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( ^ω^)~ネコの帰る歌のようです♪


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




今さら好んで住む人は貧乏人なのだろうかと思わせるような
木造のアパートのイチマルイチ号室には、住人がいる。
彼のことを考えてみれば、住人というのは適切ではないかも知れない。
かと言って、代われるような適切な言葉も、私の薄っぺらな辞書には載っていない。

なぜなら、まず彼は家賃など払っていないし、もちろん追い出されるべき存在なのだが、
彼は私以外の誰にも咎められず、そのカビ臭い、雨漏りのせいで部屋全体が柔らかく、
腐ってしまった部屋に居候している。

もともと、その人は隣人だった。壁の薄いアパートだったから、毎晩、ちょっと遠慮がちに小さな声ながらも、
何かの歌を口ずさみ続けるその男は、当時忙しい大学生であった私の悩みの種であった。

あの程度の歌声にいちいち苛立つような、(貧乏な上に)矮小な人間だと思われたくは無かったのだが、
多分、イチマルニ号室に住んでいた私だけが彼の影響を受けていたから、
誰も文句を言いになど行ってはくれなかった。

ベッドに倒れ込むと、かすかな声が私の疲れた耳をさわさわと刺激して、それがとても鬱陶しくて、
私は毎晩きまって簡単には眠れなかった。



20080316035038.jpg



汚い、赤色のアパートに引っ越してから、2ヶ月と17日。私は夜のイチマルイチ号室に押し入った。
あまりに無作法だとは思ったが、私はノックもせず、鍵のかかっていないことを良いことに
一気にリビングルームまで押しかけ、そこにいた彼を見つけると、怒鳴り散らした。
怒鳴り散らそうとした、というのが正しいが。

ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっとあなた! 毎晩毎晩、ボソボソとうる……s」

私はその人の顔を見て口が開かなくなってしまった。
どうにかものを言おうとしても、唸り声か、ただの吐息となるかのどちらかだった。

( ^ω^)「……どなたですかお?」

笑顔だったし、人の良さそうな顔つきでもあった。
しかし、私はどうしてもそこに違和感を見いだしてしまって仕方がなかった。

ξ ゚⊿゚)ξ「……私は」

とりあえず、私は質問に答えた。そして、しおらしい口調で用件を告げた。

( ^ω^)「歌が……そうでしたか、すみませんお……」

ξ ゚⊿゚)ξ「いえ……」

ξ ゚⊿゚)ξ「……あの人、絶対なにか変よ……」

自分の部屋に戻って、私は呟いた。
彼の瞳にはまるで生気がなくて、はじめは幽霊なのかと勘違いしたくらいだ。
私のこういう所が、お節介だなんて嫌われるんだろうけど、それはもう性質であった。

ξ ゚⊿゚)ξ「明日は大学休も……」

大きくあくびをして、私は久しぶりに静かな眠りをとることができた。

そして、縁側で踊るスズメの声で、目を覚ました。
着替え、髪型のセットもそこそこに、私はイチマルイチ号室にまたもや押しかけた。

( ^ω^)「……またあなたですかお。どうかされましたかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「……ねぇ、あなた。何か困り事があるんじゃないかしら?」

私は余計な言葉は一切省いて、単刀直入に切り出した。

( ^ω^)「……話を聞いてくれるって言うんですかお?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。嫌かしら?」

彼は首を振った。

( ^ω^)「話させてくださいお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ネコ?」

彼は頷いて、窓の外を見やった。

( ^ω^)「……今、どこにいるか分からないんですお。もう、結構老いちゃってるし、心配で仕方なくて……」

ξ ゚⊿゚)ξ「それと、あの歌に何の関係が?」

彼は眉をひそめて、答えに詰まっているかのようだった。簡単な説明が出来なかったのか、彼は言った。

( ^ω^)「……ちょっと長くなりますけど……」


彼の話は、ちょっぴり信じがたくて、しかしホラ話だと笑うような内容でもなかった。

ξ ゚⊿゚)ξ「じゃあ、あの歌でネコが帰ってくるって信じてるのね」

( ^ω^)「ですお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ふぅん……ね、その歌、聴かせてよ。いつもみたいな小さな声じゃなくて」

彼は少し戸惑ったようだが、やがて頷いて立ち上がった。
照れているのか、声を遠くにやるためか、空の方を向いて。

( ^ω^)「じゃ……」


ξ ゚⊿゚)ξ「……」

美しい旋律だった。どこかで使い古されたような、典型例とは違う、想いに溢れた旋律。
彼の声は、優しくもどこまでも聞こえそうなくらいに力強く響いて、朝の街へ流れていった。

ξ ゚⊿゚)ξ「……」

( ^ω^)「……以上ですお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……綺麗な歌ね。きっと、ネコも帰ってくるわよ」

私は、胸がいっぱいになって、それを言うのがやっとだった。
我ながら、ちっぽけでありふれた、気休めみたいなどうしようもないセリフだと思ったけれど、

( ^ω^)「ありがとうございますお」

彼はやっと、笑顔を見せてくれた。

それから彼は毎日、遠慮などせずに歌い出した。
しっかり私の耳に届いてくる歌声は、知らず知らず、私の心を和らげていた。

それに気付いたのは、彼が珍しく外出をして、歌声が聞こえなかった夜のこと。
胸騒ぎがして、私はなんとなく眠れずにいた。どうしようもなく彼の歌を聞きたい気分だった。

玄関のドアがノックされて、軋んだ。


大家さんの車の助手席で、私は涙を流してしまっていた。
まだ絶対、と決まった訳ではないのに、不謹慎にも確信めいたものがあった。

そして、確信は真実となって、私の視界に入った。
もともと脳への損傷が酷くて、打つ手がなかったと、申し訳ない気持ちでいっぱいと、
医者から中身も意味もないテンプレートを聞かされた。

葬儀には出席しなかった。勝手に確信を得ておいてなんだが、まだ受け入れる準備など出来てはいなかった。
しばらく、外を流れる風の音だけを聞いていた私の耳が、意外なものを拾った。

ξ ゚⊿゚)ξ「ネコ……?」

玄関から外を覗いてみると、イチマルイチ号室の扉の前に、一匹の茶トラ猫が座って、何度も鳴いていた。

ξ ゚⊿゚)ξ「もしかして……きみ、内藤さんの……」

裸足のまま、私はイチマルイチ号室のほうに歩いていって、ドアノブを捻った。やっぱり、鍵は開いていた。
ネコは、ちらりと私を見るとそそくさと部屋に入っていった。

私も、後を追って部屋に入る。

ξ ゚⊿゚)ξ「ネコちゃん……歌を聞いたのかな……」

つぶやきに答えるかのように、ネコの鳴き声がした。

ξ ゚⊿゚)ξ「……ごめんね」

何も悪くは無いのだけれど、私は鼻をすすってネコを撫でた。
ネコは、まだ鳴いていた。帰ったことを主人に伝えているかのように、何度も。

ξ -⊿-)ξ「……」

そして、私の口をついて出たのは、彼の旋律だった。
何度も聞き続け、いつの間にか身に染み込んだのだろうか。とにかく私はあの歌を歌えた。

ネコが鳴くのをやめ、こちらを振り返った。嗚咽をこらえて、囁くように歌い続けた。
歌い終わりから瞬間があって、私は泣き崩れた。ネコは私にすり寄って、喉を鳴らした。
違うんだよ、と言おうとしても言葉にならなかった。

私はネコを抱きしめて号泣した。痛かったろうに、ネコは暴れずに私の涙で毛を濡らしていた。


大家さんの懇意からか、イチマルイチ号室には鍵がかかることは無かった。
貴重なものは遺品として持ち去られているし、こんな汚いアパートを狙う泥棒もそうそう居ないだろう。

ξ ゚⊿゚)ξ「……」

私は今でも、ネコの世話をするためと、彼に会うためにイチマルイチ号室を訪れる。
イチマルイチ号室の住人は、見えるのは茶トラのネコだけだけれども、彼もいるような気がしてならない。

ネコも、私に同感しているのではないだろうか。時々、窓際の方を見つめて、ひとつ鳴く。

いずれ、イチマル二を離れなければならない時が来るかも知れないが、
その時は、彼も、ネコも、付いて来てくれるだろうか。


ξ ゚⊿゚)ξ「……どうなのよ?」

ネコは、一度窓のほうを見やって、それから私の方を見て、長く鳴き声をあげた。



 終





この小説は2008年3月6日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:X0/HurOlO 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです


お題
・ツンとぬこ


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/02 14:27 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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