はじめてブーン系小説を読む方は
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200X年。VIP国には悪の秘密結社『GIKO』が存在していた。
地球侵略をスローガンに掲げ、各地で極悪非道の限りを尽くす。
延べ十万にも登る怪人達の頂点の正体は、謎のベールに包まれている。
ノハ ゚⊿゚)「……………………」
街の人々を恐怖の底に突き落とす、怪人達による凶悪な破壊活動。
これに危機感を募らせたVIP国政府は、ある計画を始動させる。
五人の適合者を秘密裏に国民から選び、怪人達に抗う戦闘員に育てあげたのだ。
ヒーロー物の話よろしく、五人は戦いの中で絆を強め成長して行った。
ノハ#゚⊿゚)「ヒッキー博士!!!」
そう。これは『GIKO』の科学者ヒッキーと、その助手ヒートの物語である。
某県山奥。

ノハ#゚⊿゚)「うおぉい! 博士は居るか!!」
ヒッキーのラボに入るなりヒートは怒号を飛ばした。
広い研究所内には本棚が所狭しと並んでいる。
機械の匂いより書籍の匂いの方が勝っている。
研究所というよりもさながら図書館の様相だ。
ヒートは早足で歩き、本棚と本棚の間を順々に探して行く。
ノハ ゚⊿゚)(居ない? …でも気配は微かにする)
研究所内全てを探し終えたヒートは、
片隅にポツンと設置された、白いデスクの前で立ち止まる。
ここでヒッキーは外に出る事無く、日夜様々な兵器を開発している。
ヒートはデスクをしばし眺めた後、四つん這いになり鼻を地面に近付けた。
ノハ ゚⊿゚)「くんくん」
ヒートは犬の遺伝子を持つ怪人である。故に鼻がよく利く。
赤い髪から伸びた犬耳を動かせながらヒッキーを探す。
数秒後、尻尾がピンと立った。どうやら探し当てたようだ。
ノハ*゚⊿゚)(お菓子の匂いがするぞっ!)
ノハ;゚⊿゚)「じゃなくて…」
首を横に振って、雑念を彼方へと飛ばす。
もう一度地面に鼻を近付けて嗅ぎ始める。
地面、本棚、壁を嗅いだがヒッキーを見付ける事は出来なかった。
ノハ ゚⊿゚)「気配はあったんだけどなー。おかしいなー。ムシャムシャ」
ゲットしたお菓子を頬張りながら、ヒートはデスクの前に戻って来る。
尻尾を左右に振らせ、次々とポテチを口に運ぶ。
そうしていると低い男性の声が聞こえた。
「それ、ボクのお菓子……」
ノハ ゚⊿゚)「博士?」
ヒートが声のした方向に顔を向けた。見馴れた本棚が目に映る。
何も無かった風景に、痩せ細った男性が突如姿を現した。
痩せた身体に合わない白衣、血色の悪い顔の青年。
この男性こそ秘密結社『GIKO』の科学者、ヒッキーである。
(-_-)「ステルス迷彩、あと、消臭装置を開発してみた……」
ノハ#゚⊿゚)ビキビキ
ヒッキーの言葉を聞いたヒートは、顔に怒りの表情を浮かべる。
お菓子の袋を乱暴に投げ捨て、ヒッキーに食って掛かった。
ノハ#゚⊿゚)「博士! 私達は周りから冷たい目で見られてるんだぞ!」
支給された資金で、使えない物ばかりヒッキーは作っていた。
ヒッキーが携わる開発部門は、周りの部門から蔑まれているのだ。
ノハ#゚⊿゚)「なのにまた変なの作って!!」
(-_-)「変なのとは失礼だな。
確かに消臭装置はお遊びだけど、ステルスは使えるよ」
ノハ ゚⊿゚)「…た、確かに姿を消してあれこれ出来るな」
(-_-)「少しでも動いたらバレる仕組みにしたけど……」
ノハ#;⊿;)「馬鹿あああぁぁぁぁぁ!!!!!」
――――。
(-_-)「………………………」
ノハ ゚⊿゚)「………………………」
白衣をボロボロに裂かれたヒッキーは、壁に背中を預けて本を読んでいる。
ヒートはヒッキーが自身の最高傑作と称している怪人である。
助手というポストにありながら、高い戦闘能力を誇っている。
そんなヒートを怒らせたヒッキーは、鋭い爪で襲われたのだった。
(-_-)「で、何の用?」
ノハ ゚⊿゚)「え?」
ぼーっ、とヒッキーの姿を眺めていたヒートに声が掛けられる。
沈黙していたヒッキーが突然口を開いたせいか、
ヒートは少しだけ間の抜けた返事をした。
(-_-)「叫んで入って来て…。用事があるんでしょ?」
ノハ ゚⊿゚)「あ」
再び間の抜けた声を出す。ヒートはそそっかしい性格のようだ。
腕を組み、真剣な眼差しでヒートは用件を述べた。
ノハ ゚⊿゚)「今月中に成果を上げなかったら、予算を大幅にカットするそうだ」
(-_-)「そう」
事実上の死刑宣告を本から目を離さず、二文字で受け止めた。
全く成果を上げない、上げようとしない。
組織にとってヒッキーは邪魔な存在と成ったのだ。
ノハ#゚⊿゚)「そうって……。どうするんだよ!!」
ヒートがまた怒鳴り声を上げる。尻尾の毛が逆立っている。
今にも襲いかからんとばかりに、犬歯を剥き出しにしている。
張りつめた空気。そん中、ヒッキーは本をパタンと閉じた。
(-_-)「その質問に返答する前に、君に渡したい物がある」
ヒッキーは本を片手に持ち、白衣のポケットに手を入れた。
ポケットの中から取り出した物。それは銀色の光沢を放つ指輪だった。
(-_-)「これを指に通してみて。サイズは君の薬指に合わせてある……」
そう言うと、ヒッキーがヒートへと指輪を放り投げた。
二人の間に銀色に輝く放物線が描かれる。
ヒートの手の中に細い指輪が収まった。
ノハ ゚⊿゚)「これは?」
無駄な装飾が一切無い銀色のそれを眺めつつヒートが問う。
ヒッキーが普段とは違う、何処か力強さを秘めた声で返した。
(-_-)「良いから、早くそれを指に通して」
違和感を覚えたが、ヒートは指示通りに指輪を右手薬指に通した。
そして、手のひらをヒッキーに向けて翳す。
ノハ ゚⊿゚)「こうか?」
(-_-)「似合ってるよ」
表情を全く変えない変人で通っているヒッキーが口元を歪ませる。
ヒッキーなりの笑顔だろう、初めて見る表情にヒートは照れて髪をかく。
(-_-)「じゃ、本棚目掛けて腕を振るって。軽くで良い」
ノハ ゚⊿゚)「は?」
妙な事を言う。ヒートは頭上に疑問符を浮かべる。
怪訝な顔でヒッキーを見遣ると、笑顔は消えていた。
瞼を僅かに開け、ジッとヒートを見つめている。
無言の圧力に押されヒートが本棚目掛け軽くパンチをした。
ノハ ゚⊿゚)「てい!」
初まりは無音だった。だが、研究所内は一瞬にして変化する。
ヒートの拳から凄まじい衝撃波が巻き起こり、本棚を薙ぎ倒して行く。
本棚を潰しただけに留まらず、行き場を失ったエネルギーは、
壁、天井、機械、研究所内にある全ての物を傷付けた。
ノハ;゚⊿゚)「うおおぉぉぉ!? すげええええぇぇぇぇぇぇ!!」
衝撃波が収まり、傷跡だけが残る室内を見てヒートが驚嘆の声を出す。
(-_-)「これ……自信作……」
ノハ*゚⊿゚)「これが答えという訳だな!
この兵器があれば、街を潰す事なんて簡単だ!!」
(-_-)「いや、無理。その指輪は二回しか使えない」
喜びで尻尾を大袈裟に振っていたヒートの動きが止まる。
時が止まったかの様に、ヒートは笑顔のまま固まった。
ノハ*゚⊿゚)「…………………………」
――――。
数分後、がっくりと項垂れているヒートの姿が在った。
いつも元気なヒートが、ぶつぶつと愚痴を呟く程、悲観に暮れていた。
/ノハ ゚⊿゚)\「オワタオワタオワタオワタオワタオワタ」
ヒートは虚空を眺めながら延々と呟き続ける。
ヒッキーはデスクの引き出しを開けて、何やら探している
/ノハ;゚⊿゚)\「オワ……っ!? この匂いは!!」
(-_-)(…来た、か)
寒気を覚える殺気が、ヒートの身体を駆け巡る。
身構え、ゆっくりと視線を荒れた研究所内の向こう、入り口へと移す。
そこには2メートルを越える身長を持つ、中年の男性が立っていた。
筋骨逞しいこの男性が秘密結社『GIKO』の総統、ギコだ。
ノハ;゚⊿゚)「総統!!」
(,,゚Д゚)「これはすげぇ。夜逃げする前の大暴れって奴か!?」
ギコの野太く大きな声が、研究所内に響き渡る。
ヒートがその言葉に驚き、ヒッキーへと顔を向ける。
ノハ;゚⊿゚)「夜逃げ!!? ヒッキー、どういう事だ!!」
引き出しの中を探る手を止めて、ヒッキーは背中を向けながら答える。
(-_-)「んー、政府からオファーが来て、それで」
(,,゚Д゚)「組織を裏切る、と」
不気味な笑みを浮かべて、ギコが言葉を繋げた。
(-_-)「そう」
無表情でヒッキーは繋がれた言葉に軽く答えた。
笑みから鬼の様な形相に変えて、ギコがヒッキーに近付いて行く。
ノハ;゚⊿゚)「お待ち下さい! 総統! 博士にはきっと何か考えがあって――」
(,,゚Д゚)「黙れッッ!!」
間に立ち、必死に庇うヒートをギコが一喝する。
余りの怒気の前に竦み上がり、ヒートは足を震わせた。
(-_-)「お、あったあった」
そんなやり取りもどこ吹く風、ヒッキーはマイペースな声を出す。
引き出しを閉じてヒッキーはギコに体を向けた。
(-_-)「総統」
(,,゚Д゚)「あん?」
ヒッキーの小さな声にギコは立ち止まった。
(-_-)「幼少の頃からこんな狭い所に閉じ込めて下さり、有り難う御座いました。
お陰様で快適な引きこもり生活を送れました」
ノハ;゚⊿゚)「………博士?」
(,,゚Д゚)「……貴様」
珍しく長い言葉を発した。やはり抑揚が無い小さな声だが。
ヒッキーがもし表情豊かならば、直ぐに嫌味だと分かるだろう。
トーンを変えずにヒッキーは言葉を続ける。
(-_-)「ボクはいつしか、外の世界へ出てみたくなったのです。
青い空の下、『二人』でのびのびと暮らしたいのです。
こんな小汚ない所で一生を過ごすなんて
――クソ食らえだ」
ノハ;゚⊿゚)「博士!!」
ヒッキーは最後に、はっきりと感情を表に出した。
本が散乱した研究所内、隅々まで凍てつく。
シンと静まり返った空間をギコの笑い声が切り裂いた。
(,,゚Д゚)「ギコハハハ! 二人とはお前とそこの出来損ないの事か!?」
ノハ; ⊿ )「…………」
出来損ないと言われ、ヒートは感情の色を失った。
戦闘能力と妙な特技だけが取り柄で、満足に役に立てていない。
直球で自分の心をギコに抉られ、ヒートは目に涙を浮かべる。
(-_-)「総統、いいや、ギコ。アンタの頭はただの飾りだ。
出来損ない? 馬鹿め。ヒートは僕の最高傑作だ」
(,,゚Д゚)「ハハハ! 気でも狂ったか!!」
ヒートを傷付けたギコの言葉を真っ向から否定する。
そして、嗤うギコに向け、語気を強めて言い放った。
(-_-)「ヒートは世界への扉を開ける力を持っている」
ノハ ;⊿;)「!?」
何の事だか、ヒートにはさっぱり分からなかった。
ヒッキーの言葉は嬉しいがそんな力など無い、
全くの無力なのだ、とヒートは己の拳を握り締める。
ノハ ⊿ )「……あ」
手の中に冷たい感触。そこにはヒッキーの答えがあった。
『世界への扉を開ける力』をヒートは持っていた。
涙を手で拭い、ヒートは大きく深呼吸する。
ノハ ゚⊿゚)「博士」
眼に光を取り戻したヒートが口を開ける。
それに対しヒッキーは一つ頷いて呟く。
(-_-)「………チャンスはあと一度」
(,,゚Д゚)「何をボソボソと。謀叛を企てた貴様等を直々に処刑してやる!!」
ギコが二人へと向かって走り始めた。まるで戦車の様な勢いだ。
ノハ#゚⊿゚)「最悪な主の下に生まれて来てしまった!!」
(-_-)「ごめん」
ノハ#゚⊿゚)「でも、私は、私は犬だから忠義を立てるッッッッ!!!」
共に暮らしたいと言った主を小脇に抱え、ヒートは駆ける。
そして勢いが乗ったまま、力の限り腕を振るった。
――壁目掛けて。
(,;゚Д゚)「なっ!?」
轟音を響かせて、世界への扉は開いた。
青い世界へと二人は舞って行く。
久方ぶりの外気に、ヒッキーは体を打ち震わせる。
(-_-)「……光が眩しい」
ノハ ゚⊿゚)「……なぁ、この後どうすんだ!?」
(-_-)「政府の人間と会う。住所は暗号文で知らされている」
ノハ ゚⊿゚)「うん。今後的な物じゃなくて、正に今! 的な!」
(-_-)「君は僕の最高傑作だ。上手く着地してくれ」
ノハ ゚⊿゚)「…………………………」
『まじかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
(-_-)「というのは嘘で、携帯型スラスターを持って来ている」
ノハ ;⊿;)「馬鹿あああああああぁぁぁァァァァァ!!!!!」
こうして二人は、新たな世界へと飛び立って行った。
(-_-)ノハ ゚⊿゚)二人は世界へと飛び立つようです・おしまい
副題「やけに待ってくれる、自己主張の強い総統」
この小説は2008年2月26日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:poFbJB74O 氏
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