糸が僕らを繋げた。
不機嫌な表情をしているかと思っていたが、ツンは糸を指で回収した後、
僕をじっと見て、やがて相好を崩した。

何かが僕の背中を押した。気付けば僕は彼女の胸に顔を埋め、乳房にしゃぶりついていた。
甘い。今一度、彼女を独り占めにしたいと思った。
いや、してみせる。出来る。
膨らみかけた彼女の胸の温度を感じながら、確信していた。




ツンの悲鳴で僕は目が覚めた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と涙目で僕の胸に飛び込んでくる。
訳の分からないままリビングに向かうと、父さんも母さんも大パニックで僕に助けを乞うてきた。
何が起きていたのかは、その飛び回る影を見てやっと理解出来た。
蛾が飛び回っている。それも一匹じゃない、ざっと数えても十匹程。
羽描かれた焦げ茶色の模様は、まるで目玉だ。カーテンに止っている一匹はこっちを睨んでいる。

僕は飽きたのだった。
ツンを喜ばせようと、結局ケースには十数匹の毛虫達を入れたがいつまで経っても変化は見られず、
そのままクローゼットか何処かに放置してしまっていたのだ。
忘れていた記憶が徐々に甦っていく。
あろう事か、この蛾の群れはケースの蓋を抉じ開けたのだ。
それも長い間狭い空間でぎゅうぎゅう詰めにされてきただけあって、
異様な程に動きが不自然。カーペットの上で死んでいるものも一匹見つけた。

地獄絵図だ。朝飯の目玉焼きには別の目玉が一つ。味噌汁には明らかにおかしい具が。
全部全部全部、蛾さんだ。ばさばさばさばさ、不快な羽音を平日の朝に響かせている。
蝶は居なかった。道理でツンが泣き喚く筈だ。いや、居た所でこの状況では……

白い蛾が一匹迫ってくる。別に僕を狙っている訳では無いだろうが、
ツンが泣いている。払わなければ。
べちゃ。という音が鳴り、蛾は壁に叩き潰された。
潰したのは紛れも無く自分の手の平。
蛾の腹の肉はいやに柔らかく、圧迫されて破裂した体からは、赤茶色の体液が飛び散った。

この潰した触感を。
蛾を素手で潰した触感を。
ぶよ。とした途端に、ぐちゃ、と割れたあの感触を、未だに僕は忘れられない。
手の平を確かめると粘着質の液体と、燐粉が付着していた。

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トラウマ。



('A`)「ああ……思い出すだけでも鳥肌が……」

lw´‐ _‐ノv「ならば思い出さなければいいだけの話である」

('A`)「お前のそういう虐待を見てると、否が応でも記憶が甦ってくるんだよ」

シューはプラスチックのケースにバッタをこれでもかという程、入れていた。
ケースを蹴る音がビシビシと五月蝿い事この上ない。
実はこの中に一匹、カマキリが紛れている。シューはこれを『百人組手』と呼んでいる。
無数のバッタを相手に、カマキリがどこまで奮闘出来るかの実験らしい。

どう見てもカマキリさんがフルボッコにされているんですが。


lw´‐ _‐ノv「……見なければいい」

('A`)「仕方ねーだろ。ここに来るのは日課みたいなモンなんだから」


ただブラブラと歩き呆けるのが僕の日常だが、当ても無い散歩をするよりは、
一箇所でも必ず立ち寄る所があった方が良いと思ったのだ。
数回訪れるだけで、やがて何でもないその地点は自分の居場所になる。
そこには幼少時と同じ先客が居た訳なのだが、シューが居てくれるのはありがたかった。
自分の姿を確認してくれる存在だからだ。
夏休みのラジオ体操で終わった後にスタンプ貰えるような感覚だ。
まあシューの場合、くれるのは見るも無惨な虫の死骸だけで、それを受け取った事は無いのだが。

lw´‐ _‐ノv「バッタ如きに何を梃子摺(てこず)っているのだ」

カマキリは瀕死だった。足はもげ、羽も潰れ、弱々しく震えている。
プラスチックの箱の中、バッタも行き場を求めるようにバタバタ跳ねていた。
酷い有り様だった。そこに燃料投下、とシューが水と土を入れた。
二つが混じって泥となり、中はびちゃびちゃのどろどろ。
それでもバッタは勢い良く跳ね回るので、ケースの中は泥の散弾が飛び散っている。
カマキリは埋もれ、完全に息の根が止まったようだ。
これまで良く戦った。君は英雄だ。腹が潰れて具が泥に浮いているけれども。


lw´‐ _‐ノv「うわぁ。気持ちわる……」

お前が言うか。


lw´‐ _‐ノv「ん」

シューが僕にシャベルを手渡してきた。
黄色で、可愛らしいウサギのキャラクターのシールが張ってあった。
小さくて、いかにも幼児向けだった。
シューも同じようなシャベルを持っている。赤色だった。これで何をしろと言うのだ。

lw´‐ _‐ノv「このケースを埋めるのである。土葬だ! 土葬だ!」

('A`)「祭りにみたいに言うなよ。ってか生き埋めって事? ひでぇな。バッタは逃がせよ」

lw´‐ _‐ノv「母なる大地の懐に、生物は皆帰っていくのだ。
       何より私はカマキリの仇を討たなけれなならない。
       この憎きバッタ達を生かしてはおけぬ」


仮にカマキリがバッタを殲滅させたところで、可愛いバッタ達を、みたいな言い分で
カマキリを埋めたと思う。要するに、一度自分の掴んだ獲物は逃がす気無いんだコイツ。

('A`)「帰る場所か……」

lw´‐ _‐ノv「どうした。顔が悪いぞ」

('A`)「妹のツンがね……最近全然ウチに帰ってこないんだ……」

lw´‐ _‐ノv「その繋げ方は苦しいなぁ」


五分も経たず、数十匹のバッタ達は生き埋めとなった。
これは予想だが、明日絶対シューはこの場所を掘り返してバッタ達を確認すると思う。


('A`)「警察に連絡した方が良いのかな……過去にも三日四日帰ってこなかった事あるけど
    今回は一週間だし……でもツンは余計な事するなって言いそうだし……
    実は昔、二日ほどツンが帰ってこなくて、VIPにツンの写真とスペック晒して
    捜索してくれってスレ立てた事あるんだが、その一件でツンが激怒しちゃった事も
    あるんだよね。単に友達の家に泊まっていただけだったんだが、買い物中に
    スネークの格好した男数人に囲まれて大変な事になったんだとか……
    当時ツン小四だったかなー。このロリコンどもめっ! って思ったね」

ツンは俺と連絡を取りたがらない。
よって携帯電話の番号も知らない。
友人関係も把握していない。もし悪い男とつるんでいたら、と考えると寒気がする。

lw´‐ _‐ノv「兄がニートだから家出したのではないか」

('A`)「うう……」

lw´‐ _‐ノv「働いている姿を見せれば見直されるのではないか」

('A`)「そんなもんかなぁ……」

lw´‐ _‐ノv「ついてくるよろし」

('A`)「はい?」

困惑したまま腕を引っ張られる。
シューの手はいやに冷たかった。




クソつまんねぇ。
特にここ最近は輪をかけてクソつまんねぇ。
世界がこんなにつまらないとは。

たった一つ、『それ』が抜けてしまう事で、この世は180度回転してクソつまんなくなった。
女房の手料理もクソの味しかしねぇ。
山芋だか納豆だかレバーだか媚薬だか精のつくモンばっか夕飯に出しやがって。
回りくどいんだよ主張の仕方が。ねちねちねちねち、うざってぇ。
「子・づ・く・り・しましょ♪」が言いたいんだろ、てめぇは。

ああうざってぇ、うざったい上にクソつまんねぇ。
嫁との行為もつまんねぇ。乳も秘所も唇もクソの味しかしねぇ。

酒も不味い。

  _
( ゚∀゚)「営業出来ないレベルの不味さだな」

(´・ω・`)「文句あるなら勘定済ましてさっさと家帰れよ」
  _
( ゚∀゚)「嫁の顔見た瞬間吐きそうだ」

(´・ω・`)「そうは言ったって夕飯用意して待っているんだろう?
      もう八時になるよ。せめて連絡一つ入れるべきじゃないのかな」
  _
( ゚∀゚)「知った事か。おい酒ぇ!」

(´・ω・`)「ここは居酒屋じゃないんだよ。バーだよ、バー。
      アデァルトなふいんき(ryを嗜んで欲しいんだよ。
      君みたいな奴が一人いるだけで他のお客さんの迷惑になる」
  _
( ゚∀゚)「どこに他の客がいるんだよ、バァカ」

(´・ω・`)「はぁ……君は一応教師だろう?」
  _
( ゚∀゚)「教師である前に人間だ。ひたすらに欲を持つ醜い醜い人間様だよ。
     大体先公なんて職業もクソなんだよ。
     生徒と親に媚び諂ってヘラヘラ授業やってりゃいいだけなんだからな」

(´・ω・`)「子供の前でそんな事言うなよ」
  _
( ゚∀゚)「子供?」

(;'A`)「あ……」
  _
( ゚∀゚)「どっかで見た事あるツラだな……」

(;'A`)「中学の時の……担任の、長岡先生?」
  _
( ゚∀゚)「あ”あ”~分かった、思い出した。お前ドクオだな。中学殆ど休んで、
     お情けで卒業させてもらったドクズだ」

(;'A`)「先生って……そんな人でしたっけ……
    口調は荒っぽいけど、もっと朗らかな印象あったんですけど」

(´・ω・`)「これが素らしいよ。で、シュー、今はバイトの時間じゃなかったか?」

lw´‐ _‐ノv「無断で休んだ」

(´・ω・`)「お店に連絡くらい……」

lw´‐ _‐ノv「テレパシーを試した」

(´・ω・`)「そうか」

lw´‐ _‐ノv「ますたー、この駄目人間雇ってくれい」

(;'A`)「え、僕?」

(´・ω・`)「いいよー」

(;'A`)「か、軽っ!」

(´・ω・`)「人手は別に僕一人で足りてるけど、実の所あんまりこの店繁盛してなくてね。
      寂しすぎて死にそうな時があるんだ。
      まだ未成年みたいだから、お酒云々はまだいいや、食器洗ったり掃除したり
      してくれると助かるな」
  _
( ゚∀゚)「おーおー、やれやれー」

(;'A`)「え、いや……僕その……まだ……」

(´・ω・`)「時給は2000円くらいが妥当かな」

(;'A゚)「ちょwwwwwそれはねーよwwwwwwwww」

(´・ω・`)「どして?」

(;'A`)「だって失礼ですけど、繁盛してないのは明らかですし、たかがバイトですし……
     こっちとしても申し訳無さ過ですよ! 冗談ですよね?」

lw´‐ _‐ノv「ますたーはジョークが嫌いなのだ」
  _
( ゚∀゚)「俺が働きてーよ」

(;'A`)「あ、分かりましたよ! このバー自体副業か何かで、マスターさんはすごい企業の
    何かで、経済的にすごく余裕のあるお人なんですね!」

(´・ω・`)「仕事一筋これ一本!」

lw´‐ _‐ノv「ますたーは夜だけ適当にますたーやって、昼はブラブラしているのだ」

(;'A`)「はぁ……」

(´・ω・`)「じゃあ初仕事。そこののんだくれの話でも聞いてやって頂戴」
  _
( ゚∀゚)「ドクオォ、うっへへへ、ちょっと話聞けぃ」

(;'A`)「え……何でしょう?」
  _
( ゚∀゚)「お前妹いるよな?」

(;'A`)「はい」
  _
( ゚∀゚)「何で最近学校こねーんだ?」

('A`)「……そうか、貴方が担任でしたか……
   妹は、家にも全然帰ってきていません……連絡もしてきません……」
  _
(;゚∀゚)「お、おい! マジかよ! え、ええええ……それどういう事?」

('A`)「前に何度か、そういう家出染みた事は数回ありましたが、今回はちょっと長くて
    怖いんです……でも警察とかに相談すると大事になりそうでそれも怖いんです」
  _
(;゚∀゚)「バッキャロ! そういうのは一刻も早くポリスメンに通報するもんなんだよ!」


おいおいおいおいおいおい。
その展開は予想していなかった。
家で引き篭もっていただけかと思っていたよ。

誘拐殺人でもされていたら、俺はこれから何を希望に生きていけばいいんだよ。
嫁とは比較にならないくらい、いとおしい我が生徒ツン。
その愛娘がずっと姿を見せなかった。
ここ一週間、俺は抜け殻のようになっていた。
彼女が登校してこない学校なんて滅べば良いと思った。

  _
(;゚∀゚)(ウググググ……)


ツン。ツン。
ああああ、考えるだけで胸が張り裂けそうだ。

その美貌を狙った汚らしい男共に変な廃墟っぽい所に連れて行かれてガムテープで口を塞
がれて腕とかも何かそのテープとかでグルグルにされて助けを呼ぶ事も抵抗する事も出来
ずただただ飢えた五人か六人くらいの男達(外国籍)に服を剥がされ下着とかもビリビリ
に破られていや待てよ下着は敢えて脱がせず下着の上から色々タッチしてみたりペロペロ
したりアレしたのかも知れない何て下衆な野郎共だ許せない年頃の女の子だぞ後々トラウ
マで男性恐怖症とかになったらどう責任取ってくれるんだよツンは俺と結婚する予定なん
だよ幸せな家庭を築くんだよお前らにそれをぶち壊す権利なんて雀の涙程もありゃしねー
んだあああああああ何か無性に腹が立ってきたぞツンは心の中で思うんだ『ああ……助け
て長岡せんせぇ……私の初めてはせんせぇの為にあるのに、何でこんな男達に……でもく
やしいっ……感じちゃうっ』ビクビクッみたいな感じでツンは今も戦っているんだ俺はこんな
呑気に酔っ払っていていいのか? いい訳無い教え子がいや愛する女が俺を待っているこ
うしている間にも男達の欲望は下の竿と共に肥大しツンを汚すのだ。
『ゲヘゲヘお嬢ちゃん嫌がっているみたいだけど下の口は正直だぜ』どうでもいいけど下の口って最初に考えた
奴天才過ぎるだろそのフレーズすげぇわ意味も無くそそるもんええはいうん『いやぁ! や
めてぇ……ひゃああああん!』あああツンの叫びが聞こえる……ガムテープで口塞がれて
る設定とかもうどうでもよくなるくらい心が痛むぜ……ジュッポンジュッポン『ひやぁぁ』『オラ
こっちもくわえな』パンパンスパンスパン『ブヒャブヒャ僕の相手もしてよツンちゃん』ズッコンバッコン
『俺のも入れるぞ』『俺も!』『じゃあ僕はカメラマンだ!』『いやぁ……そんなに……』『グ
ヒヒヒああイクぞ』『やぁん! 中だけはー! 中だけはー! ツンのお腹の中おたまじゃく
しさんだらけになっひゃうううううううう』『ウエッヘッヘ』『ゼェゼェハァハァ』『第二ラウンド
だぜ』メリメリ『こいつにコンティニューだ』『いやあああああああ!』



一発抜いたらどうでもよくなった。


  _
( ゚∀゚)「はぁ……」

真っ白い液体がべっとりと付着した体操服。
これはツンから頂戴したものだ。
この服の内側でツンの膨らみ掛けの胸が擦れていた。

自宅に帰ってきたのは日付が変わった直後あたりだったか。
嫁は不細工な表情で寝ていた。
すっぴんで、涎を垂れ流しながら歯軋りを立てる。
女として非常に滑稽だと思った。

俺は自室の箪笥に忍び込ませているツンの体操服を、
いつものように股間のエクスカリバーに巻きつけて、
先程の妄想をネタにセイヤセイヤした。
  _
( ゚∀゚)「はぁ……」

もう一度溜息を吐いた。

全て抜けてしまった。

外面的にも、内面的にも、俺は全裸になっていた。

もう、何も無い。
  _
( ゚∀゚)「明日も学校か……」

明日も学校だ。
ツンの居ない明日なんて。

暫く放心した後、俺は体操服を洗いに洗面器へと向かった。
朝になってはカピカピになってしまう。
嫁を起こさないように、忍び足で廊下を歩く。
  _
( ゚∀゚)「内藤には悪い事したなぁ……」

内藤もツンに惹かれている事は一目瞭然だった。
学校内では一教師として普通に振舞っている俺に対して、生徒という立場の内藤は
変態的なまでにツンを追いまわしていた。
正直羨ましかった。俺も下半身スッポンポンでツンと接したかった。
だがそれは出来ない。だから家の中では、脳内では、ツンと甘い生活を送った。
嫁とか知らんがな。どうせお見合い結婚だよ。親が早く孫が見たいってうるせーの。
だから形だけの結婚だよ。孫はまだ作ってない。俺の子はツンだけが産めばいい。

内藤は同士だと思った。
その一方で嫉妬している自分もいた。

もっとツンに近づきたかった。
だから、盗んだ。

移動教室の瞬間。
リスクは大きかったが、念願の体操服とブルマを手に入れた。
しかし、これは犯罪だ。
そして犯人は俺だ。
もし、万が一、俺がツンの体操服とブルマを持っている事が知られたら、当然首が飛ぶ。
だから内藤をスケープゴートにした。
内藤を選んだのは、ツンのストーカーだからだ。ストーカーだからこそだ。
事実内藤が犯人で、誰もが納得していた。筈だ。
無茶だと分かっていたが、持ち物検査は避けたかった。
出来れば、犯人を出したくなかった。平和的解決が一番だ。


持ち物検査が行われなかったとしても、内藤は自宅で必ずブルマの存在に気付いた筈だ。
内藤なら歓喜するだろう。そして大切に扱ってくれる。
何せ俺とお前の『ツンを愛でる会』だもんな。そんなもん無いけどな。

しかしブルマは見つかった。
これはもう仕方の無い事だ。
内藤、ご愁傷様。




電灯に飛び回る羽虫は、その光を何だと思って寄り付いているんだろか。
よっぽど魅力的な何かなのだろう。
光り輝くもの程、虫ケラに好かれるのか。

僕にとっての光は、ツンだ。
ならば必然的に僕は、夜を彷徨う、ちっぽけな羽虫になる。

それでも構わないのだが。

('A`)「暗いな……毎日この時間帯の帰りになるのか……」

夜明け前の街は不気味なくらい静かだった。
まぁ昼も閑静な住宅街だが、主婦達が井戸端会議しているだけに平和な時間だろう。
しかし、夜は分からない。
僕は今をときめくニートであるにも関わらず、早寝早起きを心掛けていたから、
深夜徘徊など体験した事は無かった。


('A`)「うばっ!」

前方の何かに衝突した。
僕がキョロキョロしていたのが悪い。
ぶつかったのは人間だった。
向こうも尻餅をついて、それ相応のリアクションを取っている。

('A`)「だ、大丈夫ですか……?」

(  ω )「……」

('A`)「あの……」

(  ω )「平気ですお」

('A`)「あ、はい……サーセン……」

僕よりも大分体格の良い男だった。しかし声は幼い感じがした。
不審がる僕と対照的に、彼はこっちに全く興味を持とうとせず、足早に去っていった。

深夜は不思議がいっぱいだ。

でもこれは不思議過ぎるよね。

自宅の電気、ついてるね。
僕はちゃんと出掛ける前に消した。



――――――――――!



(;'A`)「ツン!?」

近所迷惑も考えず、僕は玄関の扉を勢い良く開け、愛する者の名を大声で叫んだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「うるさいわね……」

ツンは、いた。
いてくれた。

(;'A`)「はあっ……は……良かった……今度居なくなったら即行で通報するからな……」

いてくれたのだ、が。

ξ ゚⊿゚)ξ「もうそんな必要無い。勝手に心配しなくて結構」

大きなショルダーバッグを抱えている。
何だ、それ。
まるで旅支度みたいじゃないか。

ξ ゚⊿゚)ξ「もう、この家には帰らないから」

(;'A`)「んだと……」

ξ ゚⊿゚)ξ「じゃーね」

僕の横を、過ぎ去っていく。

ξ ゚⊿゚)ξ「クズ」


('A`)「どこに、何しに、行くのか。それだけ……答えてくれ」

ξ ゚⊿゚)ξ「答える義務は無いわ」

('A`)「答えろ!」

ξ ゚⊿゚)ξ「……『愛する人』の元に『暮らし』にいくの。だからもう此処は用済み」

('A`)「そいつは……誰なんだ……兄さんに紹介しろ」

ξ ⊿ )ξ「……っさい……」

('A`)「あ?」

ξ ⊿ )ξ「うるさいうるさい! こんな時ばっか兄貴面しやがって!」

ツンがこちらを振り返った。
表情はよく見えなかった。正面にいるのに。
何故か。僕が、ツンの、目を見ていないからじゃないか。


('A`)「な、なんと言われようと……実力行使でも俺はお前を止めるぞ……!」

ξ ⊿ )ξ「やってみてよ……」

カチ。

('A`)(何だこの音……?)

カチ。

ツンが一歩近づく度に、その音が大きく鳴り響く。

彼女が手に持っているもの。それは――――――


ばちん。


('A`)「ギエ――――――ッ! 痛い――――――! 痛いでござる――――――!」

手に刺さったのは、ホチキスの針。
ホチキスだ。
ツンはホチキスを持っている。
いや、ホチキスってお前。
どんな武器だよ。
怖いけど。確かに怖いけど。
いや、ホチキスってお前。

('A`)「ホチキスってお前――――――……」

意識が途切れた。
洒落にならないよ。
今度は電話機で殴りやがった。
それが兄への態度か。




そこに到着した頃には、既に夜が明けていた。

(´・ω・`)「待ってたよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「わざわざ外に待機してなくてもいいのに」

(´・ω・`)「わざわざ、待ってたよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ありがとう」

(´・ω・`)「入って」

ξ ゚⊿゚)ξ「改めて見てみると……すごい豪邸よね」

(´・ω・`)「君のものになるんだよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「私と貴方のものでしょ」

(´・ω・`)「そうだね。君とぼくのものだ」

ξ ゚⊿゚)ξ「……っ!」

(´・ω・`)「どうしたの?」

ξ ゚⊿゚)ξ「何か視線を感じたんだけど……」

(´・ω・`)「……ちょっと疲れているんじゃないか?」

(´・ω・`)「ここは、いつもの寝室だね」

ξ ゚⊿゚)ξ「ずっと一緒に寝ようね」

(´・ω・`)「はは、そうだね」

ξ ゚⊿゚)ξ「まだ私の知らない部屋が沢山あるんだろうなぁ……」

(´・ω・`)「広ければ良いってもんじゃないのにね。こんな所に僕一人で住んでたんだよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「寂しがりだもんね」

(´・ω・`)「まぁね。孤独には慣れないもんで」

ξ ゚⊿゚)ξ「今日からは私が一緒だよ」

(´・ω・`)「うん、ありがとう。さて、ここが君の部屋になるんだけど……
     今日のために特注のコーディネートをした。一週間もかけてね」

ξ ゚⊿゚)ξ「すごーい……開けていい?」

(´・ω・`)「どうぞ。君の部屋だ」




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ξ;゚⊿゚)ξ「いやあああああああああああああああああああああ!」

床を這う、害虫。
見た事も無い色の芋虫、巨大なゴキブリ、蚯蚓。
目を疑った。夢だと思いたかった。しかし異臭が現実を突きつけてくる。
足の踏み場も無い。ぐちゃ。ごきっ。ああ、何か踏んだ。粘液が足の裏に付着する。
嫌だ。助けて。扉、開かない。閉じ込められた。蛾が飛び回っている。ゴキブリも飛んでくる。
害虫が私の脚を伝って、服に侵入してくる。
ああ、蟲が。
ぐちゃ。ああ。
顔に。ああ。
口に。ぐちゃ。


「はい。一丁上がり」


扉の向こうで、声が聞こえた。
たすけて。
何でだろう。
最後に浮かんだのは兄の顔だった。




「ねぇ? いつまで歩くの?」

(  ω )「……」

ノハ ゚⊿゚)「ねぇってば!」

(  ω )「ツンが見つかるまでだお」

ノハ ゚⊿゚)「学校は行ったほうがいいぞ! ……まぁもう下校時間だが……」

(  ω )「朝からべったりついて来るヒートさんに言われたくないですお」

ノハ ゚⊿゚)「私は取材最優先だからいいのだ!」

(  ω )「だからカメラ持ってんですかお」

ノハ ゚⊿゚)「私とカメラは一心同体! 寝る時も風呂の時も新聞配達のバイト中だって
      手放した事はないのだ! スクープは何処に転がっているか分からんからな!」

(  ω )「そうでうかお……でも、もう僕に付き纏わないで下さいお」

ノハ ゚⊿゚)「そうはいかないのだ! 『今日の内藤』の記事を書かなきゃならんのだ!
      内藤が面白い事したり、事件に巻き込まれたりしないと記事にならん!
      読者はもっとイキイキした内藤を望んでいるのに」

(  ω )「そんなにイキイキさせたいなら……ツンを見つけてきて下さいお……
       ツンのいない学校なんて、意味も無いただの箱だお……」

ノハ ゚⊿゚)「そうか……ツンを見つければいいのか!」

(  ω )「そうですお」

ノハ ゚⊿゚)「おk! おk! 任せておくれよ!」

(  ω )「じゃあ……さようならですお……」

ノハ ゚⊿゚)「おう! でもお前も学校だけは来ておいた方がいいぞー!」

(  ω )「……ご忠告ありがとうございますお……」


電灯に飛び回る羽虫は、その光を何だと思って寄り付いているんだろか。
よっぽど魅力的な何かなのだろう。
光り輝くもの程、虫ケラに好かれるのか。

僕にとっての光は、ツンだ。
ならば必然的に僕は、夜を彷徨う、ちっぽけな羽虫になる。

それでも構わないのだが。

(  ω )「あれからどれくらい歩き回ったんだろうお……」

夜明け前の街は不気味なくらい静かだった。
まぁ昼も閑静な住宅街だが、主婦達が井戸端会議しているだけに平和な時間だろう。
しかし、夜は分からない。
僕は今をときめく健全な学生だから、早寝早起きを心掛けていた。
補導対象にもなるし、深夜徘徊などした事は無かった。


(  ω )「っ!」

前方の何かに衝突した。
僕がキョロキョロしていたのが悪い。
ぶつかったのは人間だった。
向こうも尻餅をついて、それ相応のリアクションを取っている。

('A`)「だ、大丈夫ですか……?」

手を差し伸べてくる。
必要無い。
僕は自分で立ち上がり、男の横を過ぎ去った。



  _
(#゚∀゚)「どういう事なんだ……きっちり説明して貰うからな……!」

(´・ω・`)「何その紙キレ」
  _
(#゚∀゚)「うちの学校の新聞部の奴がなぁ。激写しちゃったんだよ。
     お前がツンを自宅に連れ込む瞬間をなぁ!」

(´・ω・`)「はー、なるほど。仕事そっちのけでバーに来たのは、そういう理由か」

lw´‐ _‐ノv「それが4、私のパジャマ姿を身に来たのが6ってとこか」
  _
(#゚∀゚)「この件が10だよ! それ以外の理由なんざありゃしねぇ!
      俺の! 俺の天使! ツンを返せ! ツンを返せえええええええッ!」

(´・ω・`)「狂ってるね!」

lw´‐ _‐ノv「愛は人を狂わせるのだった!」

(´・ω・`)「他人事では無いけどね!」

lw´‐ _‐ノv「ますたーも相当変態なのである」


(´・ω・`)「本当にツンを愛しているなら、全てを見せてあげるよ。長岡先生」
  _
(#゚∀゚)「何だその態度……四の五の言わずツンを

「おい……」

(´・ω・`)「ん、来てたのか」

('A`)「僕も混ぜてくれませんか……妹に何をしたってんですか……?」

(´・ω・`)「妹……? そっか、ははは! なるほどね。君が兄さんか。
      これから僕はドクオ君をおにいさんと呼ばなきゃならんのか!」
  _
(#゚∀゚)「どういう事だ……!」

(´・ω・`)「もう一度言う。本当にツンを愛しているならついてこい」

lw´‐ _‐ノv「らんらんるー」



(´・ω・`)「大豪邸だろ」
  _
( ゚∀゚)「自分で言うなよ」

lw´‐ _‐ノv「ますたーのご先祖は明治時代から続く実業家なのだ」

('A`)「すげ……屋敷だ……」
  _
( ゚∀゚)「ここにツンを嫁として向かえるつもりだったんだな!」

lw´‐ _‐ノv「つもりじゃなくて、既にそれとなっているのでは」

('A`)「マスターさんには悪いですけど、ツンは連れて帰ります」

(´・ω・`)「……」

  _
( ゚∀゚)「廊下もなげーな……」

('A`)「先祖さん達の絵が並んでる……」

lw´‐ _‐ノv「正しい順に並べ替えるとワンワンが手に入るよ」
  _
( ゚∀゚)「ブッキータワーかよ」

(´・ω・`)「ここを降りる」
  _
( ゚∀゚)「地下階段……?」

(´・ω・`)「そして、この秘密の扉」

('A`)「この先にツンがいるって言うんですか……?」

(´・ω・`)「ああ、『ツン』がいる」
  _
( ゚∀゚)「早く開けろ!」

(´・ω・`)「待っていろ。指紋認証が必要なんだ」

[ ゚д゚]『ピ――――――ガガッ、微妙デスガ、解析シマシタ。扉ヲ開キマス』

('A`)「微妙なんだ……」

(´・ω・`)「彼はこの部屋のマスコットキャラクター、デフラグ君だ」
  _
( ゚∀゚)「どうだっていい!」

lw´‐ _‐ノv「お、ヒラヒラ開いた」

(´・ω・`)「のれんだからね」
  _
( ゚∀゚)「指紋認証いらねぇ」



('A`)「ツン……?」

lw´‐ _‐ノv「素っ裸」
  _
( ゚∀゚)「何だ、このカプセル……?」

(´・ω・`)「中には液体窒素が入っている。分かりやすく言うと、コールドスリープさ」

('A`)「どうして……こんな事を……」
  _
( ゚∀゚)「ツン以外の女もいるじゃねーか……てか、ここら一帯全部同じようなカプセルで
     埋め尽くされてやがる……」

lw´‐ _‐ノv「全部中学生。このロリコンどもめっ」

(´・ω・`)「中学生のまま、彼女達を保存しているのさ」

('A`)「だから何のためにっ!」

(´・ω・`)「大人になって欲しくなかったんだ……彼女達には……」
  _
( ゚∀゚)「何っ……?」

(´・ω・`)「大人はずるくて、汚くて、勝手で、最低最悪の人種なんだよ。
      例を挙げるなら、この僕がそうだ。彼女達の意思とは無関係にこんな事をしている」
  _
( ゚∀゚)「自分勝手な奴は、自分が勝手だと自覚してないモンだと思っていたが」

(´・ω・`)「でも誘拐でも拉致でもない。紛れも無く、彼女たちは自分から僕の元にやってきた」


(´・ω・`)「繭」

(´・ω・`)「僕がこの世で一番好きな生き物」


(´・ω・`)「蛾」

(´・ω・`)「僕がこの世で一番嫌いな生き物」


(´・ω・`)「理解してくれた?」
  _
( ゚∀゚)「理解は出来ても納得は出来ねぇ」


(´・ω・`)「夢を見る時期が、人として最も輝く瞬間なんだよ。
      夢を掴み取った時よりもね。
      だから中高生は美しい。子供以上大人未満。
      アンバランスこそ、芸術。
      僕は、彼女達を、汚い蛾にさせたくなかった。
      美しい繭でいて欲しかった。
      それだけだ。
      これまでのご清聴、ありがとうございました」

('A`)「ツンは……一生このままだってのか……」

(´・ω・`)「さぁ? いつか目覚める時が来るかもしれない。
      しかし、僕等が生きている間では無いだろうね。
      僕としてはそれで結構。所詮自己満足、分かっている事だ」


(´・ω・`)「まとめるとだな」



「今のツンが至高にして究極の完全体だ」


(´・ω・`)「成長は、罪だよ」

(´・ω・`)「これぞ」

(´・ω・`)「僕の嫁は皆☆中学生大作戦! 一夫多妻制!」





5_20100102185356.jpg






(´・ω・`)「君達は本気でツンを愛していると誓ったのではないか?」
  _
( ゚∀゚)「だからこそだろ」

('A`)「汚くたって、ずるくたって、良いんですよ」

('∀`)「ツンがツンでいられる事、それが兄として最も妹に望む事なんです」

(´・ω・`)「ああそう。残念だな、君達なら分かってくれると思ったんだが」

lw´‐ _‐ノv「ばーか」



彼の全ては終わった。

援助交際で中学生を釣り、

家に誘い出し、

『精神崩壊部屋』で失神させ、

名前をつけて保存。





彼の数年に渡る戦いは幕を閉じた。





その『精神崩壊部屋』を耐え抜いた。

いや、喜んで全ての蟲を惨殺した少女もいたようだが。







「シュー、それ楽しい?」



「……そこそこ」







「ツン! 僕をもっと見てくれお! シュキューバウエスタン改だお!」

「ツン! 先生の命令だ! このスク水を着てくれ!」


「うざったいのよ、あんたら」



「ねぇ、『お兄ちゃん』」

「何?」


「ちょっと、あの蝶捕まえてよ」


6_20100102185355.jpg











('A`)「兄ちゃんに任せとけ! まずはそこらの毛虫を育てて……」

ξ ゚⊿゚)ξ「この馬鹿!」




ξ ゚⊿゚)ξと繭のようです  終






この小説は2008年3月9日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者は◆R38CE/IWYU 氏



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[ 2010/01/02 18:56 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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