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('A`)ドクオと毒男と毒餃子のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




ある所に、ドクオと言う名の毒男がいた。
彼は毒男であるため冬は一層暇である。
十二月のクリスマスは勿論一人。
年末年始に親戚が集まった所で大した話題も無くやはり孤立。
バレンタインデーは最早ただの十四日に過ぎない。
そしてこれから訪れる別れと出会いの季節も当然の如くただの年度の変わり目であろう。


('A`) ぼっちだって良いじゃない、毒男だもの。どくお


とは言え幸いなことに彼はクラスメイト等に嫌われているわけでは無く、
無理をしてまで他人に合わせることが無く、孤独を嫌うわけでも無い、
極めて存在感の薄い普通の高校生である。
クラスメイトにとっては風変わりな男、或いはいてもいなくても困らない存在であった。


(*゚ー゚) ドクオ君のこと? うーん…少ししか話したこと無いけど、悪い人じゃないと思うよ

( ゚∀゚) ドクオは…うん、まあ、あれだ。普通、極めて普通

川 ゚ -゚) ドクオ? 何それ、食べられる?



20080301091739.jpg




さて、ドクオが新聞を読んでいると、ある見出しが目に入った。


('A`) 『中国製毒餃子、被害拡大』…? 毒餃子ねえ…


ドクオはニュースを見ず新聞記事の細部にまで目を通す習慣もないためやや世情に疎い。
しかし暇さえあれば夢の世界へトリップするため、創造力は無駄に豊かであった。


('A`) 毒餃子ってなんだ…毒…毒…“毒男”みたいな俗語の類か?
    毒・餃子。毒成分入り・餃子。
    一個ずつ売る確率は無いだろうし、ぼっち成分入り・餃子ではないな。
    毒成分入り・餃子。毒男成分入り餃子?
    まさかフェロモン餃子か? いや、同志の香りに俺が気付かないわけ無いし…。
    毒成分入り・餃子。毒男成分入り餃子。毒男の願望成分入り餃子…?
    毒男の願望…まさか。
    カップル絡みのイベントが多いこの季節、耐えきれず発狂した毒男の願望が…?


記事を読めばすぐに答えなど得られるのだが、
それをせずあえて独自に分析するのが暇人ドクオである。
そしてドクオは一つの仮説へと行き着いた。


('A`) まさか、媚薬? それも、速効性の…。でも、そんな都合の良いもの精製できるわけが…
    いや、中国四千年の歴史を持ってすれば或いは…ゴクリ


『な、何を飲ませたのよ!』
『フヒヒ…速効性の媚薬さ…そーれ、聞いてきたぜ…』
『…! あっ、あああ…いやぁぁ…!』
(中略)
『悔しいッ…でも、感じ(ry』


('A`) けしからん…毒男の風上にもおけん奴め!


ドクオは怒りのあまり新聞紙を壁に投げつけた。
だがヘタレな彼の怒りでは所詮その程度が限界であり、
元凶へ単身突貫するような大胆な行動を起こすことは無い。
彼は大抵の事に対して慎重で腰が重く、そして物臭である。


('A`) 毒男であることを嘆いてるうちはまだまだ未熟、三流の毒男だよな。ヘッ


ドクオは暇を潰すために何気なくテレビをつけると、またしても中国の名が飛び込んできた。
今年はオリンピックイヤー。開催地は中国の首都、北京である。


('A`) オリンピックなら仕方ないよな…


ドクオは普段は滅多に使わない携帯電話を取り出し、
さらに滅多に使わない電話機能を起動させた。


( 'A`)】 あ、ブーン。一週間学校休むから、担任に言っといてくんね?

『ちょwwwkwskwww』

( 'A`)】 見聞を広げるために旅に出てくるだけよ


友人は何やら奇声を発していたが、毎度の事であるためドクオは全く気にせず電話を切った。


('A`) ちょっと中国に行ってくる

('A`) せっかく中国まで行くんだから、お土産くらい買わないといけないよな…

('A`) 今話題の餃子でも買って帰るか。俺は全然興味ないけどね!


そしてドクオは中国へ飛んだ。
腰の重い物臭な彼ではあるが、一度腰を持ち上げると最早制御不能である。
やめられない止まらない、ちょっとだけ、先っぽだけ、十ピストンだけ、etc…etc…


('A`) さて、まずは情報収集だな


そんなわけで彼は、とある酒場へとやって来たのだ。


(´・ω・`) やあ、ようこそバーボンハウスへ。
      この老酒はサービスだから先ず飲んで落ち着いてほしい

('A`) うほっ! いい男…

(´・ω・`) 今日はksms仕様じゃないノーマルショボンなんだ、ぶち殺すぞ


情報収集と言えば酒場、酒場と言えば情報収集。
ちょっと一杯ひっかけて気分が高揚してくると、誰しも口が軽くなってしまうもの。
他愛の無い噂話にこそ真実が隠れており、それを知る者こそが酒場の店主なのだ。
RPGの基本である。


(´・ω・`) 料理と薬学に精通する独身男性ねえ…そうだなぁ…モナーという男がそうだな

('A`) その男はどこに!?

(´・ω・`) 南の町外れに食品加工工場がある。彼はそこの工場長だよ


ドクオはモナーの手がかりを手に入れた。
弾道が上がった。

町外れとは良く言ったもの。そこは辺境を通り越し最早秘境であった。
鬱蒼と生い茂る森へわけいり、獣さえ歩くことを躊躇う切り立った岸壁沿いを這い、
濁流を跨ぎ、山を越え、死に物狂いで歩くこと五日。
たどり着いたのは、工場ではなく寺院と呼ぶべき巨大な館であった。
正面広場では工場職員とおぼしき百名近い男たちが、
『墳ッ!破ッ!』と雄叫びをあげながら鍛練に勤しんでいる。


('A`) 食品加工工場の職員ですら武術の鍛練を欠かさないとは…さすがは四千年の歴史…
    これなら薬学や食品加工の技術も独自に研究してる奴がいるかもわからんね

( `ハ´) む、何者アルね!


ドクオが正門で立ち尽くしていると、教官とおぼしき立ち位置にいた男が駆け寄ってきた。
男は正に中国武術家のお手本とも言うべき弁髪、ナマズ髭、切れ目、拳法衣を着ており、
額に“中”と描かれていれば完全にラーメンマンである。


( `ハ´) 見慣れない顔アル、秘伝書盗みに来た悪漢アルか!?

(;'A`) 薬学と料理に精通する方がいらっしゃると聞いて日本からやって来たんですぅ

(;`ハ´) その出で立ち…町から歩いてきたアルか!? アイヤー

('A`) 死ぬかと思いましたが最短距離で真っ直ぐ歩いてきました!

( `ハ´) 中国武術を極めた私でも町までなんて歩かないアル。帰りはヘリで送るアル

('A`) アイヤー


ドクオはラーメンマンことシナーに案内されるがまま寺院の中へ入っていった。
シナーによれば、ここは食品加工工場ではなくただの寺院で、当然モナーもいないとのこと。
しかしシナーもまた古来より伝わる料理や薬学には精通していたため、
わざわざ歩いて寺院までやって来た根性をかい、シナー自身が協力すると申し出た。


('A`) ときに老師、最近世間を騒がせている“毒餃子”とやらをご存じで?

( `ハ´) 我々は俗世との関わりを断ち自給自足の中で修行をしているアルよ。
     餃子なら知っているアルが、俗世のことは詳しくは知らんアル

('A`) なんでも、毒男の願望を具現化させた物質を餃子に混ぜた物らしいのですよ。
   この時期はクリスマスやらバレンタインデーやら年越しやら成人式やら、
    色恋絡みの行事が多いことが何か関係あるのではないかと…

( `ハ´) 嫉妬に狂った毒男が生み出した、
     毒男の願望、或いは毒男の象徴的感情入り・餃子…と言うことアルな

('A`) さ、さすがは老師…話が早い

( `ハ´) 中国四千年の、我が毒男人生五十年の歴史を侮ってはいかんアル

(;A;) 師匠!


シナーの料理の腕前は正に一人食品加工工場であった。
餡となる具材を切る正確さ、生地となる小麦粉を練り延ばしていく速さ、
作業における行動には一切の無駄さえ無く、だからこそ美しい。
しかしそれだけではただの餃子に過ぎない。
シナーは意を決したように一つ息を吐き出すと、小さな陶器の瓶を取り出した。


( `ハ´) これは我が寺の主にのみ受け継がれる門外不出の秘薬、“滅多魅弩保酢”アル

('A`) “滅多魅努保酢”…?


メ タ ミ ド ポ ス
滅多魅弩保酢。
それは古くより中国に伝わる秘薬である。
かつていたとされる名も無き毒男によって産み出された毒男の怨念とも語られるそれは、
しかし毒男たちに勇気を与えた希望でもある。


( `ハ´) もし自信を無くして挫けそうになったら、これを食べさせるアル。
     元気百倍アルよ

('A`) 勇気凛々滅多魅弩保酢ぅ!


シナーは豪快に瓶をひっくり返すと薬を餡に混ぜ込み、
下準備同様見事な手付きで餃子を作り上げた。
中国四千年の歴史に脈々と連なる毒男の系譜。
孤独な男たちによって磨き上げられた毒餃子の神々しさに、ドクオは勃起していた。


('A`) 師匠、俺は日本に帰ります。あなたのこと…忘れません


ドクオは見送るシナーへ振り返ること無く旅立った。
だって振り返ったら、きっと涙がこぼれちゃうから。
嗚呼、遥かなるユーラシア大陸は、西の水平線へ沈んでいく…。


・・・


( ^ω^) お、新聞が来てるお


《中国産餃子・日本人旅行者から》
VIP空港で補導された少年の所持品から、
極めて高濃度のメタミドホスを含む餃子が発見された。
男性は中国で手に入れたと供述しているも、目的は未だ不明であり──


( ^ω^) ・・・?


宇津田 ドクオさん(17)は支離滅裂な供述を続けており、
背後関係も含め調査が続けられている。


(;^ω^) 一先ず…学校へ行くお

・・・

( ^ω^) クー、ドクオのニュース見たかお…?

川 ゚ -゚) ドクオ? 誰のことだい?

(;^ω^) …ッ!

( ^ω^) 同じクラスのドクオのことだお! 何言ってるんだお!

川;゚ -゚) ブーン…私は君の言ってることがよくわからないよ。
      ドクオなんて聞いたことのない名前だ

( ^ω^) そんな…馬鹿な…


クラスメイトの名を知らない。そんなことがあるはず無い。
例え会話がなくとも一日の大半を、一年の大半をともに過ごす者の名を、
知らないなどと言うことはあるはずがないだろう。


( ^ω^) まさか…


ブーンはかつて読んだ怪談を思い出した。
その怪談の主人公たちが山で遭難し、避難した山小屋でそのうちの一人が神隠しにあった。
しかし主人公たちが山から降りると、誰一人として神隠しにあった者を覚えておらず、
それどころか最初からいなかったかの様に振る舞うのだ。
そして過去の写真やあらゆる記録からも、その者の存在だけが綺麗に抜け落ちており、
そして最後に──


(;^ω^) ドクオは…本当に存在したのかお…?


主人公の記憶からも、その者の存在が薄れていくのだ。


(;・∀・) おい、ドクオが捕まったらしいぞ!

( ^ω^) やっぱり気のせいかお

・・・

('A`) 俺にはやらなければならないことが! 託された想いを伝えなければならないんだ!

('、`*川 はいはいドクオ君、お薬飲もうねー大丈夫だからね~

('A`) 師匠…師匠ぉぉぉ!!


ドクオは真っ白な病室で叫んだ。
誰にも聞かれることの無いアンパンマンのマーチが、冷たく白い鉄格子に吸い込まれていった。



終わり





この小説は2008年2月22日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:JVc0IwlNO 氏



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[ 2010/01/02 13:40 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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