スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

( ^ω^)の傷跡

はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




鋭い痛み。


少しばかりの間をおいて血が流れる。


その血の黒さに自分の健康を心配する。


妙な話だ。


死のうとしているのにも関わらず、そんな心配をするというのは。


そして僕は待つ。


7本目の傷が



傷跡になることを。



20070720062643.jpg



朝起きた瞬間、既に身体は冷えていた。

温度の差で窓には今日も水滴が這いつくばっている。

拒否する身体に鞭を打ち、布団から起き上がった。

洗顔などの嫌がらせのような朝の儀式を早々に終わらせ、朝食をとる。

舌鼓をうちながら、というほど豪勢なメニューではないが

コーンスープの温かさに、ほっと息をつく。

「…お。遅れるお」

味わっているうちに中途半端な温度になったそれを一気に飲み干し、着替えをする。

自分の温度を蓄えたパジャマを脱ぎ、制服に袖を通す。

「…コタツの中に入れときゃよかったお」

その僅かな手間を惜しんだ自分に愚痴を垂れながら、用意をする。

薄く、何も入っていないのではないかと思わせる鞄を肩に掛け、家を出た。

手馴れた動作で鍵を閉め、止めてある自転車にまたがる。

今日はやはり少し遅いのか、路上にはいつもは騒がしい学生も少なかった。

自転車を漕ぐこと15分。

駐輪所に着くと同時にチャイムが鳴る。

「……やってしまったお」

諦めが肝心と、焦ることなく自転車の鍵を閉めて入り口に向かう。

スリッパを履いて階段を上がっていくとすぐに自分のクラスの教室がある。

この静けさからいって既に担任が来ているに違いない。

「…はぁ」

おそらく注目を浴びることになるだろう。

男子からはからかわれ、女子からは笑われる。

そして僕はいつもと同じく何ともないような顔で。

ドアに手を伸ばす。

制服の袖が、ちょうど傷にあたって痛かった。


退屈な授業が過ぎ、簡素なチャイムの音が鳴り終わると同時に、一部の生徒が購買へと掛け出す。

いつも通りの昼休みの光景だ。

鞄から自分で作った弁当を取り出し、席を立つ。

スピーカーから聞こえるのは放送委員の声、そして次には何かの曲。

音楽の興味はない自分でも知っている曲だった。確か「らいおんはーと」とかなんとか。

その曲を背中に受けながら、教室を出る。

別に昼ご飯を食べる場所など決めていないが、強いて言うなら誰も居ない場所。

靴に履き替えて外を歩くと、都合よくベンチが空いていた。

都合よく、とは言ってもこの寒さの中、外で食べるのは自分くらいだろうが。

寒さに震える箸を必死に動かしながら、口に放り込む。

随分食べるのが早くなったもんだ、と自分でも思う。

5分くらいで弁当箱の中身は空っぽになり、鞄の中にしまう。

ふと上を見上げると、クラスの教室が見えた。

そして窓越しに自分のほうを指差し、笑っている女子の姿も。

不自然にならないようにそこから視線を外し、辺りを見回す素振りをする。

視線は宙を漂い、やがて自分の左手の手首に落ち着いた。

7本の生々しい傷跡を見て思う。

ここで死ぬのもいいなと。

それでなくとも子供の自殺で騒がれている今、校内で自殺でも起こったらどうなるかは目に見えている。

そして、右手でポケットを探り、常備しているナイフの柄を握った。

いつでも死ねる。

そう思うことが生きる支えだった。

ポケットからそれを出し、左手の手首にあてる。

思い残すことなど何一つない。


右手に力を入れた時だった。

背後からドン、という重い音。

あまりに突然すぎて身体はその音に反応もしなかった。

「…何の音だお…?」

座ったままの体勢で頭だけを音がした方向に向ける。

「……」

4mくらい先の所。

そこに人が居た。

うつ伏せの格好で寝そべっている。

頭や足は変な方向に曲がっており、顔面は酷く損傷しているようだった。

「………」

しばらくそれを眺めていると、頭や顔面からどす黒い血が流れ出した。

上を見上げると、そこには立ち入り禁止の屋上の柵が見えた。

おそらくあそこから飛び降りたのだろう、とそこまで考えて、自分がやけに冷静なことに気付く。


「………よいしょ、っと」

ベンチから立ち上がり、それに近づく。

どんどん血は流れ出ており、生きているようには見えなかった。

損傷している顔面に目をやった所で気付く。

「……ドクオ…とかいったかお」

そういえば不細工で鬱っぽい顔した奴が居た。

「…お前も自殺したかったのかお」

多分、答えることはないだろう物体にそう言葉を投げかける。

今はまだ誰も気付いていないが、これからきっとこの学校は大騒ぎになるだろう。

「…お」

自分の右手にナイフが握られている。

一瞬どうしようか迷ったが、それはポケットに戻した。

いまさら死んだところで二番煎じの上、心中などと思われたら笑い者だ。

それになんといってもこのドクオとかいう奴に失礼だ。


「……安らかに眠れお」

そう言ってその場を立ち去ろうとするも、その前にドクオの左手に目が行った。

そこには当然のように傷跡があった。

1,2,3、・・・・・

「……8本…かお」

ベンチに戻り、鞄を持って教室に向かう。

歩きながら思う。

彼は8本目の傷をつけた後何を感じたのだろうと。

きっと7本目の自分にはまだ分からないことなのだ。

ポケットにナイフが入っていることを確認して、足を早める。

8本目の傷をつくるような事が今日は起こるだろうか。

そう考えると少し心が躍った。




( ^ω^)の傷跡  おわり






この小説は2006年12月12日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:UOPvbWXr0 氏



ご意見等あれば米欄にお願いします


[ 2009/12/31 18:08 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿


更新は止まっていますがコメントはご自由にどうぞ
修正・削除依頼等、何かしらの連絡はコメントもしくはメルフォよりお願いします
拍手だと高確率で長期間気づきません

スパム対策のため"http"と"@"を禁止ワードに設定しています
URLを書き込む際は"h"を抜いて投稿してください













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/tb.php/3062-59919f37


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。