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(´・ω・`) 知らなくていいことがあるようです


はじめてブーン系小説を読む方はこちらへどうぞ




('A`)「なー、英和辞書貸してくれよ」

 ドクオが最近、僕によく話しかけてくるようになった。
僕の席は窓際のいちばん後ろで、薄いカーテンがひらひらしている。

(´・ω・`)「うん、いいよ。昼休みには返してね、五時間目は英語だから」

('A`)「おう、助かるわ」

 そう言いながら、ドクオは前の席へ腰掛けた。
ふわり、と。かすかな煙草のけむりが鼻をかすめる。
僕と向き合うかたちになって、すこしだけ心がふわふわしてしまう。

('A`)「窓際はいいよなァ、外が見れて」

(´・ω・`)「そうでもないよ、カーテンがあっても日差しがきついし」

('A`)「そっかァ? 俺の席なんか教壇の前だぜ」

(´・ω・`)「それはご愁傷様だね」

 はやく席替えしねェかなー、とドクオは片肘をついて溜息をこぼした。
ざわざわとクラスメイトたちが雑談する声が、いつもは耳障りだったが
こうしてふたりで話しているときは、まったく気にならない。
僕はドクオの声だけを耳に受け容れる。



20070705215833.jpg



(´・ω・`)「同じクラスだったら、僕とドクオの席を交替してあげたのにね」

(A` )「……同じクラスだったら、良かったなァ」

 次の授業の支度をしていた、僕の指が止まる。
ドクオはぼんやりと運動場を見ていて、横顔だけを僕に見せている。

(´・ω・`)「……二年とも、クラス離れちゃったね」

 “ただの友達”が深い意味もなく、ただ単純にさびしい、と
そう聞こえるように声色を調整して、僕は呟いた。

('A`)「小中で離れたことなかったのにな、やっぱクラス数が増えると離れちまうか……」

 運動場へ向けていた視線を、僕に移してドクオはそっと笑った。
さびしい、なんて僕が勘違いしそうになる表情。
ずっと横顔を眺めていたことに、気付かれたくなくって僕は立ち上がる。

(´・ω・`)「辞書! ……ロッカーの中なんだ、忘れる前に渡さなきゃね」

('A`)「おう、よろしく」

 両手両足が同時に出てしまいそうなほど、僕は動揺していた。
高校に入ってクラスが別になってから
教室内でこうして会話を交わすことは、ほとんど稀だった。
僕たちが話せる場所は、大体屋上だけだったから。


 廊下ですれ違うとき、ドクオの隣には何人か友達がいて
僕はそのたびに嫉妬した。男の嫉妬は醜い、というけれど。
たのしそうに笑って、友達の背中をかるく叩いていた。
ドクオにそうされるのは、僕の役目だったのに。

 僕の隣には、誰もいない。

(´・ω・`)「ちがう、……ドクオじゃなきゃ厭なんだ」

 ロッカーの前に屈みこんで、整頓されたその中から英和辞書をひっぱり出す。
僕がひそやかに呟いた想いは、教室の喧騒に飲み込まれて消え失せる。

 賑やかすぎるこの教室よりも、ひっそりと青空を見上げられる屋上が。
ドクオが煙草を喫っている屋上が、どこにいるよりも好きだ。

 僕の隣に、ドクオがいてくれるから。

(´・ω・`)「……エゴだなぁ」

 他の誰もドクオの隣には居させたくなくて、自分だけが良い、なんて。
こんなことをドクオが知ったら、二度と話してくれなくなるだろうな。
僕は想いをずうっと奥深くに押しやると、辞書を持って振り返った。


(*'A)「……」

 ドクオが、運動場とは反対方向を向いている。
何気なく視線のさきを追うと、読書をしている女のコがいた。
色白で、ボブカットが似合う童顔のかわいらしい女のコ。
名前は、しぃ、と言っただろうか。

 いやな予感が、よぎった。
まさか、いやそれは有り得ない。そんなはずは、ない。
不穏に高鳴る胸を、辞書で押さえながら僕は席に戻った。

(´・ω・`)「……ドクオ、もうすぐチャイム鳴るよ」

('A`)「お、悪ィ悪ィ! 有難くちょうだいしてくぜ」

 ふたりで話しているのに、僕の耳には教室のざわめきが響いている。
胸元に押し当てた辞書を机に置いて、がたりと椅子をひいて坐った。
真正面を向いたドクオの顔が、まともに見られない。

(´・ω・`)「うん……、あの、さ」

('A`)「あ、ヤッベ! 英語の宿題やってなかった!
   辞書サンキュー、この借りはいつか返すッ」

 そう言うやいなや、ドクオは勢いよく立ち上がり僕の前から走っていく。
その後ろ姿を追うように、チャイムがスピーカーから流れ出した。


 僕は、ドクオになにを聞こうとしたんだろう。
知らなくていいことが、世の中には存在するというのに。

 それは僕がドクオが好きだっていう想いも。
きっと、知らなくていいこと、に分類される。

(´・ω・`)「いやな予感ほど、よく当たるってね……」

 知らなくていいこと。
でも、ドクオのことはぜんぶ知っていたい。
そんな矛盾が頭のなかをぐるぐるとまわる。
教室に先生が入ってきて、起立礼着席をし、いつもの授業が始まった。


 次の授業は体育で、男子は隣の教室で着替えなければならなかった。

 重たい気持ちを抱えたままで、僕はもそもそと体操服に着替える。
運動靴の紐をきちんと締めなおし、廊下にでて運動場へ行く。

 階段の踊り場で、ドクオと友達が数人話していた。
やっぱりたのしそうに笑っていて、友達に肘で突付かれたりしている。
体操服から出た、剥きだしの腕や脚がぞわり、と波立つ。


 別の階段から降りようと、ぎこちない僕の脚に命令する。
それでも、僕の耳は。ドクオの声だけは、キャッチしてしまう。



('∀`)「いやーwwwまじで可愛いよしぃちゃんwwwww
    きょうもたっぷり眺めちまったぜwwwwwwwww
    同じクラスだったらずっと見つめてるわ俺wwwwww」



 ああ、そうか。
僕と同じクラスだったら良かった、じゃなくて
しぃさんと同じクラスだったら良かった、なんだね。


(´・ω・`)「……そうだよね、僕と同じクラスがいいなんて。
      いまのドクオなら、……言わないよね……」

 いまのドクオには、何人も友達がいて
僕がいなくても、そうやって笑って小突き合えるのだから。


(´・ω・`)「…………そっか、僕に逢いに来てくれてたんじゃなくて
      しぃさんを、……見にきてたんだね……うん、……そうだよね」

 胸が、呼吸が。
とても大きなものに、押し潰されているような圧迫感に襲われる。
廊下にぴったりとくっ付いて離れそうにない靴を、引き剥がす。

 まだ、ドクオは笑っている。
笑い声が、そこから遠ざかる僕の耳についてきて離れなかった。


 逃げる場所なんてどこにもなくて。
僕が解放される場所は、ただひとつしかなくて。

 でも、そこは。ひとりで来る場所じゃなくて。



(´;ω;`)「ドクオの馬鹿やろう……嬉しかった、んだぞ……っ
      あんな顔するなんて、……卑怯じゃないか……!」


 梅雨の時期とは思えないぐらいに、真っ青な空がひろがっている。
いまにでも、雨が降ってしまえばいいと思った。

 僕のこんなくだらない涙や、届くわけもない想いも、身体中をめぐる嫉妬も
ぜんぶ、ぜんぶ。雨が流してくれたらいいのに。

 
 ドクオが僕に逢いに来てくれて、うれしかった。
他愛のない話をすることが、なによりもうれしかった。

 知らなくていいこと。知りたいこと。
知らなければしあわせだったこと。
 
 ドクオのことを、ひとつ知った。
それは、しあわせなのか、ふしあわせなのか。



(´;ω;`)「……ドクオの馬鹿……僕の、馬鹿……っ!!」

 それでも、この想いを断ち切れない僕は。
そこだけ雨が降ったように、屋上で涙の水たまりをつくった。






この小説は2007年7月3日ニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:WjHR52Sy0 氏



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[ 2009/12/31 13:46 ] ナギ戦記 | TB(0) | CM(0)

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