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どうしてもそれが見たいようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




雑谷県立、美府大学。

学歴は中の下、強い部活があるわけでもない、ごく一般的な大学。
強いて挙げるとすれば、専門の庭師によって手入れされた植木が美しいところか。
それほど高い希望を持たなかった学生や、あるいはその高い希望に手が届かなかった学生が集う場所である。

<丶`∀´>「見たニダ! ウリは見たニダよ!」

昼休みで賑わう学生食堂の一角で、一際甲高い声が加わった。
日本語でないものが混じった片言の話し方と、頬のこけた顔が特徴的な彼はキム・ニダー。
韓国からの留学生で、大学は二年目になる。

ニダーが向かう先には、テーブルの上のランチをぶすっとした顔でつまむ、一人の学生の姿があった。

( ,,゚Д゚)「あぁ? 何を見たんだゴルァ?」

ニダーと同じく二年生の羽仁屋擬古人(はにやぎこひと)が、少し柄の悪い声で答えた。
しかし、別段二人は仲が悪いわけではなく、これは羽仁屋の癖の問題だった。

ニダーは羽仁屋の向かい側の席に座ると、彼の水をひったくって一気に飲み干す。
そうして、ふう、と満足そうに一息つくと、空のコップを羽仁屋の前に戻した。
ただでさえ不機嫌そうな羽仁屋の表情が、さらに険しいものに変わる。

( ,,゚Д゚)「ったく、ちゃんと入れ直せよな」
<丶`∀´>「そんなことより! ウリは見たニダ!」

先ほどから同じことばかり言うニダーを、羽仁屋は訝しげな目で見つめる。

すると、そこへふわりと香水の匂いが漂った。


(*゚ー゚)「何を話してるの?」

ランチを手にして現れた彼女の名は椎名綾(しいなあや)。
レースが施された白のワンピースとデニムを着て、黒のサンダルがリノリウムの床をきゅっきゅと鳴らす。
髪は肩までのショートカットで、その下に少し幼さを残す顔立ちを有している。

彼女も二人と同じ二年生で、羽仁屋とは恋人関係にある。
手にしたランチを長テーブルの上に置き、彼女は恋人の隣に座った。

( ,,゚Д゚)「で、何を見たって?」

<丶`∀´>「飛び降り死体ニダ!」

(;,,゚Д゚)「ハァ!?」

突然のニダーの発言に、羽仁屋はこれでもかというほどに面食らう。
隣にいる椎名も例外なく、その表情は鳩が豆鉄砲を食らっていた。

(;,,゚Д゚)「お、おい、どういうことだよ?」
<丶`∀´>「ウリの住んでるマンションで、今朝飛び降り事件があったニダよ」

すぐに羽仁屋が説明を求めると、ニダーの口の端がにやりと緩む。
そうして唾を飛ばしながら、彼は雄弁に事の顛末を語り始めた。



20070822101421.jpg



ニダーは決して裕福なわけではないが、留学生という立場のおかげで、なかなか好環境のマンションに住んでいた。
五階建ての、なかなか見晴らしのいいマンションで、彼が住んでいたのは五階の一番奥の部屋である。

その日、授業の関係で、ニダーはいつもより早い時間に起床していた。
洗顔や朝食を済ませ、出かける時間まで暇を潰そうと、テレビでニュースをぼーっと見ていた時である。
彼の視界に、ぱんぱんに膨らんだゴミ袋が入ってきたのだ。

そうして、彼は今日が丁度ゴミを捨てる日であることを思い出した。
未だ寝巻きのままだったが、特に気にすることもなく、ゴミ袋を持って彼は部屋の外へと歩き出た。

そして、その瞬間――彼の目の前を、“白い何か”が通り過ぎた。

寝ぼけていたのもあって、ニダーは最初、何が起きたのか把握することができなかった。
ただ、次の瞬間に聞いた、「どん」という音で、彼は一気に眠気が覚めていくのを感じた。

次に気付いた時には、彼の足は一階へと続く階段の上を駆けていた。
助けようと思ったからなのか、野次馬的な好奇心からなのか、とにかく彼は走った。
寝起きであることや、今日の授業のことも一切忘れて、彼は走った。

――そうして、彼の足が止まった場所には、見るも無残な光景が広がっていた。

地面、壁、傍にあった自転車……そのどれもが、赤い液体に染められていた。
無論、液体だけではない。ピンクのぶにぶにとしたものも、そこら中に飛び散っている。

ドラマの中であるような、綺麗なままの死体などは存在せず、あるのは衝撃で滑稽とも言える姿となった物体だけだった。

ニダーはその場で嘔吐した。
そこで見たものは、彼の許容する感情の受け皿をあっという間に溢れさせた。

やがて、先ほど食べた朝食を全て戻したニダーは、よろめく体で管理人室へと向かっていった。


(;,,゚Д゚)「……」
(;゚-゚)「……」

羽仁屋と椎名の二人は、ニダーの話が進む度に、どんどん口数を減らしていった。
そして今や、目の前にあるランチは手も付けられずに放置されている。

<丶`∀´>「その後は警察が来て、あっという間に立ち入り禁止になっちゃったニダwww」

羽仁屋は、この目の前で陽気に話す男のことが信じられなかった。
どうしてそんなに楽しそうに話すことができるのか。見た瞬間に吐いたんじゃないのか。
それではまるで、自慢話のようじゃないか、と。

お国柄なのか、それともニダーが特別なのか、羽仁屋は本格的に気分が悪くなってきていた。

<丶`∀´>「それで、何より憶えているのが……」
(#,,゚Д゚)「もういい!」

羽仁屋は怒気の込められた声でニダーを制止する。
ニダーもその尋常ではない様子を察し、小さく舌打ちした後、話す口を止めた。

<丶`д´>「これからが面白いニダのに……」
(#,,゚Д゚)「もういい、もう十分だ」

羽仁屋は一度だけ大きく息を吐き、空になったコップに水を汲もうと席を立つ。
そうして、給水器の前に並ぶ列まで歩き、もう一度小さく息を吐いた。

(,,゚Д゚)(ったく……どういう神経してやがんだゴルァ)

羽仁屋が列の最後尾からテーブルの方を覗くと、何やらニダーが椎名に話しかけているようだった。
だが、話を聞く椎名の様子からは、それほど嫌な話をされているようには見えない。
恐らくは、急に怒鳴った自分に対する嫌味だろうと、羽仁屋は特に気にはしなかった。

水を汲み終わった羽仁屋は席に戻るが、その後は水を飲むだけで、食事に手を付けることはできなかった。
それは隣の椎名も同じで、結局二人は昼休みが終わるまでニダーが満腹になる様を見守っていた。




――そして、その数日後、羽仁屋はマンションの屋上からニダーが飛び降りたことを知った。




(,,-Д-)「……」

ニダーの葬式が開かれる中、そこには羽仁屋達の姿もあった。
喪服に身を包み、棺の前で手を合わせる。
彼の母国である韓国のやり方で行われた葬儀だったが、特別に羽仁屋達はそれが許されていた。

( ´∀`)「……ニダーって、やっぱり友達が少なかったみたいモナ」
(,,゚Д゚)「……そうか。まあ、あの性格じゃな……」

羽仁屋に話しかけたのは、学友の尾前茂名(おまえもな)である。
彼も羽仁屋を通じてニダーとの面識が少しあり、今回の葬儀に出席していた。

(,,゚Д゚)「……」
( ´∀`)「どうしたモナ?」
(,,゚Д゚)「いや、実はさ……」

羽仁屋は尾前に、数日前にニダーから聞いた話を教えた。
途端、尾前の表情に驚きの色が混じる。

それもそのはず、ニダーが死んだ状況は、その時話した飛び降り自殺のものと全く同じだったからだ。
果たして偶然の一致なのか、二人はそれっきり言葉に詰まる。
葬式というふいんきと相まって、一気にどんよりとした空気に変わり、羽仁屋は話したことを後悔した。

すると、奥の方より二人の元に近付いてくる姿があった。椎名である。

(*゚ー゚)「ギコくん、茂名くん」
(,,゚Д゚)「ああ」

椎名が来たおかげで、羽仁屋は少しふいんきが晴れたような気がしていた。
ちなみに彼女の言う「ギコくん」とは、羽仁屋の名前から取ったあだ名である。

(,,゚Д゚)「ちょっと、嫌な感じだな」
(*゚-゚)「……うん。ニダーくん、自分の見た通りの形で死んじゃうなんて……」
( ´∀`)「……あ、綾ちゃんも知ってるモナか」

尾前に対し、椎名はこくりと頷く。
そして、それっきりまた三人は黙ってしまった。
なんともいえない空気が、再びその場を支配する。

果たしてそれに耐え切れなくなったのか、尾前が突然とんでもないことを話し出した。

( ´∀`)「……そういえば、最近僕も人が死ぬのを見たモナ」
(*゚-゚)「え……」
(;,,゚Д゚)「おいおい……」

尾前に向かって、驚愕する二人の視線が集中する。
羽仁屋はあからさまに嫌な顔をして見せたが、尾前はふんぎりがつかないのか、そのままつらつらと話し続けた。

( ´∀`)「……駅のホームでの投身自殺だったモナ。
       五十代ぐらいのおじさんがいきなり飛び出して……」

その時の映像が甦ったのか、話す尾前の表情にも険しさが増す。
椎名もいる上、この場ではあまりにも不謹慎だと、羽仁屋はその語りを止めようとする。
しかし、尾前はまるでそれが話さなければならないことのように、そのまま口を動かし続けた。

( ´∀`)「電車のブレーキの音と、何かがぶつかったような音がして、
       駅にいた全員が一瞬黙ったモナ」
(;,,゚Д゚)「やめろって……」

( ´∀`)「おじさんは風船みたいに破裂して……赤と黄色が線路に飛び散って……」

(,,゚Д゚)「……え? 黄色?」


その時ふと、羽仁屋は尾前の話に気になる部分を見つけた。
彼の言った「赤と黄色が飛び散る」……赤はわかるが、二つ目の黄色とは何なのか。

羽仁屋は何故かどうしてもそれが気になり、話を強引に遮ってまで説明を求める。

( ´∀`)「確か……人の体にある脂肪が黄色いんだそうモナ」
(,,゚Д゚)「へえ……」

実際に想像できるわけではないが、羽仁屋は人体に黄色が混じっている事実に驚く。

その時は葬式であることも忘れ、羽仁屋はただただ好奇心を刺激されていた。
しかし、すぐに再び尾前に対して話をやめるように呼びかける。

隣にいた椎名が、うつむいたままでじっと黙っているのを見たからだ。

その後、葬式は滞りなく進み、羽仁屋達は自分達がいることのできる最後まで出席した。
途中、大声で泣く女性の姿に羽仁屋達は驚いたが、それは韓国の葬儀には欠かせないものだと知った。

それはれっきとした作法であり、「哭」の儀式と言う。
ただし、さめざめと流すような自然な涙ではなく、わざとらしいほど大袈裟にその人達は泣き続けるのだ。
その様子は日本人である羽仁屋達にはやはり異質であり、そして不気味なものであった。

そうして、ニダーの葬儀は滞りなく終えられ、彼の棺は故郷の墓地に埋められることとなった。
流石に韓国まで行くことはなく、羽仁屋達はそこでいつもの生活へと戻る。
それでも、やはり今回の葬儀は彼らに多少の後味の悪さを残していた。

しかし、羽仁屋達はその後さらに嫌な気分を味わうことになる。


尾前が走る電車に飛び込んだのは、それから三日後のことであった。




(,,゚Д゚)(一体どうなってんだゴルァ……)

自宅にて、羽仁屋は何をするでもなくベッドに寝転がっていた。
彼が住むのは安い家賃のアパートだが、家具などは他から持ってきたものなので、内装はそれなりのものである。
足場はフローリングではなく畳で、独特の匂いがわずかに感じられた。

ベッドの上の羽仁屋は首だけ動かし、壁にかけられた時計を目にする。
この後、部屋には椎名が来る予定だった。

(,,゚Д゚)(二人とも同じ……自分が見た死に方で死んだ……)

白い、隅の方には何かの染みも付いた天井を見つめながら、羽仁屋は今回のことを考えていた。
ニダーは大学で飛び降り自殺を見たと話し、それと同じ場所、同じ方法で自殺した。
そして、尾前はニダーの葬式で投身自殺を見たことを話し、やはり同じ場所で身を投げた。

これは、果たして本当に単なる偶然なのか。一度ならまだしも、二度続けて起こるなんてありえることなのか。

(,,゚Д゚)「……まさか、なんかの呪いとか?」

そう呟いて、羽仁屋は小さく自嘲するように笑う。
彼は元々、そういったオカルトは全く信じていなかったので、ふいに出たその発言が馬鹿馬鹿しかったのだ。

その笑みで幾分か緊張がほぐれたのか、羽仁屋はそれ以上は考えないように努めた。
自分が何かを思ったところでどうにもならないと、彼の中で諦観の心が強くなる。

そんな時、こんこんと二度ドアを叩く音が聞こえた。


(*゚ー゚)「お邪魔します」
(,,゚Д゚)「おう」

椎名は玄関でサンダルを脱ぐと、コンビニのビニール袋を持って畳の上を歩く。
部屋の真ん中にあるクリアガラスのテーブルに、缶コーヒー等が並べられた。

(,,゚Д゚)「悪いなゴルァ」

羽仁屋はベッドから体を起こすと、テーブルに置かれたマックスコーヒーを手に取った。
口の中にコーヒーとは思えない甘みが広がり、腹の虫が活動を始め出す。

(*゚ー゚)「ちょっと待っててね」

椎名はビニール袋を手に取り、そのまま部屋の台所へと向かう。
しばらくして、トントンという心地良いまな板を叩く音が聞こえてきた。

(,,゚Д-)(んん……)

包丁の音、コンロを点ける音、椎名の足音がまるで一つの調律のように羽仁屋の耳に届けられる。
空腹もあったが、それよりも眠気の方が今の彼には大きかった。
段々と彼の瞼がその重みを増していく。

二人の友人の死と、その不可解な経緯は羽仁屋の精神を疲れさせるには十分過ぎる出来事だった。
ベッドに横になっているせいもあり、羽仁屋は呼吸が静かに、そして一定のものへと変わっていく。

全身の力が抜けていくのを感じた瞬間、彼は深い眠りへと落ちていった。



(,,゚Д-)(……あれ?)
(*゚ー゚)「目が覚めた? ギコくん」

羽仁屋がまず感じたのは、手足の不自由さだった。
変な体勢で寝たせいで痺れてしまったのかと思ったが、どうも様子がおかしい。
頭を動かして確認しようとするが、そもそも全身が動きにくいことに気が付いた。

段々頭がはっきりしてきて、羽仁屋は改めて自分が置かれた状況を確認する。
そして、それを把握した途端、彼は全身から血の気が引いていくのを感じた。

(;,,゚Д゚)「な、なんだこりゃ!?」

彼の体は、動けないように荒縄でベッドに縛り付けられていた。
外そうと懸命に体を動かすが、そうすることで縄が食い込み、手足に鋭い痛みを感じる。

(;,,゚Д゚)「お、おい綾! 外してくれよ!」
(*゚ー゚)「……ダメだよ、ギコくん」

否定した彼女の表情は、いつもと変わらず穏やかだった。
しかし、それは逆に羽仁屋に強い疑念の感情を浮き上がらせることとなる。
恋人であるせいか、既に彼は椎名の様子がおかしいことに気付いていた。

いつもと違う状況で、いつもと変わらないことがどれほどおかしなことなのか。
羽仁屋は本能的に感じ取り、そして強い不安に駆られる。
姿形は同じでも、今の彼女は中身が全然違う……羽仁屋はそんなおかしな感覚も憶えていた。

(;,,゚Д゚)「な、何言ってんだゴルァ……?」
(*゚ー゚)「ふふ、ねえギコくん。私のお願い聞いてくれない?」
(;,,゚Д゚)「お、お願い……?」

羽仁屋の困惑する表情に、一転して椎名の表情は晴れやかだった。
まるで、何かを期待しているように、興奮してわずかに頬が上気している。

(*゚ー゚)「あのね、ギコくん、ニダーくんの話最後まで聞かなかったでしょ?」
(;,,゚Д゚)「え……」

羽仁屋の脳裏にニダーとの会話が思い出される。
確かにあの時、彼は気分が悪くなってニダーの話を遮った。
しかし、そのことが今の状況とどう繋がるのか、当然彼にわかるはずもなかった。

(*゚ー゚)「実はね、あそこでギコくんが離れた時、私はニダーくんの話を最後まで聞いてたんだ」

再び羽仁屋は食堂でのことを思い出す。
給水器の列に並んでいる間に見た光景――自分に対する嫌味だろうと無視していたその光景が思い浮かぶ。

(*゚ー゚)「ニダーくんはね、黄色いものを見たんだって」
(;,,゚Д゚)「黄色い、もの……?」
(*゚ー゚)「そう。茂名くんも見たって言ってたよね、黄色いもの」

椎名の口から「茂名」という言葉が出てきて、羽仁屋は彼との会話を思い出す。
ニダーの葬儀の時に聞いた、不謹慎だと思われる会話である。
その時、彼の口からも今の彼女と同じ言葉が発せられていた。

黄色、と――


(*゚ー゚)「……私ね、どうしても見たいんだ」

彼女の口元からくすくすという可愛らしい笑い声が漏れる。
しかし、羽仁屋の眼にはそれが真逆の、ともすれば恐ろしいものにすら映る。

(*゚ー゚)「二人が言った通りにしたのに……見えないんだもんなぁ……」

羽仁屋の額から、玉のような汗粒が浮かび上がる。それは、全てを理解した証だった。

(*゚ー゚)「ニダーくんも……茂名くんも……真っ赤なだけだったよ」

今回の出来事が、偶然ではなかったこと。

今までに見た彼女の動向が、全て演技であったこと。

(*゚ー゚)「でも……私、どうしても見たいの……」

ニダーも尾前も、彼女が殺したのだということ。

(*゚ー゚)「だから……ギコくん、お願い♪」

――そして、次の標的は自分であるということ。

(;,,゚Д゚)「う、うわああっ!! や、やめてくれ……っ! やめてくれ綾ぁあぁあぁぁあっ!!」
(*゚ー゚)「ギコくんは特別な人だから……きっと、中身も特別だよね」

羽仁屋の悲痛な叫びが部屋の中を木霊する。しかし、もうそこに彼の知っている彼女はいない。
愛する人の名前を呼んでも、返してくれる声は聞こえない。

そして、彼女は幼い子供のように笑った。




(*゚o-)「ふぁああ……お母さんおぁよぉ~……」

断続的に聞こえる雀の歌声を聞き、彼女は眼を覚ました。
水玉模様のパジャマのまま、階段を下りて食卓へと辿り付くと、すぐにコンソメのいい匂いが漂ってくる。

从*゚ー゚)「はいはいおはよう、早く朝ご飯食べちゃいなさい」
(*゚ー゚)「はぁーい」

朝食を期待する嬉しそうな返事の後、彼女は木製のテーブルに座る。
テーブルの上にはトーストとスープ、ほくほくと湯気を立てる目玉焼きがあった。

(*゚ー゚)「……お母さ~ん、これ目玉焼き……だよねぇ~?」

ウェッジウッドの食器の上に鎮座した目玉焼きをじっと凝視しながら、彼女はそんな言葉を呟く。
台所の母親は一瞬怪訝そうな顔をしたものの、すぐに理解したような表情を作った。

从*゚ー゚)「ああそっか。そういえば、見えないんだっけ」
(*゚ー゚)「ん~……なんか真っ白だよ」

彼女が見えないのは、黄身。彼女は生まれながらにして、その色を見ることができなかった。

先天性による、青黄色覚異常。
彼女がどれだけ願っても、その色を見ることは許されない。彼女の人生に、その色は存在しない。

(*゚ー゚)「見てみたいなぁ……黄色……」

彼女の持ったフォークが動き、どろりと黄身が溢れ出した。



終わり





この小説は2007年7月16日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:sJFCN4IB0 氏
作者が共通のお題で各々小説を書くという形式のものです

お題はホラー&カオス



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/31 22:19 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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