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( ∵)ビコーズの災難のようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




無口、鉄面皮、無愛想。
何を考えているのか分からない不気味な人。
自分に対する評価は、いつもそんな単語ばかりだった気がする。

別に否定するつもりはない。
自分でも自分がそんな単語で表せてしまう人間だと理解しているつもりだ。

ただ、自分で弁解するならば、自分はあくまでも表面的に限り平らな人間だ。

ちゃんと人並みの感情も思考回路も持ち合わせているつもりだし、決して冷血漢ではないと思っている。

楽しいことは楽しいと感じるし、悲しいことは悲しいと感じる。

好きな事や物もあるし、嫌なことや物だってある。

好きな人だって出来たことはある。

自分のそういった感情や思考回路が、ひたすらに表に出にくいだけなのだ。

実際、この性格というか性質というか、自分が持って生まれたこのある種の特技のせいで、
自分は他人から一マス分距離を置かれる存在になってしまった。

だからなのだろうか。
自分の特技はさらに研ぎ澄まされ、世界無表情選手権だとか、世界無愛想選手権だとかが開催されたならば
間違いなく世界一に輝けるであろうほどにまで熟練してしまい、
より他人を寄せ付けないオーラまで身につけてしまった。

自分とてこの状況には危機感を抱いた。

自分だって人並みの生活を送りたい。
まして今の自分は華の高校新入生だ。

友達を作り、思い出を作り、新しい自分を作りたかった。


……結果。
入学式を迎えた自分は、たまたま隣に座っていた自分と同じ新入生の女の子に、
実に一ヶ月の間練習し続けて来た笑顔を繰り出し……
そして、繰り出した相手を……






……病院送りにした。


凹んだ。
やはり顔には出なかったが、相当凹んだ。
泣けるのならば泣きたかった。

笑顔で人を気絶させるなど聞いたことがない。
ましてや初対面の相手をだ。

しかし、さらに不幸は重なる。
無表情で凹んだが故に、入学式の翌日から、
「初対面の相手を病院送りにした揚げ句平然としている鬼畜」などという、
不名誉極まりない称号を得てしまったのだ。

「作れたのは友達や思い出どころか自分の回りに聳(そび)える高い壁だ」などと、
上手いことを言っている場合ではない。
もはやどうすればいいのかわからない。

笑ったら誰かが病院送りになるのに、笑わなければ怖がられる。

言葉で弁解しようにも、今までに培った会話スキル等皆無だ。
誰にどうやって話し掛け、どうやって弁解すれば良いのかさえも分からない。

無表情スパイラルとは正にこのことだと、
心の中で自分を嘲笑した。
やはり自分は無口で無表情で鉄面皮で無愛想で笑顔で人を気絶させることだけが取り柄の人間なのか。

彼女が現れたのは、そんな絶望に打ちひしがれていた時だった。



20071027114612.jpg



今は入学式から二日目の朝。
人の寄り付かない自分の机で、入学式から今までの素晴らしき記憶を回想していた自分は、
ベルの音を聞いて我に帰った。

先日自分が病院送りにした同級生は、何の巡り会わせか同じクラスだった。
しかし、彼女は入学式に来たっきり、一度も学校に来ていない。

( ∵)「……」

……このまま不登校になってしまいでもしたら、本当に笑えない。

担任が教室に入り、自分は他の生徒に合わせて起立する。

同時に礼。着席。
担任が出席簿を片手に出席を確認する。

( ´∀`)「えー……欠席はしぃさん……」

( ∵)「……」

見るなよ。分かってるよ。
自分のせいだよ。反省してますよ。
昨日も見てたよな。既に要チェック生徒ですか。

担任のチラ見攻撃に耐え抜き、朝のクラスルームを終えた自分は、
クラスルームが終わるなり席を発っていった自分の周りの席の人々に極力目を合わせないようにしつつ、
一時間目の用意を出して静かにしていた。

「……ねぇ……あの人でしょ……?」


廊下からこっち見てる奴。
お前隣の隣の隣のクラスだろ。
一々見に来るなよ。

「般若の笑顔を持つ男だろ……?」

何だ「般若の笑顔を持つ男」って。
いや、効果は身をもって思い知らせて思い知ったけれど。
もうちょっと温和なネーミング頼みますよ。

「自分の笑顔を鏡で見たことあるのかな……?」

自分で自分の笑顔を見たかって?
見たさ。
会心の出来だと我ながら思ってた。
悪いか。何か文句でもあるのか。


「しぃちゃんからのメール……めちゃめちゃ怖がってたよ……」

しぃ様。
全力で誤解しておられます。
どうか一刻も早く御登校なされまして、ワタクシめに弁解の余地を頂きたく存じます。

苦痛に外ならない時間がしばし続く。
授業はまだか。

すると、下腹部に違和感があった。

尿意だ。
しかもかなりのレベルが鉄砲水の如く襲い掛かって来た。

( ∵)「……」

到底授業の間耐えられるレベルではなさそうなので、
トイレに行こうと席を立つ。

ガタガタガタヤベェニゲロガタガタキャーコワーイガタガタガタガタ

( ∵)「……」

……キレてないですよ。自分をキレさせたら大したモンですよ。

でもな、廊下から覗き見てた奴、一斉に逃げ出すなよ。
ほら、自分の隣の隣の席の女の子、頼むからもうちょっと血色良くして。ね?
視線が合っただけでそれはないよ。

結局、自分がトイレに向かって帰る間、前方には誰もいなかった。


しばしの時間が経過し、三時間目の授業が終わった。

( ∵)「……」

おい、周りの皆さん。
一時間目も二時間目も、お前ら終業ベルを合図に席を立つ速さでも競ってんのか。
特に前の奴。お前躓いて転ぶとかどんだけ急いでんだ。
「大丈夫?」って声掛ける暇も無かったぞ。

( ∵)「……」

ともあれ時間は昼食休み。

本当ならまだ余り互いを知らないクラスメートと共に屋上にでも行って、
出身校とか他愛もない話で盛り上がっているはずなのに、
自分ときたら誰も来なさそうな体育館の裏で一人淋しく飯を食べようとしている。

( ∵)「……」

……そろそろ一人ツッコミもキツイ。

ひたすらに憤慨して気分を紛らわして来たが、
こうやって一人になるといかに空しいモノだったか思い知る。

結局今まで通りの評価を背負って生きて行かねばならないのだろうか。

無性に悲しくなったが、無表情な自分は涙を流さなかった。


( ∵)「……」

空腹はこんな時にもやってくるから困る。
持っていた弁当箱の包みを解き、弁当を広げた。

何を隠そう、この弁当、自作である。
具はダシ巻き卵、鶏の唐揚げ、ほうれん草のお浸し、ミニトマト、デザートにウサギ林檎だ。

ただし、決してさりげなく女子生徒に見せて「スゴーイ」だの「ビコーズ君意外!」だの言われたかった訳じゃない。

決して。

決して断じて命に賭けて違う。

( ∵)「……」

そんな弁当に箸を向け、先ずはダシ巻き卵を食べようとした矢先だった。


「うおおああああ!!」


何やら転がる音が聞こえる。どうやら頭上からだ。

ふと見上げた瞬間だった。

从;゚∀从「あああああ!!!」

( ∵)「……」

体育館の屋根から人影が飛び出して来たのだ。

人影は荒川静香だろうが織田ナントカだろうが真似出来ないほどの超回転アクセルを行いながら落下する。

从;゚∀从「ぶべらッ!」

自作弁当の上に。


( ∵)「……」


( ∵)「……」

何が起こったのだ。

体育館の屋根から錐揉み回転落下し、目の前に横たわるパンツ丸見えの女子生徒と、
その下敷きになっているであろう我が弁当を見据え、自分は混乱の極みだった。

从#゚∀从「ぬあー!」

唐突に女子生徒が跳ね起きた。
頭をブンブンと振り回す。

从 ゚∀从「畜生……まさか体育館の屋根で眠りこけて転がり落ちるとは……」

丁寧な説明を含んだ独り言を呟いて、女子生徒は立ち上がり、やっとパンツを隠したスカートをはたいた。

从 ゚∀从「……ん?」

どうやらようやくこちら側に気付いたらしい。

从 ゚∀从「……アンタもしかしてさ……」

ああ、見ました。スイマセン。
速やかにそう言うべきか悩む自分に女子生徒が聞いたことは、ある意味予想外だった。


从 ゚∀从「般若の笑顔を持つ男?」

( ∵)「……」


むしろパンツ見たかと聞いてほしかった。
女子生徒からもそんな名前で呼ばれては、生きていく気力がない。

从 ゚∀从「だよなぁ。めっちゃ無表情だし」

( ∵)「……」

ああ、判断材料も的確かつ残酷ですね。
そんな一人ツッコミをよそに、目の前の女子生徒は体勢を胡座に変えて、勝手にテンションを上げていく。

从 ゚∀从「だろ!?やっぱりなんだろ!!」

( ∵)「……」

从 ゚∀从「無口だなーおいwwww」

( ∵)「……」

……あー死にたい。

从 ゚∀从「って、あ……」

女子生徒の視線が下を向いて固まった。

その先にあったのは無残な姿に成り果てた我が弁当。

从 ゚∀从「……お前の?」

( ∵)「……」

頷きで返した。

从 ゚∀从「……」

すると、女子生徒はしばし考えたように黙ると、

从 ゚∀从「……もーらいッ!」

コンクリートの地面に落ちていたダシ巻き卵を手に取るなり、口の中に放り込んだ。

( ∵)「……」

いきなり何をし出すのか。

自分は心の中で驚愕しつつ、口をモゴモゴと動かす女子生徒を見た。

女子生徒は何やらこちらを凝視している。

やがて巻き卵を飲み込んでしまった。

从 ゚∀从「……本当に無表情なのな」

不思議そうな顔をして、女子生徒は呟いた。

( ∵)「……」

从 ゚∀从「で、無口……と」

女子生徒は相変わらずこちらを凝視している。
視線を反らせずに、自分は女子生徒と目線を交わし続けた。何この状況。

从 ゚∀从「フツー驚くなり怒るなりするだろー」

( ∵)「……」

いや、驚きはしてますが。
表情に出ないだけで。

それを伝えるのにはやはり言葉が必要なのだろうかと思った矢先だった。

从 ゚∀从「ああ、その顔で驚いてんのな」

一瞬驚愕が顔に出そうだったが、出なかった。
この女子生徒は心でも読むのだろうか。

从 ゚∀从「てかさ、このダシ巻き卵めちゃめちゃ美味いな!」

( ∵)「……」

女子生徒は自分の動揺など意にも介さず、もうひとつ地面に落ちるダシ巻き卵を持ち上げ、
口に放り込んで言った。

从 ゚∀从「スゲー好みなんだけど!この唐揚げも貰っていい?」

二つ目の巻き卵も食べるや否や、今度はかろうじて弁当箱に残っていた唐揚げも自分の返答も待たずに食べてしまう。

从 ゚∀从「ご飯無いの?ご飯!」

( ∵)「……」

さらには主食まで要求してきた。
勢いに飲まれて、持っていたご飯をよそった櫃(ひつ)を渡してしまう。

数分後。
弁当箱は空になった。

从 ゚∀从「あー美味かった!」

女子生徒は腹をさすりつつ、足を放り出して長座座りをした。

( ∵)「……」

何なんだ、一体。

从 ゚∀从「わりぃね、昼食盗っちゃって」

明らかに悪く思っていない口調で、女子生徒は片手を面前で立てて謝った。

( ∵)「……」

从 ゚∀从「あり?また無口クン?」

女子生徒に覗き込むように顔を見られて、自分は顔を引く。

( ∵)「……喋るのは苦手」

ようやく出せた一言がこれか。
流石だな自分。

が、女子生徒には充分だったらしい。

从 ゚∀从「ふぅん……」

軽く頷きつつ視線を下にずらした。

从 ゚∀从「あのさ!」

かと思えば、急にこちらを至近距離で見てくる。

从 ゚∀从「この弁当、自作?」

( ∵)「……まぁ」

上手く声が出ない。
まさに待ちに待ったシチュエーションだというのに。

从 ゚∀从「マジで!?」

女子生徒は驚きつつ再び腹をさすった。

从 ゚∀从「いや、スゲー美味かったからさ」

正に、正にに待ち侘びた瞬間だった。
流石に顔が綻びそうになる。

( ∵)「……」

しかし、ふと過ぎった入学式な出来事が、顔の筋肉を再び固まらせた。

( ∵)「……どうも」

かろうじて搾り出せたのは、ありきたりな一言だった。

从 ゚∀从「……」

( ∵)「……」

再び沈黙。
仕方の無いことだ。
相手からすれば遠慮なく聞ける質問にことごとく中途半端な答え方をされたのだから。

自分を打開するチャンスを自分は自ら投げ捨てたのだ。

そんな自分を自責していた、その瞬間だった。


从 ゚∀从「コレ一日に二つ作るって無理?」


女子生徒が口にした言葉に、思わず我を疑う。

从 ゚∀从「……いや、無理なら良いんだけど。
     余りに気に入ったから、また食べられたらいいなーと思ったんだよ」

女子生徒が少し控えめにそう言うのを聞いて、
しかし耳に聞き間違いは無かったと確信した。

自分は顔を縦に振る。

从 ゚∀从「いいの?マジで!?」

女子生徒も嬉しそうな表情に変わった。

( ∵)「……いいよ」

よく分からないが、彼女が自分にとって初めての「知り合い」になりそうだった。







この小説は2007年9月16日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:n4GeyjabO 氏



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[ 2009/12/31 23:25 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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