はじめてブーン系小説を読む方は
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祭り太鼓の音でぼんやりと光る提灯の灯りを思い出した。
そういえば今日は祭りだったなぁ。
いつから俺は空気になって、みんなと遊びにもいかなくなったんだっけ。
(#`・ω・´)「おいっ、とっとと酒持ってこい!」
J( 'ー`)し「はい、ごめんなさい‥‥。どうぞ‥‥」
怒鳴り散らす父の元に缶ビールをお盆に乗せて台所からカーチャンが現れた。
(#`・ω・´)「遅いぞ! だからお前は駄目なんだ!」
父は遠慮なくカーチャンの左頬を殴ってビールを奪う。
カーチャンは殴られた衝撃で床に叩きつけられた。
J( 'ー`)し「‥‥ゲホッ‥‥ごめん‥‥なさい‥‥うぅ‥‥」
苦しげに呻いていたが、父は見向きもしない。
これが普通なのだ。この家では。
父は飲んでばかりで仕事もしない。
カーチャンは父の暴力に耐えながらパートをして家計を支えていた。
出来た母親だと思う。
カーチャンのおかげで俺は高校に通うことも出来ている。
根っからの暗い性格のせいで友達が出来ず、楽しいとはお世辞にも言えないが。
(#`・ω・´)「クソッ! 無くなったぞ! 持ってこい!」
父は忌々しげに空になった缶をカーチャンに投げつけた。
J( 'ー`)し「‥‥ごめんなさい、もうお酒は無くて‥‥」
カーチャンは申し訳なさそうに俯きながら言う。
(#`・ω・´)「なんだと! なんで無いんだ! 死ねっ! 死ねっ!」
激昂した父は顔を真っ赤にしてカーチャンを蹴り始めた。
カーチャンは身体を丸めてひたすら耐えていた。
J( 'ー`)し「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
俺は耳を塞いだ。
('A`)「‥‥」
狭いアパートに住んでいるから、俺に自室というものはない。
だからこういう時は仕方なく、耳を塞いで空気になることにした。
居間の隅に縮こまりながら、ひたすら父の怒りが納まるのを待つ。
(#`・ω・´)「死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ!」
J( 'ー`)し「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
父がカーチャンの腹を蹴って仰向けにさせた。
すかさず馬乗りになって首を絞める。
軽快な音楽が聞こえる。
スピーカーから流れ出る、お世辞にも綺麗とは言えないがさつな音。
J( 'ー`)し「‥‥うっ‥‥あぁあ‥‥」
苦しげにカーチャンが呻く。
顔がみるみる赤くなって、口を金魚みたいにパクパクさせた。
鳥の足みたいな細くてガリガリの指が父の手を剥がそうと動き回る。
呻き声と軽快な音楽が混ざる。
('A`)「‥‥カーチャン」
懐かしくて思わず小さく呟いた。
甚平を着せてもらって行った夏祭り。
八月の初めの夜は暑くて、ラムネが美味しかった。
金魚すくいでは黒い大きな出目金をすくった。
家に帰ってカーチャンにあげたら、カーチャンは皺だらけの目をもっと細めて
くしゃくしゃな顔をして笑った。
J( 'ー`)し「ありがとう、ドクオ」
('∀`)「うんっ!」
カーチャンは真面目で優しくて、良い人だ。
だから一人で背負いこんだんだと思う。
でもいつか爆発するんじゃないかって、怖かった。
J( 'ー`)し「‥‥うっ、あああああああああああああ!」
突然、カーチャンは父の手を振り払って今度はその細い指を父の首に絡ませた。
父は驚愕の表情を浮かべたが、すぐに苦悶の表情へと変わる。
(`・ω・´)「‥‥うぁ‥あぁ‥‥」
J( 'ー`)し「息がっ、息が出来ないっ! 息がっ、息が息が息が!」
カーチャンの目はおかしかった。
目の前の父を見ていない。
焦点が定まらないまま父の首を絞めていた。
J( 'ー`)し「ああぁぁぁ!」
奇声を発しながら父を揺さぶる。
俺は見ていられなくて、耳を更に強くふさいで膝を抱えた。
(`・ω・´)「‥‥うっ‥‥」
父が一層苦しげな声をあげたあと、なにか重い物が落ちる音がした。
俺は一瞬、身体を震わせる。
何の音かなんて、すぐに分かってしまった。
俺はこめかみが痛くなるくらい強く、強く耳を抑えた。
大丈夫。俺は空気だから。誰も見ていないから。平気だ。
平気だから。平気なんだ。
J( 'ー`)し「ドク‥‥オ‥‥」
聞きたくない。聞かせないでくれ。
J( 'ー`)し「ごめんね、カーチャン‥‥」
カーチャンが近寄ってきて俺の頭を撫でた。
やめろ、やめてくれ。お願いだから‥‥。
遠くで流れる軽快な音頭で頭がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられる。
いやだ。聞きたくない。聞きたくない。
J( 'ー`)し「お父さん殺しちゃったよ‥‥」
カーチャンの手が下へと向かう。
暖かくてガサガサした手が首へと伸びる。
ハッとして顔をあげるとカーチャンの顔がすぐ近くにあった。
俺と目が合うと、カーチャンは口元を大きく歪めた。
皺だらけの目を細めて、くしゃくしゃな顔をして笑う。
何年振りかの、カーチャンの笑顔だった。
遠くの音が、止んだ。
('A`)「あ」
俺が叫ぼうとした瞬間、首筋の手に力が込められる。
J( 'ー`)し「ごめんね」
「――――はい、ありがとうございました。皆様、次の曲は――」
了
この小説は2007年8月8日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:1Mvl9hi/0 氏
作者がお題を募集して、それを元に小説を書くという形式のものです
お題・空気
・母が爆発した
ご意見等あれば米欄にお願いします