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('A`)ドクオの第一歩のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




今日も薄暗い部屋の中、俺はパソコンに向かって座っていた。
モニターの中では、自分の分身となったキャラクターがモンスターを倒している。
高校を卒業してから約4年間、ずっとネットゲームをする毎日。
所謂、ニートってやつだ。

両親はいつの頃か、何も言わなくなった。
呆れてるのだろうか、食事だけは作ってくれているから、ありがたい。

いつまでもこんな生活をしていちゃいけないとは思ってるが、
明日から仕事を探そうと思ってはネトゲ、その繰り返しだ。

('A`)「んあー……」

狩りも一段落し、座ったまま伸びをして深呼吸する。
窓もカーテンも締め切った部屋の空気は、湿っぽい味がした。



20080419114607.jpg




ゲームの中のキャラクターを操作し、溜まり場に戻る。
すると、俺と同じくニートの友達がそこにいた。

「お、ドックンおかー」

「ただいま」

「レベルは上がったかお?」

「上がったぜ」

「おめでとうだお」

変な口調のこいつは、ブーン。
このゲームの初期の頃に知り合った仲で、今もよく一緒にいる。
ちなみに、ドックンってのはハンドルネームで、俺の本名はドクオだ。

「ドックン、今日は重大な発表があるんだお!」

レアでも拾ったかと思い、「?」と簡単に返した。

「実は、明日からバイトにいくことになったんだお!」


……なんだって…?


(;'A`)「ま……まじか?」

俺と同じニートからの思わぬ発言に、ついリアルで呟く。
その呟きと同じセリフをチャットで発言した。

「まじだお!コンビニだけど、これでブーンも脱ニートだお!」

「そうか…おめでとうな」

チャットではとりあえず祝福の言葉。
ゲームでのブーンはそれに対しありがとうと返している。
しかしリアルの俺はショックだった。
自分と同じような生活をしていた奴が、急に明日から働き始めると言うのだ。

『コイツも同じだし、俺も大丈夫だろう』

そんな考えがきっと、俺の中にあったに違いない。
友達の門出を素直に喜び、祝福することができないのが、その証拠だ。
疎外感、孤独感、そして、焦燥感が俺を襲う。

このままでいいのか、と。


「いよーう」

そんな時、俺とブーンが入っているギルドのマスター、ほしのせんじがインしてきた。

「マスターおいすー!実はかくかくしかじか」

ブーンはさっき俺にした発表を、実に嬉しそうにマスターにもした。

「おお!ブーンおめでとう!」

文字だけのマスターの賛辞が、心から祝福しているように見えた。

俺には、できない。

「次はドックンだなw」

急に振られ、心臓が高鳴る。
どう返していいかわからずに、「w」と一言だけ発言をした。

次は、俺。
そうだ。俺もいい加減にそうしないといけない。
しかし、できるだろうか…。

その時、不意にメッセが鳴った。
何かと思い、画面を切り替えそちらを見る。
マスターほしのせんじからのメッセだった。

「なんかあったか?」

鋭い。
マスターは俺のあの一言だけで何かを感じ取ったらしい。
俺とブーン以上のネトゲ廃人なのに、こういう不思議な部分が彼にはあった。
それが魅力で、ギルドメンバー達はここにいると言っても過言じゃない。
俺は思い切って、相談してみることにした。

「実は……」

ブーンの門出を素直に祝福できないこと、不安になったこと、全て話した。

「そうかぁ…なんとなくはわかるけど…」

固唾を飲んで、次の言葉を待つ。


「とりあえず、散歩でもしたら?」

(;'A`)「…へ?」


マスターの軽い意見に、またもやリアルで間抜けな声を出してしまった。

「散歩…ですか?」

「おう、散歩だ散歩! 散歩はいいぞー気分転換に」

「そ、そうですか」

「おっと、散歩を馬鹿にすんなよ? 最近は桜も咲き出して心の洗濯になるぜ?」

心の洗濯ねぇ…。

「後ドックン、外出てないだろ?」

マスターのその言葉に、胸が高鳴った。
そうだ。そういえば引きこもってばかりで、1ヶ月に1回外出するかも怪しい。
改めて自分の生活を見直すと、本当にひどいもんだった。

マスターに返す言葉は、見つからない。

「だから、まずは散歩だ! それだけで進歩になると思うぜ?」

まずは散歩…ただの散歩が、今の俺にはそれだけで進歩になる。
情けない話だが、まったくもってその通りだった。

「確かにブーンは大進歩したけど、ドックンが焦ることじゃない」

マスターの言葉一つ一つが、心に響く。

「ブーンはブーン、ドックンはドックンだろ?」

('A`)「…っ!」

「ありがとうございます!」

素直な気持ちを、全力でキーボードに込めて発言した。
今までに何度もお世話になって、そして今も……。
本当に不思議な、頼れる人だ。

「はっはっは 思い立ったら即行動だ!今から行ってこいよ!」

「はい!」

文字だけだが、精一杯返事をして、出かける支度をした。
急に立ち上がったせいか、少しふらつく。
全身に血が通う感覚がして、それだけでもなんだか心地良い。

部屋着を脱ぎ捨て、タンスから服を引っ張り出す。
ダサくたって関係ない。マスターの言葉を思い出す。

俺は俺だ。


………。
……。
…。


外は、薄暗い部屋とは比べ物にならない程明るかった。
今までもコンビニへいく時くらい外へは出たが、今日の空は何かが違う。

散歩に行ってくると伝えた時のカーチャンの驚いた顔が可笑しかった。
まともに顔を見るのが恥ずかしくて、そそくさと家を出てきてしまった。
……帰ったらちゃんとただいまって言おう。


歩き慣れた道、住み慣れたはずの街が、なんだか違う世界に見える。
心の持ち方を変えるだけで、ここまで違うものなのか。
マスターの言う通り、まさに心の洗濯だ。

俺の住んでいる街には、ちょっとした桜並木がある。
まだ二分咲き程度だろうが、そこを目指すことにした。
散歩にも丁度いい距離になる。

舗装された歩道は敢えて通らずに、裏道を選んだ。
一歩を踏み出す度に、春の暖かい風が頬を撫でていく。
道端に目をやれば、草の緑、タンポポの黄色。
薄暗い部屋の中では決して見ることのできない、鮮やかな色達がいた。

15分か20分か、何分歩いたかわからないが、桜並木に着いた。
新鮮な景色が、時間を忘れさせる。
ネトゲも時間を忘れさせるが、それとはまったく異なる感覚だった。

桜を見上げる。
やはりまだ二分咲き程度だったが、力強く膨らんだ蕾の様子が所々に伺えた。
こんな平日の昼間に花見なんかしてる連中はいるはずもなく、静かだった。
桜を見ながら、ゆっくりと並木道を歩く。

引きこもって4年間、つまり4回もこの桜を見逃していたということになる。
その間も、変わらず美しく咲き誇っていたんだろう。

俺は、変わらなければいけない。
時間はかかるだろうけど、少しずつ、変わっていこう。
新鮮な空気を送り込んだすっきりした頭の中で、俺はそう決意した。

並木の中間に差し掛かった所だろうか、不意に視界に人影が映った。


( ・∀・)「……」

年は30くらいだろうか、男が、桜をじっと見上げていた。
つい釣られて、俺も同じ桜を見上げる。
他の桜と大差ない、普通の桜だった。


( ・∀・)「…こんにちは」

視線をこちらに移し、男が挨拶してきた。

('A`)「あ、こんにちは」

挨拶を返す。昔の俺なら、なんだこいつと思って無視しただろう。
そういう所も、変えていこうと思っていた。

( ・∀・)「お花見かな?」

('A`)「まぁ…散歩がてらに」

( ・∀・)「そうかそうか」

そう言って、男性は柔らかい笑みを浮かべた。

別に変な人ではなさそうだと思い、俺は同じ質問をすることにした。

('A`)「あなたも、お花見ですか?」

( ・∀・)「そうだよ いい天気だしね」

言いながら、桜より更に上、空を見上げた。
俺も同じく、快晴の青空を見上げる。

空が高い。
4年間見ていた低い天井も、ここにはない。
解放的とはこういうことだろうか?
そんなことを考えていた。

( ・∀・)「飲むかい?」

男性の言葉にふと我に帰る。
見ると左手には水筒。差し出した右手には紙コップがあった。
中身は……。

('A`)「甘酒?」

( ・∀・)「ああ、自家製だよ」

ちょうど口も渇いていたので、俺は好意に甘えることにした。

熱さに注意し、口をつける。
口全体に甘みが広がり、米が滑らかに喉を通っていく。
日本酒独特の辛味は全て消え、酸味もまったくない。
今までに飲んだ甘酒で、一番うまかった。

('A`)「お、おいしいです」

( ・∀・)「そうかそうか ありがとね」

当然、お世辞じゃない。
男性も素直に喜んでいるようだ。

すると、なにやらごそごそと懐から袋を取り出した。
袋の中身は…。

( ・∀・)「これも、自家製の干し芋だよ」

最初に出した干し芋をかじりながら、もう一つを俺に差し出す。
ペコリと頭を下げながらそれを受け取り、口に運んだ。

……これもまたうまい。

噛めば噛むほど甘みが染み出してくる。
甘酒で甘さがくどくならないかと思ったが、どちらもすっきりとした甘さで、
まったく気にならなかった。

おいしいと顔に出ていたのか、男性は俺を見てにっこりと笑った。

( ・∀・)「僕はモララー 君は?」

('A`)「っと、ドクオです」

唐突にされた自己紹介に、俺も慌てて名前を名乗る。

( ・∀・)「ドクオ君か……若いうちは色々するのがいい」

('A`)「? へ?」

モララーさんのその言葉に、間抜けな声を上げた。

( ・∀・)「頑張るんだよ」

何を頑張るのか、そう言ってモララーさんは手を振って歩いていった。
残された俺は、頭の上に?を浮かべながら、その背中を見送った。

甘酒が、温かい。

風の温かさと、人の温かさを感じた、散歩だった。



「そんなことがあったのかw」

その夜、俺は散歩であった出来事をマスターに話した。
マスターもだが、昼間のモララーさんも不思議な人だった。

「ドックン、変われそうか?」

「はい、おかげさまで…少しずつですが変われそうです」

「よかったよかったw」

「マスターには感謝してます。 ありがとうございます」

「堅苦しいことはいいってw」

何度お礼を言っても、言い足りない。
俺はこれから、確実に変わる事ができる気がしていた。
ほんの些細な、小さな一歩でも、踏み出せれば人は変わる事ができる。

ネットの向こうとは言え、勇気をくれた掛け替えのない友人に、俺は感謝した。



「ドックン」

「はい?」


「頑張るんだよ」


昼に会ったモララーさんとまったく同じセリフ。
チャットの文字と被って、モララーさんの声が頭の中で再生された。

「はい!」

あの時できなかった返事を、今度は精一杯、返した。


………。
……。
…。



後日───









「バイトやめたおwwwwwwwww」

「おまwwwwwwwwwwwww」



終わり。





この小説は2008年4月3日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:NK5j6OP80 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです



お題
甘酒
ほしのほしいも(ほしのせんじ+ほしいも)
(ほしのせんじは保守レスの流れ)



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/02 18:43 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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