はじめてブーン系小説を読む方は
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『幸せとは何か?』
なーんて、夜空を切るロケットを眺めながら考えてみた。
記憶が正しければあの中に、私の両親が乗っている筈だ。
川 ゚ -゚)y-~~(ま、親不孝に幸せの意味など分かるまい)
煙草の白い煙が、黒い風景を少しだけ汚す。
夜空には星が一つもない。都会の空は何の面白みも無い。
地球を滅ぼさんとする星だけが、赤い光を放ち不気味に輝く。
川 ゚ -゚)y-~~(短い人生だったな)
2098年2月。冬の寒さがピークに達したある日の事。
巨大な隕石が地球に衝突する、非情な現実が人類に突き付けられた。
川 ゚ -゚)y-~~(どこのSF映画だよ)
心の底から思う。どこのCGに莫大な資金を費やした映画だよ? これは。
現実への愚痴を溢しつつ煙草の煙を夜空に再び流す。
私は中学生にも関わらず、煙草を吸う非行少女だ。
( ^ω^)「クー、こっちで酒盛りでもするお!」
(*'A`)「呑まなきゃやってられっかってんだ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「私はジュースで良いわ。ビール不味いし」
(´・ω・`)「カクテルを用意出来たら良かったんだけどね」
明るく楽しそうな声に、言い知れぬ寂しさから解放される。
振り向けば地面にシートを敷いて、馬鹿騒ぎをしている友人達。
皆、私と同様に地球に残る事を選んだ、大馬鹿者だ。
川 ゚ -゚)y-~~「私は屋上で空を眺めてる方が良いんだが」
自分の素直な気持ちを言葉に出してみた。
あの輪の中に入ればきっと私は、未来を渇望してしまう。
だって、あんな暖かそうな場所は、一生居たくなるじゃないか。
ξ ゚⊿゚)ξ「クーが好きなチロルチョコ1箱分パクって来たわ」
私の頑なな一念は、チロルチョコを前に脆くも砕け散った。
川 ゚ -゚)y-~~「食べゆー」
ξ ゚⊿゚)ξ「委員長、煙草はいけないと思います!」
川 ゚ -゚)y-~~「良いんだよ、非常事態だもの」
( ^ω^)「成績優秀の委員長の今の姿を見たら皆びっくりするお」
(*'A`)「盛り上がって参りました! ヒック」
(´・ω・`)「根暗で通ってたドクオのこの姿もきっと驚かれるよね」
学校の屋上で酒盛りをする日が来るとは夢にも思わなかった。
ブーンは食う専門、ツンはジュースを飲み、ショボンは洋酒を啜っている。
ドクオは…何だこいつは、クソ寒い中服を脱ぎ捨てビールを一気呑みしている。
川 ゚ -゚)y-~~「ドクオ、気持ち悪いからやめて」
(#'A`)「断る! 俺の楽しみの邪魔をするのは許さん!」
何か怒鳴られた。いつも吃りながら喋ってた癖に。
苛ついたので、煙草をドクオ目掛けて投げたが、奇妙なステップで避けられた。
懐中電灯で照らされている屋上。
尽きない笑い声が、夜空に木霊する。
ブーンが悪ノリしだし、酒瓶をマイク代わりにして唄う。
ドクオはその歌声に合わせて、即興のダンスをする。
ジュースを飲んでいたツンも、ビールを呑み始め屋上での宴会は加速していく。
(´・ω・`)「……ねぇ」
川 ゚ -゚)y-~~「ん?」
私の隣でちびちびと酒を啜っていたショボンが、小さな声を漏らした。
少し強い風が吹いていれば、聞こえなかっただろう声量。
(´・ω・`)「どうして皆、ここに残ったのかなぁ」
川 ゚ -゚)y-~~(……………)
『怖かったってのが本音だろう』
地球脱出計画は行き当たりばったりの、生存出来るか怪しい物だ。
無事、新しい星に到着した所でどうなるか全く分からない。
そして、この地球で生まれ育ったんだ。最期は此処で果てたい。
川 ゚ -゚)y-~~「何となくだよ、きっと」
ずっと素直に生きて来ている私の珍しい嘘。
もし本心を言ってしまえば、何だか後悔しそうで怖かった。
(´-ω-`)「そうかい」
ショボンは呟くと缶ビールを手にしてスックと立った。
そして盛り上がっている皆に聞こえる声で呼び掛けた。
(´・ω・`)「君達! 今宵はバーボンハウスへようこそ!」
(*^ω^)(*'A`)ξ*゚⊿゚)ξ「???」
川 ゚ -゚)y-~~「ショボン?」
皆の視線を一身に浴びる中、ショボンは缶ビールをシェイクし始めた。
テレビで見るそれとは全然違う、様になっていない手付き。
だけど、一心不乱にシェイクする姿はとても格好良かった。
(´・ω・`)「受けとれよ、お前ら!!」
蓋が開けられた缶から、スプリンクラーの如くビールが放たれる。
そう言えばショボンは将来、洒落たバーを持ちたいと言ってたな。
彼の心の中で、夢は今、叶ったのだろうか。
(*´・ω・`)「ははははは!」
ビールでびしょ濡れになったショボンは、何処か満足気に笑う。
しかし、ショボンの近くに座ってたツンはビールを頭から被り、お怒りのようだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「何すんのよ! これはお返し!」
えいや、とツンが何かをショボンに向け投げつける。
ショボンはそれを見事に受け止めた。銀色、ビール缶だ。
ξ*゚⊿゚)ξ「もっとやりなさい!」
(*´・ω・`)「ふひひひひ! どうなっても知らないよ!?」
(*'A`)「ばっちこーい!」
(*^ω^)「パクって来たビールはまだまだあるから遠慮するなお!」
空が白んで来た。
もうすぐ夜が終わり、世界は終へと向かう。
私達はシートの上で寝転び、最後の夜空を楽しんでいた。
はっきりと形を目視が出来る程、終末を告げる星は近付いている。
(´・ω・`)「終わりなんだね」
ξ ゚⊿゚)ξ「終わりだねー……」
( ^ω^)「でも楽しかったお」
('A`)「うっ……吐きそ……」
川 ゚ -゚)「君って奴は最後まで……」
( ^ω^)「おっお。……最後に言っても良いかお?」
ブーンの明るい声が私の耳に届く。
何を言うのか知らんが、泣き言はごめんだぞ。決心が揺らぎそうだから。
すぅーっ、とブーンの大きな深呼吸の音が聞こえる。
(#^ω^)「二年三組、内藤ホライゾン! 僕の最後は幸せだったお!」
大きな叫び声。でも声が震えていた。…怖いんだろうな。
数秒後、涙を堪えるブーンの息遣いが聞こえて来た。
(´・ω・`)「何だい? それは」
(#;ω;)「分からないお。 けど、けど…僕の今の気持ちだお!」
('A`)「泣くなよ、こっちも泣きたくならぁ。……まぁ」
(#'A`)「…こんな俺でも最後は幸せだったぜ!」
これは何のお涙頂戴的な小説の中の台詞なんだ。
聞いていると恥ずかしさで顔が赤くなりそうだ。
このパターンだと多分…。
ξ*゚⊿゚)ξ「私も幸せだったわよ!
別にアンタ達と最後を過ごせたからじゃないんだからねっ!」
ほら、な。
( ^ω^)「またまた、強がり言っちゃって」
('A`)「ツンは昔から分かりやすいよな」
ξ////)ξ「う、うるさいわね! ショボンはどうなのよ!」
(´・ω・`)「そんなの決まってる。僕も幸せだ」
ツンに促されたショボンはあっさりと答えた。
それから、沈黙が訪れる。聞こえるのは静かな生きている証の音。
はいはい、私の言葉を待っているんだろ。
それぐらい推して知って欲しい。私達は幼稚園からの付き合いではないか。
(´・ω・`)「クー」
( ^ω^)「クー」
ξ ゚⊿゚)ξ「クー」
('A`)「クーは……うっ、やべっ……」
もしも、輪廻なんて物があるならば、神様どうか頼む。
再びこの馬鹿な友人達と過ごせる時間をくれ。
こいつらと居ると、楽しくて、嬉しくて、ほっとするんだ。
何で涙が流れる。怖くなんて、ない。なのに涙が溢れる。
ずるい。最後にこんなにも騒げる場を作った神様は意地悪だ。
もっと一緒に居たいな。もっと馬鹿な事をして生きて行きたいな。
川 - )「私、クーは、皆と一緒に居られて……」
ああ、この気持ちが幸せという物か。
恥ずかしいが、私は素直な性分だ。
頑張って今の気持ちを伝えようか。
川 - )「私はなー」
『――とっても、とっても、幸せだったさ!』
この小説は2008年2月25日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:xE5OjqZVO 氏
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