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('A`)は旅立つようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ





          20080104061630.jpg




1.

ブーンはドクオを探して原っぱまでやって来ていた。

ここは国で一番広い場所だ。

ドクオはしょっちゅう仕事をサボってここへ来ては、おかしな実験に熱中している。


( ^ω^)「ドクオー! どこだお!」


11月の冷たい風に掻き消されないよう、ブーンは大声を張り上げた。

返事はない。


( ^ω^)「あのバカ。怒られるのは僕なんだお…」


向こうに古い家畜小屋がある、

今はもうほとんど廃墟だがドクオはそこを勝手に秘密基地として使っていた。


( ^ω^)「原っぱにいないってことは、あそこかお」

 
2.

ニューソク王国の周囲はぐるりと堀のような断崖に囲まれていた。

わかりやすく説明しよう。

ドーナツ型に焼いた大きなパンをテーブルに置いたと考えてみるといい。

これは断崖の向こう側にある土地、通称“不浄の地”だ。

次にドーナツの真ん中の穴にコップを逆さにして立てて置く。

このコップの上にニューソク王国が乗っかってるってワケだ。

コップの底の平面、つまりニューソク王国の領地はそんなに広くないが人はここで麦畑を耕し、

ヤギと牛を飼い、服を編み、子を産み、擦り切れるまで働いて死んでゆく。

不幸も幸福もまあ、人並みにはあるだろう。

誰も断崖の向こうのことなんか考えない。


( ^ω^)「ドクオ!」


ブーンは廃墟に飛び込んだ。


3.

ドクオは奥に広げたわけのわからない器具を前に、実験に没頭していた。


('A`)「そうだ…やっぱりそうだ、間違いないぞ…俺は正しかった…」

( ^ω^)「おい、ドクオ」

('A`)「お、ブーンか。見ろ! 俺の実験結果がついに実を結んだぞ」


ドクオは空の粉袋を手に興奮して言った。

…空? 彼は配達の途中だった筈だ。中身は?

白い小麦粉は奥の床に散らばっていた。


(;^ω^)「お前何やってんだお! 旦那さんが激怒するお!」

('A`)「オヤジなんざほっとけ」

( ^ω^)「最初から空の袋を使えばいいのに…」

('A`)「配達中に思いついてすぐに実験したくなった。で、気が付いたら手元に袋があったんだ」


悪びれた様子もなく彼は袋を見せた。
 

4.

('A`)「いいか、これを見ろ」


ドクオは焚き火の上に粉袋をかざした。

袋は熱された空気を受けて膨らみ、上へ浮かび上がろうとする。


( ^ω^)「それがどうかしたのかお」

('A`)「何だよ、わからないか? 無知蒙昧なヤツめ」

( ^ω^)「?」

('A`)「炎には物を浮かび上がらせる力があるようだ。つまりこれを応用すれば…」

( ^ω^)「いいから早くその小麦粉を掻き集めて持ってくお」


ブーンはドクオから袋を奪い取り、粉をすくって入れ始めた。


('A`)「何する、こら」

( ^ω^)「ご高説はまた夜に聞くお。今は配達が先だお」

 
5.

ドクオの家は割と裕福な粉屋だ。

彼はそこの長男で、ブーンは住み込みで雇われている近所の農家の子。


( ^ω^)「たまにはちゃんと家の手伝いするお。実験は暇を見てやるお」

('A`)「バカ者、心理の探求はそんな悠長なこと言っとっては出来ん」

( ^ω^)(こりゃ将来が心配だお…)


やや遅れて粉を配達し、二人は家に戻った。

ドクオは職務怠慢でゲンコツを食らった。

その日の夜。

前夜と同じように寝床を抜け出したドクオは秘密基地で実験を再開していた。


('A`)「いける…いけるぞ…」

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「へぎい!?」


 6.

( ^ω^)「驚いたかお」

('A`)「バ、バカ者。お前の行動などお見通しだ」

*リ´・-・リ「こ、こんばんわ…」

('A`)「むっ? 妹まで連れてきたのか」

( ^ω^)「どうしても一緒に行くって聞かないんだお。さあ、実験の話をしてくれお」


そう言えば昼間にそんな約束したな。

ドクオはうなずき、外へ出るよう二人を促した。


('A`)「あれが見えるか?」


ドクオは満点の星空を飛び交う流れ星の一つを指差した。

リリがあわてて眼を手で覆う。


*リ´・-・リ「な、流れ星は見つめちゃいけないって“教理”に…」


7.

教理と言うのはニューソク王国の基本的原則で、宗教と法律と道徳の三つを合体させたようなもんだ。

もっともドクオに言わせればこれは四つになる。“迷信”が加わるからな。


('A`)「教理など老人たちの世迷いごとだ。俺はあれに人が乗っていると推測する」

( ^ω^)「へ? 流れ星に?」

('A`)「一度だが向こう側に着地するのを見たんだ」


ドクオは原っぱのはるか向こうに眼をやった。


( ^ω^)「不浄の地に人が住んでるって言うのかお。そんなわけないお」

('A`)「そうとも。教理では不浄の地は世界の果てであり、ニューソク王国が中心だ。

    だがそんなものは嘘でデタラメで虚構だ」

(;^ω^)(こいつ、いよいよもっておかしくなったお)


ブーンは友人の正気を疑っていたが、リリは熱心に彼の言葉を聞いていた。


8.

*リ´・-・リ「ドクオさん、不浄の地にはどんな人が住んでいるの?」

('A`)「うむ、恐らく我々の想像を絶する高度な技術力を持っているに違いない」

( ^ω^)「リリ、まともに相手すんなお」

*リ´・-・リ「もしもいつか出会ったら、その人たちともお友達になれるかしら?」

('A`)「わからん。言葉が通じるかどうかすらあやしいしな…」

( ^ω^)「お前の言ってることはおかしいお。そんなすごい連中なら何でこの断崖を

       飛び越えて僕らの国にやってこないんだお」

('A`)「こいつは俺の想像だが、恐らく向こうの連中もこの地を“不浄の地”として扱っているのでは

    あるまいか? 俺たちが向こうに何があるか考えることすら禁じられているように」

( ^ω^)「ニューソク王国が不浄の地?!」


教理会のじじいどもが聞いたら卒倒するな。

ドクオはそう思い、鼻で笑った。

何が教理だ。あんなものはただ「思考停止」にそれらしい名前を付けただけじゃないか。


9.

( ^ω^)「それでお前の実験ってのはなんなんだお」

('A`)「ああ…それはまた別の日にしよう。遅くなったしな、今日はもう帰れ」

( ^ω^)「ん? もうそんな時間かお。妹を送っていくお」

*リ´・-・リ「おやすみなさい、ドクオさん」

('A`)「ああ、気をつけて帰れ。俺はもう少しここで考え事をしたい」


ブーンに手を引かれたリリが家畜小屋の前を通りかかったとき、ふと奥に何か大きなものが見えた。

人が楽に入れるくらい大きなパン籠のようなものと、それよりももっと大きい布の塊。


*リ´・-・リ「?」

( ^ω^)「何やってんだお、リリ」

*リ´・-・リ「お兄ちゃん、あれ何かな?」


一方、ドクオは原っぱで眼を閉じていた。


('A`)「…許せ、友よ。お前を結果的には裏切ってしまうことを」



10.

ある日のこと、配達から帰ったブーンは店の主人に呼び止められた。

∧_∧
( ・ω・)「ブーン、ちょっといいかよ」

( ^ω^)「また息子さんがどっか行ったんですかお」
∧_∧
( ・ω・)「いや、そのことじゃないんよ。火竜炭を買ってきて欲しいんよ」


火竜炭というのはこの国のどこを掘っても出てくる黒い石のことだ。

一度着火すると煙をほとんど出さずに激しく燃えるため、燃料として使われている。

昔この王国を住処にしていた火を吐く竜が化石化したものだそうだ。

…ドクオは嘘に決まってる、竜なんかいるわけないと言うけれど。


( ^ω^)「またですかお。先週もいっぱい買い込んだ筈ですお」
∧_∧
( ・ω・)「いや、何か減るのが早いんよ。今年は寒いからまあ、仕方ないんよ」


旦那さんはそれほど気にしてないようだが、ブーンの頭のどこかで何かが引っかかった。


11.

買った炭を荷車に積んで帰る途中、ブーンは教理会の寺院前で足を止めた。

物乞いに小銭を投げて荷物を見張っているように言い、中に入る。小坊主に声をかけた。


( ^ω^)「風読士さまとお話したいですお」


風読士とは天候などを予測する呪い師のことだ。

農家に種まきの時期などを教え、その見返りに作物をもらって生活している。


( ゚∀゚)「おお、粉屋の丁稚奉公か。何か用か?」

( ^ω^)「ええと…」


ドクオの秘密基地から不浄の地へ向かう風は…


( ^ω^)「今年は西から東へ吹く風はいつごろ吹きますかお」

( ゚∀゚)「そうさなあ、三日後の夜あたりかのう。粉屋のせがれもそんなことを聞きに来たが」


ブーンはお布施を払って寺院を飛び出した。

 
12.

炭を店に置くとブーンは秘密基地に向かって走った。


( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「ん、ブーンか? ここだ、ここ」


ドクオは廃墟の屋根の上で大の字になっていた。


('A`)「いい天気だな。今日は暖かい」

( ^ω^)「降りて来いお!」

('A`)「お前もよく飽きもせず親父の使いっ走りをするもんだな。もっとのんびり生きろよ」

( ^ω^)「そうじゃないお、話があるんだお」


ドクオは面倒くさそうに廃墟の屋根から滑り降りた。


('A`)「何だよ、もう…」

( ^ω^)「お前、不浄の地に行く気かお」


 
13.

ドクオが一瞬息を詰まらせたのをブーンは見逃さなかった。


('A`)「何言ってんだ、お前」

( ^ω^)「見たんだお。小屋にあった変な装置を」

('A`)「…」

( ^ω^)「教理に反し…」

('A`)「何が教理だ!!」


ドクオはいきなり獣のように咆哮した。


('A`)「俺の母さんが何故死んだか知ってるか!?」

( ^ω^)「病だって聞いたお」


ブーンが雇われる前の話だ。


('A`)「屍血病だ」
 

14.

屍血病は錆びた金属に宿る悪霊が体に入り込む病だ。

舌がもつれ、体が痺れてやがては死に至る。


('A`)「医者も教理会のじじいどもも、俺の父親ですら死に際の母さんに近づこうとしなかった。

    悪霊が感染るだとかいう教理のタワゴトを信じてだ!

    母さんは蔵に閉じ込められたまま一人で死んだんだぞ」

( ^ω^)「お前、もしかして…」

('A`)「不浄の地には屍血病を治す薬だってあるかも知れない。それは行く理由の一つだ。だけど…」


ドクオはぐっと力を込めた。


('A`)「俺が見たいのは教理に縛られていない、本当の世界なんだ。

    外の奴らは何を食ってる? 何を信じ何を愛している?

    俺はそれをどうしてもこの眼で確かめたい」

 
15.

( ^ω^)「リリが泣くお」

('A`)「?」

( ^ω^)「あれからお前のことばっかり話してるお。惚れたらしいお」

('A`)「引きとめようとしても無駄だ。俺は行く」

( ^ω^)「わかったお…もう止めない。だけど約束して欲しいお」

('A`)「何をだ?」

( ^ω^)「必ず戻ってくるって」


ドクオはブーンの目を見た。ブーンはドクオの目を見た。

お互いの瞳の奥に猜疑と期待と、どこか諦めたようなものがある。


('A`)「一年だ。一年したら戻ってくる」

( ^ω^)「絶対だお」


ブーンは店に戻った。

 
16.

そして三日後。

粉屋の面々は一日の仕事を終えて夕食をとり、明日の朝に備えてすぐに寝床へ入った。

翌朝も何も変わらぬ忙しい日々が来ると、何一つ疑うことなく。

ドクオは自室で最後の準備に取りかかっていた。

食料や着替えなどはすでに小屋に運んである。

溜息をついて机に書置きを置いた。


('A`)「みんな、許せ。俺は行かねばならんのだ」


書置きには念入りにこれが個人の意思であり、実家はなんら関係がないことを強調しておいた。

家族が責を負わされねばいいが。窓から外へ飛び出すとそこにブーンがいた。


('A`)「何だよ、見送りはいいって言っただろ」

( ^ω^)「そうじゃないんだお、大変なんだお! リリがあのことを喋っちゃったんだお!」

('A`)「何だと!? お前、リリに言ったのか!?」

 
17.

( ^ω^)「仕方なかったんだお…それで、リリがウチに来てた教理会の老人についポロッて…」

('A`)「くそ、何てこった!」


二人は近道をくぐって街を駆け抜け、原っぱに向かった。

すでに松明を掲げた一団が小屋に向かいつつある。


('A`)「畜生」


何とか先回りして小屋に到着すると、ドクオは熱気球を引っ張り出した。

ちょろまかした粉袋をつなげて作った袋の部分、その下部に設置した鍋に火竜炭を放り込みながら

ブーンに叫ぶ。


('A`)「お前はどっか行け、俺と一緒にいるところを見られたら…」

( ^ω^)「何言ってんだお。ここまで来たなら地獄まで付き合うお」


ブーンは火を起こしはじめた。

 
18.

大人たちがこっちを指差して何か叫んでいる。

炎を浴びた火竜炭はごうごうと、それこそ竜が炎を吐くかのように燃え始めた。

袋がどんどん膨らんでゆく。


('A`)「畜生、間に合わない!」


おまけにまだ風向きが違う。

このままでは街の方に流されてしまう。


( ^ω^)「むっ、ちょっと待つお」


ブーンは小屋の隅にほったらかしになっている小麦粉に気付いた。

いつだかドクオが撒き散らしたやつの余りだ。

それを掻き集めてシャツに包み、外に運び出す。
 

19.

('A`)「おい、何する気だ」

( ^ω^)「いいからその装置に乗れお! 絶対不浄の地へ行けお!」


外へ出たブーンは小麦粉を外にばらまいた。

それは風下にいた大人たちの目鼻に飛び込み、涙とクシャミを連発させる。


('A`)「ふふん。頭の方はイマイチだと思ってたが…」


やるじゃないか。

熱気は袋の中にたっぷり溜まった。

ドクオは籠に乗り込み、斧でバラストを切り落とした。

ぶちん。

ふんわりと球体は宙へ浮かび上がる。


( ^ω^)「やった、浮いたお!」

 
20.

('A`)「ブーン、リリに気にするなって伝えろ!」


ブーンは地上で手を振り、急いで原っぱを駆けていった。

大人の知らない抜け道をいっぱい知っているから、捕まることはないだろう。

風向きが急に変わった。

大人たちが呆気に取られているのを空中から見下ろしながら、ドクオは不浄の地を見据えた。


('A`)「空から見りゃ、故郷なんかちっぽけなもんだ」


流れ星が空を飛び交っている。

そのうちのいくつかがこれから目指す場所で発着しているのがかすかに見えた。


 


  さあ、世界のすべてをこの眼で見てやろう。




 
おしまい





この小説は2007年11月23日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:7IRg0buT0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです


お題
・流れ星
・熱気球


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2010/01/02 10:29 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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