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AAがお題能力で戦うようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




|(●),  、(●)、|「皆様こんにちは、もしくはこんばんは。私『VIP館』の支配人、ダディクールと申します」


|(●),  、(●)、|「当館では『総合で頂いたお題能力』を用いAA達が繰り広げる戦いをご鑑賞頂く事が可能です」


|(●),  、(●)、|「ちなみに今回頂いたお題能力は以下のようになっておりますが」



温度操作vs気圧操作

空気を読まない能力vs空気を読める能力

磁力vs重力

残念な能力とがっかりな能力

炎を操る能力vs熱を操る能力



|(●),  、(●)、|「総合での投下と言う関係上、一番上の能力のみが使われます。それでは参りましょうか」



20080503030333.jpg




男が二人、平凡な街並みの中を並んで歩いていた。
二人は互いの間に鏡を挟んだかのように、全く同じ容姿風貌をしていた。

細い目も、薄い唇も、鼻細く筋の通った鼻も、背格好も、全てが瓜二つ。

見分けを付けるとすれば身に纏う衣服か、僅かに高さの違う鼻に刮目する他ないだろう。
彼らは双子だった。

(´<_` )「……今回こそは勝たせてもらうぞ」

僅かに鼻の低い男の片割れが、視線を前方から逸らさぬままに呟いた。
声色は力強く、彼が胸中に雪辱の念を燃やしている事が、よく分かる程だった。

( ´_ゝ`)「悪いな弟よ、俺にも兄の威厳と言う物があってだな。それは出来ん相談だ」

やはり視線を動かさずに、もう一人の男が言葉を返す。

言動から推するに、どうやら彼が兄のようだ。
その口調は非常に軽いもので、いつもの事だと分かっていながらも弟は思わず小さく眉を顰めた。


やがて二人が街の中央まで歩きつくと、そこには一人の男が立っていた。
黒い燕尾服を身に纏い、首には蝶ネクタイが結んである、渋めの中年男性。

冒頭にて『VIP館の支配人、ダディクール』と名乗った、あの男だった。


( ´_ゝ`)「どうもこんにちは、ダディさん」(´<_` )


全くの同時に、双子は彼に挨拶をした。
だが彼らは別段気に掛けた様子もなく、ただ挨拶を受けたダディが少し苦笑いを浮かべていた。

|(●),  、(●)、|「……どうもお二人さん。相変わらず仲がよろしい事で。……早速ですが、今回の戦闘は
           兄者さんが温度の操作。弟者さんが気圧の操作となっております」

ダディは服の胸ポケットに差した万年筆を右手に取ると、筆先を兄弟の体に向けた。
すると二人の胸部がばらばらと、まるで本のように開いてしまい、ダディはそこに万年筆を滑らせた。

新たな設定、それぞれ温度と気圧を操る能力が、二人の体に書き込まれたのだ。

(;´_ゝ`)「……何度やっても、これは慣れんなぁ……」

(´<_`;)「激しく同意せざるを得ない」

|(●),  、(●)、|「はいはい、書き終わりましたよ。どうぞご確認を」


ダディの言葉を受けて、まず行動に移ったのは兄者だった。
右手の人差し指を適当な建物へと伸ばし、僅かに力む。

瞬間、彼の指先の空気が不自然に歪曲した。
同時に熱線が迸り、指の先にあった建物の外壁を溶かし落とした。

( ´_ゝ`)「おぉ、これは面白いな」

授かった力に、兄者と呼ばれた男は子供のように目を輝かせた。
一方で弟、弟者はと言うと、無言無動のままに気圧を操作し、周囲に小さな旋風を作り出していた。

|(●),  、(●)、|「お二人共、問題ないようですね。それでは、ある程度距離を取ったら開始としましょうか」

双子の兄弟は同時に背を向けると、別々の方向へと歩いていく。
そして、両者の距離が小さなビル1つを隔てた程の位置まで進んだ所で、再び同時に身を翻し向き合った。
その事を確認すると、ダディは金色のコインを親指で上へと弾き飛ばした。
コインは回転しながら上昇し、それからゆっくりと落下を始める。
地面目掛けて一直線にコインは落ちていき、地面との衝突でコインが小気味いい金属音を奏でると同時に、ダディはふっと姿を消した。


戦いの、幕開けだった。

音と同時、相対する兄弟は、互いに別の方向へと駆け出す。
兄者は突き出した両腕の十指から熱線を放ち、弟者は左手を薙ぎ突風を巻き起こしながら。

だが両者とも、相手の攻撃を予想していたかのようにビルの陰へ飛び込み、それを回避した。

( ´_ゝ`)「……むぅ、双子ってのも考え物だな」

衣服に付着した砂利を払い、兄者は急いでその場を離れる。
尤も彼は弟の性格を十分把握しており、猪突猛進してくるような事はまず無いと分かっていたが、
もしも裏を掻かれたらと考えると、わざわざ同じ場所に留まる理由は見当たらなかった。

( ´_ゝ`)「いやしかし、その裏を掻かれたら……でもまたその裏があって……更にその……、
      双子ってややこしいな」

妙な言葉を延々と呟きながら、兄者は近くにあった百貨店へと入り込んだ。
様々な物が置いてあるここならば、戦闘に役立つ物を見つける事が出来るだろう。

また適度に広い為、仮に弟者が来たとしてもすぐに見つかる事は無い。
長考する事が出来るし、弟者が何かを求めてここに来れば先手を取る事も可能だ。

一通り店内を歩き回り物色し終えると、兄者は適当な棚の陰に隠れ、胡坐を掻いてしゃがみ込んだ。
頭を棚の上にあった布団にもたれ掛けて、静かに思考を巡らせ始めた。

( ´_ゝ`)「……熱の操作と気圧の操作……か」

自分の能力と弟の能力。
自分に出来て弟に出来ない事は何か、また弟に出来て自分に出来ない事は何か。
それらを考え、確固とした区別を付け、その上で戦略を練っていく。

( ´_ゝ`)「……参ったな」

彼が呟くと同時に、百貨店の中に風が吹き込んだ。
物陰から慎重に兄者が顔を覗かせると、弟者が入り口のドアを開け、様子を伺いながらも中に入ってくるのが見えた。
辺りを頻りに見回しているのは、何か探し物があるのだろうか、それとも兄者を探しているのか。

兄者が息を潜めて見張っていると、不意に弟者は彼の方へと歩き始めた。
だが兄者を見つけた様子はなく、どちらかと言えば意味も無く徘徊しているような足取りだ。
兄者はそっと、棚に預けていた背中を持ち上げた。胡坐を解き、片膝を立てて、すぐに飛び出せる体勢を作る。

弟者の足音が、段々と彼に近づいていく。
あと五歩、四歩、三歩、足音が微妙に大きくなっていく。

そして、あと、一歩。

( ´_ゝ`)「……そこだ、喰ら……」

強く地面を蹴り、勢いよく兄者は物陰を飛び出した。
十本の指全てを弟者に突きつけ、熱線を放とうとして――彼の目に、弟者が突き出した右手の平が大きく映り込んだ。

「あれ?」と兄者は呆けた調子で言葉を零し、直後に彼の体を強烈な風圧が襲った。
風とは即ち気圧の変化による空気の流動。
弟者は気圧を操り、風圧の弾丸を作り出したのだ。

顔面と腹部に強い衝撃を受け、兄者は途轍もない勢いで吹っ飛んでいく。
その果てにあるのは、巨大な柱。
今のままの激突しようものなら、意識さえ飛びかねない。

兄者は必死に腕を伸ばした。
棚に陳列された、売り物の布団を辛うじて掴み取り、柱にぶつかる寸前に身を包む。
紙一重の所で布団が緩衝材となり、柱との衝突の威力は、何とか相殺する事が出来た。

(;´_ゝ`)「うっ……クソッ!」

悪態を吐きながらもすぐさま布団を跳ね除けて、牽制に数本の熱線を放つと兄者は再び姿を隠した。

弟者は兄の不格好な逃走を見て、今が好機だと理解した。

兄者はやたらと策や演出に拘る性格、悪癖を持っている。
それは実力あるが故の余裕なのだろうが、それこそが付け込む隙だ。。
兄者の策や演出が固まる前に攻め切る事が出来たのならば、勝機は弟者にある。

再び、彼は気圧を操り店内に微風を流した。
先ほど兄者の位置を察知した時と同じだ。風を発生させ、その乱れで位置を察知する。
そして、見つけた。また別の棚の後ろで、気流が僅かに乱れていた。

(´<_` #)「丸見えだぞ兄者!」

叫び声と共に弟者は右腕を上げ、力強く振り下ろした。
呼応して、気圧の槌が荒れ狂う。
無残なまでに棚が飛び、陳列されていた布団から羽毛が飛び散った。

だが、それだけだった。
そこに、兄者の姿は無かった。


(´<_`;)「なっ……!?」

弟者が驚き駆け寄るが、やはり影も形も無い。
辺りを見回すも、目に映るのは無残に裂けた布団の山と飛び散る羽毛、後はひしゃげた棚位だった。
しかし不意に、途方に暮れる弟者の視界で、不規則に羽毛が舞い踊った。

その理由は明快だ。即ち熱による空気膨張。
幾多の熱線が、弟者の体を貫いた。

(´<_`;)「あぐ……ぁぁぁぁあ! 畜生……ッ!」

凄まじい熱量は既に『熱さ』ではなく『痛み』のみを弟者に与えた。
とは言え、それでも幸運と言うべきだ。
熱線は彼の腕や肩を貫き、横腹を多少掠めただけだったが、後少し狙いが逸れていれば、今の一撃で全てが終わっていたのだから。

( ´_ゝ`)「白い羽毛の舞い散る中放たれる反撃の熱線……、どうだ弟者。中々いい演出だと思わんか?」

激痛に蹲り身悶えしながらも、弟者は声のした方向を見遣る。
見てみれば兄者は、破けた布団の山の中から、右手を彼の方へと突き付けていた。
兄者は最初から棚の影ではなく、棚に積まれた布団の山に潜り込んでいたのだ。

( ´_ゝ`)「始めはドアから吹き込んだ風かと思ったが……アレでお前は俺の位置を探知していたんだな」

布団の残骸を無造作に投げ飛ばしながら、兄者は言う。
自信に満ちた表情を浮かべて、言葉を続けていく。

( ´_ゝ`)「だったら俺がすべき事は簡単だ。
      風の及ばない場所に隠れて、代わりに熱を使って気流を乱してやればいい」

(´<_`;)「……今ので、俺を仕留められたよな? 何でわざわざ外した?」

不審げに弟者が問う。
先ほど彼は、身を躱す余裕すらなく攻撃を受けた。
つまり本来ならば、弟者は既に首か肺か、もしくは心臓かに風穴を開けられて、とにかく地に伏しているのが道理なのだ。

( ´_ゝ`)「お前だって知っているだろ? 俺は策と演出には拘りを持ってるって。
      既に策も演出も固まってるんだ。ここで終わらせるには勿体無いだろう」

さも当然のように兄者は答えを返す。
圧倒的なまでの余裕が、弟者に苛立ちと畏怖の念を植え付けた。

( ´_ゝ`)「……とは言え、ただ詰め将棋をしていくだけでは詰まらん。
      と言う訳で優しい兄はお前にヒントをやろうと思う」

負の感情から俯き加減になっていた弟者が、はっと顔を上げる。
彼の反応に、兄者はにやりと口唇の端を僅かに吊り上げた。

( ´_ゝ`)「いいか、お前には『二つのもの』が必要だ。
      それを揃える事が出来れば、お前は俺に勝つ事が出来るかも知れない」

右手人差し指を勢いよく突き付けながら、兄者は宣言した。

(´<_`;)「……『二つのもの』? 一体……」

( ´_ゝ`)「悪いがヒントはそれだけだ。後は自分で考えるんだな」


弟者の言及を切り捨てると、兄者は空気膨張で羽毛を舞い上げ、再度姿を隠した。
駄目元で弟者が気流を作り出して辺りを探索したが、不規則に熱源を作られているせいで、兄者の位置を探る事は出来なかった。
やむを得ず、弟者は脳内を駆け巡る激痛を耐え立ち上がった。

とは言え当ても無く歩き回るのは愚の骨頂、危険過ぎる。
弟者が動きかねていると、どこからか僅かに音が聞こえた。
小川のせせらぎを彷彿とさせる、小さな小さな水音だ。

誘いか、もしくはまた兄者が策か仕込みを作っているのだろう。
弟者はそう推理する。
そして、同時に走り出した。

布団の山に隠れた時、他の『仕込み』を作るような時間は無かった。
自分が来る前に作っていたかも知れないが、風を読んだ限りでは、内装に不自然な所は感じられなかった。
その事を考えると、先ほどの推理の前者は無い。兄者は今まさに、策を仕込んでいるのだ。

ならば兄者の『仕込み』が完成する前に、それを叩き潰すまで。
成功さえすれば、兄者の策を崩せたならば、また攻めに転じる事が出来る筈だ。
彼の出した結論はこうだった。

音の出所を探り弟者が駆け着けると、飲料水売り場を何やら漁っている兄者がいた。
何を目的にしているのかは分からないが、弟者はそんな事に興味はなかった。

問答無用で右腕を薙ぎ払い、暴風を打ち出す。
紙一重の所で兄者には躱されてしまったが、先手を打ったのは弟者だ。

(´<_` )「……次はどんな策を弄するつもりだったんだ?」

僅かに息を切らし肩で息をしながら、弟者が問い掛ける。
発せられる声からは、少しだけ希望や自信の類が感じられた。
だが彼の態度とは裏腹に、兄者はふんと鼻を鳴らし、顎を上げ弟者を見下ろすような態度を取った。

( ´_ゝ`)「『つもり』? ……いいや、策の仕込みはたった今さっき完成したよ。
      そして今、現在進行形で進んでる」

(´<_`;)「……ッ! どう言う事だ!?」

自信に満ちた表情が一転し、弟者は狼狽えを顕にした。

( ´_ゝ`)「お前は、俺が何か探し物をしていると思ったんだろうが……
       と言うか俺がそのような動きをしていたんだが、
       俺はただ床に水をぶち撒けたかっただけだ。
       ボトルを熱で焼き切るって手もあったが、お前の方が明らかに効率がよさそうだったし、
       何よりそっちの方が様になるからな。気付いてなかったか?
       お前の風はそこいらのボトルを根こそぎ吹っ飛ばしてくれてたんだぞ?」

弟者が狼狽して辺りを見回すと、確かに様々な飲料水のボトルが陳列棚ごと粉々になっていた。

( ´_ゝ`)「……そして、こうして策をひけらかしているのも策の内……。
      足元をよーく見てみろ弟者」

言葉を受け、弟者がはっと視線を下へと逸らす。
盛大に飛び散った飲料水が、硝子が圧し割れるような音と共に凍りつつあった。
慌てて足を上げようとしたが手遅れだった。完全に、氷が靴に固着してしまっている。

(´<_`;)「馬鹿な……、兄者の能力は熱を……」

( ´_ゝ`)「ノンノン、思い込みはよくないぞ弟者。
      俺の能力は『温度を操作する事』であって、そこにプラスやマイナスの制限はないんだぞー」

言いながら、兄者は凍った床の上に一本の小さなボトルを放り投げた。
何の変哲も無い飲料水。
だが宙を舞うボトルから冷気が立ち上っているのを見て、弟者は咄嗟に両腕を突き出し身構えた。
兄者のせんとしている事が、分かってしまったから。

( ´_ゝ`)「上手く凌げよ、弟者。外で待ってる」

兄者の右手人差し指がゆっくりと、ボトルを指した。
熱線が放たれ――刹那、爆発が起こった。
商品棚も売り物も、何もかもを巻き込む酷烈な爆発だった。

(´<_`;)「……っ、水蒸気爆発か……」

冷水に夥しい熱が照射された事で、水蒸気が大量に発生する。
コンロにやかんを掛け、お湯を沸かす時のようにゆっくりではなく、瞬間的にだ。
物質は液体から気体に変わる際、体積が約千倍にまで膨れ上がる。
一瞬の内に夥しい量の水蒸気が発生する為に、周囲の物は全て押し飛ばされてしまうのだ。
この現象を、水蒸気爆発と言う。

風圧の弾丸で爆風を相殺した為に、弟者は致命傷を受けずに済んだが、店内は壮絶な有様だった。

靴に固着した氷を砕きながら彼は周囲を見回すが、どこにも兄者の姿は見られない。
あれだけの爆風をどう凌いだかは分からないが、弟者はまたも兄者を見失ってしまった。

(´<_`;)「……外で待ってるとか言ってたが、まさか本当に待ってる訳はないか……」

半信半疑ながらも、店を後にする弟者。
だが不意に彼の視界に、信じられないものが映り込んだ。
見失ったと思っていた兄者が、ゆっくりと自分の方へ歩いてくるのだ。

弟者は酷く困惑した。様々な考えが、彼の頭の中を駆け巡った。

これも何かの策なのか。
それともそう思わせておいて、敢えての真っ向勝負を挑むつもりなのか。
相手を惑わせた上で真正面から止めを刺す。確かに悪くない演出だが――させはしない。

決意を固め、弟者は歩み来る兄者をまっすぐに見据えて両腕を突き出した。
だが、兄者は余裕の表情を浮かべ、構えを取る事すらしなかった。

(´<_` )「……?」

一見挑発にも見える兄者の態度は逆に、弟者にこれまでになく聡明な思考力を発揮させた。
今まで彼は、常に兄者の行動を基底に行動させられていた。
それではいけない。

兄者の策に対して受動的に考え動くのではなく、兄者と同じ次元で物を考える思考が必要なのだ。
それが出来たのならば、今の状況の違和は自然と見えてくる。

弟者は自分以外に分からないであろう程、些少な風を生み出した。
しかし、兄者の髪や衣服は一切棚引かない。

(´<_` )「……見切ったぞ、兄者」

言葉を零すと同時、弟者は兄者ではなく近くの建物に狙いを定め、風の弾丸を撃ち出した。
弾丸は建物の柱を穿ち砕き、そして間の抜けた悲鳴が響き渡った。
風の弾丸には掠りさえしていないにも関わらず、弟者の前に立っていた兄者は大仰に後ろへと倒れこんだ。

(´<_` )「光は温度の低い空気に向かって屈折する。……蜃気楼だろ?」

柱の残骸を見下すように佇み、弟者は静かに声を発する。
やがて瓦礫を押し退けて、ぼろぼろに傷ついた兄者が姿を現した。

(;´_ゝ`)「……『必要なもの』の一つは、手に入れたようだな。俺と同じ考えをする『発想力』……」

片膝を立てて辛うじて上体を起こし、兄者は十指から熱線を打ち放つ。
柱の倒壊に巻き込まれたとは言え、ダメージの程度は弟者の方が遥かに酷い。
迫り来る敵意に弟者は身動き一つ取る事は出来ず――しかし熱線は彼の直前で唐突に消滅してしまった。

(´<_` )「『温度』ってのは『気圧』で決まる。確かシャルルの法則とか言うんだったけな?
       ……とにかく兄者、アンタの攻撃はもう俺には通用しないぞ」

( ´_ゝ`)「……偉そうに言ってるが、コイツはどうだ?」

言うが否や、兄者は予め取っておいた水のボトルを投げつける。
狙いは言うまでも無い。
しかるに弟者は、動じなかった。

大気を揺るがす大爆発が起こった。

(´<_` )「……本格的に打ち止めだな。兄者よ」

弟者は立っていた。
先程のようにやっとの事で防いだ様子ではなく、全くの無傷でだ。

(´<_` )「劇的な気圧の差異を作って、空気の層を作り、爆風を逸らした。
      アンタも熱気と冷気で似たような事をして爆風を避けてたんだろ?」

得意げに、弟者は言葉を紡いでいく。

(´<_` )「アンタの負けだよ、兄者」

彼の勝利宣言に、兄者は何も返さない。

(´<_` )「……運が悪かったんだよ、兄者。能力の相性が悪かったんだ、アンタが悪いんじゃない。
      どっちかが何か別の能力だったら、多分……いや絶対に兄者が勝っていたさ」


( ´_ゝ`)「……風が、強くなってきたな」

慰めるような弟者の言葉を何処吹く風に、兄者はぽつりと呟いた。


(´<_` )「兄者、負け惜しみは……」

( ´_ゝ`)「問題だ弟者。暖かい空気と冷たい空気が接しあう事で、一体何が出来ると思う?」

笑みも自信気な表情も浮かべずに、むしろ強張った表情で兄者は問うた。
問いを受け、弟者も釣られたように顔を引き攣らせる。

(´<_`;)「……まさか」

( ´_ゝ`)「そのまさかだ。温度を操る力で作れる最も強大な力……、台風を作らせてもらったぞ」

段々と、吹き荒れる風は強くなっていく。
既に台風は、弟者の弾丸など比べ物にならない程の力を有している。

( ´_ゝ`)「こうなったら俺には手が無いからな。馬鹿馬鹿しいが我慢比べと行こうじゃないか」

(´<_`;)「……馬鹿なッ! この台風はアンタにも制御出来ないんだぞ!?」

( ´_ゝ`)「知ってるさ」

兄者が『出来る事』はあくまで台風を作る事。
温度を操作する力では、台風を制御する事は出来ない。

つまり兄者も弟者と同じように、荒れ狂う台風の脅威に晒されると言う事だ。

とうとう台風は、本格的に猛威を振るい始めた。

柱の瓦礫さえもが宙に浮き、どこからとも無く看板やガラス、様々な物が飛び交っていく。
暴風と横殴りに打ちつける雨によって、二人は目を開く事すらままならなくなっていた。

人工的な意思によって育てられたとは言え、紛う方無い自然の力は途轍もない。

電柱は薙ぎ倒され地鳴りを起こすが、轟音に掻き消された。

瓦礫どころか自動車までもが地面を転がっていき、根元から折れた信号機によって漸く止まる事を得た。
地面に蹲り伏せていた弟者の真横に、道路標識が突き刺さった。

あと数十センチずれていれば、弟者は真っ二つに切断されていただろう。

我慢の限界だった。

(´<_`;)「「畜生……これ以上はヤバい……。台風を止めるしか……」

温度を操る力では台風を止める事は出来ないが、気圧を操る力ならば可能だ。
凄まじい消耗と隙が生まれる事は確実だが、最早何やかやと考えている場合ではなかった。

嵐のように去ると言う言葉があるが、正に一瞬で、台風は消え去った。
大きな力を使い咽せ込むように弟者は息を吐き出し、

( ´_ゝ`)「覚悟が……足りなかったな、弟者」

その隙を突いて、兄者は彼の背後を取っていた。
弟者に反撃や回避の余地は、一切無い。

( ´_ゝ`)「お前が覚悟を決めて、最後まで台風を消さなかったのなら……勝負は五分だったのにな。
       お前は『覚悟』を用意出来なかったようだ」


決着だった。



※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※


|(●),  、(●)、|「いや~、お見事でした。お二人ともお疲れ様です」

戦いが終わると同時に、何処からとも無くダディが姿を現した。


( ´_ゝ`)「褒めてくれるのはうれしいんだが、その前にこの怪我を治してくれると非常にありがたい」(´<_` )

やはり言葉を完全に重ねて、兄弟は言葉を返した。
直後に「特に俺の方を」と弟者が付け足したが。


|(●),  、(●)、|「はいはい、分かってますよ」

ダディはやれやれと首を振ると、再び胸の万年筆を二人の体に突き付ける。
兄弟の体からばらばらとページが現れ、ダディはその中から一枚を引き破る。

『兄と戦闘をして、左腕、肩、脚部に熱線による怪我を負う』

『弟と対戦し、全身に打撲を負う』

ページには彼らが怪我した事が書いてあり、それを破り取った事で彼らの傷は完全に癒えて――いや、消滅していた。



|(●),  、(●)、|「っと、これにて今回の戦闘――投下は終了となります」

|(●),  、(●)、|「またいつか、どこかで貴方々と出会える事を、待ち望んでおります」





この小説は2008年4月3日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:QZCZpq2T0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです

お題は冒頭に表示されている通りです



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/02 18:52 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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