はじめてブーン系小説を読む方は
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その男は不老不死だった。
数年前から有名になり、今やその名は世界中に知られている。
そんな男に、取材を申し込めるという話が持ち上がったとき、各国のありとあらゆるメディアが名乗りを上げた。
男の「抽選で決める」という提案によって、その万金の価値に値する権利を手に入れたのは……
どういうわけか、小さな地方の新聞社だった。
('、`;川「当選したぁ!?」
取材権の獲得を知らされた私は驚愕した。
世界中から応募があったその権利を得る確率は凄まじい低さだろう。
( ´∀`)「そうモナー!僕の驚異的な強運が引き当てちゃったんだモナよ!」
それを引き当てたモナー編集長は、確かにかなりの強運の持ち主だ。
因みに、この抽選がどういうものだったのかというと……
インターネットを通して世界中から応募されたモノの中から、取材を受ける張本人がランダムに一つを選ぶ。
選ばれた所には、他に応募した所には分からないように取材についての説明が記載された手紙が届くらしい。
現に、モナー編集長の右手には封筒が握られていた。
( ´∀`)「手紙の内容には、取材をする人物は一人に限るとなっているモナ」
('、`*川「じゃあ編集長が行かれるんですか?」
( ´∀`)「いや……実はさらに条件があって、若い女性じゃないとダメらしいモナ」
('、`*川「……何ですか、ソレ」
( ´∀`)「僕にも分からないモナよ。
でも、我社で女性と言ったら君しかいないモナ」
確かに、このちっぽけな新聞社で働いている女性は私だけだ。
('、`*川「でも私、そんな大仕事やり遂げる自信無いですよ……?」
( ´∀`)「大丈夫モナ!取材の期間は一週間と決まっているけれど、
いつ始めるかはある程度こちらに決定させて貰えるモナ。
しっかりと取材内容を練って、君もミッチリ鍛えて送り出してあげるモナ!」
どうやら拒否権は無いらしい。
とはいえ、私だって記者の端くれ。
自信が無いにしても、こんなおいしい機会を逃したくはない。
('、`*川「分かりました。精一杯やってみます」
( ´∀`)「頼んだモナよー!」
かくして、私の取材は始まったのである。
※
今、私は飛行機の中にいる。
('、`*川「……」
練りに練った渾身の質問集を暗記し、私はワクワクしつつも、不安にかられていた。
('、`*川「なんか実感がないなぁ」
手紙に記載されていたのは、取材をする人物の条件と、
同封されたある日時のある飛行機の便のチケットを使い、ある国へと来いという二点だけであった。
つまり、私はこの飛行機に乗っている今現在に至るまで、
向こう側と接触はおろか連絡を取り合ったことすらないのである。
('、`*川「何だかなぁ……」
もしかしたら悪戯だったのじゃないかしらという疑問まで頭を過ぎる。
そんな私の不安をよそに、飛行機は何も支障なく目的の国へと到着した。
到着ロビーに着いた。
おーい。着いたよー。
……どうすりゃいいのよ。
途方に暮れようかと迷っていたその時、唐突に肩を叩かれた。
私が振り向くと、そこには至って普通の旅行客にしか見えない男が、にこやかな笑顔で立っていた。
( ・∀・)「失礼ですが、勤務先は?」
普通に聞けば突拍子も無い質問だろうが、私にはその質問の意図が読み取れた。
('、`*川「カコログ新聞社ですが」
( ・∀・)「把握致しました」
男は笑みを浮かべたまま話を続ける。
( ・∀・)「どうぞこちらへ。準備は出来ております」
彼の声が聞こえない人には、私に笑顔で話しかけ、エスコートする彼は、
いかにも私の知り合いだと見えただろう。
私は彼に連れられるまま、空港を出て、停まっていた一台のワゴン車に乗り込んだ。
('、`*川「あのー……」
( ・∀・)「何か?」
ワゴン車の扉が閉まっても笑みを絶やさない男性が言った。
('、`*川「これってジョルジュさんへの取材の……」
( ・∀・)「その通りです。ご当選おめでとうございます」
私が質問を言い切らないうちに、男は答えた。
( ・∀・)「因みに私はこれから取材期間の一週間、貴方の付き人をさせていただきます
モララーと申します。
以後お見知りおきを」
('、`*川「あ、はい……」
( ・∀・)「先程は失礼致しました。
万が一の事を配慮して、きちんと条件通りの方がいらして
初めて説明をする手筈だったのです」
('、`*川「あ、そうなんですか」
( ・∀・)「準備が宜しければ、取材についての注意点等を述べさせていただきます」
('、`*川「お願いします」
( ・∀・)「取材期間中は私達に同行していただきます。勝手な行動はお控えください。
また、期間は一週間ですが、長岡は多忙な為、一週間丸々取材出来るとは限りません。
勿論こちらとしても貴方の取材に最大限尽力致しますが、
最悪一時間も取材出来ない、という場合もあります。
……ご了承いただけますか?」
('、`*川「はい」
( ・∀・)「では、暫くはこのままの移動が続きます」
モララーさんの言う通り、その後二時間程ワゴン車に揺られ、私達は目的地らしき場所に到着した。
('、`*川「滑走路?」
( ・∀・)「そう。彼専用の滑走路です」
('、`*川「ああ、成る程。
ジョルジュさんはまだ到着してないんですね」
( ・∀・)「ええ。ですが、もうすぐ来ますよ」
腕時計に目を配らせて、モララーさんは空を見上げた。
('、`*川「え、ってことは……」
「ァァァァァァァァァァァ」
不意に遠くから叫び声が聞こえた。
「ァァァァァァァァァァァ」
しかも大きくなっている。
「アアアアアアアアアアア!!」
その時、空に一点の何かが見えた。
私は目を凝らしてそれが何なのか見極めようとした。
(;゚∀゚)「ウォォォォォォォォォォォ!!」
私がその正体を見極めた時、それ……なんか人みたいなのが括り付けられたミサイル……は、滑走路に直撃した。
凄まじい激突音。
しかし、ミサイルは爆発せずにバラバラになっただけだった。
(;゚∀゚)「うおればたはあえああおわー!!!」
('、`;川「……」
私は見た。
ミサイルに括り付けられていた人みたいなモノ……っていうか人が、
体操選手なんて比じゃ無い、凄まじい錐揉み回転をしながら滑走路をバウンドしていくのを。
5回バウンドして、多分三桁以上回転して、人は滑走路に横たわる恰好で止まった。
( ・∀・)「到着しましたね」
いや、到着っていうか墜落でしょアレは。
確かに「移動手段はミサイルだったりする」とは風の噂で聞いてはいたけれど……。
('、`*川「大丈夫なんですか、アレ……」
( ・∀・)「ええ。本人は気に入ってるようです」
モララーさんは相変わらず微笑を浮かべながら滑走路に横たわる人に向かって歩き出した。
すると、あの墜落者は起き上がり、体中を叩いて背伸びをした。
( ゚∀゚)「あー、流石に秒速5キロはキツイな!!」
( ・∀・)「お疲れ様。取材の人、到着したよ」
( ゚∀゚)「お、マジで?」
人……若い男は、
全く何処も怪我をしておらず、モララーさんと陽気に会話を交わしていた。
私の存在に気付いて、笑顔で向かってくる。
( ゚∀゚)「どうも!はるばる来てくれてありがとう!
俺がジョルジュ長岡です!」
私に握手を求めながら、ジョルジュは自己紹介した。
('、`*川「あ、カコログ新聞社のペニサス伊藤と申します。
一週間、よろしくお願いいたします」
一応は平静を装って、私は自己紹介を返した。
( ゚∀゚)「よろしく!」
ジョルジュ長岡は、一般のイメージよりも陽気な性格だった。
ジョルジュ長岡が一般の前で姿を現しても、
余り喋らず、にこやかに笑顔を返すだけが殆どだった。
だから、一般では無口だけど優しいとか、そういうイメージが定着していた。
で、移動の為に再び乗り込んだワゴン車の中で、
そんな風に思われてるみたいですよー、と聞いてみた。
( ゚∀゚)「別に、無口じゃないよ。
むしろ話すの大好きだもん。
ただ、お偉いさんがよく思わないらしくてさ」
彼は全世界を常に飛び回るため、特定の国籍を持っていない。
だから、彼の一挙一動は各国の首脳陣に見られているらしい。
( ゚∀゚)「まぁ、仕方ないよね、場合が場合だから」
そう言って彼は笑った。
次に車が止まったのは、一見何の変哲も無い平野だった。
( ゚∀゚)「さーて、一丁頑張りますか!」
ジョルジュはそういうと、何やら特別な服装に着替えだした。
( ・∀・)「ペニサスさん、これを」
モララーさんが私に手渡したのは、ヘッドホンのような耳栓だった。
( ・∀・)「すいませんが、暫く着けておいてください。
会話は付属のマイクで可能ですので」
('、`*川「……? 分かりました」
着替えを済ませたジョルジュが、平野に向かって歩き出した。
('、`*川「あのー、モララーさん」
( ・∀・)「何でしょう?」
('、`*川「彼は一体何をs
ドォーーン!! いきなりの爆発音に、私は思わず体を竦めた。
('、`*川「え!?」
私には、ジョルジュが爆発したように見えた。
爆発で舞い上がった粉塵が、風に運ばれて去って行ったとき、ジョルジュは立ち上がって笑っていた。
( ゚∀゚)「アハハ!早速踏んじまった」
('、`;川「……」
ふと、地面に突き刺さっている何かに気がついた。
それは、ドクロマークの描かれた看板だった。
( ・∀・)「彼は今、地雷除去をやっているんです」
ああ、成る程。
「ジョルジュも歩けば地雷を踏む」訳ですね。
豪快を通り越して目茶苦茶だ。
( ゚∀゚)「うぃーきゃぁりおーん、うぃきゃぁりおーん、うぃーは bドーン!!」
鼻歌を歌いながら地雷を次々と踏んでいく様は、中々にシュールだ。
( ゚∀゚)「じゃーすれーりすらーいど、うぇぃすてぃんぐt ズドカーン!!」
一際大きな爆発が起こって、ジョルジュの身体が宙を舞った。
軽く数メートルは舞い上がり、地面に鈍い音を立てて落ちた。
(;゚∀゚)「イテテ……流石に対戦車地雷はキツイな」
不死である彼にも痛覚はあるらしい。
極めて鈍いようだけれど。
('、`;川「いつもこんな事を?」
( ・∀・)「ええ。時間が空けば。本人は楽しんでいるようです」
それから数時間、彼は地雷を踏み続けた。
※
( ゚∀゚)「あー、スッキリした」
顔を真っ黒に汚しながら、ジョルジュは地雷原から帰って来た。
( ゚∀゚)「ごめんね、ついつい夢中になっちゃって」
ジョルジュはこちらを向いて片手で拝むように謝った。
('、`*川「いえ。……大変ですね」
( ゚∀゚)「んー、まぁ大変って言えば大変なんだけど、その分やり甲斐はあるぜ?
それにどうせ踏むなら被害の無い奴が踏むべきだろ?
誰かの片腕が無くなるよりよっぽどマシさ」
確かに、地雷原を歩き回るジョルジュの顔に負の感情は感じ取れなかったし、
言うことも道理が通っている。
('ー`*川「そうですね」
( ゚∀゚)「……やっと笑った」
('、`*川「え?」
( ゚∀゚)「いや、会ってから一度も笑ってくれなかったからさ。
ちょっとイタイ人だと思われてないかと心配だったのよ」
('、`*川「それは、」
確かに、ちょっと予想だにしていない行動ばかりとるものだから、
呆気に取られていたと、正直に言うべきなのだろうか。
( ゚∀゚)「あのさ、別に遠慮して貰わなくていいよ」
ジョルジュは再び着替えながら言った。
( ゚∀゚)「ぶっちゃけた話ね、取材の話を持ち掛けたのは俺自身なんだ。
回りはモララー以外堅物ばかりでさ、話し相手が欲しくてね」
('、`*川「はぁ……」
( ゚∀゚)「だからさ、タメ口聞いても構わないし、呼び捨てしてもらっても構わないし、
どんな質問振ってくれても構わない。
あんたがやりやすいように取材してくれた方が、こっちも楽しいしね」
('、`*川「……わかりました」
( ゚∀゚)「うん。ヨロシク」
長い間飛行機に揺られ続けたためか、情けなくも私の体力は宿泊先である五つ星ホテルに到着した時点で限界に達し、
その日の取材はそこで終わった。
※
次の日。
再び地雷原へと向かうワゴン車内で、質問と応答が繰り返された。
分かった事は沢山あった。
年はジョルジュの方が私よりも少し高いこと。
睡眠欲は無いが、食欲と性欲はあって、満たされなくても死なないが、
どちらも満たされていた方が調子がいいこと。
身体の仕組みは普通の人と何も変わりがないけれど、
不老不死である他にも、常人より身体能力が高いということ。
中でも印象に残った、というより衝撃を受けたのは、
彼が自分自身が不老不死だと悟るに至るまでの経緯だった。
( ゚∀゚)「俺の生まれた国は当時、戦争の真っ最中でさ。
ひもじい生活してたんだけど、その時から俺って他人より腹減りが遅かったんよ。
てか三日食わずしてぴんぴんしてたり」
( ゚∀゚)「まぁ便利ってか節約っていうか、そういうのもあったり、
兄弟の中で一番上ってのもあってさ。
良く働いたわ。一日20時間とか。お陰で今の生活も苦になってないんだけど」
( ゚∀゚)「でもな、ある日爆撃が来ちゃったわけ。
まぁ情け無用の容赦無い鬼畜のような爆撃でねぇ。
俺ん家、家族下敷きにして全壊しちゃったのよ。」
( ゚∀゚)「辛かったなあ。みんな即死出来なかったから、
瓦礫の下、暗闇の中で泣きながら散々呻いて死んでいったよ」
( ゚∀゚)「でも、俺は死ななかった。つーか死ねなかったね。
瓦礫の下敷きになってるのに、圧迫感や多少の痛みこそあれ、殆ど無傷。
おまけに数日かけて自力ではい出ちまった」
( ゚∀゚)「で、家族引っ張り出して、これでもかってくらい号泣して、
涙が枯れて、そこでようやく考えた。
「何で俺生きてるんだろう」ってね。
それが自分が死ねない身体だと気付いた最初のきっかけだったよ」
口調は極めて楽観的に、明るく話しているように見えるが、
彼が話している間、彼の顔から笑みは消えていた。
不老に気付いたのはまた別のタイミングで、五年程前らしい。
( ゚∀゚)「それから色々あって、モララーに会って……今の俺がいるわけ」
今の彼は、先も述べたように無国籍であり、出入国にパスポートが不要という、
言わばVIP待遇を受けている。
世界では彼についての規定なんてものすら出来上がっていて、
「彼の居場所は公表しない」「各国からの彼への依頼は一度国連を通してから」などが定められているらしい。
しかし、それは裏を返せばありとあらゆる国から目を付けられているということで、
もしかしたら私達の見えないところで彼を巡る何か……余り関わると命が危なくなるような……が行われているのかも知れない。
( ゚∀゚)「さぁ、今日の目標は300個だな」
地雷原を見据えながら、ジョルジュは身体をほぐしつつ言った。
( ゚∀゚)「行ってくらぁ」
ジョルジュは意気揚々と地雷原に踏み込んでいく。
( ・∀・)「……貴方は運が良いですね」
防音仕様のヘッドフォンと、それに付いたマイクを通して、モララーさんが私にそう言った。
( ・∀・)「こんなに長い時間ジョルジュがどの国からの要請も受けないのは、
月に一度あるか無いかですよ」
確かに、メディアが彼を報じるたびに、彼は違う国や地域にいたような気がする。
('、`*川「でも、それってつまり、平和ってことですよね」
( ・∀・)「アハハ、そうとも言えますね」
モララーさんは軽快に笑う。
私はインタビューの相手を一旦彼に変えることにした。
( ・∀・)「ジョルジュと知り合った経緯、ですか」
('、`*川「もしも支障が無ければお答えいただきたいのですが」
( ・∀・)「……戦争で知り合ったんですよ」
('、`*川「戦争というと、あの……」
( ・∀・)「ええ。ジョルジュが家族を奪われた、あの戦争です」
( ・∀・)「あの戦争に、私はジョルジュの国に敵対する国の兵士として参加していました」
( ・∀・)「私は元々捨て子でしてね。孤児院で育ったんです。
特に夢もない無気力なガキンチョで、何と無くで兵士になって……。
起こるはずないとタカをくくっていた戦争に動員されたんです」
( ・∀・)「結果、私は戦闘中に負傷。
状況がこちらの圧倒的な劣勢でして、味方の部隊にも見捨てられて、
ああ、つまらない人生だったなんて思いながら意識を失いました。」
( ・∀・)「普通ならそのままあの世行きだったんでしょうが、
何故か意識が戻りましてね」
('、`*川「ジョルジュさんが、助けてくれた……?」
( ・∀・)「まぁ、そんなところです。正確には私を見つけたんですよ」
それをきっかけに、彼はジョルジュと仲を深め、彼がとんでもない秘密を持っていることを知った。
( ・∀・)「その後、私は戦争が終わるまで捕虜だったのですが……。
解放された私にジョルジュがやってきて、
「マネージャーみたいなことやってくんね?」、と」
('、`*川「それで、何と答えたんですか?」
( ・∀・)「その時もまだ人生を半分捨てかけてましたからね。
命の恩人の頼み事だし、面白そうならいいかと、適当に了承しましたよ」
( ・∀・)「ただ、その後はビックリしましたねぇ。
世界中の首脳陣に囲まれたりもしまして、こりゃとんでもない頼みを受けてしまったんじゃないかと」
('、`*川「それは……インパクト強いですね」
( ・∀・)「まぁ、今はそこそこに熟してますが」
彼が民間人であるということに、私は内心驚いていた。
極論でいえば、世界中からジョルジュに舞い込む様々な依頼や問題を、彼が全て耳に入れて把握しているのだ。
今でこそジョルジュは不老不死の男として世界中に平等に派遣される立場を確立しているが、
そこに至るまでにどれだけの苦労や困難や問題があったのだろう。
私が思うに、彼等が特定の国家や団体に属さずにいられたのは奇跡だ。
そして、その奇跡の立役者は陰ながら支える彼のおかげなのではないだろうか。
( ゚∀゚)「へいへいゆーゆー、あいどんらいきゅーあがーr ズドン!
また爆発音が響き、ジョルジュが宙を舞う。
( ・∀・)「何だかんだ言いましたが……実を言えば、かなり気に入ってるんです。
今のこの生活」
そんなジョルジュを見ながら、モララーは言った。
その言葉に、嘘の一片たりとも含まれてはいない気がした。
※
結局、その日も地雷除去に費やされ、私達は宿泊先へと戻ることにした。
( ゚∀゚)「目標より15個多かったなー」
ワゴン車の中でジョルジュが自慢げに言う。
('、`*川「そもそも地雷除去とかをやりだしたのは何時からなんですか?」
( ゚∀゚)「3~4年前かなぁ。
ちょっと自由になったかなーって時からだから」
('、`*川「他には何か自分の意志で慈善活動を行ったりしているんですか?」
( ゚∀゚)「出来たら良いとは思うんだけど、中々ね。
取り敢えず一番役に立てそうな事からやってるんだけど」
('、`*川「やっぱり忙しい?」
( ゚∀゚)「うん。だから、昨日今日はかなりツイてる方だよ」
('、`*川「モララーさんも言ってましたよ、それ」
ワゴン車を運転している彼に視線を移しながら、私は言う。
( ゚∀゚)「あ、そう?」
('、`*川「ええ、色々お話も聞かせてもらいました。
ジョルジュさんのマネージャーになるまでの経緯とかを」
( ゚∀゚)「へー、ってことはs( ・∀・)「さて!もうすぐ着きますよ!」
突然スピードを上げたワゴン車は、数分で昨日宿泊したホテルに到着し、
私はジョルジュの部屋で少しの取材を行った後、自室に戻った。
('、`*川「……」
取材を始めて二日が過ぎ、残すところは最大で五日だ。
彼の性格のおかげもあって、取材は順調に進んでいる。
そんな中で、私は迷っていた。
今までの取材内容は、言わば彼の表面についてである。
編集長と作り上げた計画に基づけば、そろそろ彼の内面に迫る段階に入らなければならない。
断片的な物はいくつか拾い上げてはいるものの、彼の本質は見極められない。
私自身も、迫ってみたいと思っていた。
しかし、私はタイミングを計り兼ねていた。
内面に迫る、など簡単に言ってみてはいるが、これはかなりの技量がいる。
最悪、失敗した揚句その後の取材にも支障が出る。
彼には自由に取材してくれて構わないとは言われたが、かといってズケズケと聞くわけにもいかない。
('、`*川「どうしたものかしらね……」
新人記者としての壁にブチ当たったのを感じつつ、私の意識はベッドの上でまどろんでいった。
※
ドアがノックされる音に、私は目を覚ました。
「ペニサスさん。モララーです」
時計の針は真夜中を指している。
私は急いで人前に出ていける格好を整えて、ドアを開けた。
( ・∀・)「申し訳ありませんが、ジョルジュに要請が出ました」
モララーさんは開口一番にそういった。
要請。世界のどこかで彼の力が必要になった。
( ・∀・)「彼は既に要請先に出発しました。」
仕方ない。彼の力が一刻も早く必要な状況なのだろう。
( ・∀・)「今から私達は航空からその国へ飛びます。急いで身支度をしていただけると有り難い」
('、`*川「分かりました」
私は遅刻寸前の朝に陥るたびに鍛えた素早さを遺憾無く発揮し、ものの数分で準備を終えた。
ワゴン車に乗り込み、私達は空港を目指した。
('、`*川「要請の内容は……?」
( ・∀・)「……某国に置いて爆弾テロの予告がありました。
場所は国立病院。
多数の患者が移動不可能な状況だそうです」
('、`*川「爆弾テロ……!」
( ・∀・)「爆発時刻は不明。
万が一の場合に備えてジョルジュが地元警察と捜索、
発見した後は彼が一人で爆弾解除の指示を受けつつ解体にあたります」
予想はしていたが、事態はかなりの大事になっていた。
('、`*川「彼は……やっぱりミサイルで?」
( ・∀・)「ええ。「最高速で頼む」と意気込んでました」
アレで飛んでる最中はどんな感じなんだろう……、質問のネタが一つ増えたな……、
と不謹慎に考えた私を乗せたワゴン車は、すぐに空港に到着し、
私達は某国へと出発した。
某国は海を挟んで直ぐのところに位置しているため、数時間で到着することが出来る。
到着した私達は、一休みする間もなく現地に用意されていたランドクルーザーに乗り込み、
爆破予告がなされた病院へと急いだ。
未だ爆弾は爆発していないが、捜索は難航していて発見もされていないらしい。
病院へ到着すると、辺りはぐるりと報道陣が取り囲んでいた。
ランドクルーザーは少し離れた場所に停車された。
( ・∀・)「待ってください」
素早くランドクルーザーを降りたモララーさんに続いて降りようとした私を、彼は静止した。
( ・∀・)「今貴女が行くのは得策ではありません。
申し訳ありませんがここで待機していてください」
確かに、今モララーさんにくっついて行けば、私がジョルジュに取材を行っていることがバレるかもしれない。
私にしても、それはあまり好ましくない事だ。
それに、カメラも何も持っていない私が行ったところで何の意味もない。
('、`*川「分かりました」
私は素直に頷いた。
( ・∀・)「この車の鍵です」
そう言って彼は私に鍵と望遠鏡を渡した。
( ・∀・)「望遠鏡があれば状況は鑑みることが出来るでしょう。
何かあったら連絡を」
私はもう一度頷く。
( ・∀・)「では」
モララーさんはドアを閉めて、報道陣を掻き分けて中へと入っていく。
報道陣の内の何人かが彼の正体に気付いてマイクとカメラを向けたが、
彼は無視して「KEEP OUT」の黄色いテープを潜り、
病院の前に設けられている駐車場兼タクシーの巡回スペースに入って行った。
私は望遠鏡から病院を眺める。
病院だけを見れば、何も起きていないかのように見える。
しかし、あの中には爆弾が仕掛けられていて、身動きの取れない患者に恐怖を与え続けているのだ。
私は視線を左右に動かし、やがて上下に……
('、`*川「!」
上に視線を上げたところで、私は屋上から飛び下りる人影を見た。
何やら抱え、走りながら飛び降りたため、斜方投射のような軌道を描いて落下していく。
そして。
地上まで後半分といったところで、人影は空中で爆発した。
私は息を呑む。
同時に状況を把握した。
誰かが爆弾を見つけだし、その爆弾が恐らくは時限爆弾だったのだ。
時間がないと考えたその誰かは、屋上から跳んだ。
誰か……というのも、私には予測がついた。
というか彼しか考えられなかった。
爆発は病院には届く事なく、僅かな爆弾の残骸を散らしながら消え去った。
爆弾とダイビングした彼……ジョルジュは、煙を上げながら落下した。
一瞬の沈黙。
やがて誰からともなく、盛大な歓声が巻き起こった。
ジョルジュもムクリと身体を起こす。
モララーさんが駆け寄る。
モララーさんが差し延べた手を、ジョルジュが笑顔で握った。
('、`*川「やった!」
私も一人ランドクルーザーの中で喜んだ。
誰もが終わったと思っていた、次の瞬間。
爆音と共に病院の一角が爆発した。
皆が一斉にその方向を向き、報道陣は先とは違う理由で騒ぎ出す。
しかし、私の視線は爆発した病院の一角でも、報道陣にも向いていなかった。
私は、ジョルジュを見ていた。
爆発を見るなり、再び病院へと駆け込むジョルジュを。
('、`*川「……」
私は彼が病院の中へ消えていくまで眺めていた。
※
結局、爆弾は二つ忍び込んでいた。
一つはジョルジュが見つけ出し、空中にて被害を出す事なく爆発したが、
もう一つは病院に入院していた8歳の少女と爆弾捜索に加わっていた若い男性の二人を巻き添えに爆発した。
私が病院内に入ると、ジョルジュは爆発に巻き込まれた男性の手術がついさっきまで行われていた手術室の前にいた。
( ・∀・)「彼を頼みます」
モララーさんは私にそう頼んで、ジョルジュの診察の結果を聞きに行ってしまった。
( ゚∀゚)「……来たの」
私を見たジョルジュは、別に嫌だと言いたげな訳でもなく、皮肉のように言っているわけでもなく、
そう言った。
('、`*川「大丈夫ですか?」
今のジョルジュは、私が見た中で……とは言ってもたかが三日間の内でなのだが……最も覇気がなかった。
( ゚∀゚)「大丈夫じゃないよ。
二人も死んだ」
ジョルジュは自嘲するかのように微笑し、
私は言葉を間違ったと自責した。
爆発が起こって、他の者が駆け付けた時、幼い少女は既に息絶えていた。
男性の方は息があったが、そのまま病院内での手術中に息を引き取った。
('、`*川「……仕方なかったですよ。
ジョルジュさんが見つけた爆弾もあわや爆発寸前だったのでしょう?」
( ゚∀゚)「爆発寸前まで見つけられなかったのさ。
もっと早く見つけていれば、二人は助かったかもしれない」
('、`*川「そんなことありません。
貴方はベストを尽くしました」
( ゚∀゚)「ベストを尽くしたとか、そういう問題じゃない。
問題は結果だけだ」
ジョルジュの口調が険呑になった。
( ゚∀゚)「さらに言えば、俺は彼等の死そのものを悔やんでいるわけじゃない。
彼等が死んだことによって俺自身に降り懸かるモノを嫌がっているだけさ」
( ゚∀゚)「俺は自己中心的だからね。
根っこの所じゃ自分のためになることしか考えてないよ」
ジョルジュは俯いていた顔をこちらに向ける。
( ゚∀゚)「不老不死ってさ、端から見りゃ羨ましい事この上ないと思うだろ?
でもさ、実際不老不死なコッチから言わせてもらえば、全然そんな事はないんだ。
SFとかで不老不死になった奴が大低行き着く先が何か知ってるかい?」
それは、私が彼の取材をするにあたって最も懸念すべきモノの一つであった。
私も、ある著名な漫画家の連作の中の一遍で不老不死となった男の話を読んだ。
男は老いず、死なず、ありとあらゆる権力を手に入れる。
しかし、彼は永い永い時間の中で幾度とない別れを味わい……
やがて彼は独りとなり、彼は発狂する。
そして、ジョルジュにもその可能性がある。
取材の質問の中に、このことに触れるようなモノが無いか、編集長と何度も見直したものだ。
( ゚∀゚)「俺はね、独りになったら発狂する自信がある。
だから、何としてもそれを阻止したい。
世界中の人々がいなくなることが無いようにしたい。
今まで俺がやってきたことは、「独りになりたくない」という自己満足の行動だ。
地雷を除去したり、病院に仕掛けられた爆弾を取り除いたり、
この身の不思議を研究材料として捧げるのもね」
('、`*川「……」
しばしの沈黙の後、ジョルジュは立ち上がった。
( ∀ )「……愚痴って悪かった。
ちょっと頭冷やしてくるわ」
そう言い残して、彼は病院の奥へと歩いていった。
その日、モララーさんがジョルジュの身体に異常は無いとの診断結果と共に戻って来て、
新たに用意された宿泊先へと移動し、就寝の時間帯になるまで、私達は会話を交わすことは無かった。
私は初めて彼の負の内面を目の当たりにした。
それはつい先日に私が望んでいたことだったが、私の頭中には疑問符ばかりが
の浮かび上がっていた。
彼は自らを自己中心的だと自嘲した。
独りになることが怖いのだと。
しかし、彼は本当に自己中心的なのだろうか。
確かに、独りにならないため、というのは彼が慈善活動をしている理由にそぐわないことはない。
しかし、本当に自己中心的な……自分のことしか考えられない人物が、
今までのジョルジュのような行動を起こすとは思えなかった。
彼が自分の事しか考えていないのならば、そして独りにならないことが目的ならば、
もっと方法はあるはずだ。
それこそえげつない方法だっていくらでも。
残り二日。最終日は午前中に発たねばならないから、実質一日。
私は眠れない夜を過ごした。
※
翌日。
テレビでは昨日の事件がトップニュースで報道されていた。
私が見ることは出来なかった、ジョルジュが病院に到着する映像から始まり、
ジョルジュが病院の中へ入っていく場面から、モララーさんが報道陣を掻き分けて入っていく場面に跳ぶ。
ジョルジュが病院の屋上から爆弾を抱えて飛び降りる映像。
起き上がったジョルジュに向け拍手が巻き起こる映像。
そして……二つ目の爆弾が爆発し、もくもくと黒煙を上げる病院の一角。
担架にのって運び出される男性と、同じように担架に乗っているが、シーツに包まれて姿の見えない女の子。
それを眺めるジョルジュに群がる報道陣。
そのニュースで、ジョルジュが批判されることはなく、むしろ称賛の対象だった。
被害を半分に押さえられたのは彼の功績以外の何物でもないと。
('、`*川「……」
これを、彼は見ているだろうか。
そんな事を考えていると、ドアがノックされた。
('、`*川「はい」
私はドアを開ける。
誰が向こうにいるかは分かっていた。
( ・∀・)「起きていましたか。
昨日はお疲れになりませんでしたか?」
モララーさんを部屋に入れると、彼は私に言った。
そういえば……私は昨日の夜中に起こされて、今日の深夜まで起きていたのだった。
('、`*川「いえ、大丈夫です」
普段ならば間違いなく遅刻コースの生活リズムだが……今日に限って私は全く眠く無かった。
( ・∀・)「今日、ジョルジュは検査を受けます」
モララーさんは唐突に言う。
('、`*川「検査?」
( ・∀・)「身体異常が見つかった訳ではありません。
いわば彼の身体の謎を解明するためのものです」
そういえば、ジョルジュも病院でそんなことをしていると口走っていた。
('、`*川「成る程」
( ・∀・)「検査は午前中をかけて行われます。
逆に言えば、午後は予定がありません」
('、`*川「分かりました」
( ・∀・)「まだ時間に余裕がありますので、支度が出来次第隣の部屋へ」
そう言ってモララーさんは部屋を出ていった。
十数分後、私は身支度を終えて、私達は検査の行われる国立病院……昨日の病院とは別だ……に向かった。
( ゚∀゚)「昨日はゴメンね」
ランドクルーザーの中で、私は唐突にジョルジュに謝られた。
私はまさかこのタイミングで謝られるとは思っていなかった。
( ゚∀゚)「何て言うか……ホラ、愚痴のぶつけ相手にしちゃって。
ちょーっとモヤモヤしててさ」
('、`*川「……いえ。私も不用意な発言をしてすいませんでした」
( ゚∀゚)「じゃあ、昨日の一件は水に流すって事で。
あ、記事にするかどうかはご自由に。
少なくとも嘘をついたつもりはないからさ」
('、`*川「了解です」
この潔さは、ジョルジュの長所の一つなのかもしれない。
だがしかし、今のその潔さが、彼の本心からのものかどうかは計れなかった。
病院に着くと、ジョルジュはすぐにどこかへ案内されていき、私達は一般の人とは違う場所で彼の検査が終わるのを待った。
( ・∀・)「昨日、何があったかは彼から聞きました」
長椅子に並んで座っているモララーさんが、私に目線を合わせずに言った。
( ・∀・)「ジョルジュは……私達には体験できない不安を味わっています。
そして、彼はその不安から逃れられない」
('、`*川「はい」
( ・∀・)「貴方は、恐らく彼の愚痴を聞いて彼を軽蔑したりはしない人物だと思っています。
……同時に、彼のその不安に何らかの一滴を足らせるかもしれない人物だとも」
私は彼の横顔をじっと見ている。
彼は、話の話題を僅かに逸らした。
( ・∀・)「……彼は切り替えの早い奴ですから、取材に支障は出ないでしょう。
残り一日、頑張ってください」
彼がそう言って立ち上がると、ジョルジュが向こうがわから片手を挙げて歩いて来ていた。
( ゚∀゚)「あー、今回の検査はじっとしてばかりで、ちょっと息苦しかったなぁ」
大きく背伸びをして、ジョルジュはランドクルーザーの中で固まった身体を伸ばした。
( ゚∀゚)「……にしても、ヒデェ渋滞だね」
('、`*川「みたいですね」
彼の言う通り、大きな通りに出た途端、私たちは渋滞に巻き込まれ、
ここ十数分まともに進めていなかった。
この調子だと、宿泊先に着けるのは大分掛かるだろう。
ジョルジュは検査で疲れているかもしれないと思っていたが、彼はそんな感じを微塵も見せていない。
これならば質問してもいいかな、と思っていた矢先だった。
( ゚∀゚)「……悪い、モララー。
ちょっと行ってくるぜ」
窓から外を見ていたジョルジュは唐突にそういうなり、ドアを開けて車から下りてしまった。
('、`*川「え?」
困惑する私に、モララーさんがミラー越しに困ったような顔をしながら言った。
( ・∀・)「すいません、彼に付いていって上げてください。
……火事のようです」
モララーの目線の先を辿ると、立ち上る一筋の煙が見えた。
( ・∀・)「私は生憎手が放せません。
……お願いしました」
私は彼からミラーで見えるように頷くと、急ぎ彼の後を追った。
渋滞に巻き込まれている車の間を擦り抜け、脇道を煙の立ち上る元へ走った。
脇道を抜けた先は、大通りよりは細いものの、それなりに大きな通りだった。
その通りの交差点の一角に建っているマンションが、煙の立ち上る元だった。
(#゚∀゚)「何号室だ!」
私がジョルジュの姿にようやく追い付いたとき、
彼は炎上するマンションを見上げていた野次馬らしき男性の首下を引っつかんで何やら問い質していた。
(;^Д^)「ろ、607号室だよ……!まだ逃げ遅れた若い親子がいるって……」
男がしどろもどろに答えたのを聞くと、ジョルジュは一瞬、追い付いた私の顔を見た。
( ゚∀゚)「行ってくる」
ジョルジュはそう言って、マンションの入口へと駆け出した。
どうやら火元は2階の一室らしい。
火の回りは早く、火事の発生から数分で火は上の階を煙に包んでしまった。
昼時ということもあり、大半の住人は火事に素早く気付いたが、
若い親子だけが逃げ遅れた。
大方、仲良くお昼寝でもしていたのだろう。
ジョルジュがマンションに入ってから数分が経った。
火が消えるどころか勢いを増し、消防車や救急車は渋滞に阻まれているのか、一向に来る気配が無い。
しかし、私は信じていた。
彼は間違いなく二人を助け出すと。
そして、その予想はすぐに的中した。
「どけぇぇぇぇぇぇ!!」
大声が聞こえたのとほぼ同時に硝子が割れる音がして、
人影がマンションの6階辺りの高さから煙のカーテンを突き破って現れた。
下の野次馬が慌てふためいて場を空ける。
あちこちを……特に上半身は服を全て……を焼け焦がしたジョルジュが、親子を抱えて着地する。
抱き抱えられている幼児がワンワンと泣きわめいている。
生きているのだ。
が、ジョルジュの表情は優れない。
問題は幼児ではなく母親の方だった。
(;゚∀゚)「おい!しっかりしろ!」
煙の立ち込める中で自らを犠牲に我が子を庇い続けたのか、
若い母親はジョルジュに抱かれたまま手足をぐったりと垂れ下げている。
( ゚∀゚)「この子を頼む!」
ほぼ無傷の幼児を近くの野次馬に託し、ジョルジュは母親をしっかりと抱き抱え、走り出した。
私はすぐに彼の意向を察知した。
私は踵を返し、ジョルジュとは別方向……モララーの待つ車へと走った。
私は息を切らしながら車に縋り付くなり、ドアウィンドウを下げたモララーさんに叫んだ。
('、`*川「さっきの……病院に……、
ジョルジュさんが救急患者を連れていくと……電話してください!」
モララーさんは何も聞き返さずに頷き、すぐに携帯で電話を掛け始めた。
その後、脇道に逸れて渋滞から脱出したランドクルーザーが病院に着くと、
入口で座り込んでいるジョルジュがナースに気遣われているのが見えた。
ジョルジュはこちらの存在に気付くと、この前とは違って親指を立てた。
どうやら電話が役に立ったらしい。
私もドアウィンドウから顔を出し、親指を立てた。
母親は少し危ない状況だったが、危機一髪間に合ったらしい。
意識を取り戻し、我が子と再開した母親は、ジョルジュに涙ながらに礼を述べた。
働きに出ている父親がいるとの事だったが、私達は彼が来る前に母親に別れを告げ、病院を後にした。
('、`*川「良かったですね」
再び乗り込んだランドクルーザーの中で、私はジョルジュに言った。
病院にいる間に渋滞は解消され、スムーズな帰路についている。
( ゚∀゚)「そうだな。今回は助けられたし、助けられたよ」
可能と受け身の意味で、とジョルジュは付け足した。
('、`*川「咄嗟に思い付いたんです。
モララーさんなら病院に連絡出来るかもって」
( ゚∀゚)「羨ましい機微さだな」
そう言ってジョルジュは笑う。
私も笑った。
宿泊先に帰った後、私はジョルジュに今までで一番長いインタビューをし、事実上最後の取材日を終えた。
そして、私は彼等に別れを告げるときが来た。
彼等は私を空港まで送り届けてくれた。
('、`*川「取材にご協力頂き、ありがとうございました」
私は搭乗ロビーまで着いて来てくれたジョルジュに頭を下げた。
( ゚∀゚)「こっちこそ、楽しかったよ。
ありがとう」
ジョルジュは屈託の無い笑顔で私に握手を求め、私はその手を握った。
( ゚∀゚)「じゃ」
('、`*川「あ、待ってください!」
踵を返そうとしたジョルジュを呼び止めた。
('、`*川「ジョルジュさんは自分が自己中心的だって言いましたけど……。
私は違うと思います」
ジョルジュは無言だ。
('、`*川「私、貴方を身近に見て、自信を持って言えるんです。
ジョルジュさんは、自分の為だなんていいながら、人の為に何でも出来る凄い人だって。
きっと不老不死じゃなくても、そういう人なんだって」
たまたま不老不死で、人には出来ないことが出来てしまうから、
世界にはそれが当たり前だと思われている。
でも、違うのだ。
皆が彼と同じ様に不老不死になった時、私利私欲に走らず、
彼と同じ行動を出来ると思うのは簡単だ。
しかし、出来る人はいくらいる?
自らが不老不死になっても、他人の死を悔やめる人は?
不老不死になった時、その道を迷わず選んだ彼は、
不老不死であるないに関係なく、素晴らしい人間なのだ。
しかし、彼のその本質は世界中に知られていない。
彼が不老不死であることが、遥か先を独り歩きしている。
('、`*川「だから私、ありのままの貴方を書くことにします」
決意を述べた私を見ながら、ジョルジュは笑った。
( ゚∀゚)「……あんたを選べて、本当に良かったと思ってるよ」
そして、彼は片手を振りながら踵を返す。
私は、彼が見えなくなるまでその姿を見ていた。
空港に響くアナウンスが、私の乗る便の出発を告げる。
('、`*川「……よーし……やってやるわよ!」

私も踵を返し、両手を振り上げながら、仕事を完遂させるべく、歩き出した。
fin
この小説は2007年6月22日から2007年6月23日にかけてニュース速報(VIP)板に投稿されたものです
作者はID:tgRMBdprO 氏(ID:i4j1sE9dO)
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