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川 ゚ -゚)願いを叶える自鳴琴のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




《自鳴琴(オルゴール)》。

 それは、繊細なメロディーを奏でる小さな箱。
聴く者を癒し、微笑みを浮かべさせる美しい宝箱。

 では、貴方は知っていますか? 古くから伝えられこの世界に存在する、
《光明の自鳴琴(VIPオルゴール)》のことを。


 一説によると、専門の匠でも到底成せない美麗な彫刻が施されており、
この世の音とは思えないほどの澄んだ音色を響かせる代物だと言われています。
 そして最も摩訶不思議。そのオルゴールの旋律を聴いた者だけに、
如何なる望みを叶えてくれるという権利が手に入ると伝えられているのです。


 そんな物あるわけない? いえいえ。

 《VIPオルゴール》は必ず存在すると伝えられています。
現に、オルゴールを見たという情報は昔日から語られており、今でも噂は後を絶ちません。
最も、その音色を聴いたという情報は一切ありませんが……。

 誰もが知っている物語。
その中で夢を持つ沢山の人々は、己の望みを叶える為にオルゴールを探す旅に出ます。


『輝く幸福の蔦が彫られた金色の小箱。そこから流れる音色は聖水の如く澄み渡り、どんな願いも叶えてくれる。
 さあ、見つけてみよう。ぜんまいを巻いてみよう。望みがあるなら聴いてみよう。旋律を紡ぐ人物は、貴方かもしれない――』


 古から伝わる物語。記された本もとても古い。
 では旅立ちましょう。一人の少女と共に……。



20080502054925.jpg




 地を這う様な重低音を響かせて、それ――体長二メートルほどの、獣型の魔物が倒れる。
 どくどくと緋色の血を脇腹から流し、ぎょろりとした血と同じ色の目は、白く濁っていた。

 周りを囲んでいる樹木には所々に魔物の鮮血が飛び、頭上から降り注ぐ柔らかい春の木陰が酷く不相応だった。
そして更に違和感を感じさせるものが一つ。

 死体から少しばかり離れた場所に二十歳は超えていないだろう一人の女性が、
先程倒した異形をじっと己の深い褐色の瞳で見つめていた。
 言葉を発せず、ただ無言で。


川 ゚ -゚)「……」


 少女は音を立てない為、木が鬱蒼と生い茂る森には木々の葉ずれの音しか聞こえない。
 そのまま数秒経過したあと、魔物に近付きその身体に触れる。
命在るものの鼓動は感じない。完全に絶命していた。
大きく安堵の溜め息を吐く。


川 ゚ -゚)「……まさかゴルーアが出てくるなんて、予想していませんでした」


 今まで凶悪な怪物を相手にしていたとは思えない落ち着いた声で、少女は呟いた。
 抜刀していた両手剣を鞘に戻す。

 軽く伸びをして、砂で汚れてしまった服を軽く払う。
服には所々に赤黒い血が飛び散っていた。
しかし今着ている赤い服ではあまり違いは分からない。


川 ゚ -゚)「早くここを出て、知らせた方がいいですよね」



          *          *          *



 さわさわさわ……。植物が鳴らす心地よい葉ずれの音が、一人の男の眠気を誘っていた。
 男は町に無断で進入できないように入り口を見張っている自警団の人物だ。

しかし、今のところ、人が来る気配が珍しくない。おまけにこの時間はいつでも惰眠を貪れる昼。
気を紛らわす為の話相手もいない。今にも幸せな夢の世界へ旅立てそうだった。
欠伸をかみ殺せず間抜けに口を開く。


( ><)(眠いんです……)


 それでも何とか眠気を堪えながら、立ち上がって周りの景色を確認する。
 十数メートル離れた先には陽光の光を一身に受ける深緑の森。

その出口にはある程度舗装された煉瓦の一本道が、今彼が居る場所まで続いている。
振り返れば二メートル半ほどの石壁と、木でできた町へ入るための入り口である頑丈な門が、
その存在を主張している。左右を見渡しても異常はない。


( ><)「……。寝るんです」


 普通なら仕事中に居眠りなどご法度だが、今は仕事の使命感より睡魔の方が勝った。
 魔物の気配も無いが、念の為に護身用の剣を身につけておく。
 もう一度大きな欠伸を一つし、いざベンチに座り直したとき――森の方から人影が見えた。

 慌てて立ち上がり、いつもの仕事の顔に戻す。近付いてきたのは一人の少女だった。


( ><)「旅人ですか? 先に入るにはパスと証明書が必要なんです。見せるんです」

川 ゚ -゚)「どうぞ」


 手を出すと、少女はポケットから小さな紙を二枚――個人証明書と町へ入る為のパスポート――を取り出した。
それを受け取り、男は証明書に貼られた写真と見比べる。

 肩より少し下ほどで切り揃えられた仄かな薄紅色の髪は、さながら洗練された薔薇の花の様だ。
それに合わせるかの如く、樹木の様に純粋な褐色の瞳がとても映えている。
目も大きく全体的に整った、小柄な容姿。
とても愛らしい。人通りが多い道を歩けば確実に異性の人目を引くだろう。


( ><)(ん? これは……)


 男は少女の姿を見てある特徴に気付いた。
よく見張り番をしている彼にはある種見慣れているものだが。
一瞬注意を止めた後、しかし特に気にはせず、紙に書かれている内容を読み上げる。


( ><)「……クー=スナオ。年は十七。女性。職は魔物専門の賞金稼ぎ……
      薄紅色の髪と茶色の眼……写真に偽造もないですね。この町に来た目的は?」

川 ゚ -゚)「名高い情報屋が居るとのことを聞いたので来てみました。後は食料の補充です」

( ><)「そうですか。じゃあこれに名前を書いてほしいんです」

川 ゚ -゚)「分かりました。それと、さっきあの森でゴルーアが出てきました」

(;><)「……本当なんです?」


 パスポートにスタンプを押しかけていた手が止まり、少女の方を見遣る。
単に虫が出てきたと言わんばかりのそれ。あまりにもあっさり言い放された為、一拍分反応が遅れた。

 ゴルーアは好戦的な魔物だ。
獅子と狼を混ぜ合わせたような顔と体躯に、鮮血の様な緋色の眼をしている。
人里に出ることはまず無いが、その凶暴な性格から準二級の危険度を持ち、
倒すと国からしかもかなりの懸賞金が出るほど。
名のある賞金稼ぎや冒険者でもゴルーアと出遭えばかなりの苦戦を強いられると言われる。
それを平然と言い放った旅人に驚きつつも、慌てて問う。


( ><)「お嬢ちゃん大丈夫だったんですか? よく逃げてこれましたね。
      怪我は無いんです? 音はしなかったんですが……」


 よくよく見てみると、赤い半袖のジャケットには原色に混じって濃い紅の模様があった。
少女の血なのだろうか。
 だが手を伸ばしかけたとき、細い腕がそれを制した。


川 ゚ -゚)「怪我は特にありません。
      それに音がしなかったのは当然ですよ、結構森の奥に居ましたから。
      とりあえず倒しておきましたけど」

(;><)「本当なんです?」


 再度同じ言葉が口から漏れた。
今度こそ唖然とし、少女を凝視する。
 しかしクーは淡々とした口調で表情を変えない。
夜の湖面の様にその瞳は静かで、冷静そのものだった。


川 ゚ -゚)「倒したことは確認しました。
     ですが一応あそこは見回っておいた方が良いと思います。他にも居たら大変ですし」

( ><)「分かったんです……けど、倒したって、あなた一人でですか?」

川 ゚ -゚)「ええ、まあ」


 頷く薄紅色。
驚きが消えずにしばらく見つめていたが、我に返ってパスポートと証明書を返し言葉を探す。


(;><)「それはすごいんです……。
      分かりました、他の自警団の奴らにも知らせておくんです。巡回もします」

川 ゚ -゚)「そうしてください」

 可愛らしい容姿とは裏腹に、驚きの事態に動じなく話す姿を見て感心する。
しかしそれはとても年齢には不相応に思えた。

( ><)「そうか。……よし、通っていいんです」


 紙を返した後、男は石壁に付いているレバーを引いた。
すると堅牢そうな扉はぎぎぃと重々しい音を立てながらゆっくりと、
しかし何の抵抗も無く至極あっさりと開く。
 ガコンという音が鳴り、それを確認して振り返る。


( ><)「ようこそ! 旅人の集まり場オオカミへ。
      出口は北です。楽しんでいくといいんです。
      ……そうだ、ゴルーアは倒した後どうしたんですか?」

川 ゚ -゚)「流石にどうすることもできないので放置しています。
     分かりやすい用に木に傷を付けてきたので、行けば場所は分かると思います」

( ><)「分かったんです。
       じゃあ町を出るときにでも門番に名乗ってほしいんです。
       ゴルーアにかかっているお金を払いますから」

川 ゚ -゚)「分かりました。それではお仕事、頑張ってください」


 律儀に礼をする姿に思わず苦笑を漏らしたが、何気なく思いついた疑問を投げかけた。


( ><)「君、一人で旅をしてるんですか?
       女一人は大変そうなんです。誰かと一緒に旅、しないんですか?」

川 ゚ -゚)「二年間、続けていますから。それに、剣には自信があるので」

( ><)(それもそうなんです)

 凶悪な生物をたった一人で倒したのだ。
きっと互いの補助となる仲間など必要ないのだろう。もしくは一つの『原因』故か。
 次いで――これは確信だったが――町の入り口へと歩く後姿に声をかける。


( ><)「情報屋という事は……嬢ちゃんも《オルゴール》探しなんですか?」

 すると無言だったクーの足がぴたりと止まり、
花唇を零すかの如く薄いピンク色の髪がふわりと振り返った。
その表情に柔らかい微笑を湛えながら。



川 ゚ -゚)「……はい。叶えたいことがあるんです」

 男を思わず見惚れさせたまま、少女は再び歩き出した。





この小説は2008年4月3日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:jwNC+PmO0 氏



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[ 2010/01/02 18:49 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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