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Now goes to meet


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




3年前、ツンと二人で歩いた散歩道を、僕は今独りで歩いている。
道の脇にはつくしが顔を出し、僕は春だということを改めて実感した。
といっても景色こそ春ではあるが、体で感じる気温や風の冷たさを考えると、
まだまだ本格的な春とは言いがたい。


( ^ω^)「やっぱりコートを着て来れば良かったお・・・」


気温は確か14度と言っていただろうか。
風のことも考えると、さすがにシャツとセーターだけではまだ寒い。

ツンがいた頃、今考えれば自分でも嫌気が差すほどに
「寒いから上着を着ていったほうが良いよ」だの「僕のコートを貸してあげるよ」だの言っていたっけ。
人の心配よりまず自分の心配をした方が良いとはよく言われたものだ。
それでも、僕はツンの喜ぶ顔が見たかったから・・・

物思いにふけっていると、一台の車が水しぶきを上げながら通り過ぎていった。
その水は見事に僕に降りかかり、全身が水浸しになってしまった。


(;^ω^)「これじゃあ風邪ひいちゃうお・・・」


小さな声でそう呟くと、僕は濡れた靴下をポケットに突っ込み、ゆっくりと家へ向かった。



20070724202941.jpg



( ^ω^)「ただいまだお」

ツンと二人で借りたこのアパートに、僕は未だに住み続けている。
もちろん今では僕の帰りを待つ者は居ないのだが、それでも行きと帰りの挨拶だけは欠かさない。
これは自らの意思ではなく、僕の脳に埋め込まれた何らかの記憶が勝手にそうさせているのだろう。

( ^ω^)「ふう・・・」

濡れた服を洗濯機に突っ込み、僕は洗面所へ向かった。
そして蛇口をひねり、温水になるのを待った。
この家のボイラーは古く、温水になるまで暫らく時間がかかる。
待つことが苦手な君は、どんなに寒い日でも手を洗う時には温水は使わなかったっけ。

しばらく待つと、流れる水から湯気がたっている。これが温水になった合図だ。
放っておくと温水どころか熱湯になってしまうので、僕はすぐに手を洗った。
このとき僕の目に入った、手を洗ったあとに洗面台に溜まる水は、蛇口から出てきたときと変わらず透明である。

( ^ω^)「・・・」

小さい頃は木登りをしたり山を探検したりで、家で手を洗うたびにその水は泥が混じって茶色くなっていた。
それが今では全くの泥も混じらない、ただの透明である。


いつから僕の手は汚れなくなってしまったのだろうか

昔、本で読んだ記憶がある。
「大人は汚れる事を嫌う」と。そして僕もその一人だ。


そしてその本にはこう続けて書いてあった。


「汚れるという事は、体で学ぶ事である。
 仮に、綺麗な花の写真を見たとする。
 僕達は写真を通してその花の色や大きさなどを知る事が出来る。
 でも、その花の感触や重さなどは写真では知ることは出来ない。
 何事も、まず自分の体で知ることが大事なのだ。
 しかし、大人はそれを「幼稚だ」とか「大人気ない」だのと言って
 学ぶ事を拒んできたのだ。
 その結果、何事にも意欲を示さなくなり、心が廃れてしまう」


この文章を見たとき、僕はハッとした。なぜなら、そっくりそのまま自分に当てはまるからだった。

( ^ω^)「僕の心は・・・廃れているんだお・・・」


・・・3年前のクリスマス。

いつもの場所で待っているツンを、いつものように車で迎えに行った。
この日は付き合って4年目の記念日として、楽しいドライブになるはずだった。
しかし花火大会の行われる海へと向かう途中、僕の車は酔った観光客の乗った車と衝突してしまった。
事故の原因は相手の信号無視。

なにが起きたかも分からないまま、気づけば僕とツンは病院にいた。
僕は肩を脱臼、そして手首を骨折。
事故の程度にしては比較的軽い怪我で済んだと、医者も驚いているようだった。

それに対し、もろに脇から車の直撃を食らったツンは意識不明の重体。
さらに左足は既に切断され、心肺停止と蘇生との繰り返しだった。


手術後、もう二度と意識を取り戻す事も無いであろう事を医者から聞いた。
ツンの部屋へ行くと、ツンはツンではいなくなっていた。
見たことも無い大量の機械に囲まれ、体の至る所から管の用のものが飛び出していた。

部屋を出るとき、僕はツンの父親に無言のまま殴られた。
そして、ツンの父親は小さな声で「帰れ。もう来るな」と呟いた。




信号無視してきた車の運転手からは、慰謝料や治療費としてかなりの額の金を払ってもらえることになった。

その金で新しく車を買うことも考えたが、僕はツンの実家へと送る事にした。

その後、見事に送り返されてきた札束を見て、僕は君を思うことをやめた。

思い出の品だって全て捨てた。君との時間を無かった事にするかのように。



( ^ω^)「・・・」

気づけば、僕の手はフニャフニャになっていた。

(;^ω^)「・・・何時間、手を洗うつもりだったんだおwww」

誰も居ない洗面所で、僕は一人呟く。
そして玄関の扉から飛び出ている新聞を取ると、僕はそれを机の上へ放り投げた。

そのとき、僕は新聞の間から白い紙が飛び出ているのに気づいた。


( ^ω^)「これは・・・?」

ツンの両親からの手紙だった。
それには、ツンがこの世から去った事が、小さな文字で書かれていた。
3年間、意識を戻さないまま、ついにツンは逝ってしまったのだ。


( ^ω^)「・・・結局・・・ツンには謝る事が出来なかったお・・・」

手紙を見たとき、僕は自分でも分からないほどに冷静だった。
恐らく自分でも気づかないうちに、心のどこかでは、こうなる事を予測していたのだろう・・・


( ^ω^)「今から謝っても・・・間に合うかお?」

僕は謝りたかった。
いくらツンが許してくれなくても、何百回でも何千回でも・・・
とにかくもう一度ツンに会って謝りたい。


そういうと、僕は台所へと向かった。


( ^ω^)「・・・ツン、今いくお」


そして右手に握った、ツンに会うためのカギを、自分の胸へと深く差し込んだ―――



fin





この小説は2007年4月1日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:X/ulDy7c0 氏
タイトルがなかったので、それっぽいタイトルを付けました



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/31 19:06 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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