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('A`)は紅葉を狩るようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ






 20071027180225.jpg



 駅前のロータリー付近で、ブーンが自動車を停車させた。
 ここからは、追跡班からの引継ぎが起こり、俺たちが仕事を受け持つ。
 俺は、追跡班から渡された資料に目を通しながら、ナビ・シートに身を沈める。
 適度な固さと柔らかさが、しっかりと俺の体を受け止めてくれた。

('A`)「……やれやれ、だな」

( ■ω■)「ドクオ、何か言ったかお?」

('A`)「サングラスとれよ。そんなんじゃ目標の確認はできないだろ?」

( ^ω^)「おっおっお。つい癖で、スマンお」

('A`)「まー良いよ。どうせお前は、ヤルことしか考えてねえんだろ?」

(;^ω^)「ちょっwww勝手な推測で決め付けるなお」

 いつも通り、相棒のブーンと他愛の無い会話をする。
 初めの頃は吐き気ばかり覚えていたこの仕事も、いつしか慣れて、
 こうして開始直前まで、ブーンと他愛の無い会話も出来るようになった。
 なんて ―― 最悪。

 ブーンとの会話を打ち切り、俺はもう一度資料へと目を落した。
 それは、一人の女の子に関する詳細なレポートだ。
 A4用紙数十枚に渡って、彼女の事細かな生活事情がまとめられている。
 そして、それには盗撮した写真が何枚も添付されている。
 多感な時期の象徴か、彼女は様々な表情で写されていた。


 可愛らしい少女だ。
 資料によれば名前はしぃ。十七歳。隣町の高校に通う三年生。
 この少女が、本日俺たちが狙う標的だ。
 こんな少女までと考えてしまうと、正直、絶望を感じてしまう。
 こんな少女まで狙わなければならない現実と、それを仕事と割り切る自分に。
 なんて ―― 理不尽。

 今日は、それほど待つ必要はなかった。
 少女は数人の友達に囲まれながら駅の階段を下りてきた。
 何もかも追跡班の情報通り。乗った電車。下車駅。その時刻。

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「ああ……」

 彼女の観察を続ける。
 彼女たちは談笑しながら飲食店へと向かって歩いていく。
 有名なハンバーガーチェーンの店だ。

('A`)「最悪だな」

( ^ω^)「そうでもないお。相手にも逃げ道がなくなったお」

 見当違いの言葉を返してきたブーンに苦笑を漏らしつつ、
 俺はスーツの胸ポケットからサングラスを取り出す。
 それを掛けつつ、自動車から降車した。


(・∀ ・)「ちょっと良いかな、君たち」

 車を降りると、背後から声が掛けられた。
 振り返ると、能天気な表情を浮かべた警官が立っていた。

(■A■)「なんだ?」

 威丈高に言い返すと、警官は少し怯んだように肩をすくませた。
 ……まあ、無理もない。
 黒ネクタイに黒スーツ。そして表情を隠すサングラス。
 葬式でもないのにこんな格好をしている商売は数が限られる。
 それでも、警官は言葉を続けた。

(・∀ ・)「駐車禁止なんだ、ここ。免許見せて貰って良い?」

(■A■)「へぇ……商売熱心な警官だな」

( ■ω■)「ドクオ、茶化すのは止めるお。
      コレを見せるのはサービスだから、まずは落ち着いて欲しいお」

 ブーンは俺を抑える様に警官と俺の間に割り込み、懐から一枚の令状を取り出した。
 それを、警官の目の前に押し付ける。

(・∀ ・;)「紅葉……コード・レッド……」

( ■ω■)「うん、『紅』なんだお。済まないお」


 総理大臣からの停止命令を除いては、何者にも止められない超法規権限。
 その権限の発動命令を記した一枚の令状。
 それが ―― コード・レッド。
 それの提示は即ち、国家人類保全局の紅葉狩りを意味している。

(・∀ ・;)ゞ「きょ、局員の方だと気付かず、失礼いたしましたっ!」

( ■ω■)「僕たちは気にしないお。お仕事頑張って欲しいお」

(■A■)「そーゆー事だ。……あ、帰ってくるまで車見てて」

 それを提示するだけで、煩わしい事は勝手にどいてくれる。
 俺とブーンは最敬礼の姿勢をとった警官の脇を通り、
 目標が入店したハンバーガーショップへと足を向けた。



 俺たちが入店すると同時に、店員が威勢良く挨拶を掛けてくる。
  _
( ゚∀゚)「いらっしゃい……ませ……」

 だが、それも俺たちの姿を確認すると尻すぼみになった。
 和やかな店内の雰囲気が一時的に凍りつく。
 まあ、無理もないか。
 喪服に似た黒スーツにサングラスに組み合わせは、
 真っ当な仕事をしている人間がするようなファッションじゃあない。

 ブーンが店員へと歩き出したのを確認してから、俺は少女へと振り返る。
 先に入店していた彼女たちは、窓よりの大きな席を陣取っていた。
 その席に向かって、ゆっくりとした足取りで近づく。
 彼女らは訝しげな表情を浮かべ、怪しい格好をした俺を見上げる。

 なんて ―― 不幸だ。
 彼らは高校生。こんな若さで、こんな惨事に出くわすなんて、なんと言う不幸だ。
 だが、この感情は、俺の懺悔でしかない。
 一個人の懺悔では、この世界は僅かたりとも静止しない。

(■A■)「しぃさんだね?」

(*゚ー゚)「は、はい」

 少女――しぃは、怯えた表情で俺を見上げ、小さく頷いた。
 今更確認する必要は無い。
 本部で何度と無く確認したはずだ。
 追跡チームは、彼女だと完全に把握した上で尾行を重ねてきたはずだ。
 俺たちのチームへの引継ぎもミスも漏れもなく行われたはずだ。

 だから今更、なんでこの少女が、なんて思う必要は無い。

(*゚ー゚)「私に、なんの用でしょうか?」

(■A■)「ああ。別にたいした用件じゃないんだ」

 俺はサングラスを取り、少女を見下ろす。
 少女の体からは、赤い霧のようなものが生み出されていた。
 彼女の周りを、小さな金色の玉が幾つも幾つも浮遊している。

 ―― 確定。
 なんて、慈悲のない。

 自然に体が動いた。余りに自然すぎて、周りはその非日常に気付けない。
 自然な動作で俺はスーツの懐へと右手を収め、
 大口径の拳銃をそこから引き抜き、
 少女の眉間に照準を合わせて、トリガーを引き絞った。

 乾いた大音響が、四回、連続で響いた。
 頭部に二発、胸部に二発。必殺の撃ち方だ。

 しぃの体は力を失いゆっくりと倒れていく。
 あまりに自然に訪れた非日常に誰も気付けなかった。
 店員や客たちは一瞬呆けて、ややしてから、それが訪れたと気付いた。

「う……うわぁぁぁぁ!!!」

 誰もが一目散にファーストフード店から逃げ出していく。
 店員はカウンターの影に隠れて、この凶事から身を守ろうとしていた。
 俺は、ブーンへと振り返り、一度だけ小さく頷いた。

( ■ω■)「国家人類保全局だお!
      これより紅葉狩り法第二条を適用し、この店を徴用するお!!」

 ブーンは懐から令状を取り出し、コード・レッドを宣言する。
 どこからか「なんで今更」なんて声が聞こえる。
 その通りだ。
 この仕事についてから、ずっと頭の片隅から消えなかった。その疑問。
 執行官になってから、俺の頭の中には、常にその疑問が付きまとっている。


 頭の半分以上を吹き飛ばされ、胸に二箇所の風穴を開けられた少女を見下ろし、
 俺は何度繰り返したか判らない疑問を、またもや繰り返す。
 なんで、この少女が、なんて考える。

( ■ω■)「ドクオ、標的の金玉は?」

('A`)「……」

(#■ω■)「ドクオっ!!」

('A`)「!! あっ、ああ。標的の金玉だなっ!」

 少女の体の周りには、パチンコ玉のような小さな玉が無数に転がっていた。
 その玉からは、少女から漏れ出ていた赤い霧が噴出していた。
 鈍い金色で光るその玉は、見た目通り金玉と呼ばれている。
 これが俺たち執行官が狩る「紅葉」の力だ。

 俺は拳銃を懐へと収め、代わりに小さな機械を取り出す。
 散らばった金玉へとそれを向けた。

('A`)「標的の金玉は七万五千個だ」

( ■ω■)「七万五千……小物だお」

 ブーンは小さく嘆息を吐き、店員たちへと向き直った。


( ■ω■)「国家人類保全局、執行官のブーンだお」
  _
( ゚∀゚)「は。はい」

( ■ω■)「協力に感謝するお。
      貴店は紅葉狩り法第十七条二項における補填が受けられるお。
      補填内容の詳細は清掃班に聞いてほしいお」
  _
( ゚∀゚)「……」

 必要事項だけをしゃべり、ブーンは店員に背を向けた。

( ■ω■)「ドクオ」

('A`)「判ってる」

 俺はブーンに言い返しつつも、倒れたままの少女を見下ろしていた。
 理性と体は、仕事だと理解していた。
 だけど、俺のどこかが、これを納得してくれない。

( ■ω■)「……ドクオの気持ちも判るお。でも、割り切らなきゃダメだお」

('A`)「判ってるよ……そんなの」

 目を閉じ、少女だったものに背を向けた。
 サングラスを掛ける。
 もう、俺を迷わせる紅い霧は見えなかった。


 **********************************************************


 人類は万物の霊長ではない。人間以外の霊長も存在している。
 紅い力を揮うその人外は「紅葉」と呼ばれた。

 彼らは、人類とは異なる霊長だと考えられた。
 だが、違った。彼らは明らかに人類の中から生まれる。
 葉が色づき赤くなるように、人間も色づき紅くなる。
 だから、彼らは「紅葉」と呼ばれる。

 そして紅く色づいた紅葉は、不可視の金玉を操り、本能的に人を殺す。

 人類と紅葉との衝突は必至だった。
 その緊張は紅葉の発生とともに高まり、ついに二十年前、戦争という形をとった。
 戦争の勝利者は人類だった。

 外見だけでは人間とは区別が付かず、超能力を操る紅葉は確かに脅威だが、
 それはあくまでソフトターゲットを狙うテロリズムとしての脅威だ。
 数と火力で攻め立てる人類に対し、紅葉は膝を折るしかなかった。

 人類は戦争に勝利して、本格的な自衛手段を講じ始める。その一つが、
 新たに生まれる紅葉を狩る組織の設立だった。後に紅葉狩りと呼ばれる、
 国家人類保全局の誕生である。
 ブーンとドクオはその組織の執行官。
 紅葉を狩る、猟犬だ。


 **********************************************************


 仕事を終えて、俺とブーンは局本部へと向かっていた。
 ハンドルを握っているのはブーン。薬の副作用で青ざめてはいるものの、
 自動車の運転は安定している。

( ´ω`)「あー、頭がグラグラするお」

('A`)「副作用、辛そうだな」

( ´ω`)「ドクオには副作用が無いのが羨ましいお」

('A`)「仕方ねーだろ。俺とお前が打ってる薬は別モンなんだからさ」

( ´ω`)「でも、この副作用は何とかして欲しいお」

('A`)「……我慢しろよ。
    俺とは違って、オメーは薬と一生付き合わなきゃいけねえんだぞ」

( ´ω`)「それを言って欲しくなかったお。ドクオが羨ましいお」

('A`)「フヒヒwwwwサーセンwwww」

( ´ω`)「……ドクオ、運転変わってほしいお」

('A`)「だ が 断 る」


 俺たち執行官は、紅葉と戦うためにある薬品を打つ必要があった。
 本来は不可視のである金玉を見えるようにするための薬品だ。
 この薬を打つと、いろいろと精神面で変化が起こる。
 恐らく……必要な薬品以外に、覚せい剤などの興奮剤が混合されているのだ。
 そう考えても、問題は無いだろう。

 フロントガラスを通して、流れていく街の風景が見える。
 コレを守らされていると、俺は唇を噛んだ。
 ブーンならば、「守ってるんだお」と、笑顔を浮かべるだろう。
 俺には、そんな単純な割り切りは出来ない。
 体と心が勝手に割り切っていても、俺のどこかが、割り切らせてくれなかった。

( ´ω`)「ドクオ、紅葉と人類は、決して相容れる存在じゃないお」

('A`)「十分に理解しているさ」

 俺は流れ行く街の景色へと視線を移す。
 次々に変わっていく景色を眺めながら、
 誰かが滅び行く者を憶えておかなきゃ、悲しいだろうと思った。

('A`)「そうだよな、デレ……」


 **********************************************************


    ζ(゚ー゚*ζ 「ドックン」

    ζ(゚⊿゚#ζ 「なんで、邪魔をするのよ! なんで!?」

    ζ(;-;ζ 「ドックン……デレを、殺して」

    ζ(゚ー゚*ζ 「あり……が……と」


 **********************************************************


 彼女の顔が脳裏を過ぎる。
 互いに天涯孤独で、気付けば何時しか寄り添っていた彼女。
 まだ、何も知らないあどけない子供の笑顔。
 人外の者であると自らを知り、殺戮をはじめた異形の笑顔。
 微かに残った人としての自我。人としての彼女。人のとしての涙。
 笑顔。

 拳を作る。皮膚が白くなるほど、力を込めて。
 ブーンは俺が作った拳に気付き、苦笑いを浮かべた。
 その笑顔には、いずれ乗り越えるだろうという信頼が浮かんでいた。

( ´ω`)「また幼女……デレのことを思い出していたのかお?」

('A`)「ああ……、忘れられねーんだよ」

( ´ω`)「でも、彼女を……最強の紅葉と呼ばれた幼女を撃ったのは、ドクオだお」

('A`)「…………」

 識別名称「幼女」。
 それが、六十万個の金玉を従え、史上最強の紅葉と言われたデレの名前だ。
 いや、デレなんて名前で彼女を呼ぶのは、もはや俺しか残っていない。

 そして、彼女を撃った実績を以って、俺は最強の執行官と呼ばれるようになった。
 俺が彼女を撃てたのは、俺とデレが、知り合いだったからだ。
 ただそれだけの偶然。幸運。不運。
 それはともすれば、必然と呼ばれるものだったのか。
 広大な敷地の中に作られた国家人類保全局本部が、もう見えはじめていた。

 雨粒が窓ガラスを叩く。
 どうやら雨が降り始めてきたようだ。
 土砂降りとまではいかないが、それなりに勢いのある雨脚だった。

 国家人類保全局本部 ―― 執行部。

 常に人材不足で悩まされているその部署の部屋は、
 余りにも人が存在しておらずガランドウとしていた。
 少人数で使うには余りにも広すぎる室内に、
 二十にも達しない数の事務机が置かれている。
 今、この室内にいるのは仕事が終わった俺とブーンの二人だけだった。
 二人とも無言。黙々と書類仕事を進めていく。
 雨がガラスを叩く音だけが室内に響いていた。

 その沈黙を破るように、ドアが開かれる。

ξ#゚⊿゚)ξ「なんでもー、最悪のタイミングで降ってくるかな」

川 ゚ -゚)「まあ、そう文句を言うな」

 二人の女性が部屋へ帰ってきた。
 執行官の制服である黒尽くめのパンツスーツが、
 いきなり降り出した雨でぐっしょりと濡れていた。
 怒りを撒き散らしているのはツンデレ。宥めているのは素直クール。
 二人とも、珍しい女性の執行官だ。
 彼女たちもまた、俺たちと同じようにコンビを組んで活動している。

( ^ω^)「おかえりだお」

('A`)「……おかえり」

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン!
       雨が降ってきたなら迎えに来るとか気を利かせなさいよ!」

(;^ω^)「ツン、僕には仕事が残ってるお。言ってること無茶苦茶だお」

川 ゚ -゚)「何を今更。ツンが無茶苦茶なのはいつものことだろう」

ξ#゚⊿゚)ξ「クー! あなたどっちの味方よ!」

 普段どおりの掛け合い漫才が始まり、俺は少しだけ頬を緩めた。
 緊張してばかりでは気が持たない。
 ツンとブーンの二人は、明るいムードを作ってくれる得がたい仲間だ。
 和やかな雑談をしながら、ツンとクーはスーツの上着を脱ぐ。
 上着だけでもハンガーに掛けて乾かすつもりなのだろう。
 二人のその仕草を、ブーンはじっと見つめていた。

ξ ゚⊿゚)ξ「……なによ」

( ^ω^)「雨に濡れて帰って来たツンの姿も綺麗だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「え?」

 ブーンの一言で、ツンは動きを止めた。
 ブーンも、ツンの姿を凝視していた。

ξ///)ξ「…………」

ξ///)ξ「き、綺麗だなんて言われても、別に嬉しくなんかっ」

( ^ω^)「あ、おっぱい透けとる」

ξ# ⊿ )ξ「…………あんったはあぁぁぁぁああ!!!!!」

(;'A`)(ええぇぇー――、フラグへし折るの何度目ー!!?)

 良い雰囲気になると、ブーンは自ら墓穴を掘ってツンを怒らせる。
 本人は知られてないと思っているみたいだが、
 ツンがブーンに好意を抱いているのは確かだ。
 ブーンも同様に、彼女に好意を抱いているようだが、
 どうやら本人はそれに気付いていない。
 なんと言う漫画的すれ違い。
 どう見ても甘酸っぱい恋物語です。本当にありがとうございました。

川 ゚ー゚)「あの二人は、見ていて飽きないな」

(;'A`)「え? あっ……、ああ」

 俺はクーが苦手だ。
 クールな性格をしていながらも、彼女は容易く感情を表に出してくる。
 それこそ、微かな変化も手に取るくらいに判るほどにだ。
 俺は、そんなクーに対して、どんな態度で接すれば良いか、未だに把握しかねていた。
 だけどそれは、今夜断ち切ろう。
 そう思い、クーに向かって口を開いた。


('A`)「クー。今夜22時、空いているか?」

川 ゚ -゚)「え?」

 俺の質問で、クーは一瞬だけ呆けた表情を浮かべた。
 そして次の瞬間、柔らかい微笑を浮かべる。

川 ゚ー゚)「ああ。空いているぞ。空いてなくとも空ける」

('A`)「そうか……。なら、今夜22時。教練室で待っている」

川 ゚ー゚)「ああ。了解した」

 それだけ言い残し、クーは俺に背を向けた。
 腰まで伸びた黒髪が、ひらりとひるがえる。
 その様は、見事だった。


 煌々と照明が点けられた修練室。その中央で俺はクーと対峙していた。
 私服に着替えた彼女に対し、俺の服装は黒スーツ。
 執行官の正装。紅に染まったものを滅ぼす死神衣装。黄泉へと送る喪服だ。

川 ゚ -゚)「それでドクオ、何の用なんだ?」

 正装をしている俺に疑問を浮かべつつ、クーが口を開く。
 その問いが終わる寸前に、懐から拳銃を引き抜く。
 執行官のみに携帯が許された大口径だ。

川;゚ -゚)「!?」

 クーはそれを見て回避に移る。
 が、既に遅い。
 訓練どおり、頭部と胸部に狙いをつけて拳銃の引き金を四度引いた。

('A`)「考えられる最悪の中でも、とりわけ最悪だな」

 宙に浮いた幾つもの金玉を睨み付けながら、俺はため息をついた。

('A`)「紅葉狩り法第二条の適用だ……素直クール」

 全身から赤い霧を立ち上らせているクーをにらみ付ける。

('A`)「人類と紅葉は、決して相容れない存在だ」


川 ゚ -゚)「……いつからだ? いつから気付いていた?」

('A`)「ここ最近、二週間ぐらい前からだな。
    素直に感情を……殺意をむき出しにしているんだよね、お前」

川 ゚ -゚)「なるほど……。上手く演じられていたと思っていたが」

 クーは、クスリと笑った。

川 ゚ -゚)「お前には感づかれていたか」

('A`)「……ああ、そうだな」

川 ゚ -゚)「それにしても……私を相手に随分と薄着だな。
     その程度の装備で勝てると思っているのか?」

('A`)「普段と同じ正装だ。十分だろ?」

川 ゚ -゚)「勘違いしてるな……」

('A`;)「!!」

 クーの背後から、まるで湧き出るように大量の金玉が生み出される。
 その密度は異常。金玉でクーの背後に存在している教練室の壁が見えないほどだ。


川 ゚ -゚)「……私の金玉は53万個ある」


 金玉の保持数は紅葉の純粋な力を図る指標だ。
 だが、戦闘力とは、そんな単純な数値で差し測れるものではない。
 紅葉を狩り続けた執行官のクーは、戦闘のプロフェッショナルだ。
 ただの紅葉を相手にしているつもりで戦うと、こちらが負ける。
 それを、この瞬間、はっきりと自覚した。

川 ゚ -゚)「この身が紅く染まるまで、私は多くの紅葉を狩ってきた」

 クーは大量の金玉を身に纏い、俺へと歩み寄ってくる。

川 ゚ -゚)「はっきり言って後悔したよ。だが、冷静になって考えてみれば
     これはチャンスだと判った。なんと言っても、
     国家人類保全局を背後から撃てる位置を取れたのだからな。
     不用意に紅葉だと露呈してしまう愚は避けたつもりだ」

川 ゚ -゚)「この千載一遇を逃さぬように、私は潜伏していくつもりだった。
     それを……ははっ、行動に移す前に、お前に感づかれてしまうとはな」

川  - )「私は仲間を殺しすぎた。せめてもの贖罪として、お前だけでも殺す」

 殺意のこめられた瞳で、俺を睨み付ける。

川 ゚ -゚)「最悪、相打つ覚悟で行く」

 それだけ言い、クーはリノリウムの床を蹴った。
 傾斜姿勢でクーは駆け寄る。
 距離は三メートル。一瞬で詰められる間合いだ。
 俺は構えたままの拳銃で再度照準を取り直す。


(#'A`)「お、――――ぉぉぉおおおおおおおお!!!!!11」

 積み重ねた訓練は裏切らない。体が自然に立射の体勢を取った。
 大型拳銃をクーへ向け、トリガーを引き絞る。

川 ゚ -゚)「無駄だ」

 クーは、体の周りを漂わせていた金玉を密集させ、簡易的な盾を形成する。
 銃弾が金玉へと食い込み、そのいくつかを紅い霧へと変えた。
 だが、盾を食い破るまでには至らない。クーまでには至らない。

川 ゚⊿゚)「死ねっ!」

 盾の影に隠れていた金玉が、驚異的な速度で俺へと向かってくる。
 それは、まるで殺意の散弾。
 殺意の一粒一粒がリノリウムの床を削り、コンクリートの壁を穿つ。
 放射は一瞬だった。室内は散々に撃ちぬ貫かれ、蹂躙し尽くされていた。
 俺は何とか回避が間に合い、左肩を撃ちぬかれただけですんだ。

('A`;)「やべぇ……」

川 ゚ -゚)「仕留められないだと……まあ、当たり前か」

 俺は瞬時にクーから距離を取っていた。
 金玉の速度や威力は脅威だが、その軌道は直線的だ。
 タイミングを読めば、かわせなくも無い。
 それでも、気を抜くなと思った。あれは間違いなく、最強の紅葉だと。

川 ゚ -゚)「さすがは……最強と呼ばれる執行官だ」

 クーは自嘲めいた笑顔を浮かべ、ゆっくりと歩き出した。
 俺を中心にした円を描くような、歩み。

川 ゚ -゚)「ドクオ。私は覚悟とは力だと思っている」

('A`)「?」

川 ゚ -゚)「そう覚悟とは、エネルギーに向かうべきベクトルを与える力だ」

('A`)「……それが、どうした?」

川 ゚ -゚)「お前にはあるのか? 確固とした信念――覚悟がっ!
     私にはあるっ!
     仲間たちのために、今まで仲間だったものを討つという覚悟がっ!」

('A`;)(こいつ……、普通の紅葉には感じられない『スゴ味』があるっ!!)


川 ゚ -゚)「故に――、私は幼女を超える!」


(#'A`)「くっ!!」

川 ゚⊿゚)「死ねっ!」



 殺意が交差する。重なる時間は一瞬。
 人を狩る人外と人外を狩る人の交戦は、それで終わった。


( A )「…………」

川  ⊿ )「…………」


( A )「…………」

川  ⊿ )「…………馬鹿な……」


 緊張の糸が切れる。
 全身から力を失ったかのようにクーが地面へと倒れた。
 俺は安堵のため息をついて、教練室の出入り口へと振り返る。


('A`)「……遅いぜ、ブーン」

( ^ω^)「フヒヒwwwサーセンwwww」

 教練室の出入り口からブーンが姿を現す。
 彼の手にはアサルトライフルが握られていた。
 それでクーを撃ち抜いたのだ。

 俺は倒れたクーへと歩み寄る。
 歩きながら拳銃からマガジンを抜き取り、残弾を確認した。
 マガジンには弾は残されていない。拳銃に装填された弾が、最後の一発だ。

川  - )「…………卑怯だな」

('A`)「お前たち紅葉と真正面から戦って、俺たちに勝ち目なんてあるかよ」

川  ー )「…………確かに、な……お前たちの武器は」

('A`)「ああ、火力と数だよ。ついでに、それを隠しておくセコイ手」

 なんてことは無い。
 初めから、俺を囮に使った不意打ちを狙っていただけなのだ。
 そんな保険がなけりゃ、捕食者の前に無防備で立つなんてできやしない。
 自分自身の力を過信した驕慢。それこそが、クーを撃ち貫いたものだった。

('A`)「とどめは居るか? ……なんて質問は不用か」

 クーの返事を待たず、俺は引き金を引く。銃声が一度だけ響いた。
 最後の銃弾は、狙い違わず、クーの頭部を穿った。

川  ー )「…………」

 クーの体から噴出していた赤い霧がようやく止まった。
 教練室中に散らばった53万の金玉も、悪夢のように消えてしまうだろう。
 だが、俺からは消えない。俺は忘れない。

 最後の最後、質問を投げかけた時、クーは確かに笑った。
 その笑顔を忘れない。
 俺へと……人類へと向けられた殺意を忘れない。


 素直クールは、感情を隠し通せなかった。
 他の人間のことなんて、俺にはわからない。
 だけど、彼女は俺に対してだけは感情を押し隠せなかった。
 それは俺が、幼い頃から人の顔色を伺って育ってきたからなのか、
 元より彼女が、俺に対して感情を隠してなかったからなのかは、今では判らない。


('A`)「お前は、下手だよ」

 俺は彼女から向けられた好意を知っていた。彼女の気持ちに気付いていた。
 それが殺意に変わったときも。はっきりと判った。
 クーは下手だった。クーは真っ正直に生きすぎだった。
 だから、俺みたいなロクデナシに騙されるんだ。
 お前は、生き方が下手だったんだ。
 ブーンが俺の背後に歩み寄ってくる。振り返った。

('A`)「ブーン……」

( ^ω^)「お? なんだお?」

('A`)「もしもの話だが、ツンが紅葉だったら、お前は撃てるか?」

( ^ω^)「撃つお」

 ブーンは何も気負わず、端的に答えた。


( ^ω^)「僕は『黄色』だお。
      これ以上、紅くならないように薬で進行を抑えてるお。
      それだけだと、人類に殺意を持っていないだけで、紅葉と一緒だお。
      そんな僕が、紅葉に同情するのは自殺行為だお。
      僕は死にたくないお」

('A`)「そーか」

 ブーンもブーンで、何かを持っているのだろう。
 俺が、デレやクー。今まで殺してきた紅葉の名前を持っているように。

( ^ω^)「……ドクオ?」

('A`)「ああ。判ってるよ、人類と紅葉は相容れない」


 だからって、幸せそうなヤツを紅く染める必要はないだろう?
 だからって、俺に好意を抱いた女を紅く染める必要はないだろう?
 だからって、俺に紅く染まったヤツを殺させる必要は無いだろう?


('A`)「なんて―― 慈悲の無い」


 なんて慈悲の無いヤツなんだ、俺は。


 もう、随分と前に枯れ果てたはずの涙が、今だけは流せそうな気がした。
 だけど、一向に紅くなれない俺には、涙は流すことは出来なかった。





この小説は2007年10月19日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:3X47YQ5n0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです


お題
・薄着
・紅葉狩り
・「雨に濡れて帰って来たツンの姿もまた綺麗だ
  あ、おっぱい透けとる」
・故に私は幼女を超える
・私の金玉は53万個あります


ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/31 23:27 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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