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( ΦωΦ)ロマネスクは大魔王になったようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




( ΦωΦ) 「見送りは、ここまでで良い」


ノハ ゚⊿゚) 「杉浦――」


 緑の匂いも濃い、左右を森に挟まれた小さな道。
 巨大な山脈の麓に、二人の人影があった。
 一人は無骨な鋼の剣を腰に下げ、旅装束に身を包んだ大柄な青年。
 もう一人は細身の槍を背負い、小柄な身体に礼服を纏った赤毛の少女。

( ΦωΦ) 「心配するな。我輩は“勇者”であるらしいのでな。……ただでは死なぬ」

ノハ ;⊿;) 「ひぅ、っ……杉浦ぁ! ま、待って、待っているからな
       ――ずっと、待っているぞっ!!」

 大柄な青年の言葉に、少女の目から涙がこぼれた。
 青年は少女の頬を伝う涙を、不器用に、しかし愛おしむように指で拭い――そして、少女に背を向けた。

( ΦωΦ) 「うむ。きっとまた、誰もが平和に暮らせる国を取り戻してみせよう」

 では、故国の護りは頼んだと――そんな事を言って、青年は振り向くことなく歩み去っていった。

ノハ ;⊿;) 「すぎ、うらぁ……ぅ、ぐ……」

 涙に滲む視界の中――少女はその後ろ姿を、ずっとずっと、見送っていた。

 西の山脈を越えた先には、魔物たちが蠢く魔の領域があった。
 そして――その地に隣接するVIP国で、魔物の被害が増え始めたのは十年前のことだった。
 原因は一つ。強大な能力を備えた変種の魔物が現れ、これまでバラバラだった魔物を統率し始めたのだ。

 散発的だった魔物の害は日を追うごとに悪化の一途を辿った。
 討伐の為に編成された軍団はことごとく蹴散らされ、多くの軍人たちがその命を散らした。
 そして今や魔物の群れは山脈を超え、護りの力を半ば失ったVIP国の各地を蹂躙していた。


 ――いつしか忌まわしい魔物の首魁を、人々は「魔王」と呼び始めた。


 そしてVIP国は不利な戦況を覆そうと、神殿と結託して魔王の暗殺を計画。
 国内有数の剣士、杉浦ロマネスクを「勇者」とする託宣を偽造し、ていのいい刺客として魔の領域へと送り込んだ。


 敵陣深くへ潜り込んでの暗殺である。


 無論のことながら、成否に関わらず――彼が生きて帰れる見込みは、無い。




 ――三ヵ月後。


ノハ ゚⊿゚) 「……杉浦」

 ため息と共に、少女――素直ヒートは空を仰いだ。
 窓越しの空はどんよりとした曇り空。
 ……まるで今の自分の心を写したようだと、ヒートは思う。
 背後の執務机の上には大量の書類が貯まっていたが、とても片付ける気にはなれない。

 他称・勇者の杉浦ロマネスクは、ヒートの幼友達だった。
 幼い頃から同じ道場に通って腕を磨いていた。
 そして自分は軍人になり、彼は道場を継いで……平和に生きていたのだ。
 あの妙な託宣とやらで、ロマネスクが勇者に祭り上げられるまでは。

ノハ ⊿ ) 「…………」

 もう三ヶ月だ。――彼が魔の領域に踏み入ってから、何の音沙汰も無い。
 魔王の殺害に成功したのか、失敗したのか。
 ヒートにとっては、そんなことはどうでも良いことだった。

ノハ ⊿ ) (ただ、生きていてくれさえ、すれば……)


 ――それだけが、ヒートの願いだった。


 と、何やら廊下からばたばたと音がする。
 耳を澄ませば、あちこちが騒がしい。
 ヒートが訝しげに眉をひそめた時、執務室のドアがノックも無しに勢いよく開いた。


(;^ω^) 「ヒ、ヒート将軍! た、大変ですおっ!!」


ノハ ゚⊿゚) 「内藤、ノックをしろっ!! そしていったい何事だあああぁっ!?」


 慌てまくった小太りの部下に叱声を飛ばし、まずは落ち着かせた。
 その上で事態を述べさせたヒートは――





(;^ω^) 「ロマネスクが裏切って、魔物の群れを引き連れて王都に攻めて来ていますお!!」





 頭の中が、真っ白に染まった。






20070723043755.jpg



 呆然としたままのヒートに、内藤は様々な情報を告げた。

 魔王がロマネスクに倒されたこと。
 ロマネスクが魔王に止めを刺さずに、その地位の簒奪を試みたこと。
 権力構造の複雑な人間社会と違って魔物の社会構造が単純だったため、それが成功したこと。

 それからロマネスクが「大魔王」を自称して、魔物を軍団化して王都に攻め上ってきていること。
 その軍団が手のつけようのない強さで、各地の砦が既に降伏したこと。
 そしてロマネスクがそれらの経緯を共に記し、降伏を勧告する書状を送ってきたこと。

ノハ ⊿ ) 「まさ、か……」

 最後の別れの際の、ロマネスクの言葉が脳裏に浮かぶ。

「我輩は“勇者”であるらしいのでな。……ただでは死なぬ」

 ――彼は、憎んだのだろうか。
 自分を否応も無く死地へと送り込んだ、故国を。
 これは彼の、復讐なのだろうか?

ノハ ⊿ ) 「――すぎ、うら」



 だとしたら。



 だと、したら――



ノハ# ⊿ ) 「ふざけるなぁああああああああああああっっ!!1!!1!!!」


 だん、と執務机を叩く。
 彼は確かに言ったのだ。――「故国の護りは頼む」と。
 そして彼は今、その故国への侵略を行っている。
 彼にとっての自分はその程度の存在だったのか?

 ――認めたくない。

 そんな思いと共に、ヒートは再び机を叩く。
 内藤がその気迫に圧倒されたように、数歩、後退した。

(;^ω^) 「……――ぁ、あぅ」

 小柄な彼女の体から、収まりきらない怒気が吹き出しているのが見える気がする。
 赤毛が乱れ、噛み締めた歯を軋ませながら拳を握るその姿は、まるで燃え盛る炎そのものだった。

ノハ# ⊿ ) 「――内藤」

(;゚ ω゚) 「は、はひぃ!」

 意志に反して、声が裏返った。
 威圧感に、がくがくと膝が震える。


ノハ# ⊿ ) 「軍団を編成するぞ。――迎撃する」





 戦塵が舞い上がり、怒号と悲鳴が入り乱れる。
 巨体を生かして突っ込んでくる異形の魔獣を、足並みを揃えた槍衾が討ち取る。
 かと思えば、突進の勢いで崩れた戦列に上空から怪鳥が突っ込んでくる。
 鉤爪に目玉を抉られた兵士が悲鳴をあげ、陣の乱れが更に加速する。

 夜明けと共に開始された戦闘は、全体として魔物側の有利に進んでいた。
 だが――


ノハ# ⊿ ) 「ぅああああああああああぁああああぁっっっ!!!!」


 細身の槍がしなり、蜥蜴のような魔物が切り裂かれる。
 背後を突こうとした怪鳥が、石突に眉間を打たれて落下。
 そのまま薙ぎ払われた槍に、数体の魔物がまとめて吹き飛ばされる。

 ――たった一箇所、まるで矢のように魔物側の陣地を貫く軍団が存在した。
 ヒートの率いる軍団だ。

 叫び、赤毛を振り乱し、全身から怒気を噴き出しつつ迫るヒートに魔物の側もたじろぐ。


ノハ# ⊿ ) 「どこだぁああああッッッ!?」


 槍の一閃に、少女の二倍はあろうかという巨大な狼が臓腑を撒き散らして転倒する。


ノハ# ⊿ ) 「どこにいる杉浦!! 出て来い!! この大嘘つきの裏切り者め!!」


 胸の奥に、渦巻く何かがあった。
 暗く、熱いその衝動が、鼓動と共にヒートの全身をうねりながら巡っていた。

 猛烈な勢いで敵陣を切り裂くヒートに引きずられるように、彼女の軍団も駆ける。
 ――狙うはただ一人の「大魔王」。

 ただ一人の少女の怒りに、貫き通された陣列の向こう。
 本陣に佇むのは――


ノハ# ⊿ ) 「すぎうらぁあああああああぁあああああああああッッッッ!!」

( ΦωΦ) 「ヒート……」


 その声に、どこか影があるのは気のせいだろうか。
 ――関係ない。
 遠すぎる間合いを数歩の疾走で詰め、細身の槍が喉元を狙う。

( ΦωΦ) 「……ッ!」

 ロマネスクは身体を傾け回避。
 返しの抜刀を柄でいなし、身を翻して石突の一撃。
 足捌きで避けられ、強引な追撃を咎めるような返し突きを力で弾いて更に突っ込み――

(メ;゚ ω゚) 「す、すごすぎるお……」

 打ち合いの金属音が重なり、殆ど一つの連続した音に聞こえる。
 剣風が渦巻き槍の穂が風を切り、巻き込まれた人と魔物が鮮血と共に吹き飛ばされた。
 ――二人の戦いはもはや、余人の立ち入ることのできない次元へと到達していた。


 と、続いていた金属音が途切れた。
 跳ねるように放たれた槍先がロマネスクの足を槍先が掠め、彼の足が崩れ――


ノハ# ⊿ ) 「覚悟しろぉおオオオオおおおおおおおおおおおッッッ!!」


 引き付けた槍の狙いは、心臓。
 空を裂いて猛烈な勢いで放たれた穂先は、一撃でロマネスクを貫いた。
 ――その、右腕を。


ノハ;゚⊿゚) 「なッ!?」
                       ・ ・  ・ ・ ・ ・
( ΦωΦ) 「足は誘いである。わざと 受 け て 見 せ た のだ」


 右腕を貫いた槍を左手で握り、そのまま脇に抱え込むロマネスク。
 次の瞬間、ヒートの身体は宙を舞い――背中から地面に、叩きつけられていた。


ノハ; ⊿ ) 「ぅあっ!?」

 衝撃に肺から強制的に酸素が抜ける。
 代わりに熱した鉛でも流し込まれたかのような、鈍痛。
 ――槍ごと持ち上げられて投げ捨てられたのだと、ようやく気付いた。


ノハ ;⊿;) 「ひ、ぅっ……ぐ……」


 痛みに、自然と涙が溢れてくる。
 そしてロマネスクの足音が、彼女に近づく。


ノハ ;⊿;) 「く、ぅ……殺、せ――っ」


 ままならない呼吸のまま、どうにか声を絞り出す。
 裏切られて、復讐しようとして――届かなかった。
 もう、何も無かった。

 ロマネスクに殺されて逝くのなら、それも悪くない死に方だと思った。


( ΦωΦ) 「断る。……降伏し、捕虜になるのだ」

ノハ ;⊿;) 「ぃ、や……だっ」

( ΦωΦ) 「ヒート、将たるお前が今降らねば――部下が死ぬぞ」

 その言葉に、ヒートは気付く。
 敵陣へと突出した自分の部隊。
 将を討ち取るのに失敗すれば、あとは囲まれ殺されるだけだ。

(メ;゚ ω゚) 「ぅあぁああああああああああああああああっ!!」

 見れば内藤が多くの魔物に囲まれ、がむしゃらに剣を振り回していた。
 他の部下達も、多かれ少なかれ同様の状況だ。
 ――彼らまで道連れにする権利は、ヒートには無い。


ノハ ;⊿;) 「こ、こうふく、する……――だから、ぶか、は……」


 鈍痛が、徐々に思考を奪っていく。
 その言葉を最後に、ヒートは意識を失った。




 目が覚めると、そこは石造りの小さな部屋で――傍らにロマネスクがいた。

( ΦωΦ) 「……ヒート」

ノハ# ⊿ ) 「ぅあぁああああああああっ!!」

 殆ど条件反射で、殴りかかる。
 だが覚醒直後の動きは鈍く、あっという間に拳を逸らされ間接を取られた。

ノハ;-⊿゚) 「ぁ、ぐ……ぅ、っ!」

 肩と肘が極められて、動きを封じられる。
 眼前には憎んでも憎み切れない、彼の姿。

( ΦωΦ) 「ヒート、もう終わったのだぞ!」

 咎めるような、ロマネスクの声。
 何が終わったというのだ。
 自分を裏切ったくせに。
 戦場で痛めつけて、部下を盾にして死の機会すら奪って――

ノハ ;⊿;) 「ぁ、ぅ……ふぇ、ぇぐ……」

 そうしていくら憎もうと思っても――もう眼前のロマネスクを憎む気力は、ヒートには残っていなかった。
 また会えた。
 ロマネスクが、生きて目の前にいる。
 裏切られたはずなのに、そんなことが嬉しくて仕方が無い。

 ――動きを封じられて、泣き顔を隠すこともできないままに、ヒートは涙を流し続けた。


( ΦωΦ) 「ヒート……今、帰った」


 まるで山の麓で別れた時のように、包帯に包まれた右手を持ち上げる。
 そしてロマネスクはヒートの頬を伝う涙を、不器用に、しかし愛おしむように指で拭い――
 今度は背を向けることなく、その小柄な身体を抱きしめた。


ノハ ;⊿;) 「すぎ、うらぁ……わ、わたし――ぇぐ……ずっと、待って、ま、護って――」


( ΦωΦ) 「そうであるな――辛い立場に立たせてしまった。申し訳ない」


 ロマネスクの、相変わらずの口調。
 「大魔王」を名乗っても――何一つ変わっていない。


ノハ ;⊿;) 「この大馬鹿が……! わ、わたしが、どれだけ心配したと思って……!」


( ΦωΦ) 「……申し訳ない」


 そうして、 ヒートはロマネスクの胸に頬を押し当てて、ずっと泣き続け――
 ロマネスクもその間、ずっと謝り続けた。





 ――大陸の様相は、たった五年で大きく様変わりをしていた。


 かつてのVIP国の王都――現在の魔王城の所在地では、大通りを魔物と人が混じって歩き、
空には竜や怪鳥が飛び交っている。

 VIP国の占拠に成功した後、「大魔王」の率いる軍勢は続けて周辺国家に対する侵略を行った。

 そして侵略の後――「大魔王」は、その名に反して善政を敷いた。
 支配を受けた国の人民はこれまで通りの生活を保障され、決して虐げられることは無かった。

 強力な魔物の軍団と保障された善政に、被害を受ける前に降伏する国家も多く、戦乱がさほど大きく
広がらなかったことも「大魔王」が民心を掴み得た一因だろう。

 そして「大魔王」は人より知恵こそ劣るものの様々な能力を持った魔物を諸所の機関で活用し、
海運、空輸、陸輸、軍事、治安維持などの様々なシステムを刷新、効率化。

 最初のうちは人と魔物との対立も多かったものの、そういったシステムに組み込まれ、
魔物たちが必要不可欠の存在となるにつれて対立も徐々に収まっていった。



 人魔が共に生きるその王国は、今や大陸の最大勢力となっていた。




( ΦωΦ) 「……ヒート。覚えているか?」

 ロマネスクは城の窓から人と魔の混在する通りを眺めながら、そう問いかけた。





( ΦωΦ) 「あの別れの時の、約束である」





ノハ ゚⊿゚) 「忘れるわけが無いだろうがぁあああああああ!!」

 背後。命を宿した丸い腹部を撫でる、ヒートの叫びが聞こえた。






「きっとまた、誰もが平和に暮らせる国を取り戻してみせよう」

                                ――彼は、約束を果たしたのだ。







( ΦωΦ)ロマネスクは大魔王になったようです Fin









この小説は2007年7月15日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:UVTgF8Kg0 氏



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[ 2009/12/31 19:04 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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